公共工事で新技術活用が義務化。指針となる「NETIS」
2020年度から、国交省直轄の土木工事に新技術の活用が原則義務化された。新技術とは、ICT施工での活用技術や国交省の「新技術情報提供システム:New Technology Information System(以下、NETIS)」に登録された技術などを指す。
そもそも、新技術活用の一つの指針となる「NETIS」とはどんなものなのか。
NETISは、民間事業者などが開発した公共工事に活用できる新技術をデータベース化したもので、新技術の活用促進と情報の共有を目的に1998年からスタートした。現在、IT系製品やシステムから、工法、機械、材料など、幅広い新技術がデータベースに登録されている。インターネット上で一般公開され、誰でも新技術の情報を検索・入手できるのも特徴だ。
NETIS WEBサイト ▷ https://www.netis.mlit.go.jp/netis/
NETISの仕組みとメリット
では、同システムの仕組みを見てみよう。
まず、開発者が新技術をNETISに登録すると、審査を経て条件が合う公共工事で新技術が活用される。さらに活用後に、産学官から成る評価会議で実際の技術の効果などが評価され、その評価情報がNETIS登録されるという仕組みだ。
なかでも優れた技術は「有用な新技術」として選定され、活用されやすくなる。情報を広く共有し、評価まで行うことで、技術開発・改良の促進や、工事の品質・安全性の向上、業務の効率化、コスト削減などが期待される。
もちろん開発者側のメリットも多く、「技術が活用される機会が増える」「評価情報で技術をアピールできる」「技術改革のヒントが得られる」などの成果を得られるだろう。また、工事を請け負う施工者にとっても、新技術の活用を提案・実施すれば「工事成績評定や入札契約の総合評価方式で加点される」といった利点があり、入札で有利になるのもポイントだ。
施工者提案型から公募型など、5つの活用方式
NETISで登録された新技術を活用する方式は、以下の5つのタイプに分かれている。施工者が提案する形から発注者が公募する形まで様々で、タイプによってフローが若干異なるようだ。
- 施工者希望型 … 施工者からの技術提案で施工者が新技術を活用
- 発注者指定型 … 現場や行政のニーズから必要な新技術を発注者指定で活用
- 試行申請型 … 実績が少なく成立性の確認が必要な新技術を対象に試行・評価
- フィールド提供型 … 地方整備局等が新技術を募集し、フィールドを提供して評価
- テーマ設定型 … 現場や行政のニーズから技術のテーマを設定して募集し、発注者が新技術を指定
NETISによって活用が広がる新技術
実際にNETISに登録された新技術は、どのくらい活用されているのだろうか。
上記の国土交通省2018年度のデータによれば、NETISに登録された新技術で公共工事に活用されたのは1万9437件で、2004年度の2827件と比べて大きく伸びている。新技術活用率は41.6%と、工事全体の半数に近い値だ。なかでも、「施工者希望型」での活用数が全体の94.9%と大部分を占めており、施工者も積極的に請負工事に新技術を提案・活用してきたことがうかがえる。
また、2021年1月現在の時点でNETISに登録された新技術は2900件以上。例えば、IoTセンサーによる遠隔監視システム、3D水中施工管理技術など、最先端の技術が登録され、続々と更新されているところだ。そして、214件が「有用な新技術」に選定されている(2021年1月時点)。その一例を以下に紹介しよう。
【有用な新技術の一例】
- 3次元点群処理ソフト(TREND-POINT)を用いた施工土量計測システム(福井コンピュータ株式会社)
UAVやレーザスキャナ等で得た点群データを用いた3次元土量計算により、時系列土量変化を把握できる技術で、工期短縮と労務費の削減ができる。 - 現場専用タブレット「蔵衛門Pad」(株式会社ルクレ)
カメラ機能付きタブレットとクラウドサービスを利用し、電子小黒板入り工事写真の撮影や工事写真の自動仕分け、工事写真台帳の自動作成を一貫して行う。 - 通信一体型現場監視カメラ「G-Camシリーズ」(株式会社 MIYOSHI)
有線回線でなく、モバイル通信を利用した全天候型・小型・軽量の通信一体型遠隔監視カメラ。工程の短縮とコスト削減、安全性の向上につながる。
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