県土の約7割を森林が占める山形県では、日本海側の海岸林から標高2,000mを超える山岳地帯まで、市街地や住宅のある平野や盆地を包むように森林が分布している。特に、天然のブナ林は日本一の面積を誇る広さだ。
また、県東部にある奥羽山脈などに源流を持つ一級河川の最上川は、単一の県のみを流れる河川として日本一の規模で、日本三大急流のひとつにも数えられる。
支流と本流をあわせて県土の8割近くを流域に持つとあって、県内には令和5年4月時点で2,509橋の道路橋が存在する。
新庄市を中心とする最上地域をはじめ、積雪が多いエリアは夏季には大雨となることも多く、雪対策に加え、河川の氾濫などを防ぐための安定したインフラ整備も必須な環境だ。
山形県・県土整備部では、平成28年度からi-Constructionの取組みを推進しており、2023年には、建設現場での生産性向上に向けて、「山形県建設DX推進戦略(加速化プラン)」を策定した。
さらに、県から認定を受けた企業が工事受注企業に対して技術支援を行う「やまがたICT支援隊」、県立産業技術短期大学校への土木エンジニアリング科の設立、女性技術者と建設業に興味を持つ学生が意見交換する「けんせつ女子ツアー&カフェ」などの取り組みも実施中だ。
本記事では、そんな山形県の総合土木・建設業界をリードする15社を紹介する。
各社の歴史、特徴的な技術、代表的なプロジェクト、そして最新の取り組みなどを詳しく見ていこう。
那須建設は、1957年に建設業と砂利採取販売業を個人創業したことからはじまった総合建設会社だ。
県内の総合建設業者売上高ランキングでは、2017年以来常に4位以上にランクインする山形県を代表する企業のひとつになっている。
長井市の本社に加え、仙台事務所、新潟、福島、東京、熊本に支店を持つほか、関連企業も多数持つ規模感のある事業体制が特徴だ。
土木部では、橋梁工事や道路工事、河川堤防工事、治山工事などのほか、鉄道事業部も設置し関連工事を手がけている。特に震災や水害時には、本社のある長井市を中心に、機動力を活かした対応を行う。
建築部では、消防庁舎・防災センター、病院、学校、老人ホームなどの公共性の高い建築物をはじめ、工場やマンション、店舗などの建設も行っている。
Youtubeのオフィシャルチャンネルを開設し、社員インタビューや説明会の様子を配信するなど、採用活動にも力を注いでいる。
食事や宿泊施設まで用意されたインターンシップでは、ドローンによる空撮や最新管理ソフトの模擬体験を行い、ものづくりの現場を体感できるプログラムを提供している。
ICT施工にも力を入れて取り組んでおり、2024年10月には、東京大学松尾研発のスタートアップARCRAとのタッグにより、AI技術を活用した建設現場の写真・工程管理アプリ「ConPhoto Box」の共同開発をスタートさせている。
明治元年に創業した升川建設は、山形県の建設業界で随一の歴史を持つ。
例えば戦後、山形県下の代表建設業者として、駐留軍の施設建設のための建築工事、土木工事を行った実績もある。
一世紀以上にわたって県内の土木・建設業の礎を築いてきた企業だ。
土木事業においては、高速道路、ダム、都市開発、上下水道、公園などの工事を担い、ノウハウの蓄積を続けてきた。
また、舗装工事を行う事業部を置いていることが特徴のひとつで、自社アルファルトプラントを保有し、国道や東北中央自動車道などの舗装を数多く手がけている。
1916年に創業、1944年に株式会社化した山形建設は、企画開発から設計、施工、監理、リフォーム事業に至るまで、幅広い分野のエキスパートが集まる総合建設業者だ。
土木・舗装部門のほか、建築・ライフ部門では、山形城跡二ノ丸東大手門、国の登録有形文化財に指定されている山形市立第一小学校旧校舎など、建築的価値の高い建造物から、公共施設、医療施設、商業施設などまで手がけている。
また、PPP・PFI事業も複数実施しており、特に県営住宅鈴川団地移転建替等工事では、NPO法人日本PFI協会のPFI大賞で特別賞を受賞している。
1946年の創業以来、地元・酒田市で総合建設業を営んできた丸高は、ものづくりとしての建設業の先にある“豊かなまちづくり”を目指している。
