土木・建設業界のICT化が加速する中、注目を集めているのが360°カメラだ。
現場をまるごと記録できるこの技術は、現場管理の方法を大きく変えつつある。しかし、「実際に何に使えるの?」「どんなメリットがあるの?」と疑問を持つ方も多いだろう。
今回は、360°カメラが土木・建設業界でどのように役立つのか、具体的な活用シーンから導入のポイントまで、わかりやすく解説していく。
360°カメラ(360度カメラ)は、カメラの周囲360度すべての方向を一度に撮影できるカメラだ。
通常のカメラが「一方向」を切り取るのに対し、360°カメラは「全方位」を記録できる。
(画像はイメージ/画像元:Shutterstockより)
撮影された画像や動画は、専用のビューアーやVRゴーグルで自由に視点を変えながら見ることができる。まるでその場にいるかのような体験が可能だ。
土木・建設業界では、以下のような課題を抱えている。
360°カメラは、これらの課題を解決する有効なツールとして注目されている。i-Construction(アイ・コンストラクション)やDX推進の文脈でも、積極的な活用が期待されているのだ。
従来の課題:現場写真を撮る際、「どのアングルから撮ればいいか」を考え、複数方向から何枚も撮影する必要があった。また、あとから「別の角度も撮っておけばよかった」と後悔することも多い。
(画像はイメージ/画像元:Shutterstockより)
360°カメラの活用:一度のシャッターで全方位を記録できるため、撮影の手間が大幅に削減される。あとから必要な角度を自由に確認できるため、撮り直しの心配もない。
従来の課題:現場の安全パトロールでは、チェックリストに沿って確認するが、見落としが発生しやすい。また、高所や危険箇所の確認には時間とリスクが伴う。
360°カメラの活用:現場全体を360°撮影することで、オフィスや遠隔地からでも詳細に安全確認ができる。見落としがちな足元や高所も、あとから自由に視点を変えて確認可能だ。
従来の課題:出来形の確認には、多数の測定点と写真が必要で、膨大な時間がかかる。また、検査時に「この部分も撮っておいてほしかった」と指摘されることもある。
360°カメラの活用:施工完了時に360°撮影しておけば、検査時に任意の箇所を確認できる。測量アプリやBIM/CIMデータと組み合わせることで、より高度な品質管理も可能だ。
従来の課題:複数現場を管理する場合、移動時間が膨大になる。また、本社や設計事務所にいる関係者が現場の状況を把握しにくい。
(画像元:RICOH Remote Field WEBサイトより引用)
360°カメラの活用:現場で撮影した360°画像・動画を共有すれば、遠隔地からでもリアルな現場確認が可能になる。移動時間を削減し、迅速な意思決定につながる。
従来の課題:3Dモデルと実際の現場の状況を照合するのが難しい。図面と現場の整合性確認に時間がかかる。
360°カメラの活用:360°画像にBIM/CIMデータを重ね合わせることで、設計と現況のズレを視覚的に把握できる。施工管理の精度が向上する。
従来の課題:現場経験の少ない若手技術者への教育が難しい。ベテランの技術やノウハウを言葉や図面だけで伝えるのには限界がある。
360°カメラの活用:過去の施工事例を360°で記録しておけば、いつでもどこでも現場を「体験」できる。VRゴーグルを使えば、さらに臨場感のある研修が可能だ。
従来の課題:完成した構造物の魅力を、平面的な写真だけでは十分に伝えきれない。
(画像はイメージ/画像元:Shutterstockより)
360°カメラの活用:完成した橋梁やトンネル、建築物を360°で撮影し、Webサイトやプレゼンで活用することで、より魅力的な情報発信ができる。
従来は複数アングルから何枚も撮影する必要があったが、360°カメラなら一度で完了する。撮影の手間が減り、現場作業に集中できる。
全方位を記録するため、「撮り忘れ」「撮り漏れ」がなくなる。あとから必要な情報を確認できる安心感がある。
現場を見ていない関係者とも、360°画像・動画を共有することで、同じ視点で議論できる。認識のズレが減り、意思決定が速くなる。
