コラム・特集
デジコン編集部 2025.6.9

道路舗装とは?道路ってどう作られるの? 〜 その構造から施工手順まで!基礎知識を解説!〜

私たちが日々利用している道路は、単純に見えて実は複雑で精巧な構造を持っている。

表面に見えるアスファルトの下には、交通荷重を支える多層構造が築かれており、これらが連携して安全で快適な道路を実現している。

本記事では、道路舗装の基本的な仕組みから施工手順まで、建設業従事者が知っておくべき道路舗装の全体像を詳しく解説していく。

道路舗装の定義。そもそも道路舗装とは?


道路舗装とは、自然の地面(路床)の上に人工的な材料を用いて構築された道路の構造体である。

単に表面を固めるだけではなく、交通荷重に対する十分な支持力と耐久性を確保し、車両や歩行者が安全かつ快適に通行できる路面を提供するための工学的システムといえる。

現代の道路舗装は、材料工学・構造力学・環境工学などの知識を総合した高度な技術の結晶である。表面に見えるアスファルトやコンクリートは氷山の一角に過ぎず、その下には設計された多層構造が存在している。

この構造により、重い車両の荷重を地盤に安全に伝達し、雨水の浸入を防ぎ、長期間にわたって道路機能を維持することが可能となっている。

道路舗装は単なる「道づくり」ではなく、社会インフラとして地域の経済活動や市民生活を支える重要な役割を担っているのである。

道路舗装が果たす3つの重要な機能


道路舗装は、単なる通行路としての役割を超えて、社会インフラとして重要な機能を担っている。

快適性の保持


路面に緻密な層を設けることで、雨天時の泥濘化や乾燥時の砂塵を防止し、車両の通行時や歩行時の快適性を向上させる。

適切な舗装により、季節や天候に左右されない安定した交通環境が確保される。

安全性の向上


路面を平坦に保つとともに、適度なすべり抵抗性を持たせることで、車両通行時や歩行時の安全性を大幅に向上させる。

特に雨天時のスリップ防止や、制動距離の短縮において重要な役割を果たしている。

景観・環境機能の創出


周辺の環境に適合した舗装材料を使用することで、良好な道路景観や沿道環境を創出する。

近年では、ヒートアイランド現象の抑制や騒音低減など、環境負荷軽減の観点からも舗装の役割が注目されている。

道路舗装の多層構造システムを解説


道路舗装が長期間にわたってその機能を維持するためには、交通荷重や自然環境の作用に耐える強固な構造が必要である。

そのため、路床から表層まで3~4層の構造で構築され、上層から下層へと荷重を分散させる仕組みとなっている。

(画像元:日本アスファルト協会WEBサイトより)


表層(Surface Course)


道路の最上部に位置し、直接車両や歩行者が接する部分である。主にアスファルト混合物やコンクリートで構成され、摩耗性・耐久性・すべり抵抗性が特に重視される。

表層は「道路の顔」とも呼ばれ、平坦性と美観性の確保が求められる。

基層(Binder Course)


表層の下に位置し、路盤の不陸を整正するとともに、表層に加わる交通荷重を均等に路盤に伝達する役割を担う。

アスファルト混合物で構成されることが多く、表層を支える安定性と路盤のたわみに追従する柔軟性の両方が求められる。

路盤(Base Course)


上層路盤と下層路盤に分かれており、交通荷重をさらに分散して路床に伝達する。

上層路盤には砕石など高品質な材料を使用し、下層路盤には現地で経済的に入手できる材料を活用することが多い。路盤の品質は舗装全体の耐久性を大きく左右する。

路床(Subgrade)


主に土で構成された最下層部分で、舗装の荷重を最終的に支持する地盤である。舗装の下面から約1mの範囲を指し、CBR試験によって支持力が評価される。


CBR試験とは?

CBR(California Bearing Ratio)試験は、路床土の支持力を測定する標準的な試験方法である。

直径5cmの円形ピストンを土に押し込み、その時の抵抗力を測定して支持力を数値化する。

CBR値が高いほど地盤の支持力が強いことを示し、CBR値3%以上が一般的な道路建設の最低基準とされている。

この数値は舗装厚の設計に直接影響するため、道路建設において極めて重要な指標となっている。

路床の強度は舗装設計の基本条件となるため、適切な締固めが不可欠である。

車両向け道路舗装の主要3タイプ


道路舗装には、交通条件や環境条件に応じて選択される複数の工法が存在する。それぞれに特徴と適用範囲が異なるため、プロジェクトの要求に最適な工法を選定することが重要である。