アセット事業として、酒田まちなかプロジェクト株式会社、一般社団法人 元気インターナショナルや行政と連携しながら、空き家の有効活用などを通して酒田市の地域活性に取り組んでいる。
一般住宅の新築・リフォームから公共施設まで手がける建築事業では、“クオリティは高く、コストは低く”を掲げ、企画から設計、施工まで自社内で完結させ、維持管理のアフターフォローまで行っている。
土木部門では、インフラ整備をはじめ、道路や下水道などの工事、港湾・漁港工事も請け負っており、国土交通省、林野庁、山形県から多数の表彰歴を持つ。
さらに、注文住宅事業、リフォーム事業も行っており、幅広い角度からまちづくりを形にしている企業だ。
「Satisfaction-満足」「Symphony-調和」「Safety-安全」の「3S」を基本理念とする新庄・鈴木・柴田組は、1949年に新庄建設、1951年に鈴木建設、1961年に柴田組が設立され、2012年に3社が集合する形で生まれた企業だ。
2023年6月末時点で年商は63億8000万円と、山形県を代表する規模の実績を持つ。
土木、建築、舗装の各事業をはじめ、運輸、住宅、不動産、断熱、サイレントパイラー、解体工事・リサイクルと幅広い事業を展開していることが特徴だ。
土木事業では、下請けに頼らない自社直営班での施工が可能で、災害関連道路(三陸道)などの多数の施工実績などがある。
若手職員の採用にも力を注いでおり、ホームページで先輩社員からのメッセージを掲載したり、Youtubeで現場での仕事に密着した動画を配信するなど、建設業界の魅力を精力的に発信していることも特徴だ。
1962年に設立された日本地下水開発は、山形市にある本社に加え、青森県から島根県まで本州各地に営業所を持つ。
道路の融雪・消雪を中心とした克雪事業、温泉源開発を中心とした資源開発事業、地下水熱・地中熱を利用する冷暖房システムの設計・施工・維持管理などを行う環境エネルギー事業、地滑り対策や防災井戸の整備を行う防災関連事業、そして地盤情報の把握・提供とコンサルティングを行う地盤コンサルタント事業を展開している。
施工実績としては、地中熱を利用したヒートポンプシステムなどによる無散水消融雪施設の施工が山形県内を筆頭に全国で165.3万㎡にも及ぶ。
また、克雪・利雪といった寒地技術などを活かし、産学官の連携による研究開発にも取り組んでいる。
沼田建設は、1930年の創業以来、新庄・最上エリアに密着した事業を行っている総合建設会社だ。災害復旧工事、道路・駐車場などの舗装工事、一般住宅や学校の建築も手がけている。
特に土木事業では、保有する2つの特許技術を活かして数々の実績を重ねている。
製紙工場より排出される副産物を加工した「パルフォース」を混合した気泡モルタル工法「パルフォースモルタル工法」は、旧残置管・暗渠の閉塞材、水路改修工事の中込材などに使用される。
下水道工事で活躍する「推進工法」は、地表を掘削することなく地中を掘削貫通する非開削工法のひとつで、既製の管を地中に押し込んでいくため、工事公害の低減や市民生活への影響の抑止などに優れた効果を発揮するとされている。
1927年に大井組として創業、1957年に株式会社化した大井建設は、戦後まもない昭和20年代後半に最新技術であった「伊藤式護岸工法」を採用して河川改修工事を請け負ったり、山形県内でもいち早くアメリカ製のブルドーザーを購入するなど、古くから新しい技術の導入を積極的に行ってきた。
地元高校生などを対象に体験型のインターンシップを実施しており、測量実習やドローン、建設機械の操縦など、土木と建築を織り交ぜた就業体験を提供している。
総合建築業を行う佐藤工務は1954年に創業し、2013年には黄綬褒章授与を受けるなど、確かな実績と評価を積み重ねてきた。
日本下水道事業団、東北農政局、東北地方整備局、山形県、鶴岡市などの官公庁のほか、医療法人、民間企業などを幅広く取引先に持つ。
施工実績として、山形県内各地での橋梁下部工工事、河川整備補助事業の湯尻川護岸及び排水樋門工事、鶴岡市ごみ焼却場施設整備運営事業建設工事、鶴岡工業高等学校体育館改築工事などがある。
1949年に設立され、令和元年に創業100周年を迎えた林建設工業は、建設事業、土木事業を手がける企業だ。
