
鹿島は海上における斜杭式桟橋およびドルフィンの構築方法として、上部工のフルプレキャスト化により海上作業を大幅に省力化する「クロスパイルピア工法」を開発し、一般財団法人沿岸技術研究センターの評価証を取得した。
気象・海象条件の影響を受けやすい海上作業を大幅に省力化することで、工事期間短縮と安全性向上を同時に実現する技術として注目されている。
従来の桟橋およびドルフィン上部工の構築では、足場・型枠・支保工設置、鉄筋組立、コンクリート打設の一連作業を全て海上で行う必要があった。
このため風や波浪、潮位などの気象・海象条件の影響が大きく、工程遅延や施工効率低下のリスクが常に存在していた状況である。
解決策として、プレキャスト上部工を陸上ヤードで製作し、海上に打設した杭の上に起重機船で一括架設するフルプレキャスト工法が存在するものの、斜杭では斜角を考慮する必要があるため、直杭に比べて接合部の孔が大きくなってしまう。
そのため接合部の品質や強度を確保する補強等の海上作業が必要となり、施工に時間を要する課題があった。
このように斜杭式では品質と合理的な施工性確保の両立が困難であり、プレキャストのメリットを十分に活かすことができないため、フルプレキャスト化が進んでいなかった。
「クロスパイルピア工法」はこれらの課題を解決するため、プレキャスト上部工と斜杭頭部の接合構造を新たに開発した技術である。

本接合構造は、プレキャスト上部工に杭を挿入する一般的な接合構造とは異なり、仮受管を鋼管杭に被せ、その上面に鋼管杭と同じ斜角の鞘管を埋め込んだプレキャスト上部工を架設し、鞘管と鋼管杭の中に小径の接合管を挿入する構造となっている。
具体的な接合手順では、まず海上に斜めに打設した鋼管杭の上部に仮受管を設置し、その上にプレキャスト上部工を起重機船で一括架設する。
その後、鞘管と鋼管杭の中に接合管を挿入し、シムプレート(鋼板)を接合管上部と鞘管に溶接する。最後に無収縮モルタルやコンクリートで斜杭頭部を充填することで、プレキャスト上部工と斜杭頭部を一体化する仕組みとなっている。

この工法による効果について、一般的な桟橋を想定したモデルケース(幅15.8m×延長150mの横桟橋)における試算では、従来工法と比較して海上工事期間を50%、全体工事期間を15%短縮できることが確認されている。
さらに現場作業に要する人員を20%、工事に伴うCO2排出量も10%削減できることが実証されており、建設コストは従来工法と同程度に抑えることができる点も重要な特徴である。
港湾工事における斜杭式桟橋・ドルフィンは、沖合に設置される複数の独立した構造物からなる係留施設として、主にタンカーなどが利用する重要なインフラである。
これらの施設建設における海上作業の省力化と効率化は、港湾整備の生産性向上と安全性確保の両面で業界全体にとって重要な課題となっていた。
気象・海象条件の影響を受けやすい海上作業を大幅に省力化することで、工事期間短縮と安全性向上を同時に実現する技術として注目されている。
仮受管と鞘管による新接合構造で従来困難だった斜杭式フルプレキャスト化を実現
従来の桟橋およびドルフィン上部工の構築では、足場・型枠・支保工設置、鉄筋組立、コンクリート打設の一連作業を全て海上で行う必要があった。
このため風や波浪、潮位などの気象・海象条件の影響が大きく、工程遅延や施工効率低下のリスクが常に存在していた状況である。
解決策として、プレキャスト上部工を陸上ヤードで製作し、海上に打設した杭の上に起重機船で一括架設するフルプレキャスト工法が存在するものの、斜杭では斜角を考慮する必要があるため、直杭に比べて接合部の孔が大きくなってしまう。
そのため接合部の品質や強度を確保する補強等の海上作業が必要となり、施工に時間を要する課題があった。
このように斜杭式では品質と合理的な施工性確保の両立が困難であり、プレキャストのメリットを十分に活かすことができないため、フルプレキャスト化が進んでいなかった。
「クロスパイルピア工法」はこれらの課題を解決するため、プレキャスト上部工と斜杭頭部の接合構造を新たに開発した技術である。

本接合構造は、プレキャスト上部工に杭を挿入する一般的な接合構造とは異なり、仮受管を鋼管杭に被せ、その上面に鋼管杭と同じ斜角の鞘管を埋め込んだプレキャスト上部工を架設し、鞘管と鋼管杭の中に小径の接合管を挿入する構造となっている。
具体的な接合手順では、まず海上に斜めに打設した鋼管杭の上部に仮受管を設置し、その上にプレキャスト上部工を起重機船で一括架設する。
その後、鞘管と鋼管杭の中に接合管を挿入し、シムプレート(鋼板)を接合管上部と鞘管に溶接する。最後に無収縮モルタルやコンクリートで斜杭頭部を充填することで、プレキャスト上部工と斜杭頭部を一体化する仕組みとなっている。

この工法による効果について、一般的な桟橋を想定したモデルケース(幅15.8m×延長150mの横桟橋)における試算では、従来工法と比較して海上工事期間を50%、全体工事期間を15%短縮できることが確認されている。
さらに現場作業に要する人員を20%、工事に伴うCO2排出量も10%削減できることが実証されており、建設コストは従来工法と同程度に抑えることができる点も重要な特徴である。
港湾工事における斜杭式桟橋・ドルフィンは、沖合に設置される複数の独立した構造物からなる係留施設として、主にタンカーなどが利用する重要なインフラである。
これらの施設建設における海上作業の省力化と効率化は、港湾整備の生産性向上と安全性確保の両面で業界全体にとって重要な課題となっていた。
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