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デジコン編集部 2025.3.12

西松建設がトンネル再生覆工のプレキャスト化を実現。側壁一体型PCL版で高速施工と工程短縮を達成

西松建設株式会社とPCL協会は、山岳トンネル覆工の補修・補強に使用する側壁一体型のPCL版と、その運搬・架設を高速に行える装置を開発し、実証試験に成功したと発表した。

供用中トンネルの現場打ち施工リスクを解消、コンクリート打設が不要となり7日の工程短縮と品質向上を実現


山岳トンネルの覆工コンクリートの補修・補強工法である「覆工再生工」は、通常、供用下での施工が一般的である。

このため、コンクリート打設箇所付近にポンプ車の配置や生コン車を待機させることができず、コンクリートを圧送する配管のトラブルや交通障害が発生した場合、計画通りの施工ができないという課題があった。

この問題を解決するため、西松建設とPCL協会は、現場打ちコンクリートを必要としないPCL工法による再生覆工のプレキャスト化について技術開発を進めてきた。

今回開発された技術の特徴は、大きく二つある。

一つ目は、PCL版を天端から下半脚部までの側壁一体型に変更した点である。

一般的にPCL工法では上半はPCL版を採用し、下半は現場打ちコンクリートにて側壁を構築するが、PCL版を天端から下半脚部までの側壁一体型に改良することで、場所打ちコンクリートの施工そのものを省略できるようになった。

二つ目は、フォークリフトに装備する「運搬・架設装置」の開発である。

側壁一体型のPCL版の運搬・架設や架設時の微調整を高速に行えるこの装置は、側壁一体型のPCL版が損傷せずに運搬、架設でき、機動性に優れたフォークリフトを採用している。

運搬・架設装置は、フォークリフトのツメ部と連結する構造となっており、トンネル周方向に対する「ピッチング機能(PCL版の傾きの調整機能)」と「ヨーイング機能(PCL版の回転調整機能)」といった架設時の微調整機能を備えている。

また、重量バランスをとるためのカウンターウエイトも装備しており、トンネル軸方向、軸直角方向(鉛直および水平)調整は、フォークリフトの機能を活用する設計となっている。

開発した技術の検証のため、西松建設の山岳トンネル技術開発拠点「Nフィールド」の模擬トンネル内にて実大実証試験が実施された。

この実験では、高速道路トンネル断面級を想定した覆工再生工事向けのPCL版が使用された。

実験の結果、フォークリフトに「運搬・架設装置」を装備させ、側壁一体型のPCL版の運搬および架設を行ったところ、PCL版の損傷はなく、設置個所背面に敷設された防水シート想定のシートにも損傷は発生しなかった。





また、PCL版の設置に必要な時間は30分/枚(積込、運搬および架設の合計)であることが確認され、これは場所打ちコンクリートによる再生覆工の施工と比較すると、裏込め注入等の作業を含めても約7日(52.5mあたり)の工程短縮が見込まれる結果となった。

側壁一体型のPCL版を使用することで場所打ちコンクリートの施工そのものが省略でき、コンクリート打設時の作業やトラブルリスク(配管閉塞リスクや打設時の型枠の崩壊リスク等)が排除されることから、品質や安全性の向上も期待できる。





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デジコン編集部

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