1976年に酒田市街地で発生した火災「酒田大火」で瓦礫の撤去、解体作業、仮設住宅・店舗建築などの復旧活動に取り組んだ経験、そして2011年の東日本大震災での復旧活動などを通して得た教訓や実感をもとに、「地域社会に安心と快適を」を企業理念として定め、日々事業に取り組んでいる。
起重機船やコンクリートミキサー船を自社で所有しており、山形県唯一の重要港湾・国際貿易港である酒田港の整備、漁港・海岸の工事の施工も行っている。
新庄砕石工業所は、1967年に骨材生産販売から着手し、翌年には有限会社化、さらにその翌年には土木建築業の請負と施工などをはじめた。現在では、国土交通省を中心とした公共事業を行っている。
特徴的なプロジェクトとして、建設3Dプリンターの開発を手掛ける企業との協力がある。
秋田県と山形県新庄市を結ぶ国道13号の道路整備事業の一環で、落石防護柵の重力式擁壁の埋設型枠を3Dプリンターで制作し、従来工法と比べて工期の約4割短縮を実現した。制作は入社1~3年目の若手社員が担当し、工事は2024年1月に完了し話題を呼んだ。
また、既設の石積みに石積み専用充填材を注入する「モルダム工法」の特許を取得しており、大雨や地震災害の対策として石積の排水性を補強する施工に取り組んでいる。
山形県鶴岡市に拠点を構える鶴岡建設は、1944年の設立以来、総合建設業として地域の発展を支えてきた。
「DESIGNING 提案力のTSURUKEN」をキャッチフレーズに、建築における質の高いデザインの提供を重視していることが特徴だ。社内外のクリエイティブ体制を基盤として、プロジェクトごとに意匠設計チームを編成し、設計思想に基づいた提案を行っている。
実績として、いずれも日本設計が意匠面を担当した羽黒高等学校新校舎、鶴岡市立加茂水族館などがある。
土木事業では、鶴岡市に留まらず、山形県内の道路改良工事、防雪工事などを多数手がけている。
2008年に創業100周年を迎えた渋谷建設は、その歴史を振り返ると、米の増産を目的とした水路建設、最上川の水害対策など、山形県の暮らしを支える公共土木工事を担い続けている。
国交省がi-Constructionを提唱した2016年から本格的にICTに取り組んでおり、工務管理部にICT推進室を設置。点群データや3次元設計データの作成、ドローンによる起工測量、3Dスキャナーによる出来形計測などを活発に進めている。
2024年には、山形県内の建設産業関係者を対象とした県開催の説明会で「ICT技術の内製化と人材育成について」と題した講演を行うなど、DX推進を行う企業のトップを走る1社となっている。
「明日の郷土を拓く」を社是とする大場組は、1971年の創業以来、インフラ整備を目的とした土木工事、介護施設や工場などの建設工事、住宅や店舗の新築、リフォームといった建築工事を行ってきた。
土木では「山形県知事顕彰」、建築では山形県建設技術協会が実施する「山建賞」など、多数の受賞歴を誇る。また、2023年には山形県の推薦を受けて紺綬褒章を受章している。
主な実績としては、最上小国川流水型ダムや山形県新庄病院改築整備工事などがある。
建設業のほか、産業廃棄物処理業、福祉事業、観光事業、アグリ事業ごとに分社化して大場グループを展開し、地域振興に取り組んでいる。1987年に損害保険代理店、1988年には学習塾「叡和塾」を開設するなど、創業後早いタイミングから幅広い事業を進めてきた
1970年創業の山和建設は、総合建設業に加え、生コン製造販売業、砂利採取販売業、油脂類販売業(ガソリンスタンド)を行う企業だ。
土木事業では、山形県内だけでなく全国を事業領域として、道路・橋梁、RC構造物・付属物、ダム・河川・海岸、農業土木など幅広い施工を手がける。
建築事業では、近年になって高速道路の料金所新設や改修工事、サービスエリアやパーキングエリア内休憩施設の改築、改修工事を中心に行っている。
また、県東部にある奥羽山脈などに源流を持つ一級河川の最上川は、単一の県のみを流れる河川として日本一の規模で、日本三大急流のひとつにも数えられる。
支流と本流をあわせて県土の8割近くを流域に持つとあって、県内には令和5年4月時点で2,509橋の道路橋が存在する。