遠隔から現場確認ができるため、移動回数を減らせる。複数現場を効率的に管理でき、働き方改革にもつながる。
360°で記録した現場データは、将来の類似工事や教育研修、トラブル対応など、さまざまな場面で活用できる貴重な資産になる。
360°カメラは、それ単体でも便利だが、本当の意味で現場DXにつながるのは「クラウドサービス」とセットで運用したときである。
360°画像は容量が大きく、撮影枚数も増えがちだ。
ローカルのフォルダに「2025_11_現場A」「現場B_写真」……と保存しているだけでは、
といった課題が出てくる。そこで、建設向けの360°写真管理クラウド(各製品のプラットフォームやクラウドサービス)を使うと、
といった、業務フローとしてのDXにつながる。
まずはカメラ単体で運用 → 進捗管理・報告に使い、メリットを体感する。その後、クラウド連携を試す → 1つの現場で、360°写真+図面とBIM/CIMモデルを紐づけて管理・共有。
「写真管理」から「デジタルツイン」へ → 複数現場・複数年度を通して、資産として使えるデータベースに育てていく。
360°カメラは「撮るための道具」、 クラウドサービスは「活かすための器」と考えると、役割がはっきりする。
建設現場で使う360°カメラを選ぶ際は、以下のポイントを確認しよう。
価格帯: 10万円前後(建設キット)/ 製品サイトはこちら
世界で最も売れている360°カメラブランドInsta360の最新フラッグシップモデルだ。建設現場向けに特別にパッケージされた「建設キット」が用意されており、届いたその日から現場で使える充実のセット内容となっている。
X5の最大の特徴は、その圧倒的な画質である。8K30fpsでの360°動画撮影が可能で、11Kから8Kへのスーパーサンプリング処理により驚異的な解像度を実現。
(画像元:Insta360 X5 WEBサイトより引用)
大型1/1.28インチセンサーとトリプルAIチップの組み合わせにより、低照度環境でも鮮明な撮影が可能だ。「PureVideo」と呼ばれるAI低照度モードを使えば、夜間や暗所でも映画のような美しい映像を撮影できる。
本モデルが建設業界で特に注目されているのは、現場での使用を前提とした機能が充実しているためだ。
(画像元:Insta360 X5 WEBサイトより引用)
建設現場では機材の耐久性が何よりも重要だ。X5はレンズ交換式デザインを採用しており、万が一レンズが破損してもその場で交換できる。修理に出す必要がなく、作業の中断を最小限に抑えられる。
(画像元:Insta360 X5 WEBサイトより引用)
2400mAhの大容量バッテリーを搭載し、5.7K24fps耐久モードで最大185~208分の連続撮影が可能。急速充電にも対応しており、わずか20分で撮影を再開できる。
(画像元:Insta360 X5 WEBサイトより引用)
操作面では、「InstaFrame」モードで360°映像と同時にフラット動画を生成でき、SNSやレポートへの即時共有が容易だ。
AI駆動型リフレーミング機能により、撮影後に最適なアングルを自動選択できる。FlowState手ブレ補正で、どんな環境でも滑らかな映像が撮影できる。
価格帯: 10万円程度 / 製品サイトはこちら
2022年5月発売のRICOH THETAシリーズのアドバンスドモデルで、THETAシリーズで初めて2.25型大型タッチパネルを搭載した画期的なモデルだ。
(画像元:RICOH THETA X WEBサイトより引用)
スマートフォンを使わずに、本体だけでほぼすべての操作・設定・確認ができるようになり、建設現場での実用性が大幅に向上している。
本体素材には、マグネシウム合金を採用。表面は梨地仕上げで、色はメタリックなダークグレー。業務使用に耐える堅牢性と、高級感のある質感を両立しており、大型のシャッターボタンは、手袋をしていても押しやすい。
THETA Xの最大の特徴は、THETAシリーズ初となる2.25型大型LCDタッチパネルの搭載だ。これにより、スマートフォンと接続しなくても、カメラ本体だけでほぼすべての操作が可能になった。
