行政・政策
角田 憲 2020.7.20

「静岡どぼくらぶ」とは!? 建設産業の魅力を楽しく伝える、土木LOVEなサークルに迫った!

国や地域を支える重要産業を根底から揺るがしかねない、若者離れによる人手不足。建設産業も決してその例に漏れることはない。

静岡県では、そんな業界喫緊の課題に取組むため、若者や女性にもわかりやすく土木の面白さを伝えるサークル「静岡どぼくらぶ」を発足し、業界を支える担い手の確保・育成に日々奮闘している。

着々と仲間を増やし、いま県内外で注目を集めつつある「静岡どぼくらぶ」。そのリーダー山田紘子氏(静岡県交通基盤部政策管理局建設政策課 主任)に話を聞いた。

土木への誇りと愛情が「どぼくらぶ」メンバーの証


――「静岡どぼくらぶ」。名前からしてキャッチーで頭から離れないのですが、そもそも「どぼくらぶ」とは?

「静岡どぼくらぶ」とは簡単にお伝えすると、建設産業の魅力や未来について発信していくサークル(仲間)です。「DOBOCLUB」「土木+LOVE」、土木の仲間が土木を好きになるという意味を込めて「どぼくらぶ」と名付けました。造語なんです(笑)。

静岡県交通基盤部政策管理局建設政策課 主任 山田紘子氏 

私たち静岡県の交通基盤部が中心となって平成29年4月に立ち上げました。参加するために特に申請などは必要ありません。静岡県内の建設産業に関わりがあって、また土木への誇りと愛情があれば、どなたでも「どぼくらぶ」の一員になることができます。

楽しく、わかりやすくをモットーに。地域に根ざしたPR活動を


――具体的な活動内容を教えてください。

情報発信のプラットフォームとして、県内の建設産業の情報のリリースや、サークルメンバーが開催するイベントのサポートなど。大きな括りで言えば、社会インフラの必要性や意義を県民のみなさまに周知することで、業界全体のイメージ向上を狙っています。


また国土交通省が推進するアイ・コンストラクションに則した「業界の生産性向上」や「働き方改革とICTの利活用」などのPRも、重要な取り組みの一つですね。特に若い方や女性の入職を促進していきたいと考えていて「危険・汚い・きつい」の3Kという業界のネガティブなイメージを「給料が良くて、休暇が取れて、希望が持てて、きれい」の新4Kに変えていくために日々奮闘中です。

――なるほど。「どぼくらぶ」はロゴマークも、とてもユニークですね。どういった形で活用されていますか。

このロゴマークはフリーの素材ですので、建設産業のイメージアップや、土木の魅力を発信するためであれば、誰でも自由に使用していただけます。マグネット、シール、バッジなどロゴマークが入ったグッズもたくさんあるので、建機やヘルメットに貼っていただけると嬉しいですね。


最近では、名刺にロゴマークを入れてくれる方も多くなってきていて、名刺交換した際に「あっ、どぼくらぶ仲間だ」って一気に親近感が湧くこともあります。ロゴマークを付けたらみんな友達、みたいな感覚です。

――なるほど。ロゴマークを中心に人と人とが繋がっていくような感じですね。


そうですね。他にもカレンダーや「静岡どぼカード」という、魅力ある社会インフラ施設の写真とデータを記載したトレーディングカードのように収集して楽しむカードもあります。これは子どもたちに人気が出るかなと思って作ったのですが、意外にも大人の方からも問い合わせが多くて驚きました(笑)。


――他にはどういったPR活動をしていますか。


昨年からは、建設産業の“新たな魅力を発掘するためのフォトコンテスト”を開催しています。カレンダーの写真は、このフォトコンテストの入選作品を題材にさせていただいたものもいくつかあるんですよ。県職員からも作品を募って、カレンダー賞などを設けてきちんと表彰もしています。ポスター型のカレンダーは県内すべての学校に配布しているので、子どもたちにも日頃から建設産業や社会のインフラに少しでも興味を持ってもらえたらと考えています。


――とても素敵な写真ですね。

他にも、工事現場に掲示している工事PR看板を、東京2020オリンピック・パラリンピック応援仕様にして、静岡県でも東京五輪の自転車競技を開催するんだ、という機運醸成を図っています。残念ながら延期になってしまいましたが。

現在、競技会場へアクセスする道路や、自転車が走る路面の舗装工事をしていて、そういったインフラを整備することも、オリンピック・パラリンピックへの参加のひとつなんだ、という気持ちを地元住民の方と共有できたら良いなと。また11月18日は漢数字にして合わせると「土木」に見えることから「土木の日」として、イベントや、現場見学会などを積極的に開催しています。

――動画も配信していますよね。これもまた印象的です!

