大林組、断面設計自動化AIプログラム開発。1週間作業を1日に短縮し構造設計業務を効率化

大林組が、構造設計業務の断面設計を自動で行う構造設計支援AIプログラムを開発した。

構造設計者が長年にわたり蓄積してきたノウハウを数式化し、従来1週間を要していた断面設計を1日に短縮できる仕組みとなっている。

ルールベースAIと数理最適化手法で数時間の計算を数分に短縮

構造設計者は建築物の耐震性や経済性、施工性など多様な性能要件を満たすため、架構の形状や梁・柱などの部材の配置やサイズを決定する役割を担っている。

断面設計では構造の安全性や機能性、美観を考慮しながら地震などによる荷重に耐える部材形状やサイズを決定するため、試行、構造解析、評価を何度も繰り返す必要があった。

従来の設計では設計者の構造力学の知識と経験に基づいて行われ、設計の深度化や設計変更のたびに多大な手間がかかっていた課題があった。

同社がギリアと共同開発した本プログラムは、こうした反復作業を自動化し、基本設計から実施設計にかけて支援することで、構造設計者がより多くの時間を別案の検討や改良へ振り向けることを可能にしている。


（プログラムの構成イメージ）


プログラムは教師なし学習の一つであるクラスタリングによって、構造部材のグルーピングを自動的に行う機能を搭載している。

構造設計者はグループ数を自由に設定できるため、コストや施工性などプロジェクトごとの要件を反映した最適な配置計画を立案できる。

この機能により複雑な構造設計においても迅速かつ柔軟な設計が可能となっている。

本プログラムは大林組の構造設計者が長年にわたり蓄積してきたノウハウをルールベースAIによって数式化し、各構造部材に要求される性能を整理している。

数理最適化手法（混合整数形計画法）を活用し、短時間で最適な構造部材の断面を提案する仕組みを採用している。

個々の部材だけではなく構造骨組全体のバランスを同時に考慮することで最適な断面形状を導き出している。

ルールベースAIで数式化された熟練した構造設計者の知見と、数理最適化手法による最適なアルゴリズムを組み合わせることで、従来は数時間要していた計算を数分程度で処理している。

AIによる設計プロセスの可視化により、構造設計者の視点と建物特性の理解が広がることも期待される。

AIのアシストによるスムーズな設計検討によって、従来1週間を要していた断面設計を1日に短縮できるようになり、構造設計業務の大幅な効率化を実現している。