《 タッチパネルでできること 》
さらに、THETA Xは、CMOSイメージセンサー、メインプロセッサー、レンズユニットをすべて一新。約4,800万画素相当の新規センサー搭載により、出力画素で最大約6,000万画素に相当する高精細な360°静止画撮影が可能だ。
《 2つの画質モード 》
《 動画撮影モード 》
価格帯: 6万円〜9万円 / 製品サイトはこちら
2025年7月発表のDJI初の360°カメラで、360°カメラ市場に革新をもたらす次世代モデルだ。
(画像元:DJI OSMO 360 WEBサイトより引用)
ドローン世界最大手のDJIが長年培ってきたイメージング技術を360°カメラに応用し、業界トップレベルの画質と機能を実現している。建設現場での高品質な記録・ドキュメント作成を重視する企業に最適だ。
Osmo 360の最大の特徴は、360°撮影用に特別設計されたスクエアHDRイメージセンサー(1インチ)を搭載していることだ。
従来の1インチ長方形センサーの未使用エリアを取り除くことで、センサー利用率が25%向上。超コンパクトなボディながら、360°カメラ市場でトップレベルの極めて鮮明な映像を撮影できる。
(画像元:DJI OSMO 360 WEBサイトより引用)
(画像元:DJI OSMO 360 WEBサイトより引用)
Osmo 360は、360°カメラとして初めて8K/50fps 360°動画撮影に対応。さらに8K/30fpsで業界最長の100分連続撮影が可能だ。これは競合製品を大きく凌駕する性能で、長時間の工事記録や定点観測に理想的である。
(画像元:DJI OSMO 360 WEBサイトより引用)
インテリジェント撮影機能
価格帯: 6~8万円程度 / 製品サイトはこちら
アクションカメラで世界的に有名なGoProが提供する360°カメラだ。360°撮影モードとHEROモード(通常のアクションカメラモード)を切り替えて使える点が最大の特徴で、1台で2つの役割を果たせる。建設現場でのアクティブな撮影や、動きのある作業記録に適している。
(画像元:GoPro MAX WEBサイトより引用)
(画像元:GoPro MAX WEBサイトより引用)
(画像元:GoPro MAX WEBサイトより引用)
現場をまるごと記録できるこの技術は、現場管理の方法を大きく変えつつある。しかし、「実際に何に使えるの?」「どんなメリットがあるの?」と疑問を持つ方も多いだろう。
今回は、360°カメラが土木・建設業界でどのように役立つのか、具体的な活用シーンから導入のポイントまで、わかりやすく解説していく。
そもそも、360°カメラとは?
360°カメラ(360度カメラ)は、カメラの周囲360度すべての方向を一度に撮影できるカメラだ。
通常のカメラが「一方向」を切り取るのに対し、360°カメラは「全方位」を記録できる。
(画像はイメージ/画像元:Shutterstockより)撮影された画像や動画は、専用のビューアーやVRゴーグルで自由に視点を変えながら見ることができる。まるでその場にいるかのような体験が可能だ。
《 360°カメラの特徴 》
- 全方位を一度に記録:撮影者の前後左右上下、すべてが記録される
- あとから視点を変更可能:撮影後に気になる箇所を確認できる
- 没入感のある体験:VR技術と組み合わせて臨場感のある確認が可能
- 撮影の手間が少ない:複数アングルを撮る必要がなく、一度で完了
なぜ今、360°カメラが建設業界で注目されているのか?
土木・建設業界では、以下のような課題を抱えている。
- 人手不足:熟練技術者の減少と若手の確保難
- 働き方改革:長時間労働の是正、効率化の必要性
- 遠隔管理のニーズ:複数現場の同時管理、移動時間の削減
- 記録・報告業務の負担:写真撮影や報告書作成に時間がかかる
- 情報共有の課題:現場を見ていない関係者への状況説明が困難
360°カメラは、これらの課題を解決する有効なツールとして注目されている。i-Construction(アイ・コンストラクション)やDX推進の文脈でも、積極的な活用が期待されているのだ。
土木・建設業界での具体的な活用シーンは?
