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デジコン編集部 2025.10.7

大成建設がシールドトンネル用脱炭素型裏込め注入材を開発。CO2排出量を最大110%削減

大成建設は、シールドトンネル工事向けに、CO2排出量を大幅に削減し、カーボンネガティブを実現可能な「T-eCon/裏込め注入材」を開発した。

名古屋市発注の下水道工事で10月から全線適用を開始


この裏込め注入材は、同社の環境配慮コンクリート「T-eConcrete」の技術を応用し、材料製造時のCO2排出量を従来比60%から最大で110%削減できる。

既存の設備・施工プロセスのまま現場導入可能で、シールドトンネル工事における環境負荷低減を図る。

シールドトンネル工事では、掘進時にセグメント外周と地山の間に生じるテールボイドに裏込め注入材を充填し、周辺地盤の沈下抑制とトンネル構造の安定を確保する。


一般的に裏込め注入材は、セメントを主成分とするA液と水ガラスを主成分とするB液を混合して使用するが、A液を構成するセメントは生産過程においてCO2排出量が大きく、A液の置き換えなどによる低炭素化がCO2削減の決め手となっていた。

同社は、T-eConcreteの「セメント・ゼロ型」と「Carbon-Recycle」の二技術をA液へ応用し、「Carbon-Recycle」では材料製造時のCO2排出量の実質マイナスを実現する「T-eCon/裏込め注入材」を開発した。

T-eCon/裏込め注入材は、適用条件に応じて「セメント・ゼロ型」と「Carbon-Recycle」を選択することができる。


いずれも裏込め注入材に求められる強度に対して、標準的な強度発現を満たす「通常強度タイプ」と、標準値の5倍の強度を発現しトンネル急曲線部など特殊条件で使用される「早期強度タイプ」の2タイプがあり、計4種類のラインアップを用意している。

材料製造時のCO2排出量の削減割合は、従来の裏込め注入材と比較して、「セメント・ゼロ型」の通常強度タイプで70%、早期強度タイプで60%、「Carbon-Recycle」の通常強度タイプで110%、早期強度タイプで105%と、いずれもCO2排出量の大幅な削減が可能だ。

特に「Carbon-Recycle」は通常強度・早期強度の両タイプともCO2排出量収支が実質マイナスとなるカーボンネガティブを実現している。

T-eCon/裏込め注入材は、従来の裏込め注入材のA液に用いていたセメントをT-eConcreteの技術を応用した材料に置き換えるだけで実施可能。

既存の設備や施工プロセスをそのまま利用して、従来と同様に施工・品質管理することができる。

T-eCon/裏込め注入材は、実機プラントでの製造試験や延長約1キロメートルに相当する圧送実験、注入1時間後の一軸圧縮強度試験などにより、製造効率やポンプ圧送性、A液とB液混合後の性能などが従来の裏込め注入材と同等であることを確認済みである。

同材料は、名古屋市上下水道局発注の「名駅南雨水幹線下水道築造工事(その2)」で2025年10月から全線で適用を開始する。





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