新庄市を中心とする最上地域をはじめ、積雪が多いエリアは夏季には大雨となることも多く、雪対策に加え、河川の氾濫などを防ぐための安定したインフラ整備も必須な環境だ。
山形県・県土整備部では、平成28年度からi-Constructionの取組みを推進しており、2023年には、建設現場での生産性向上に向けて、「山形県建設DX推進戦略(加速化プラン)」を策定した。
さらに、県から認定を受けた企業が工事受注企業に対して技術支援を行う「やまがたICT支援隊」、県立産業技術短期大学校への土木エンジニアリング科の設立、女性技術者と建設業に興味を持つ学生が意見交換する「けんせつ女子ツアー&カフェ」などの取り組みも実施中だ。
本記事では、そんな山形県の総合土木・建設業界をリードする15社を紹介する。
各社の歴史、特徴的な技術、代表的なプロジェクト、そして最新の取り組みなどを詳しく見ていこう。
1. 那須建設
那須建設は、1957年に建設業と砂利採取販売業を個人創業したことからはじまった総合建設会社だ。
県内の総合建設業者売上高ランキングでは、2017年以来常に4位以上にランクインする山形県を代表する企業のひとつになっている。
長井市の本社に加え、仙台事務所、新潟、福島、東京、熊本に支店を持つほか、関連企業も多数持つ規模感のある事業体制が特徴だ。
土木部では、橋梁工事や道路工事、河川堤防工事、治山工事などのほか、鉄道事業部も設置し関連工事を手がけている。特に震災や水害時には、本社のある長井市を中心に、機動力を活かした対応を行う。
建築部では、消防庁舎・防災センター、病院、学校、老人ホームなどの公共性の高い建築物をはじめ、工場やマンション、店舗などの建設も行っている。
Youtubeのオフィシャルチャンネルを開設し、社員インタビューや説明会の様子を配信するなど、採用活動にも力を注いでいる。
食事や宿泊施設まで用意されたインターンシップでは、ドローンによる空撮や最新管理ソフトの模擬体験を行い、ものづくりの現場を体感できるプログラムを提供している。
ICT施工にも力を入れて取り組んでおり、2024年10月には、東京大学松尾研発のスタートアップARCRAとのタッグにより、AI技術を活用した建設現場の写真・工程管理アプリ「ConPhoto Box」の共同開発をスタートさせている。
2. 升川建設
明治元年に創業した升川建設は、山形県の建設業界で随一の歴史を持つ。
例えば戦後、山形県下の代表建設業者として、駐留軍の施設建設のための建築工事、土木工事を行った実績もある。
一世紀以上にわたって県内の土木・建設業の礎を築いてきた企業だ。
土木事業においては、高速道路、ダム、都市開発、上下水道、公園などの工事を担い、ノウハウの蓄積を続けてきた。
また、舗装工事を行う事業部を置いていることが特徴のひとつで、自社アルファルトプラントを保有し、国道や東北中央自動車道などの舗装を数多く手がけている。
3. 山形建設
1916年に創業、1944年に株式会社化した山形建設は、企画開発から設計、施工、監理、リフォーム事業に至るまで、幅広い分野のエキスパートが集まる総合建設業者だ。
土木・舗装部門のほか、建築・ライフ部門では、山形城跡二ノ丸東大手門、国の登録有形文化財に指定されている山形市立第一小学校旧校舎など、建築的価値の高い建造物から、公共施設、医療施設、商業施設などまで手がけている。
また、PPP・PFI事業も複数実施しており、特に県営住宅鈴川団地移転建替等工事では、NPO法人日本PFI協会のPFI大賞で特別賞を受賞している。
4. 丸高
1946年の創業以来、地元・酒田市で総合建設業を営んできた丸高は、ものづくりとしての建設業の先にある“豊かなまちづくり”を目指している。
アセット事業として、酒田まちなかプロジェクト株式会社、一般社団法人 元気インターナショナルや行政と連携しながら、空き家の有効活用などを通して酒田市の地域活性に取り組んでいる。
一般住宅の新築・リフォームから公共施設まで手がける建築事業では、“クオリティは高く、コストは低く”を掲げ、企画から設計、施工まで自社内で完結させ、維持管理のアフターフォローまで行っている。