1. 現場の記録・進捗管理
従来の課題:現場写真を撮る際、「どのアングルから撮ればいいか」を考え、複数方向から何枚も撮影する必要があった。また、あとから「別の角度も撮っておけばよかった」と後悔することも多い。
(画像はイメージ/画像元:Shutterstockより)360°カメラの活用:一度のシャッターで全方位を記録できるため、撮影の手間が大幅に削減される。あとから必要な角度を自由に確認できるため、撮り直しの心配もない。
《 具体的な利用イメージ 》
- 日々の進捗を定点で360°撮影し、時系列で比較
- 工事前・工事中・工事後の状態を全方位で記録
- 重要な工程を360°動画で記録し、施工手順を確認
2. 安全管理・危険箇所の確認
従来の課題:現場の安全パトロールでは、チェックリストに沿って確認するが、見落としが発生しやすい。また、高所や危険箇所の確認には時間とリスクが伴う。
360°カメラの活用:現場全体を360°撮影することで、オフィスや遠隔地からでも詳細に安全確認ができる。見落としがちな足元や高所も、あとから自由に視点を変えて確認可能だ。
《 具体的な利用イメージ 》
- 日々の安全パトロールを360°カメラで記録
- 危険箇所を360°撮影し、対策会議で全員が同じ視点で議論
- 足場や仮設構造物を360°で記録し、安全性を多角的に確認
- ヒヤリハット発生箇所を360°撮影し、再発防止に活用
3. 出来形管理・品質管理
従来の課題:出来形の確認には、多数の測定点と写真が必要で、膨大な時間がかかる。また、検査時に「この部分も撮っておいてほしかった」と指摘されることもある。
360°カメラの活用:施工完了時に360°撮影しておけば、検査時に任意の箇所を確認できる。測量アプリやBIM/CIMデータと組み合わせることで、より高度な品質管理も可能だ。
4. 遠隔での現場確認
従来の課題:複数現場を管理する場合、移動時間が膨大になる。また、本社や設計事務所にいる関係者が現場の状況を把握しにくい。
(画像元:RICOH Remote Field WEBサイトより引用)360°カメラの活用:現場で撮影した360°画像・動画を共有すれば、遠隔地からでもリアルな現場確認が可能になる。移動時間を削減し、迅速な意思決定につながる。
《 具体的な利用イメージ 》
- 定期的に360°撮影し、本社の技術者が遠隔から進捗確認
- 設計変更の検討時に、360°画像を見ながらオンライン会議
- 発注者への中間報告を360°画像・動画で実施
- 複数現場の状況を360°画像で一元管理
5. BIM/CIMとの連携
従来の課題:3Dモデルと実際の現場の状況を照合するのが難しい。図面と現場の整合性確認に時間がかかる。
360°カメラの活用:360°画像にBIM/CIMデータを重ね合わせることで、設計と現況のズレを視覚的に把握できる。施工管理の精度が向上する。
《 具体的な利用イメージ 》
- 360°画像上にBIMモデルを重ねて、設計通りの施工を確認
- 竣工時の360°データとCIMモデルを紐づけて、維持管理に活用
- 点群データと360°画像を組み合わせて、より正確な現況把握
6. 教育・研修・技術継承
従来の課題:現場経験の少ない若手技術者への教育が難しい。ベテランの技術やノウハウを言葉や図面だけで伝えるのには限界がある。
360°カメラの活用:過去の施工事例を360°で記録しておけば、いつでもどこでも現場を「体験」できる。VRゴーグルを使えば、さらに臨場感のある研修が可能だ。
《 具体的な利用イメージ 》
- 優れた施工事例を360°で記録し、社内教育に活用
- 危険作業や重要工程を360°動画で記録し、安全教育に使用
- ベテラン技術者の現場判断を360°で記録し、ノウハウを可視化
- 新入社員研修でVR技術と組み合わせた現場体験
7. 自社のマーケティングや広報活動
従来の課題:完成した構造物の魅力を、平面的な写真だけでは十分に伝えきれない。
(画像はイメージ/画像元:Shutterstockより)360°カメラの活用:完成した橋梁やトンネル、建築物を360°で撮影し、Webサイトやプレゼンで活用することで、より魅力的な情報発信ができる。
《 具体的な利用イメージ 》
- 構造物や建物を360°撮影し、会社のWebサイトに掲載
- プレゼンやセミナーで過去の施工実績を360°で紹介
- 地域住民への説明会で、完成イメージを360°VRで体験してもらう
- 採用活動で現場の雰囲気を360°で伝え、求職者の理解を促進
360°カメラ導入の5つのメリット
1. 撮影時間の大幅削減
従来は複数アングルから何枚も撮影する必要があったが、360°カメラなら一度で完了する。撮影の手間が減り、現場作業に集中できる。
2. 記録の網羅性向上
全方位を記録するため、「撮り忘れ」「撮り漏れ」がなくなる。あとから必要な情報を確認できる安心感がある。
3. コミュニケーションの質向上
現場を見ていない関係者とも、360°画像・動画を共有することで、同じ視点で議論できる。認識のズレが減り、意思決定が速くなる。
4. 移動時間・コストの削減
遠隔から現場確認ができるため、移動回数を減らせる。複数現場を効率的に管理でき、働き方改革にもつながる。
5. データ資産としての価値
360°で記録した現場データは、将来の類似工事や教育研修、トラブル対応など、さまざまな場面で活用できる貴重な資産になる。
"カメラ+クラウドサービス"で初めてDXになる
360°カメラは、それ単体でも便利だが、本当の意味で現場DXにつながるのは「クラウドサービス」とセットで運用したときである。
なぜクラウドが必要なのか?
