コラム・特集
デジコン編集部 2026.4.2

能登半島地震から2年超。国交省が、令和7年度末時点の復旧・復興状況と今後の見通しをまとめた

CONTENTS
  1. 1. 復興まちづくり
    1. 復興計画の策定
    2. 輪島朝市周辺エリアの再建
  2. 2. 住まいの再建
    1. 応急仮設住宅(建設型)
    2. 災害公営住宅の整備
    3. 自力再建を目指す被災者向け支援
  3. 3. 上下水道
    1. 断水の解消と本復旧
    2. 新技術を活用した取り組み
    3. 分散型水道施設の導入支援
    4. 下水道区域から浄化槽区域への見直し
  4. 4. 道路
    1. 通行止め箇所の状況
    2. 能越自動車道・のと里山海道
    3. 国道249号沿岸部(権限代行区間)
    4. 除雪対策
    5. 能登半島絶景海道
  5. 5. 河川・土砂災害
  6. 6. 海岸堤防
  7. 7. 港湾
    1. 全港湾共通
    2. 輪島港
  8. 8. 和倉港・和倉温泉
  9. 9. 液状化災害
    1. 土地境界再確定加速化プラン
  10. 10. 空港・地域交通
    1. 能登空港
    2. 地域公共交通
  11. 11. 二地域居住
  12. まとめ
国土交通省は令和7年度末時点における「令和6年能登半島地震から2年」の復旧・復興状況と今後の見通しをとりまとめた。

本資料は、令和6年末に公表した同名文書を更新したものであり、令和6年9月の豪雨による被災分を含む各種事業の進捗が反映されている。

国交省は「二次災害に直結する切迫した被災箇所の応急対策は全て終了し、インフラの機能回復対策、本復旧などが順調に進捗」と全体状況を評価しており、暮らしやなりわいの再生に向けた動きが本格化しつつあるとしている。

以下、分野ごとの状況と今後の見通しを解説する。

1. 復興まちづくり



復興計画の策定


石川県が令和6年6月に公表した「創造的復興プラン」を踏まえ、対象となる全7市町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町、七尾市、志賀町、中能登町)において令和7年3月までに復興まちづくり計画が策定・公表された。

さらに、7市町のうち5市町11地区で復興まちづくりに関する地区別の整備計画が策定され、令和7年度中に一部地区では事業に着手済みとなった。

輪島朝市周辺エリアの再建


特に注目される輪島朝市周辺エリア(中心市街地地区)については、地元住民の合意形成のもと、令和8年春頃から夏頃にかけて順次、住宅や店舗の再建を可能とすることを目指し、土地区画整理事業等が実施されている。

対象区域は約4.8haであり、輪島港に隣接するエリアが整備対象となっている。

2. 住まいの再建


応急仮設住宅(建設型)


令和6年9月の豪雨で被災した218戸の修理も含め、必要戸数6,882戸全てが12月26日までに完成した。豪雨により新たに被災者向けに必要となった286戸についても、令和6年内に全て着工し、令和7年3月28日までに完成している。


災害公営住宅の整備


石川県および富山県の10市町で災害公営住宅を整備予定であり、必要戸数3,058戸全ての用地確保にめどが立った。

全ての市町が令和7年度末までに測量・設計等に着手し、うち8市町では施工事業者が決定した。

珠洲市・能登町・穴水町・七尾市・中能登町・羽咋市・氷見市の7市町では計約240戸程度の建設工事に着手済みであり、最も入居が早い地区では令和8年夏ごろに入居予定だ。

市町ごと・全ての地区の入居までの工程表は石川県ホームページで公表されている。

自力再建を目指す被災者向け支援


住宅金融支援機構(JHF)による「災害復興住宅融資」について、令和8年2月末時点での融資受理実績は344件。

月々の返済が利息のみとなる「高齢者向け返済特例(リバースモーゲージ型)」も提供されており、令和8年3月時点の融資金利は1.40%(全期間固定)、高齢者向け返済特例は2.18%となっている。


また、石川県と「いしかわ21世紀住まいづくり協議会」が連携し、住まいの再建イメージを示す「いしかわ型復興住宅」モデルプラン集を令和7年3月にとりまとめ・公表。応急仮設住宅に入居する全世帯等に対し同年5月の大型連休までに配布された。


令和8年5月までの完成を目指し、モデル住宅の整備も進められる予定だ。

3. 上下水道


断水の解消と本復旧


地震による断水は令和6年5月に復旧。令和6年9月豪雨で5,216戸が新たに断水したが、同年12月20日には全てが復旧した。上下水道の汚水処理機能については、いずれも確保済みとなっている。

水道施設の本復旧は令和10年度末までの完了を目指している。

新技術を活用した取り組み


本復旧における漏水調査を効率的かつ効果的に実施するため、衛星技術やデジタル技術が活用される。


能登地方6市町では、人工衛星を用いた漏水可能性箇所の絞り込み調査が実施された。また、珠洲市を実証フィールドとして、分散型システムに関する新技術の実証事業が実施されている。