土木部門では、インフラ整備をはじめ、道路や下水道などの工事、港湾・漁港工事も請け負っており、国土交通省、林野庁、山形県から多数の表彰歴を持つ。
さらに、注文住宅事業、リフォーム事業も行っており、幅広い角度からまちづくりを形にしている企業だ。
5. 新庄・鈴木・柴田組
「Satisfaction-満足」「Symphony-調和」「Safety-安全」の「3S」を基本理念とする新庄・鈴木・柴田組は、1949年に新庄建設、1951年に鈴木建設、1961年に柴田組が設立され、2012年に3社が集合する形で生まれた企業だ。
2023年6月末時点で年商は63億8000万円と、山形県を代表する規模の実績を持つ。
土木、建築、舗装の各事業をはじめ、運輸、住宅、不動産、断熱、サイレントパイラー、解体工事・リサイクルと幅広い事業を展開していることが特徴だ。
土木事業では、下請けに頼らない自社直営班での施工が可能で、災害関連道路(三陸道)などの多数の施工実績などがある。
若手職員の採用にも力を注いでおり、ホームページで先輩社員からのメッセージを掲載したり、Youtubeで現場での仕事に密着した動画を配信するなど、建設業界の魅力を精力的に発信していることも特徴だ。
6. 日本地下水開発
1962年に設立された日本地下水開発は、山形市にある本社に加え、青森県から島根県まで本州各地に営業所を持つ。
道路の融雪・消雪を中心とした克雪事業、温泉源開発を中心とした資源開発事業、地下水熱・地中熱を利用する冷暖房システムの設計・施工・維持管理などを行う環境エネルギー事業、地滑り対策や防災井戸の整備を行う防災関連事業、そして地盤情報の把握・提供とコンサルティングを行う地盤コンサルタント事業を展開している。
施工実績としては、地中熱を利用したヒートポンプシステムなどによる無散水消融雪施設の施工が山形県内を筆頭に全国で165.3万㎡にも及ぶ。
また、克雪・利雪といった寒地技術などを活かし、産学官の連携による研究開発にも取り組んでいる。
7. 沼田建設
沼田建設は、1930年の創業以来、新庄・最上エリアに密着した事業を行っている総合建設会社だ。災害復旧工事、道路・駐車場などの舗装工事、一般住宅や学校の建築も手がけている。
特に土木事業では、保有する2つの特許技術を活かして数々の実績を重ねている。
製紙工場より排出される副産物を加工した「パルフォース」を混合した気泡モルタル工法「パルフォースモルタル工法」は、旧残置管・暗渠の閉塞材、水路改修工事の中込材などに使用される。
下水道工事で活躍する「推進工法」は、地表を掘削することなく地中を掘削貫通する非開削工法のひとつで、既製の管を地中に押し込んでいくため、工事公害の低減や市民生活への影響の抑止などに優れた効果を発揮するとされている。
8. 大井建設
1927年に大井組として創業、1957年に株式会社化した大井建設は、戦後まもない昭和20年代後半に最新技術であった「伊藤式護岸工法」を採用して河川改修工事を請け負ったり、山形県内でもいち早くアメリカ製のブルドーザーを購入するなど、古くから新しい技術の導入を積極的に行ってきた。
地元高校生などを対象に体験型のインターンシップを実施しており、測量実習やドローン、建設機械の操縦など、土木と建築を織り交ぜた就業体験を提供している。
9. 佐藤工務
総合建築業を行う佐藤工務は1954年に創業し、2013年には黄綬褒章授与を受けるなど、確かな実績と評価を積み重ねてきた。
日本下水道事業団、東北農政局、東北地方整備局、山形県、鶴岡市などの官公庁のほか、医療法人、民間企業などを幅広く取引先に持つ。
施工実績として、山形県内各地での橋梁下部工工事、河川整備補助事業の湯尻川護岸及び排水樋門工事、鶴岡市ごみ焼却場施設整備運営事業建設工事、鶴岡工業高等学校体育館改築工事などがある。
10. 林建設工業
1949年に設立され、令和元年に創業100周年を迎えた林建設工業は、建設事業、土木事業を手がける企業だ。
1976年に酒田市街地で発生した火災「酒田大火」で瓦礫の撤去、解体作業、仮設住宅・店舗建築などの復旧活動に取り組んだ経験、そして2011年の東日本大震災での復旧活動などを通して得た教訓や実感をもとに、「地域社会に安心と快適を」を企業理念として定め、日々事業に取り組んでいる。
