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デジコン編集部 2025.12.11

清水建設、野村ダムの堤体を貫通させ洪水調整能力を増強。山岳トンネル掘削機を活用し運用中の施工を実現

清水建設は、愛媛県西予市にある野村ダムにおいて、洪水調整能力の増強を目的にダム堤体を削孔し、放流設備増設用の貫通孔を設置したと発表した。

2018年の西日本豪雨による被害を契機とした改良工事の一環で、運用中のダム堤体に新たな放流管を通す工事は四国の直轄ダムでは初の事例となる。

トンネル掘削機で堤体を削孔、運用したまま施工


野村ダムは1982年に完成した重力式コンクリートダムだが、近年の激甚化する豪雨災害に対応するため、洪水調節容量を最大限確保できるよう放流設備を増設することが求められていた。

今回の工事では、既設の放流設備よりも低い位置に新たな管を通すため、幅・高さ約5.4m~9.0m、長さ31.5mの貫通孔を設ける必要があった。

清水建設は、山岳トンネル工事で使用される「自由断面掘削機」を用いてコンクリート堤体の一次削孔を行い、仕上げには空圧はつり機を使用。山岳トンネル用の測量機器で精度管理を行うことで、許容値プラス50mm以内という高精度な施工を実現した。

また、ダムを運用しながら(水を貯めたまま)施工するため、「扉体(ひたい)ブロック」と呼ばれる巨大な仮締め切り設備(幅10m、高さ38m)を開発。

これを浮体として水上輸送し、堤体の貫通予定箇所を水中で覆うことで、削孔時の水の流入を防ぎつつ安全に作業を進める工法を採用した。

洪水調節容量を確保し、地域の安全に寄与


この貫通孔に新たな放流設備が完成すると、貯水位を事前に下げた状態(EL 160.2m)からでも毎秒500立方メートルの放流が可能となる。

これにより、大雨が予想される際にあらかじめ水位を下げておき、空いた容量をフルに活用して洪水を貯留・調節する運用が実現できる。

清水建設は、今回の難工事で得た知見を活かし、気候変動対策として需要が高まるダム再生・機能増強工事への技術提案を積極的に進めていく方針だ。




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