コラム・特集
高橋 奈那 2021.4.30

「若手でも未経験者でも、即戦力!」 レトロフィットキットがナガヤス工業(埼玉)にもたらした、新たな可能性とは

埼玉県・草加市に拠点を構え、創業以来45年間地域の建設事業に貢献してきた「ナガヤス工業株式会社」。現在、25名の従業員を抱え、積極的にICT技術を活用されています。

今回は、ランドログマーケティングが販売する「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」の導入に踏み切ったナガヤス工業に、導入に至る経緯やICT技術を活用したこれからの働き方についてお聞きしました。

「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」は、さまざまなメーカーの油圧ショベルに、後付けすることでICT建機化ができる製品。

お話していただいたのは、代表取締役 大根田 長政氏と未来の土木推進室 室長の佐々木 貴幸氏です。

「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」を始めとする
 ICT機器が、人材採用にも良い影響を与えてくれた


ーー 「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」をご購入されたということで、導入を決めた経緯についてお聞かせいただけますか?

ナガヤス工業株式会社  代表取締役 大根田 長政氏

大根田氏:これまでは弊社では、レンタルやリースなどでICT建機を借りて、施工を行っていました。利便性の高さは十分に理解していましたし、ぜひ自社でもICT建機を持ちたかったのですが、価格がネックになっていました。スマートコンストラクション・レトロフィットキットであれば、費用を抑えられるうえに、自社にある建機に後付するだけでICT化できるということは聞いていたので、実はずっと発売を心待ちにしていたんですよ。

「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」の取付工事日に取材に伺った

ーー では、以前から「施工」以外ではICT化はされていたのですね?

大根田氏:UAVと3Dスキャナーを使ったICT測量を導入していました。処理ソフトを購入し、3次元データの作成も自社で行っています。測量とデータ作成のプロセスを内製化できていたので、「施工」でも自社機で普段使いをしたいと考えるようになりました。

 
 
ーー なるほど。「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」のご購入前にICT建機を試されたことはありましたか?

佐々木氏:
レンタルでICT建機を活用することは多々ありました。実際に動かしてみると、経験の浅い若手でも現場で建機を不自由なく動かせていたので、これならレトロフィットキットを導入しても大丈夫だろうと確信を持つことができました。

ナガヤス工業株式会社   未来の土木推進室 室長 佐々木 貴幸氏

ーー 利便性を理解した上で購入に踏み切ったと。ただ「レンタルやリースのままでもよかったのでは?」とも考えてしまうのですが、その辺りはいかがでしょうか?

大根田氏:借りたいときに借りられない。それにいくらレンタルといっても、安くはありません……。工期中は継続して借りなければいけませんが、毎日フル稼働しているわけではないので、動かさない時にも費用が発生していることになります。正直、もったいないなと感じていました。




ですが、後付けではないICT建機を自社で購入するとなると、何千万単位になってしまいます。コストを抑えて、自社にある建機をICTにできる「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」は非常に魅力的でしたね。

ーー 御社がそこまでICT技術の導入に積極的になるのには、何か理由があるのでしょうか?

大根田氏:
土木建設業では、人手不足が大きな課題になっていますよね。そんな背景の中でも、弊社には若い世代の業界未経験者が入社してきてくれているんです。ホームページなどでICT技術を活用していることを知った方が、興味を持ってくれて。ICT化を進めることで、若い世代の人にもっとナガヤス工業やこの業界に興味を持ってもらえる可能性があるのではないかと思っています。

それに業界未経験で来てくれた中途の社員も、入社のわずか数カ月後には一人で測量データをとってデータ加工までできるようになっているんです。業界未経験でもICT技術があれば即戦力になれるということです。

ーー それはすごい。業界未経験者って本当に土木知識ゼロの方も入社されているのですか?