起重機船やコンクリートミキサー船を自社で所有しており、山形県唯一の重要港湾・国際貿易港である酒田港の整備、漁港・海岸の工事の施工も行っている。
11. 新庄砕石工業所
新庄砕石工業所は、1967年に骨材生産販売から着手し、翌年には有限会社化、さらにその翌年には土木建築業の請負と施工などをはじめた。現在では、国土交通省を中心とした公共事業を行っている。
特徴的なプロジェクトとして、建設3Dプリンターの開発を手掛ける企業との協力がある。
秋田県と山形県新庄市を結ぶ国道13号の道路整備事業の一環で、落石防護柵の重力式擁壁の埋設型枠を3Dプリンターで制作し、従来工法と比べて工期の約4割短縮を実現した。制作は入社1~3年目の若手社員が担当し、工事は2024年1月に完了し話題を呼んだ。
また、既設の石積みに石積み専用充填材を注入する「モルダム工法」の特許を取得しており、大雨や地震災害の対策として石積の排水性を補強する施工に取り組んでいる。
12. 鶴岡建設
山形県鶴岡市に拠点を構える鶴岡建設は、1944年の設立以来、総合建設業として地域の発展を支えてきた。
「DESIGNING 提案力のTSURUKEN」をキャッチフレーズに、建築における質の高いデザインの提供を重視していることが特徴だ。社内外のクリエイティブ体制を基盤として、プロジェクトごとに意匠設計チームを編成し、設計思想に基づいた提案を行っている。
実績として、いずれも日本設計が意匠面を担当した羽黒高等学校新校舎、鶴岡市立加茂水族館などがある。
土木事業では、鶴岡市に留まらず、山形県内の道路改良工事、防雪工事などを多数手がけている。
13. 渋谷建設
2008年に創業100周年を迎えた渋谷建設は、その歴史を振り返ると、米の増産を目的とした水路建設、最上川の水害対策など、山形県の暮らしを支える公共土木工事を担い続けている。
国交省がi-Constructionを提唱した2016年から本格的にICTに取り組んでおり、工務管理部にICT推進室を設置。点群データや3次元設計データの作成、ドローンによる起工測量、3Dスキャナーによる出来形計測などを活発に進めている。
2024年には、山形県内の建設産業関係者を対象とした県開催の説明会で「ICT技術の内製化と人材育成について」と題した講演を行うなど、DX推進を行う企業のトップを走る1社となっている。
14.大場組
「明日の郷土を拓く」を社是とする大場組は、1971年の創業以来、インフラ整備を目的とした土木工事、介護施設や工場などの建設工事、住宅や店舗の新築、リフォームといった建築工事を行ってきた。
土木では「山形県知事顕彰」、建築では山形県建設技術協会が実施する「山建賞」など、多数の受賞歴を誇る。また、2023年には山形県の推薦を受けて紺綬褒章を受章している。
主な実績としては、最上小国川流水型ダムや山形県新庄病院改築整備工事などがある。
建設業のほか、産業廃棄物処理業、福祉事業、観光事業、アグリ事業ごとに分社化して大場グループを展開し、地域振興に取り組んでいる。1987年に損害保険代理店、1988年には学習塾「叡和塾」を開設するなど、創業後早いタイミングから幅広い事業を進めてきた
15. 山和建設
1970年創業の山和建設は、総合建設業に加え、生コン製造販売業、砂利採取販売業、油脂類販売業(ガソリンスタンド)を行う企業だ。
土木事業では、山形県内だけでなく全国を事業領域として、道路・橋梁、RC構造物・付属物、ダム・河川・海岸、農業土木など幅広い施工を手がける。
建築事業では、近年になって高速道路の料金所新設や改修工事、サービスエリアやパーキングエリア内休憩施設の改築、改修工事を中心に行っている。
WRITTEN by
國廣 愛佳
創業支援や地域活性を行う都内のまちづくり会社に勤務後、2019年よりフリーランス。紙面やwebサイトの編集、インタビューやコピーライティングなどの執筆を中心に、ジャンルを問わず活動。四国にある築100年の実家をどう生かすかが長年の悩み。
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