2011年の3月11日、東日本大震災という未曾有の災害を経験した東北地域。それから5年後、2016年には国土交通省の旗振りのもと、i-Constructionが本格始動した。震災復興事業でICT技術を取り入れる企業も、大企業から地元中小企業まで幅広く、現在も各地域で積極的な活用が進んでいる。本記事(後編)では現在も行われている東北地域のICT活用工事について考えていく。
国土交通省が毎年開催しているi-Construction大賞にも、東北発の技術が受賞を果たしている。本記事では、2020年度にi-Construction大賞を受賞した取組みに注目。ここから、東北地域におけるi-Constructionの浸透状況を紹介する。
三次元設計が当たり前となっている他業界設計者の目線を取り入れ、建設業界の既成概念にとらわれないBIM/CIMの取組を実施。業界全体の推進を目指し、地方公共団体・測量設計業協会に向けた講習回や、業界PRなどを積極的に実施(https://www.mlit.go.jp/common/001321768.pdfより引用)
自社だけが必要なデータにとらわれることなく、BIM/CIMのデータを広く活用することを目指すと同時に、作成した三次元データを維持・管理に活用するため、標準化しようとするものだ。
ICT技術の活用が進んでも、各社が個々で独自基準のデータを作成・活用していては、企業間の新たな壁が生まれてしまい、本当の意味でのi-Construction推進ということにはならないということだろう。
こうした受賞取組からも、ICT技術の活用に高い意欲を示し、地域をあげてi-Construction推進を図ろうという背景が伺える。また、2019年には全国で初めて東北版のi-Construction大賞、「みちのくi-Construction 奨励賞」が創設された。東北からICTの風を吹かせようと、業界全体が高い意欲をもち取り組んでいるのだ。
一方で、建設・土木業界の求人動向に目を向けると、有効求人率は震災以降も高水準で推移。求人需要に対し、就業者数は伸び悩んでいるという状況だ。
また、建築業就業者の年齢分布は60歳以上の技能者が4分の1を占めており、中長期的な観点から、次世代の土木・建設業を担う技術者の育成が課題になっているのだ。
業界全体の担い手不足が大きな課題となっている中で、i-Constructionの活用は、人手不足解消の要としても注目されている。
2019年6月には新・担い手3法が可決成立し、東北全域で建設・土木事業従事者の働き方改革へ向けた動きが本格的にスタートした。
東北6県と仙台市が連携し、適切な工期設定や生産性向上をめざす「東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト」というもので、前編で取り上げた東北震災復興i-Construction(ICT)連絡会議でも、座学によるセミナーやICT技術を活用している現場への視察、講習会などを開催。また業界に携わる方を対象とした育成事業も行っている。
当連絡会議が始動した2016年には、述べ32回の勉強会が開催され、約2,600名が参加した。
そして、一般企業でも技術者向けの研修や見学会が積極的に行われている。全国10ヶ所に拠点を持つコマツは「コマツ IoTセンタ」を東北地域にも2拠点開設。
この施設は、UAV測量やICT建機の試運転、さらには座学によるi-Constructionの概要を学べる説明会を開催。機器導入の前にICTの理解を深めたりICT技術を体感できたりする場を提供している。
またコマツだけでなく他社でも次世代を担う技術者の育成を目指し、高校生・大学生を対象とした「i-Construction新技術体験学習回」を創設。インターシップを活用し、効果的に技術者を育成する取組を独自にはじめる企業も。
未曾有の被害をもたらした震災。そして今日の復興へとつなげてきた10年間は、インフラを担う建設土木業界においても、さまざまな葛藤と試行錯誤があったことだろう。
東北の地で積み重ねられてきた経験値を次世代に伝承していくために。ICT技術に託された役割は大きい。未来を見据え、さらなる変化を遂げようとしている東北の姿に、今後も注目していきたい。
東北から建設ICTの風を吹かせる
国土交通省が毎年開催しているi-Construction大賞にも、東北発の技術が受賞を果たしている。本記事では、2020年度にi-Construction大賞を受賞した取組みに注目。ここから、東北地域におけるi-Constructionの浸透状況を紹介する。
- i-Construction推進コンソーシアム会員の取組部門
三次元設計が当たり前となっている他業界設計者の目線を取り入れ、建設業界の既成概念にとらわれないBIM/CIMの取組を実施。業界全体の推進を目指し、地方公共団体・測量設計業協会に向けた講習回や、業界PRなどを積極的に実施(https://www.mlit.go.jp/common/001321768.pdfより引用)
自社だけが必要なデータにとらわれることなく、BIM/CIMのデータを広く活用することを目指すと同時に、作成した三次元データを維持・管理に活用するため、標準化しようとするものだ。
ICT技術の活用が進んでも、各社が個々で独自基準のデータを作成・活用していては、企業間の新たな壁が生まれてしまい、本当の意味でのi-Construction推進ということにはならないということだろう。
こうした受賞取組からも、ICT技術の活用に高い意欲を示し、地域をあげてi-Construction推進を図ろうという背景が伺える。また、2019年には全国で初めて東北版のi-Construction大賞、「みちのくi-Construction 奨励賞」が創設された。東北からICTの風を吹かせようと、業界全体が高い意欲をもち取り組んでいるのだ。
一方で、建設・土木業界の求人動向に目を向けると、有効求人率は震災以降も高水準で推移。求人需要に対し、就業者数は伸び悩んでいるという状況だ。
また、建築業就業者の年齢分布は60歳以上の技能者が4分の1を占めており、中長期的な観点から、次世代の土木・建設業を担う技術者の育成が課題になっているのだ。
業界全体の担い手不足が大きな課題となっている中で、i-Constructionの活用は、人手不足解消の要としても注目されている。
東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト
2019年6月には新・担い手3法が可決成立し、東北全域で建設・土木事業従事者の働き方改革へ向けた動きが本格的にスタートした。
東北6県と仙台市が連携し、適切な工期設定や生産性向上をめざす「東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト」というもので、前編で取り上げた東北震災復興i-Construction(ICT)連絡会議でも、座学によるセミナーやICT技術を活用している現場への視察、講習会などを開催。また業界に携わる方を対象とした育成事業も行っている。
当連絡会議が始動した2016年には、述べ32回の勉強会が開催され、約2,600名が参加した。
そして、一般企業でも技術者向けの研修や見学会が積極的に行われている。全国10ヶ所に拠点を持つコマツは「コマツ IoTセンタ」を東北地域にも2拠点開設。
この施設は、UAV測量やICT建機の試運転、さらには座学によるi-Constructionの概要を学べる説明会を開催。機器導入の前にICTの理解を深めたりICT技術を体感できたりする場を提供している。
またコマツだけでなく他社でも次世代を担う技術者の育成を目指し、高校生・大学生を対象とした「i-Construction新技術体験学習回」を創設。インターシップを活用し、効果的に技術者を育成する取組を独自にはじめる企業も。
未曾有の被害をもたらした震災。そして今日の復興へとつなげてきた10年間は、インフラを担う建設土木業界においても、さまざまな葛藤と試行錯誤があったことだろう。
東北の地で積み重ねられてきた経験値を次世代に伝承していくために。ICT技術に託された役割は大きい。未来を見据え、さらなる変化を遂げようとしている東北の姿に、今後も注目していきたい。
WRITTEN by
高橋 奈那
神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。
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