大根田氏:前職が美容師や公務員などさまざまなんですよ。いまは20〜40代の方が入ってきてくれています。一般的に建設土木というと、「体力!根性!」というイメージが染み付いているのですが、もっとスマートに働ける仕事だと伝わればそれが応募につながるのかなと感じています。

ーー 御社では、ICTの活用によって人手不足の問題が解決できているのですね。

大根田氏:現実的になってきましたね。ICT技術を導入して実際に思うのは、年齢や性別、経験の有無に左右されず、その人が本来もっている能力や視点を活かして活躍してもらえるということ。今回導入した「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」を始め、ICT技術は作業の棲み分けをして、その人にしかできない業務に特化するための画期的なツールなんです。


いま当社では、「3次元管理で実現させる生産性向上と多様な人材の戦力化」に取組んでいます。「体力や根性」で勝負しなくても活躍できることを伝えていきたいんです。業界未経験でも、社会人経験があるだけで、それってものすごい価値です。当社がICTを活用することで、異業種から中途入社した方の前職の経験すらも生かせるようになると思うんです。

この業界のネガティブなイメージを、ポジティブに


ーーICT化により能力の差をなくして、本来その人がもっているスキルを生かすきっかけになるということでしょうか。

大根田氏:そうです。こちらの社員構成のグラフを見てください。このX軸が年齢、Y軸が経験年数を表しています。一番右でいうと、60歳くらい。経験は正比例していますよね。しかし若手になると、未経験者でも採用しているので年齢と経験が比例しなくなっています。


かつての「体力と根性」の仕事では、せっかく土木をやってみたい社会人経験のある方が中途できてくれても、ゼロから時間をかけて技術を学ばなければ、活躍することはできないんです。もったいないですよ。新しい風を取り入れることができず、閉じた業界になってしまうでしょう。

ーー 業界全体の課題ですね。ですが、御社が予算をかけてまでそこに注力するのは、なぜなのでしょうか。

大根田氏:経営自体はおかげさまで順調なんです。しかし先を見据えると、課題だらけです。20年後には、いま弊社の第一線で働いている技術者はほとんど退職してしまいます。日本全体で考えても、少子高齢化で働く世代が減っていきますよね。

その上、土木学科が学生の募集を停止する学校も徐々に出てきている。教育の場が少なくなると、業界への間口がもっと狭くなってしまいます。単に労働者を増やすためではなく、「この業界で働きたい!」と想いを持った若者が増えるように。

そして、この仕事が「かっこよくて面白い仕事」だと知ってもらうために、もっと私たちも発信していかなければいけないと思っています。弊社が他社と比較してどうこう言う前に、業界を盛り上げたいんです。

ーー 大根田さんがこの業界に対して、そこまでエネルギーを注ぐようになったきっかけは何かあるのですか?

大根田氏:弊社は、父が職人時代に立ち上げた会社なんです。私も小さい頃から父の仕事場を遊び場にしていたので抵抗はありませんでしたが、一方で世間的には業界のイメージがあまりよくないことも感じていました。

男社会で体育会系。どちらかというと怖いイメージがありますよね。でも、私は若い頃に、アフリカや南米など、様々な国を旅したのですが、道路がきちんと舗装されていて目的地にたどり着けること、蛇口をひねってきれいな水が出ること。


そんな日本では当たり前の光景が、世界では全然当たり前じゃない。でも帰国するとその価値は空気のように当たり前のことで、誰も気にもとめない。当たり前を作ってくれている技術者がいることに、あらためて気がついたんですよ。

ーー お父様が先代ということは、後を継ぐために大根田さんご自身は学生時代から土木を学ばれていたのですか?

いえ、実はグローバルな環境で働きたいと思っていたので、大学では国際政治経済学を専攻していました。もともとは文系なんですよ(笑)。新卒の時は海外事業に強いゼネコンに入社して現場支援業務を担当。その後、転職してITベンチャー企業に勤務したのち、退職して半年間いろいろな国を旅してまわりました。ナガヤス工業へ入社したのはその後ですね。

ーー 様々な場所で培った経験が、いまの事業方針に生かされているのですね。

大根田氏:業界も会社も変えたいし、私自身も日々アップデートしなければいけないです。私たちの仕事は、世間からはなかなか見えづらい仕事ですが、社会を支える意義のある仕事です。でも、これからも長きに渡り支え続けるためには、その方法を考え、実行しなければいけないところにきています。そのためには生産性を上げて、誰でも活躍できる環境に変えていかなければいけない。


ナガヤス工業で効率化に取組むのは、そのためでもあります。損益のために仕事上の生産性を上げることだけを目標にするのではなくて、働く人のために仕事もプライベートも充実できる環境に変えていきたいんです。

「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」を始めとする
 ICT機器が、やりがいを感じられる、楽しい職場に変えてくれる


ーー もう少しICT施工についてお聞かせください。業界未経験の中途社員の方々にとって、ICT施工はどのようなメリットがあるでしょうか?