360°画像は容量が大きく、撮影枚数も増えがちだ。
ローカルのフォルダに「2025_11_現場A」「現場B_写真」……と保存しているだけでは、
- いつ・どの場所・どのフロアで撮ったのかがわかりにくい
- 他拠点や発注者と共有しづらい
- 過去データが埋もれていく
といった課題が出てくる。そこで、建設向けの360°写真管理クラウド(各製品のプラットフォームやクラウドサービス)を使うと、
- 図面上のポイントやBIMモデルに撮影位置を紐づける
- カレンダーや工程表と"いつの状態か"を紐づける
- ブラウザでURLを開くだけで、誰でも360°ビューを確認できる
- AI解析(危険箇所検出・PPE確認など)と組み合わせて使える
といった、業務フローとしてのDXにつながる。
現実的な導入ステップ
まずはカメラ単体で運用 → 進捗管理・報告に使い、メリットを体感する。その後、クラウド連携を試す → 1つの現場で、360°写真+図面とBIM/CIMモデルを紐づけて管理・共有。
「写真管理」から「デジタルツイン」へ → 複数現場・複数年度を通して、資産として使えるデータベースに育てていく。
360°カメラは「撮るための道具」、 クラウドサービスは「活かすための器」と考えると、役割がはっきりする。
建設業界向けオススメ「360°カメラ」4選!
建設現場で使う360°カメラを選ぶ際は、以下のポイントを確認しよう。
《 360°カメラを選ぶ際のポイント 》
- 耐久性:防水・防塵性能(IP規格)、耐衝撃性
- 画質:高解像度(4K以上が望ましい)
- 操作性:現場で手袋をつけたまま操作できるか
- バッテリー:長時間撮影に耐えられるか
- データ管理:クラウド連携、データ転送のしやすさ
- 価格:予算に合うか、コストパフォーマンスは良いか
- 業務ソフトとの連携:OpenSpace、DroneDeploy、Cupixなど主要プラットフォームとの互換性
1. Insta360 X5 建設キット
価格帯: 10万円前後(建設キット)/ 製品サイトはこちら
世界で最も売れている360°カメラブランドInsta360の最新フラッグシップモデルだ。建設現場向けに特別にパッケージされた「建設キット」が用意されており、届いたその日から現場で使える充実のセット内容となっている。
《 キット内容 》
- Insta360 X5 本体
- 114cm見えない自撮り棒
- ハードハットカメラマウント
- 256GB microSDカード
圧倒的な画質を実現
X5の最大の特徴は、その圧倒的な画質である。8K30fpsでの360°動画撮影が可能で、11Kから8Kへのスーパーサンプリング処理により驚異的な解像度を実現。
(画像元:Insta360 X5 WEBサイトより引用)大型1/1.28インチセンサーとトリプルAIチップの組み合わせにより、低照度環境でも鮮明な撮影が可能だ。「PureVideo」と呼ばれるAI低照度モードを使えば、夜間や暗所でも映画のような美しい映像を撮影できる。
建設現場に最適な機能
本モデルが建設業界で特に注目されているのは、現場での使用を前提とした機能が充実しているためだ。
- 5.7K HDRタイムラプス:露出適応が速くモーションブラーを軽減。工事の進捗記録に最適
- ハードハットマウント:ヘルメットに装着して手を使わずに撮影。届きにくい場所や頭上の死角も記録可能
- 114cm見えない自撮り棒:高所や広範囲の撮影が容易。映像に棒が映らない特殊設計
- 業務ソフトとの連携:OpenSpace、DroneDeploy、Cupix、FARO Sphere XG、WhiteHelmet、Reconstruct、SoftRoidなど主要プラットフォームと互換性あり
(画像元:Insta360 X5 WEBサイトより引用)現場の過酷な環境にも耐える耐久性
建設現場では機材の耐久性が何よりも重要だ。X5はレンズ交換式デザインを採用しており、万が一レンズが破損してもその場で交換できる。修理に出す必要がなく、作業の中断を最小限に抑えられる。
(画像元:Insta360 X5 WEBサイトより引用)- レンズ交換式デザイン:破損時も現場で即座に対応可能
- 光学式ウルトラハードフィルム:X4比100%の耐落下性向上。鍵やコインなどの金属による傷に強い
