安藤ハザマ、月面技術開発構想「宇宙シェルター」と「ルナ・ジオフロント」を発表。2030年代に月面放射線防護装置、2040年代に月地下居住空間の実現目指す

安藤ハザマは2024年10月に設立した「宇宙技術未来創造室」を中心に、月面および月地下空間構築を目的とした新たな技術開発構想「宇宙シェルター」と「ルナ・ジオフロント」の実現を目指すと発表した。

同社が建設事業で培ってきた地下空間構築やトンネル建設技術を宇宙開発分野に応用し、月面での人類の継続的活動を支える安全な空間を提供する計画である。

月面の百倍超放射線に対応するレゴリス遮蔽材活用と溶岩洞居住空間開発

この構想はNASAの「アルテミス計画」やJAXAの「Moon to Mars Innovation」推進に伴う宇宙関連ビジネスへの関心の高まりを背景としている。

月面では地上の百倍以上の放射線が降り注ぐため、人類が月面で継続的に活動するには放射線から人や機材を保護する空間の構築と正確な被ばく安全評価が不可欠な状況となっている。

「宇宙シェルター」構想では、恒常的な銀河宇宙線と突発的な太陽フレアの双方を対象として、レゴリス（月面の岩石由来粒子）を遮蔽材料として使用した月面放射線防護装置の開発を進める。

具体的には用途に応じた目標遮蔽性能の定義と、宇宙シェルターに必要な遮蔽材料構成・厚さの設計による構造材および施工法の開発を行う。

さらに銀河宇宙線および太陽フレアが人や重要機器に及ぼす影響を評価し、避難アラートを発報する仕組みの構築も含まれている。

想定する用途は月面におけるさまざまな活動を実施するための仮設作業所、休憩所、一次避難所で、2030年代の実現を目標としている。


一方「ルナ・ジオフロント」構想では、月に存在が確認されている地下空間（溶岩洞）を天然のシェルターとして活用し、将来的な活動拠点として発展させることを目指している。

この構想における技術開発では、溶岩洞の空間の広さや形状を探索するロボットの開発から始まり、空洞の安定性を評価する技術、さらに探索結果および安定性評価結果に基づいて空間を掘削・補強し、居住や研究等に活用可能な空間を施工する技術の確立を進める。

月の溶岩洞は過去の火山活動によって形成された自然の空洞であり、微小隕石の衝突や放射線被ばくに対するシェルターとして機能することに加え、洞内部の温度がほぼ一定（約-20℃）であることから将来の月面基地の候補地として注目されている。

このような特性を活かして月地下空間を「人が働く空間」「住む空間」「重要設備を保護する空間」として活用する検討を進めており、想定する用途は月地下空間における居住、研究、生産活動を実施するための拠点で、2040年代の実現を目標としている。

これらの構想は同社が長年にわたって蓄積してきた地下空間構築技術とトンネル建設技術という強みを宇宙開発という新たな領域に展開するものであり、月面での人類の持続的活動を技術面から支える重要な取り組みとして位置づけられている。