ニュース
デジコン編集部 2025.11.28

衛星通信と光回線で建設機械の遠隔操縦を実証。山間部でも低遅延で安定操作が可能に。IIJエンジニアリングとハイテクインター

IIJエンジニアリングとハイテクインターは11月21日、土木研究所の建設DX実験フィールド(茨城県つくば市)とIIJエンジニアリングの本社オフィス間において、衛星通信Starlink 2回線と2種類のフレッツ光回線を用いた高信頼・低遅延ネットワークを構築し、ネットワーク状況が動的に変動する環境下における建設機械の遠隔操縦に関する実証実験を実施した。

今回の実証では、山間部など通信インフラが未整備な地域でも、衛星通信と光回線による信頼性の高いネットワークならびに映像伝送環境を構築することで、建機を遅延なく安定して遠隔操縦できることを確認した。

コーデック遅延を50msecに抑え良好な操作性を実現


建設業界では、労働人口減少に伴う作業員不足への対応として、国土交通省の「i-Construction2.0」で推進される建設現場の省人化に向けた取り組みが進められており、その一つとして通信ネットワークを活用した遠隔施工に注目が集まっている。

しかしながら、山間部や都市部から離れた地域の建設現場では、必ずしも通信インフラの整備が行き届いておらず、また実際に遠隔操縦に必要な映像伝送にはネットワーク遅延影響を最小化することや、限られたネットワーク帯域で多数の映像を効率的に伝送することが求められるなど、遠隔施工の本格的な普及には依然として多くの技術課題がある。

これらの課題を受け、本実証では、場所を選ばず低価格で利用可能なネットワークと、低遅延で効率的に現場映像を送受信できる映像伝送システムを用いて信頼性の高い映像伝送環境を構築し、実際の建機を用いた遠隔操縦の検証を行った。



実証実験は建設DX実験フィールドにおいて、建機に搭載した4台のハイビジョンカメラの映像を高圧縮で符号化可能なハイビジョンビデオエンコーダー「LVRC-4000」により圧縮し、さらに現場を俯瞰するためのハイビジョンカメラ1台、計5台のカメラ映像をメッシュWi-Fi、2台の「Starlink Mini」、2種類のフレッツ光回線を介してIIJエンジニアリング本社オフィスとの間で伝送を行った。

同時にオフィス側からは、建機操作とカメラコントロール用のデータも送信。

片側回線断や再接続など回線状況を変化させても安定して映像を低遅延で伝送し、良好な操作性で建機を操縦できることが確認できた。


実証実験の主な技術要素として、第一に信頼性の高いネットワークの構築がある。

遠隔操縦にあたっては、建設現場側、遠隔操縦側の双方に安定した映像伝送が可能な信頼性の高いネットワーク構築が必要になる。



本実証ではIIJエンジニアリングが構築した、低価格な衛星通信「Starlink Mini」2回線と2種類の光回線(フレッツ/フレッツクロス)を使った冗長化ネットワークにより、常に安定した映像伝送を可能にした。

第二に、多数のカメラ映像の高品質伝送がある。

1台の建機に搭載するカメラは4台程度、さらに現場確認のために最低1台の俯瞰カメラが必要になるため、これらの映像を利用可能なネットワーク帯域の中で効率的に伝送する必要がある。

ハイテクインターはこの課題を解決するための技術として「BAERT(Bandwidth Adaptive and Error Resilient video Transmission)」を開発した。

BAERTは、帯域最適化映像伝送と伝送エラー耐性技術から構成され、どのような回線、映像変化に対しても高品質な映像を安定的に伝送することが可能になる。

第三に、超低遅延映像伝送がある。

遠隔地から建機を正確に操縦するためには、建機に搭載したカメラから操縦席にあるモニタまでの遅延をできる限り短くする必要がある。

ハイテクインターで開発したハイビジョンビデオエンコーダー「LVRC-4000」による超低遅延映像伝送技術により、コーデック(データ符号化)での遅延を50msecに抑え、遠隔地からも良好な操作性で正確な建機操縦が可能となっている。




印刷ページを表示
WRITTEN by

デジコン編集部

建設土木のICT化の情報を日々キャッチして、わかりやすく伝えていきます。

建設土木のICT活用など、
デジコンからの最新情報をメールでお届けします

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を案内するメールマガジンが購読できるほか、会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。