- IP68防水性能:最大15メートルの水深まで、専用ハウジングなしで使用可能
長時間撮影と使いやすさ
2400mAhの大容量バッテリーを搭載し、5.7K24fps耐久モードで最大185~208分の連続撮影が可能。急速充電にも対応しており、わずか20分で撮影を再開できる。
(画像元:Insta360 X5 WEBサイトより引用)操作面では、「InstaFrame」モードで360°映像と同時にフラット動画を生成でき、SNSやレポートへの即時共有が容易だ。
AI駆動型リフレーミング機能により、撮影後に最適なアングルを自動選択できる。FlowState手ブレ補正で、どんな環境でも滑らかな映像が撮影できる。
2. RICOH THETA X
価格帯: 10万円程度 / 製品サイトはこちら
2022年5月発売のRICOH THETAシリーズのアドバンスドモデルで、THETAシリーズで初めて2.25型大型タッチパネルを搭載した画期的なモデルだ。
(画像元:RICOH THETA X WEBサイトより引用)スマートフォンを使わずに、本体だけでほぼすべての操作・設定・確認ができるようになり、建設現場での実用性が大幅に向上している。
本体素材には、マグネシウム合金を採用。表面は梨地仕上げで、色はメタリックなダークグレー。業務使用に耐える堅牢性と、高級感のある質感を両立しており、大型のシャッターボタンは、手袋をしていても押しやすい。
本体だけで完結する操作性:2.25型タッチパネル搭載
THETA Xの最大の特徴は、THETAシリーズ初となる2.25型大型LCDタッチパネルの搭載だ。これにより、スマートフォンと接続しなくても、カメラ本体だけでほぼすべての操作が可能になった。
《 タッチパネルでできること 》
- ライブビュー表示:撮影前に構図を確認。スワイプで360°表示も可能
- 撮影パラメータ設定:ISO感度、シャッター速度、ホワイトバランスなど
- 撮影設定変更:画質モード(11K/5.5K)、HDR、連写などの切り替え
- カメラ設定:Wi-Fi、Bluetooth、日時設定など
- プラグイン選択:各種プラグインの起動
- 撮影画像の再生:その場で撮影結果を確認
さらに、THETA Xは、CMOSイメージセンサー、メインプロセッサー、レンズユニットをすべて一新。約4,800万画素相当の新規センサー搭載により、出力画素で最大約6,000万画素に相当する高精細な360°静止画撮影が可能だ。
《 2つの画質モード 》
- 11K(約6,000万画素相当):明るい室内や屋外での最高画質撮影
- 5.5K(約1,500万画素相当):薄暗い環境や効率重視の撮影
《 動画撮影モード 》
- 5.7K 30fps:最高画質の360°動画(Wi-Fiオフ時のみ)
- 4K 60fps:滑らかな動き重視の動画(Wi-Fiオフ時のみ)
- 4K 30fps:標準的な高画質動画(デフォルト)
- 2K 30fps:ファイルサイズを抑えた動画
建設現場に最適化された実用性
- タイムシフト撮影(標準装備): 従来はプラグインだった機能が標準装備された。フロントとリアのレンズの撮影を時間差で行うことで、撮影者が映り込むことを回避できる。近くに隠れる場所がない現場で、空間だけを撮影したい時に有用だ。
- 連写モード: 1秒間に20枚(5.5K静止画撮影時)の連続撮影が可能。動きのある工程や、ベストな瞬間を確実に捉えたい場合に便利。
- GPS内蔵: THETAシリーズで初めてGPS機能を内蔵。A-GPS(補助GPS)機能と併せて高精度な位置情報を取得できる。複数現場の画像管理や、図面上へのマッピングに活用できる。
- バッテリー・メディア交換可能:ユーザーからの長年の要望に応え、バッテリーとmicroSDXCカードが交換可能に。
- 簡単なスマートフォン接続: Bluetooth接続により、SSIDを入力せずとも無線LANと接続可能。従来よりも接続が簡単になった。
《 建設現場での想定活用シーン 》
- 日常の進捗管理
本体タッチパネルで撮影→その場で確認→必要に応じて設定変更して再撮影/ GPSにより撮影位置を自動記録 / 5.5Kモードで効率よく大量撮影 - 明るい現場での高品質記録