住宅向け小規模分散型水循環システムの技術検証が進められており、珠洲市善野地区については小規模分散型水循環システムの設置が順次実施されている。

分散型水道施設の導入支援


令和8年度予算案において、水道事業者が分散型システムを導入する際に必要な施設計画策定や小型浄水施設の整備などを財政的に支援する制度が盛り込まれた。


人口減少を見据え、集約型の水道施設と分散型の水道施設のベストミックスを図っていく方針だ。

下水道区域から浄化槽区域への見直し


将来の人口減少を踏まえ、下水道施設に甚大な被害が発生した地域においては、復旧にあたり下水道区域から浄化槽区域への見直しを実施。

珠洲市では浄化槽での復旧を選択し、管路撤去・公共下水道区域の廃止手続きが完了している。

4. 道路


通行止め箇所の状況


県道以上で、地震により87箇所、令和6年9月の豪雨により48箇所の通行止めが発生した。

令和7年度末には計8箇所(地震6、豪雨2)まで減少した。令和6年9月の大雨直後から54箇所が解除されている。


能越自動車道・のと里山海道


能越自動車道等は令和7年内に震災前と同程度の走行性(急カーブ・段差の解消)を確保した。本復旧の見通しは以下の通りだ。

  • のと三井IC〜のと里山空港IC、徳田大津IC〜(仮称)病院西IC:令和9年春までの完了を予定

  • 残る区間:大規模崩壊箇所の崩土撤去及び大型構造物の施工等が順調に進んだ場合、令和11年春までの完了を予定

令和6年能登半島地震から5ヵ年程度での本復旧完了を目指し、一日でも早い本復旧完了に向けた工程短縮を図るとしている。

国道249号沿岸部(権限代行区間)


輪島市門前町〜珠洲市間の約53kmにわたる権限代行区間において、各工区で通行確保が段階的に進んだ。

令和7年度末時点の主な通行確保状況は以下の通りだ。  


  • 中屋トンネル工区:令和7年7月17日に一般交通の2車線通行確保済
  • 逢坂トンネル工区:令和7年12月23日に一般交通の1車線通行確保済
  • 大谷トンネル工区:令和7年12月19日に緊急車両等の冬期1車線通行確保済
  • 五十里深見線:令和8年3月25日に一般車両を含め通行確保済

権限代行区間約53km全区間の本復旧は、用地取得や大型構造物の施工等が順調に進んだ場合、令和11年春までの完了を予定している。

除雪対策


「能登地域冬期道路交通確保情報連絡本部」を継続して設置し、復旧・復興を止めないための除雪体制が強化されている。


小形除雪機械35台を国から市町に貸出支援するとともに、直轄の除雪基地では除雪機械の増強も実施されている。

能登半島絶景海道


令和7年12月8日に「能登半島絶景海道の創造的復興に向けた基本方針」がとりまとめられた。

国道249号や県道などの能登半島沿岸部を通る道路を対象に、滞在型観光の促進、「道の駅」の集客強化、サイクルツーリズムの活性化、魅力ある風景街道の創出などにより、国内外から人が集まる絶景海道の復興を目指すものだ。

5. 河川・土砂災害


令和6年能登半島地震により河道閉塞が生じた河原田川等、その後の令和6年奥能登豪雨で被災した塚田川・珠洲大谷川等において、令和7年6月までに暫定的な安全性を確保するための対策が完了した。

令和7年8月6日からの大雨では、暫定対策が効果を発揮し、河岸侵食や土砂流出の軽減、家屋浸水の防止等に寄与した。


出水期明けの令和7年11月から全ての河川の本格的な復旧工事に着手し、令和10年度末までに被災護岸等の本復旧および河道拡幅等の改良工事の完了を目指す。

県管理河川では、非出水期となる11月から人家が連担するなど優先度が高い22河川の本格的な復旧工事に順次着手しており、令和8年1月までに全河川着手済となった。

直轄砂防・地すべり事業の恒久対策については、県・市町の対策箇所も含め、令和11年度末までに全ての箇所での完了を目指す。

6. 海岸堤防


甚大な津波被害があった宝立正院海岸(珠洲市)では、権限代行による応急復旧を令和6年4月までに完了。


地元調整が整った地区から本復旧に着手し、令和7年9月に全地区着手となった。背後の復興まちづくりと調整を図りつつ、令和9年度中を目標に完成を目指す。

7. 港湾


全港湾共通


5港(七尾港、輪島港、伏木富山港、金沢港、直江津港)で国有港湾施設の災害復旧事業を実施。

8港(七尾港、輪島港、伏木富山港、飯田港、穴水港、宇出津港、小木港、和倉港)で港湾管理者等の災害復旧事業の一部を国土交通省が代行している。

段階的な復旧工事と完成した係留施設の最大活用により、令和7年の石川県全体の取扱貨物量は速報値で被災前を上回る水準まで回復した。

令和8年度末までに主要係留施設全ての本復旧完了を目指す。

輪島港


地盤隆起の影響が大きい輪島港では、もずく漁(令和6年7月)、刺し網漁(同年9月)、底引き漁(同年11月)、定置網漁(令和7年5月)が順次再開した。令和7年7月末からは舳倉島への定期船「希海(のぞみ)」も再開している。