そうなんですよ。特に若い世代の方に、建設産業って面白いんだよ、ということを知っていただきたかったので「静岡どぼくらぶ」の最初の取組みのひとつとして、動画を制作しました。「どぼくらぶソング」というオリジナルの歌もあって、この歌もロゴマークと同様、基本的には誰でも使用できます。

静岡どぼくらぶ制作「どぼくらぶソング篇」

地元の建設コンサルタント会社の方が、この歌を使った企業CMを作って放映してくださったり、別の企業さんでも社内で結成しているバンドで替え歌を作って動画配信したりと、広く活用してもらっています。JOYSOUNDさんとも連携し、全国のカラオケ店で歌うこともできるんですよ。11月18日はみんなで「どぼくらぶソング」歌いましょう!

――「どぼくらぶソング」。映像も面白いし耳に残ります。それにしても様々な取り組みをされていて驚きました。

「どぼくらぶ」が、もっと広く静岡のみなさんに浸透して、共通言語みたいになるように、どんどん発信していきたいですね。ロゴマークを付けた人同士が「どぼくらぶ仲間だ!」ってなると良いなって。仲間がたくさん増えることを想像しただけで嬉しくなってしまいます。


社会を担う子どもたちや学生たちに、
土木の魅力を伝えていくことを、何より大切に。


――なるほど。土木LOVEな仲間の輪が広がっていけば、業界の魅力の発信にも繋がりますね。建設・土木業の担い手確保、育成についても教えていただけますか?

全国どこでも同じだと思いますが、静岡県にとっても建設産業は、地域を支えるとても重要なものです。その重要な産業を支える若い方たちの割合が、減少しています。そして今後、多くのご高齢の方が退職されることで、業界人口が一気に減ってしまう可能性も……。つまり産業や県の将来を考える上で、その担い手の確保・育成は最重要課題なんです。

――課題を解決するための具体的な取り組みがあればお聞かせください。

小・中・高、大学への出前講座や、建設現場の体験見学会などのキャリア教育を行なっています。若い方たちには、まず建設産業というものがどんなものなのか、知ってもらうことが大切ですから。小学校に出前講座に行くと、最初に「土木って何か知っている人?」って聞くんですよ。ほとんどの場合、誰も手を挙げません(笑)。たまに手を挙げる子がいても、親御さんが建設・土木の関係者だったり。


そこでまず「どぼくらぶソング編」のミュージックビデオを観てもらいます。ヘルメットをかぶった作業着の人が、建機を動かしたりするのを観てもらった後に「なんとなくわかったかなー?」って聞くと、ほぼ全員が「見たことある!あれが土木なんだー!」って返答してくれますね。その後、実際にやっていることをまとめたスライドショーを観てもらいながら、実際にはこんなことやっているんだよって話していくとすごく興味を持って聞いてくれます。

――確かに「土木って何?」と聞かれたときに、概要は言えてもきちんとした説明は難しいですよね。動画から入ることでイメージが湧きます。

講座の最後にみんなで集合写真を撮るようにしているのですが、「どぼくらぶマーク」を子どもたちがみんなで奪い合うようにして持ちたがるんですよ。マークが持てなかった子も、ポールやヘルメットを嬉しそうに持ってくれます(笑)。


民間業者さんと連携して、体育館でドローンを飛ばすのも好評でした。みんな興味津々。「全く知らなかった建設産業」が、「身近にある大切なお仕事」に少し意識が変わってくれたかなと、講座の最後には毎回感じます。実際に見て触れてもらうことが大切ですね。

――「わかりやすく、楽しい」ということが、興味を持ってもらうきっかけになりそうですよね。

そうですね。ただ小・中学校の場合、約45分の授業の中で行わなければいけないので、私たちが子どもたちに向かって一方的に話すだけになってしまうことが多いんです。やはりそれだけでは本当のおもしろさは伝わらないとも感じてはいるので、2020年度は実学講座ということもやっていきたいと考えています。