大根田氏:この業界って、“オペレーターになるためには手元をやれ”と言われるんです。スコップで掘削する手元で、掘る中で土の硬さを知ったり、埋設物への配慮ができるようになる。

手元がそこにいるから、建機を動かすことができる。だからこそ、建機を操縦する前に、現場の手元感覚を覚えることが大切なんです。でも手元は体力勝負で、きついんです。操縦席に辿り着く前に辞めてしまうんです。でも、ICT建機なら、手元を知るプロセスを後回しにすることができるんです。


ーー その手元感覚って、オペレーターとしては大きな価値になるのではないかと思うのですが、後回しにしても良いのでしょうか?

大根田氏:もちろん大事です。やっぱり最後に頼りになるのは自分の視点や感覚ですから。でも、続けることの方がいまは大切。早い段階で、この仕事を楽しいと思ってもらえるじゃないですか。弊社では若手が建機を操りベテランが手元をしながら指導をするようにしています。ICT建機が成せる技です。順番が逆になりますが、手元の感覚は後々身についてきます。機械にできるところはどんどん置き換えて、その人にしかできない手作業を大切にできるようにしてほしいですね。

ーー 実務経験が増えることも、新人にとっては大きいですよね。

佐々木氏:現場の視点からいうと、新人でも扱えるという点だけでなく、現職の技術者にとっても非常に便利なんですよ。具体的な作業として、丁張りが不要になるので、効率も良いです。


残業がなくなり、拘束時間も短くなります。それに、丁張り作業が終わるのをただ待っているという無駄もなくなります。弊社ではすでに、繁忙期以外には週休2日を安定的にとれるようになってきていますし、繁忙期でも、弊社独自の休日を設けて休めるようにしています。

いまはどこの会社でも就労環境について指導が入るようになってきますが、弊社はそれに先駆けて優先的に休暇を取れるようにしています。

ーー休みたくても、業務が終わらなければ休めないというジレンマを、ICTが解決しているんですね。

佐々木氏:新人が早くから現場に入って業務に参加できれば、熟練者にだけ業務が集中することも避けられますし、全員にとって大きなメリットがありますね。また、時間だけでなく、人数的にもだいぶコンパクトにできますね。

測量に関していえば、これまで2〜3人単位で現場に入って測量していたところが、1人でも可能になりました。測量結果さえあれば現場を把握できますし、しかもそれを、経験の浅い新人が一人で出来る。これは、今まででは考えられないことですよ。

ーー実際に中途で入った新人の方々の働きぶりを見ていてどうですか?

大根田氏:測量にもどんどん行ってもらっていますし、入社して1年以上経っても辞めずに活躍してくれている時点で、ICT化による効果を実感しています。レトロフィットキットも導入したことですし、今度、新しく受注した現場の施工にも、挑戦してもらおうかと考えているんですよ。

ーー ICT化による若手の活躍といっても、一筋縄ではいかないイメージがありましたが、御社ではそこまで活躍の場を増やしているんですね。

大根田氏:そうですね。測量に続き施工でも、やりがいを感じてもらいたいですね。それに、社内的にもプラスの効果が出ているんですよ。年配の作業員が、一生懸命教えて若手を育てようと主体的に動いてくれています。

これまでの価値観ですと、技術は「盗め」と言われていたのですが、それを「育てよう」としてくれています。とてもいい傾向ですよ。会社としても、全社員を対象にした勉強会を定期的に開いて、知識や技術の底上げに取組んでいます。


佐々木氏:勉強会で若手に説明していて思うのが、ICT機器は若い世代の方がアッサリ使いこなせるということ。これをやればこう動くだろうっていうのが、きっと、感覚的にわかるのでしょうね。吸収が早いので、頼もしいです。

私も年齢的に、徐々に現場に出るのがきつくなってくると思いますが、ICT技術を活用することでまだまだ仕事ができるなという安心感もありますね。若手が現場で多くの機会を得て、高齢の技術者も長く働ける。ICT化にはたくさんのメリットがありますよ。




ナガヤス工業株式会社
〒340-0002 埼玉県草加市青柳8-57-43
TEL:048-933-3711 受付時間/平日 9:00~17:00
HP: http://www.nagayasu.co.jp/


建機に後付け、使い慣れた油圧ショベルが、最新のICT建機に。「スマートコンストラクション・レトロフィットキット 」
https://ll-m.co.jp/scretrofit


取材:デジコン編集部/ 文:高橋 奈那 / 撮影:宇佐美 亮
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WRITTEN by

高橋 奈那

神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。

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