国・県・市で連携して策定した「短期の復旧方針」を踏まえ、令和8年度中の可能な限り早期の本復旧完了を目指す。

8. 和倉港・和倉温泉


和倉温泉の護岸については令和6年12月20日に本復旧工事に全面着工。令和7年12月に約100mが概成した。


被災した和倉温泉旅館20軒のうち、令和8年3月末までに9軒が再開した。残る11施設については令和8年度以降に営業再開等を予定している。

今後は能登地域を対象とした復興応援割の実施が検討されている。

9. 液状化災害


令和6年10月に国が内灘町・かほく市へ液状化対策方針案を策定・提示し、他の対象市町(金沢市、羽咋市、高岡市、氷見市、射水市、新潟市)においても、令和7年3月末までに液状化対策を盛り込んだ復興計画が策定された。


被災自治体において順次、実証実験が進められ、早いところでは令和7年12月に対策工事に着手している。

土地境界再確定加速化プラン


液状化により土地境界が不明確となった地域に対応するため、「土地境界再確定加速化プラン」(令和7年9月策定、令和8年1月改訂)に基づき取り組みが進んでいる。

土地所有者の協力などを得て境界確認等がスムーズに進んだ地域では、国・自治体・土地家屋調査士等の関係者が連携して取り組み、境界確定に向けた調査を最短で令和8年度中に完了することを目指している。

10. 空港・地域交通


能登空港


2024年1月27日より民間航空機が運航再開。2024年12月25日からは震災前と同様、一日2便での運航が実現した。


エプロン(駐機場)は復旧を完了し2025年8月9日から使用開始となった。大規模災害復興法に基づく石川県からの要請を受け、国土交通省が本格的な復旧工事を代行しており、引き続き早期の完成を目指している。

地域公共交通


奥能登地域を除き、発災前のサービス水準まで概ね回復した。金沢〜能登間はJR七尾線・のと鉄道ともに震災前ダイヤに復旧している。


令和6年9月からは能登空港をハブとする特急バスの実証運行が開始し、輪島市へは6往復/日、珠洲市へは4往復/日、能登町へは3往復/日を運行中だ。

広域的な地域公共交通の再構築に向けて石川県能登地域公共交通協議会が設置されており、令和7年3月25日に金沢と各市町を結ぶ広域基幹交通の構築に関する第一次計画、令和8年3月26日に市町を結ぶ幹線交通や地域内交通の再構築に関する第二次計画が策定された。


令和8年秋頃をめどに各市町共通のAIオンデマンド交通の実証運行開始が予定されている。

のと鉄道については「鉄道事業再構築実施計画」に基づき、電気式気動車の導入や観光列車「のと里山里海号」の運行再開等の施策が実施される。

11. 二地域居住


石川県は関係人口の拡大等を目指し「石川県関係人口官民連携協議会」を設置。令和7年11月1日に二地域居住者を含む関係人口を見える化し地域とマッチングするポータルサイト「いしかわのWa!」をリリースした。


モデルプログラムの造成支援や関係人口の受入促進に向けた人材育成を行った結果、約100件のプログラムが造成・掲載され、令和8年3月末時点では1,000人を超える関係人口(登録者)を創出した。

まとめ


令和7年度末時点において、能登半島地震の復旧・復興は分野によって進捗の度合いに差はあるものの、全体として着実な前進が確認できる状態にある。

建設・インフラの観点で特に注目されるのは以下の点だ。

港湾の取扱貨物量が被災前水準を上回る形で回復しており、物流面での正常化が進んでいる。道路については、国道249号沿岸部・能越自動車道の本復旧目標を令和11年春と明示したことで、施工計画の長期的な見通しが立ちやすくなった。

また、漏水調査への衛星技術・デジタル技術の活用、小規模分散型水循環システムの実証、AIオンデマンド交通の実証運行計画など、復興の過程で新技術の実装が同時進行している点は、デジコンが注目するICT・DX活用の具体例として引き続き動向を追いたいテーマである。

輪島朝市周辺の再建着手が令和8年春〜夏に予定されていることは、被災地において暮らしとなりわいの再生に向けた動きが本格段階に入ることを示すものであり、それを支えるインフラ整備の継続が引き続き重要となる。




参考・画像元:国土交通省:「令和6年能登半島地震から2年」の復旧・復興状況と今後の見通し(令和7年度末時点)」(令和8年3月)より/同参考資料(国土交通省 大臣官房技術調査課・各局)
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デジコン編集部

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