11Kモードで竣工写真や重要記録を超高精細撮影 / HDR機能で明暗差の大きいシーンも自然に - 動画記録
5.7K 30fpsで高品質な工事記録動画 / 据え置き撮影でタイムラプス作成 - 効率的なワークフロー
カメラ内リアルタイムステッチングで、撮影後すぐにファイル利用可能 / PC処理不要で時間短縮
THETA 「X」と前モデル「Z1」との比較
《 THETA Xを選ぶべき理由 》
《 THETA Z1を選ぶべき理由 》
- 本体タッチパネルで直感的な操作・確認がしたい
- 撮影結果をその場で確認して判断したい
- JPEGで効率よく撮影する用途が多い
- 最大11K(約6,000万画素)の高解像度が必要
- バッテリー・メディア交換が必要
- GPS位置情報が必要
《 THETA Z1を選ぶべき理由 》
- RAW撮影による後処理の柔軟性が必要
- 1型センサーによる最高画質・低ノイズが必要
- 暗所撮影が多い(ISO6400まで対応)
- 3段階の絞りコントロールが必要
3. DJI Osmo 360
価格帯: 6万円〜9万円 / 製品サイトはこちら
2025年7月発表のDJI初の360°カメラで、360°カメラ市場に革新をもたらす次世代モデルだ。
(画像元:DJI OSMO 360 WEBサイトより引用)ドローン世界最大手のDJIが長年培ってきたイメージング技術を360°カメラに応用し、業界トップレベルの画質と機能を実現している。建設現場での高品質な記録・ドキュメント作成を重視する企業に最適だ。
《 スタンダードコンボ内容 》
《 アドベンチャーコンボ内容 》
上記スタンダードコンボ全内容に加えて、
- Osmo 360本体
- Osmo Action エクストリームバッテリーPlus
- Osmo 360 プロテクティブポーチ
- Osmo レンズクリーニングクロス
- USB-C – USB-Cケーブル (USB3.1)
- Osmo 360 ラバーレンズプロテクター
《 アドベンチャーコンボ内容 》
上記スタンダードコンボ全内容に加えて、
- Osmo Action 多機能バッテリーケース 2
- Osmoクイックリリース式調整型アダプターマウント
- 1.2m インビジブル セルフィー スティック
業界最高峰の1インチ360°イメージング
Osmo 360の最大の特徴は、360°撮影用に特別設計されたスクエアHDRイメージセンサー(1インチ)を搭載していることだ。
従来の1インチ長方形センサーの未使用エリアを取り除くことで、センサー利用率が25%向上。超コンパクトなボディながら、360°カメラ市場でトップレベルの極めて鮮明な映像を撮影できる。
(画像元:DJI OSMO 360 WEBサイトより引用)画質面での革新技術
(画像元:DJI OSMO 360 WEBサイトより引用)- 大型2.4μmピクセル:業界標準の1.2μmの2倍。ディテールをより鮮明に捉え、ノイズを大幅に抑制
- 13.5ストップのダイナミックレンジ:高コントラストシーンでもディテールを失わない
- f/1.9の明るい絞り値:光の取り込み量が大幅に増加し、低照度環境でも優れた撮影性能を発揮
- 低照度性能:薄暗い現場や日の出・日の入り時でもクリアで鮮やかな映像
ネイティブ8K 360°動画撮影の先駆者
Osmo 360は、360°カメラとして初めて8K/50fps 360°動画撮影に対応。さらに8K/30fpsで業界最長の100分連続撮影が可能だ。これは競合製品を大きく凌駕する性能で、長時間の工事記録や定点観測に理想的である。
(画像元:DJI OSMO 360 WEBサイトより引用)- 8K/50fps 360°撮影:360°カメラの動画スペックの新基準
- 8K/30fps 100分連続撮影:長時間の現場記録に対応
- 4K/100fps 360°撮影:高フレームレートで瞬間的なディテールを捉える
- 最大4倍スローモーション:重要な工程を詳細に記録
- 高性能のシングルレンズモード:5K/60fps フラット動画(155°超広角での高画質撮影)/ 4K/120fps ブーストビデオ:170°視野角の滑らかな映像
インテリジェント撮影機能
- 120MP 360°写真:超高精細の静止画でディテールまで鮮明に記録