アスファルト舗装


アスファルトに砕石・砂を混合し加熱した混合物を、道路基層上に敷き均してローラー転圧する工法である。日本の道路舗装の約90%以上を占める主流工法となっている。

メリット
  • 施工時間が短く、早期の交通開放が可能
  • 施工費用が比較的安価で経済性に優れる
  • 防水性・透水性の調整が容易

デメリット
  • 高温時の表面温度上昇によるヒートアイランド現象
  • 耐熱性・耐久性がコンクリート舗装に劣る
  • 定期的なメンテナンスが必要

コンクリート舗装


セメントコンクリート版を表層に持つ舗装で、重交通道路や長期耐久性が求められる区間に適用される。設計期間は一般的に20年と長期設定されている。

メリット
  • 表面温度の上昇が抑制され、環境負荷が少ない
  • 耐熱性・耐久性に優れ、長期使用が可能
  • メンテナンス頻度・費用が削減できる

デメリット
  • 施工に専門技術と時間を要する
  • 初期施工費用が高額になる
  • 追加工事や修繕が困難

特殊舗装


着色舗装
アスファルト表面に着色を施し、交通安全性の向上や景観との調和を図る舗装である。自転車道の区分表示や交差点での注意喚起に多用されている。

排水性舗装
道路表面の雨水を路盤に浸透させ、表面に水が滞留しない構造の舗装である。雨天時の走行安全性向上と交通騒音の低減効果が期待できる。

歩行者専用空間の舗装の種類


歩行者が利用する空間では、車道とは異なる要求性能に対応した多様な舗装材料が採用されている。

樹脂系混合舗装


アクリル樹脂やウレタン樹脂に顔料・骨材を混合した舗装で、優れた景観性と耐摩耗性を実現する。公園内の園路や歩行者専用道路での採用が増加している。

木質系舗装


廃木材や間伐材をチップ化してアスファルトと混合した環境配慮型舗装である。適度な弾力性により歩行時の快適性が向上し、ヒートアイランド現象の抑制効果も期待できる。

土系舗装


自然土を主材料とし、特殊エポキシ樹脂乳剤を混合した舗装で、土本来の風合いを保持できる。高い保水性により路面温度の上昇を抑制し、自然環境との調和が図れる。

ブロック系舗装


コンクリートブロックや天然石を敷設した舗装で、多彩なデザイン表現が可能である。部分的な補修が容易で、適切な施工により車両通行にも対応できる。

2層構造系舗装


基層にコンクリートやアスファルト層を設け、表面にタイルや天然石をモルタル貼りした舗装である。高いデザイン性と耐久性を両立できるが、コストと施工手間がかかる。

道路舗装の構造設計における5つの重要条件


適切な舗装構造を決定するためには、現場条件を総合的に評価し、各層の材料と厚さを最適化する構造設計が不可欠である。

路床条件の評価


CBR試験による地盤支持力の把握が設計の基本となる。CBR値が高いほど路床強度が高く、上部構造の設計に直接影響する。軟弱地盤では地盤改良や置換工法の検討が必要である。

交通条件の設定


設計期間10年における平均の1日1方向あたりの大型車交通量を基に舗装厚を決定する。交通量が多いほど強固な舗装構造が必要となり、特定の交通量と設計CBR値から標準的な材料厚さが算定される。

気象条件への対応


寒冷地では凍結による舗装への影響、温暖地では高温による流動対策、積雪地域では除雪作業による摩耗対策など、地域特性に応じた設計配慮が求められる。

材料条件の最適化


施工地域で入手しやすい材料を優先使用し、輸送コストを抑制する。下層から上層へ向かって高品質材料を使用し、各層の特性を活かした力学的バランスを確保する。

コスト管理の実践


新設時の工事費用(イニシャルコスト)を基本とし、重要路線では供用後の維持管理費用(ランニングコスト)も含めた長期的な総合評価を実施する。

道路舗装工事の標準的な施工手順を紹介


実際の舗装工事は、設計図書に基づいた綿密な施工計画により進められる。各工程での品質管理が最終的な舗装性能を決定するため、段階的かつ確実な施工が求められる。


(一般的な舗装構成と施工の順序/画像元:日本アスファルト協会WEBサイトより)


施工計画の策定


契約書と設計図書の確認、現場測量の実施、工程・資材・労務・安全対策の計画策定を行う。近年では働き方改革や環境保全への配慮も重要な検討項目となっている。

路床工事の実施


地盤を整形して締固め、交通荷重を支える基盤を形成する。タイヤローラーや振動ローラーによる入念な締固めにより、設計CBR値の確保を図る。

路盤工事の施工


路盤材料の敷き均しと締固めにより、必要な支持力を確保する。モーターグレーダーによる敷き均し後、ロードローラーやタイヤローラーで締固める。プライムコートとタックコートの適切な施工も重要である。

基層工事の展開


加熱アスファルト混合物をフィニッシャーで敷き均し、ローラーで締固める。温度管理が重要で、150~200℃で製造された混合物の温度低下に注意しながら作業を進める。

表層工事の完成


舗装の最上部として、交通安全性・快適性・機能性を確保する。基層より密度の高い材料を使用し、平坦性と美観性を重視した仕上げを行う。交通開放時の温度管理にも十分注意する。

まとめ


道路舗装は、安全で快適な交通環境を支える重要な社会インフラである。表面に見えるアスファルトやコンクリートの下には、精密に設計された多層構造が存在し、それぞれが重要な役割を果たしている。

建設業界では、交通条件・環境条件・経済性を総合的に判断し、最適な舗装工法を選定する技術力が求められる。また、施工段階での品質管理と適切なメンテナンス計画により、長期間にわたって舗装性能を維持することが重要である。

今後は環境負荷軽減や維持管理効率化の観点から、新材料や新工法の開発も進んでおり、建設業界として最新技術動向への対応も欠かせない。

道路舗装の基礎知識を体系的に理解し、実務に活かしていくことが、より良い社会インフラの構築につながるのである。




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デジコン編集部

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