例えば割り箸で橋を作ったり、鉄筋の結束や左官体験とか、コンクリートを作ったりするのもいいですね。実際の職業に触れることができるような講座です。

――それは面白いですね。ワクワクしている子どもたちの顔が想像できます。

きっと自分で割り箸の橋を作ったら実際の橋を見に行きたくなっちゃうと思うんですよ。いま作ったアーチ橋が、県内のここにあるんだよって教えてあげて、休みの日に親御さんに連れて行ってもらったり。現地に行くきっかけを提供してあげることで、どんどん社会インフラに触れてもらえたら嬉しいですね。

――大学、工業高校などへのPRがメインだと思っていたのですが。

もちろん、一番業界に入ってもらえる可能性が高い方々ですから、大学生などへのPRも注力しています。2016年度からは年間を通して、静岡大学の地域創造学環の土木の講義に土木の技術職員が講師として登壇しています。


出前講座のように単発ではなく、今回は「道路の話」、次は「河川の話」という感じで、より体系的に理解を深めることができ、興味を持ってもらいやすいのではないでしょうか。ICT関連にしても、3次元点群データや地理情報システムの話などをする予定です。また近日中に高校生・大学生とその保護者向けに建設産業への入職を促進する動画も公開します。ぜひ大学の講義でも観てもらえたらと考えています。

業界を目指す若者を、家族や先生が心から応援してくれる。

そんな業界にしていきたい。


――興味深い試みですね。少しずつ活動も広がってきているようですが、2020年度の課題などはありますか。

「静岡どぼくらぶ」の活動は4年目です。今までは「どぼくらぶ」を周知し普及することに邁進してきましたが、そろそろ成果を数値化していかなければならない時期だと思っています。


工業高校などでアンケートを取って、建設産業への入職希望率や、入職希望者全体に対しての女性の割合を調べたり、目に見える形で効果を示していきたいですね。もちろん効果がはっきりと現れてくるのは、もっと何年も後だということはわかっていますが。
また、業界におけるICTの 導入や週休二日制の推進などの職場環境の改善を広く訴えていくことも、私どもに与えられている課題です。

――「静岡どぼくらぶ」としても、交通基盤部としても、一つ目のマイルストーンとして数値化した結果を求められる時期なんですね。今後の目標を教えてください。

先ほども少しお話ししましたが、建設業界には、3Kなどまだまだネガティブなイメージが残ってるので、そういったイメージを私たちが払拭しなければいけないと思っています。例えば「建設産業で働きたい」と希望する学生さんが進路を相談した時に、その親御さんが「いいね!」「がんばりなさい」と喜んで送り出したくなるような業界にしていくことが、「静岡どぼくらぶ」に与えられた大きな使命だと感じているんです。


特に女性が入職する際に、周りが喜んで後押ししてくれるような、そんな業界です。今、小学生がなりたい職業の第1位がスポーツ選手(男子)、ケーキ屋・パン屋(女子)ですが、50年後くらいには建設産業が1位になっていたら嬉しいな……。とは言え、まずは職業ランキングの上位に入るように頑張ります!

――最後に山田さんが考える建設産業の魅力とは何でしょうか。

建設産業の魅力はチームワークだと思っています。インフラ施設は作ることも管理することも、そして安全を守っていくことも、決して一人ではできません。みんなの力を結集して初めて事業ができるんです。


ですから、基本的には民間の企業の方々も、国も、この業界の皆さんが前向き。足を引っ張ろうなんて人はそうそういません。自分たちだけでは何も完成しない、だからみんなの力を合わせて作り上げていく。そういったことを生身で実感できるのが建設産業の魅力ですね。「みんな仲間だ」っていう一体感があります。


屈託のないチャーミングな笑顔で土木愛を語ってくれた山田紘子さん。ほんわかと柔らかい雰囲気かと思えば、とてもエネルギッシュで、土木に対する熱い想いを内に秘めていた。お話を伺い、記者が思い描いていた建設産業の少しとっつきづらいイメージを良い意味で覆してくれた。土木大好き、筋金入りの「どぼじょ(土木女子)」山田さんが全力で取り組む「静岡どぼくらぶ」。デジコンではこれからも「静岡どぼくらぶ」の活動を取り上げて行く予定だ。



取材・文・編集:編集部
撮影:宇佐美亮
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WRITTEN by

角田 憲

有限会社さくらぐみにライターとして所属。宅地建物取引士。祖父が宮大工だったことから建築、不動産に興味を持ち、戸建て、マンション等の販売・管理・メンテナンス業務に従事。食、音楽、格闘技・スポーツ全般、健康、トラベルまで幅広く執筆。読書量は年間約300冊。

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