- インビジブル セルフィースティック:編集なしで自撮り棒が動画から消え、第三者視点の映像を実現
- インテリジェントトラッキング:人、車両、重機などを自動追跡
- フリーフレーミング:360°映像の構図をモーションコントロールで自由に調整
建設現場に最適化された実用性
- 極寒動作保証:-20°Cの環境下でも1.5時間以上の撮影が可能。冬季の高地工事や寒冷地での使用に対応
- 105GBストレージ内蔵:外部メモリーカードなしでも膨大な撮影データを保存可能
- 急速充電対応:わずか12分で50%まで充電。充電待機時間を最小化
- 超軽量設計:わずか183gで持ち運びや長時間撮影の負担を軽減
- バッテリー駆動時間の拡張性:標準バッテリーで8K/30fps撮影時100分/Osmo 360 バッテリー延長ロッド(別売)使用で最大180分の駆動時間延長が可能
- HorizonSteady:カメラがどんなに回転しても映像は常に水平を維持
- RockSteady 3.0:シングルレンズモードで手ブレを効果的に軽減し、激しい動きでも安定した映像
- ジェスチャー操作:手のひらのジェスチャーで撮影を開始・停止
- 音声操作:音声コマンドでハンズフリー撮影。両手がふさがる作業中でも操作可能
《 建設現場での想定活用シーン 》
- 長時間の工事進捗記録:8K/30fpsで100分連続撮影。朝礼から作業完了まで通しで記録
- 冬季・高地工事の記録:-20°Cの極寒環境でも安定動作
- 薄暗い現場での撮影:トンネル内部、地下工事、早朝・夕方の作業も鮮明に記録
- 高品質な竣工写真・動画:120MP超高精細写真で納品資料やプレゼンテーションに活用
- 重機作業の安全記録:インテリジェントトラッキングで重機を自動追跡
- ドローン的な俯瞰映像:インビジブルセルフィースティックで空撮風の映像を地上から撮影
- 音声解説付き現場ツアー:高品質オーディオで臨場感あふれる説明動画を作成
4.GoPro MAX
価格帯: 6~8万円程度 / 製品サイトはこちら
アクションカメラで世界的に有名なGoProが提供する360°カメラだ。360°撮影モードとHEROモード(通常のアクションカメラモード)を切り替えて使える点が最大の特徴で、1台で2つの役割を果たせる。建設現場でのアクティブな撮影や、動きのある作業記録に適している。
(画像元:GoPro MAX WEBサイトより引用)デュアルモード撮影
- 360°モード:6K30fpsでの全方位撮影(5.6K)
- HEROモード:シングルレンズによるフルHD@60fps撮影
(画像元:GoPro MAX WEBサイトより引用)強力な手ブレ補正とオーディオ機能
- Max HyperSmooth:GoPro史上最高にスムーズなビデオを実現する手ブレ補正機能。ジンバルなしでも安定した映像が撮影可能
- 水平維持機構:カメラをどの角度で持っても水平を保つ画期的な機能
- 6つの内蔵マイク:360°オーディオ、指向性オーディオ、ウィンドノイズ低減を実現
- ショットガンマイク:声だけをクリアに拾い、ノイズを抑制
建設現場での実用性
(画像元:GoPro MAX WEBサイトより引用)- 5m防水:水中や雨天での使用が可能
- タッチスクリーン搭載:スマホ感覚で直感的に操作できる2インチカラーモニター
- 音声コントロール:「GoPro ビデオスタート」などの音声コマンドで撮影開始。両手がふさがっている状態でも操作可能
- コンパクトボディ:高さ69mm、幅64mm、奥行き24mmで持ち運びやすい
- PowerPano(パワーパノ):270°パノラマ写真をワンクリックで撮影。歪みのない広範囲の記録が可能
- TimeWarp(タイムワープ):360°モードとHEROモードでスムーズなタイムラプスビデオを作成
- 20MP静止画撮影:高画質な写真撮影も可能
注意点
- HEROモードは4K撮影に非対応(フルHD@60fpsまで)
- 専用の編集アプリ(GoPro Quik)が必要
- 360°動画のファイル形式が特殊(.360形式)で一般的な動画編集ソフトでは直接編集不可
WRITTEN by
建設土木のICT活用など、
デジコンからの最新情報をメールでお届けします
(画像元:
(画像元: