行政・政策
角田 憲 2020.9.10

公共事業におけるBIM/CIMの原則適用が2年前倒しへ!今、建設業界に求められていること

2020年(令和2年)、新型コロナウィルスの影響によって、人々が生活のスタイルを変えていくことを余儀なくされた。そんな中、かつてないスピードで行われる建設・土木産業のデジタル改革が、一層の加速を見せている。

  • 2016年度  i-Constructionの実施
  • 2019年度 国土交通省は2025年度までに全直轄事業でBIM/CIMを原則適用化の方針を決定
  • 2020年度 段階的に範囲を広げ2023年度までに小規模工事を除く全ての公共事業でBIM/CIMの原則適用化の方針を決定。3次元モデル納品要領策定(予定)
  • 2021年度(予定) 納品要領に基づく詳細設計実施
  • 2022年度(予定) 納品要領に基づく詳細設計を工事に適用
  • 2023年度(予定) 小規模工事を除く全ての公共事業でBIM/CIMの原則適用化


2023年までに公共事業におけるBIM/CIMの原則適用を


2020年4月、国土交通省は「2023年までに小規模工事を除くすべての公共事業にBIM/CIMを原則適用」を決定した。これはそれ以前の目標としていた「2025年までに全ての公共事業をBIM/CIMを原則適用」を実質2年前倒ししたことになる。


新型コロナウィルス感染拡大防止の影響により、テレワークや遠隔での打ち合わせが広く普及したことが大きな一因だ。「3次元モデル(対象となる構造物などの形状を3次元で表現したもの)」と「属性情報(形状、寸法、強度などの情報)」「参考資料(機械判断できない補足情報)」を組み合わせた「BIM/CIMモデル」の活用は、非対面のリモートによる打ち合せでもイメージを伝えやすく、細かな情報の共有が可能になった。これらによって感染リスクを下げると同時に業務の効率化、生産性の向上が期待されている。

スケジュール前倒しとコスト低減を実現。フロントローディングの重要性


BIM/CIMの適用とは、計画、調査、設計の段階で、属性情報を付与した3次元データおよび詳細設計を作成(3次元モデル)、その後の施工、維持管理・更新の各段階でも、3次元データを作成・追加しながら、一貫したデータを利活用することだ。


プロジェクト初期の段階に負荷をかけ、その完成度を高めることで、工期を短縮し品質向上させるフロントローディングという考え方に基づいており、これには計り知れないメリットがあると言われている。

例えば、立体的な図面を起こすことで、配管など干渉物のチェックができることから、設計ミスの削減や、施工段階での仕様変更、手戻りを未然に防ぐことが可能になる。維持管理の段階にも、そのメリットは多く、施工履歴や点検結果の情報を蓄積し、活用することでライフサイクルコストの削減も見込める。

今後10年以内に3割以上の社会インフラが老朽化すると言われており、新築だけではなく大規模更新などの際にも活用が期待されている。

BIM/CIMの活用がこれからの建設DXの根幹に


デジタル技術とデータ活用を駆使して社会や産業、そして生活のあり方を抜本的に改革するDX(デジタル・トランスフォーメーション)。業務の効率化、生産性の向上、労働環境の改善が期待され、働き方改革の解決策とまでいわれている。


デジタルテクノロジーによる自動化、遠隔化による安全性、生産性の向上は、深刻な人手不足が喫緊の課題となっている建設・土木産業において必要不可欠である。国土交通省が示した3次元モデルに現場の映像を重ねて表示するAR(拡張現実)を使用した遠隔検査や重機を自動制御するマシンコントロールなど、安全性の向上や省人化に期待される。

他にも自動設計ツールが実用化されれば、寸法に変更などがあった場合に、パラメータを変更するだけで、整合性を保持した状態まま、3次元モデルを簡単に変更でき、再検討などでかかる膨大な手間を一気に解消してくれる。また施工状況と設計データを重ね合わせることで出来高や出来形を管理、月毎に請負業者への出来高支払いも可能になる。

その効果は枚挙にいとまがない。しかし、そもそもの設計データや付帯データがなければ、その全てが成立しないのである。つまり建設プロセスを一貫して管理するBIM/CIMは建設DXを誘導する根幹になる。

BIM/CIMを推進する意義


2020年3月には「発注者におけるBIM/CIM実施要領」が国土交通省により作成され、発注者の責務や役割を明確にした。そこには「通信環境の整備」や「発注前に目的を明確にすること」、また「品質管理及び行政事務の円滑かつ効率的な実施であることを鑑み、BIM/CIMモデルの過度な作り込みを指示しない」などと記載されている。

あくまでも生産性を上げることをはじめとした産業の改革が目的であり、2次元の図面を3次元にする手間を増やすことが目的ではない、と言うことだろう。2019年度はBIM/CIM活用事業の実施件数は2018年度を大きく上回っており、活用が進んでいる。設計が3次元データ化され数値化されれば、若い担い手たちも構造や工事の内容が理解しやすく、若手育成にも効果があるだろう。

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WRITTEN by

角田 憲

有限会社さくらぐみにライターとして所属。宅地建物取引士。祖父が宮大工だったことから建築、不動産に興味を持ち、戸建て、マンション等の販売・管理・メンテナンス業務に従事。食、音楽、格闘技・スポーツ全般、健康、トラベルまで幅広く執筆。読書量は年間約300冊。

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