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デジコン編集部 2025.8.8

【帝国データバンク調査】建設業の従業員退職型倒産が急増。資格者離職で事業継続困難となる事例が相次ぐ

帝国データバンク調査によると、2025年1-7月の従業員退職が原因となった倒産が前年比1.6倍に急増し、建設業では17件発生して業種別では2番目の多さとなった。

設計者や施工監理者など業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の退職により、事業運営が困難になった企業が目立っている。

有資格者と幹部社員の相次ぐ離職で営業力・施工力が低下


建設業における従業員退職型倒産の特徴として、設計者や施工監理者など業務遂行に不可欠な資格を持つ現場作業員のほか、営業担当役員など幹部社員が相次いで退職し、事業運営が困難になった企業が目立った。

具体的な事例として、建売住宅の販売を手がけていたクレセントホーム(佐賀、2025年5月破産)では、新代表の就任以降に幹部社員が相次ぎ退職し、営業力や施工力が低下したことが痛手となった。


建設業界では、建築士や施工管理技士といった国家資格を持つ人材が事業運営の中核を担っており、これらの有資格者が離職することで現場監督や設計業務が立ち行かなくなるケースが増加している。

転職市場で待遇改善を求める動きが広がる中、賃上げできない中小建設企業の淘汰が進む可能性が高まっている。

建設業界全体では深刻な人手不足が続いており、帝国データバンクの調査では人手不足感を抱える建設業の割合が2024年9月時点で69.8パーセントに上っている。

2024年4月から残業時間の上限規制が導入されたことも影響し、建築作業を担う職人や現場監督の求人難が鮮明となっている。

長期化する物価上昇に苦慮する従業員から賃上げを求める声が強まっているが、継続的な賃上げを検討する動きが大企業から中堅・中小企業にも広がる一方で、賃上げしたくても収益力が乏しい中小企業も多く、賃上げに対する対応の二極化が進んでいる。

建設業界では木材をはじめとした建築資材価格の高止まりに加え、人件費の高騰により中小建設業者の経営が圧迫されている状況が続いている。

2024年7月の現金給与総額は前年同月比で約10パーセント上昇し、全産業を大幅に上回る高い伸びが続いている。

業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員が転退職するなどして事業運営が困難になった「人手不足倒産」も前年を上回るペースで推移しており、「人がいない」ことで工期の延長や後ろ倒しといった悪循環が発生しやすい環境となっている。

帝国データバンクでは、IT産業や映像制作などのサービス業、建設業などで従業員退職型倒産が多く発生しており、2025年は業績悪化による賃金引き下げが原因の倒産も発生していると分析している。

内外からの賃上げ圧力にさらされる中で、賃金引き上げ余力に乏しい中小零細規模の建設業で倒産増が続く可能性が高まっている。



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