【解説】「小規模工事」におけるICT活用の手引き

近年、土木・建設業界ではICTの導入が急速に進んでおり、特に小規模工事においてはその効果が顕著である。

ICTを活用することで、工事の効率性や精度を飛躍的に向上させることが可能となり、施工管理の質も大幅に改善される。

ここでは、小規模工事におけるICT施工の具体的な手法とその効果について、国交省関東地方整備局の資料をもとに詳しく解説していく。

自治体発注工事におけるICT導入の課題

自治体が発注する小規模工事では、従来の施工管理手法において、作業の効率性や精度に限界があるとされてきた。

特に、予算の制約やICT機器の導入に伴うコストが課題となっていた。

しかし、近年ではこれらの問題を克服するために、一部のプロセスに焦点を当てたICTの段階的導入が効果的であると認識されるようになっている。

ICT導入により、施工現場のDX化が進み、これまで時間と労力を要していた作業が大幅に効率化される。



また、現況をリアルタイムで把握できるため、管理者は迅速かつ的確な判断が可能となり、工事の進捗や品質管理においても大きなメリットが得られる。

小規模工事において無理なくICTを導入するために

ICT施工を効果的に導入するためには、段階的なアプローチが必要である。以下に、ICT導入の具体的なステップを紹介する。

ステップ①-1: 簡単に3次元設計データを作成してみる

まず、小規模工事においては簡易な3次元設計データの作成が重要である。

例えば、トータルステーション（TS）とデータコレクタを活用することで、現場で基準点を計測し、精度の高い出来形管理が可能となる。これにより、現場合わせでの設計データ作成が容易になる。

データコレクタとは、TSの計測成果を記録する機能や、計測位置と設計上の位置を比較して、出来形の誤差分を算出する機能を有し、画面に表示するもの。




設計図書からの基本設計データの作成方法は、平面図、縦断図、横断図から、必要な情報を3次元設計データ作成ソフトウェアに転記するだけ。



線形が直線の場合は始点・終点座標と横断形状を入力するだけで3次元設計が作成でき、ICT建機用のデータにも変換できる。

ステップ①-2: 3次元設計データ＆TSで作業を効率化

作成した3次元設計データとTSを組み合わせることで、高精度な出来形計測が可能となり、作業時間の短縮と労力の軽減が実現する。


具体的な作業例で解説すると「丁張り設置」作業がわかりやすいだろう。「3次元設計データ＋TS」を活用することで、丁張り設置の作業時間を短縮することができる。丁張設置位置変更時の再計算も必要なくなる。

ステップ②: 3次元設計データ&TSの応用利用

3次元設計データとTSをさらに応用することで、施工現場における各種作業が効率化される。例えば、丁張設置や側溝の位置出し誘導など、従来は時間を要していた作業が、ICT技術の導入によって大幅に短縮される。また、これにより作業者の負担も軽減される。

ステップ③-1： ICT建機を導入する

ICT建機の導入は、小規模工事においても大きな効果を発揮する。

特に、簡易なマシンガイダンスシステム（MG）を導入することで、都市部や山間部など、GNSS衛星の受信状況が悪い現場でも高精度な施工が可能となる。MGには3Dと2Dがあり用途や予算に応じて適切に使い分けよう。


都市部工事・山間部工事・屋内工事など、GNSS衛星の受信状況が悪い現場でも、TSで測位するICT建機であれば利用が可能だ。

ステップ③-2：新しいICTツールを活用する

センサー（LiDAR等）搭載のモバイル端末とGNSSレシーバーを組み合わせた3次元測量技術による3次元出来形管理は、今、全国各地の建設会社で活用の広がりを見せている。

さらに、小規模土工においては、3次元起工測量は必須ではないが、モバイル端末を用いることで、TLSやUAV等と比較して、経済的にも3次元起工測量が可能となる。


とくに小規模工事におけるICT施工の一環として、スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」の活用が注目されている。

このアプリは、スマートフォンを利用して手軽に測量を行うことができ、現場での体積計算や出来形管理、起工測量などが可能となる。


しかも他のモバイル端末系測量アプリとは違い、事前に標定点や検証点を設置する必要がないので、測量をしたいと思ったときにすぐに測量を始められる。

また、アプリ内で取得したデータはクラウド上に保存され、いつでもどこでもアクセス可能であるため、現場とオフィス間の情報共有がスムーズに行える。

「アプリだから精度が厳しいんじゃないの？」と懐疑的な目を向けている方もご安心あれ。測位精度は、令和4年度の国土交通省 「3次元計測技術を用いた出来形管理要領（案）」にも準拠していることから、「出来形測量」「起工測量」でも使用することができる。
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ICTの導入の効果と課題は？

ICTの導入により、小規模工事における施工管理の質が大幅に向上することが確認されている。特に、精度の高い測量やデータ管理が可能となることで、工事全体の効率性が向上し、コスト削減や工期短縮が実現する。

しかし、ICTの導入にはいくつかの課題も存在する。例えば、初期導入コストや機器の操作に習熟するまでの時間などが挙げられる。

これらの課題を克服するためには、段階的にICTを導入し、現場の状況に応じた最適な技術を選定することが重要である。

また、スマホ測量アプリ「OPTiM Geo Scan」のような導入コストが抑えられるツールも数多く存在している。まずは自社の費用と課題にあったツール・手法の見極めが必要になるだろう。

今後、ICTはますます進化し、小規模工事においてもその導入が一般的になるのは間違いない。特に、AIやIoT技術との連携が進むことで、施工管理の自動化やさらなる効率化が期待できるだろう。