コラム・特集
平田 佳子 2020.9.16

建設業界の新しい未来をつくる、スタートアップの役割。


日本の建設業界も、スタートアップが続々進出


2015年頃からアメリカを中心に加速してきた、IT技術で建設業界を革新させる動き「Con-Teck」(以下、コンテック。Construction 〜建設〜+Technology〜テクノロジー〜の造語)。スタートアップ(革新的な技術・サービスで急成長を狙う企業)が活躍し、ロボットやAIVRといった最先端のIT技術を建設現場に生かすなど、建設業界のイノベーションに貢献してきた。

一方、日本ではどうか。建設業界は50兆円を超える巨大市場ながらも、業界の複雑な構造や旧態依然とした体質などから新たな企業が参入しにくく、コンテックの動きはアメリカなどに遅れをとっていた。しかし、近年は「アイ・コンストラクション」(国土交通省による建設業界のICTへ化の政策)の後押しもあり、ITに強い建設スタートアップの参入が続々と増えている。


実際に、国内のスタートアップの資金調達額は右肩上がりに大きく伸びており(図1)、億単位の資金を調達する建設スタートアップが相次ぐ。また、2019年には総合建設業の「株式会社カシワバラ・コーポレーション」が建設専門のベンチャーキャピタルファンド「JAPAN CON-TECH FUND」を開設。50億円を投資し、コンテックの促進をめざしている。

新しい発想・技術で業界の課題を解決し、成長を加速


今や、大手ゼネコンや建設会社が、スタートアップと協働したり出資したりするケースも多い。安藤ハザマ、飛鳥建設、竹中工務店などは「アクセラレータープログラム」(大手企業が新興企業を募集し、出資・支援しながら事業共創をめざすプログラム)を行い、選抜されたスタートアップとともに新事業の創出に力を注いでいる。


なぜ、ここまでスタートアップに期待が高まっているのだろうか。そもそも建設業界は慢性的な人手不足で現場の技術者の高齢化も進み、2025年には約35万人~90万人もの技術者が不足すると予測されている。

従来の3Kのイメージが根強く、新しく建設業界に入ってくる若者が少ないことも人手不足の要因だ。そのため、業務の効率化や省人化、生産性の向上が差し迫った課題になっていた。


そんな中で、従来のやり方では思いつかない発想や視点で、最新のIT技術を駆使して様々な課題を解決へと導くスタートアップ。大企業のように大規模な組織ではないからこそ、スピーディーかつ柔軟に対応できるのも強みだ。大手建設業者にとっても、スタートアップとタッグを組むことで事業の強化や新しいサービスの創出ができるため、大きな成長が期待できる。

建設スタートアップの多様なフィールド


では、建設スタートアップでは具体的にどのような技術・サービスがあるのか、主な例を紹介する。

【建設スタートアップの技術・サービス例】

   ドローンやレーザーの開発や測量点検
  • プロジェクトマネジメント
        企画・設計・施工までの工事全体の過程を見える化
  • センシング・IoT
        センサーなどで現場の様々な情報をデータ化
  • マーケットプレイス
        インターネット上で建機・建材などを売買
  • マッチングプラットフォーム
        工事の受発注や現場と働く人などをマッチング

この先も新しい企業の参入や技術の進化、業界の課題に応じて、さらにフィールドは広がっていくだろう。そして、スタートアップの活躍がアイ・コンストラクションの促進や建設業界の革新に直結していくに違いない。

デジコンでは、次回から今注目の建設スタートアップを紹介する。新しい技術や視点をもつ企業を続々取材していく予定なので、ぜひご期待を。

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WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。

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