導入事例
デジコン編集部 2020.7.20

建設・土木現場のドローン活用例5選

ICTによる建築・土木現場の効率化=i-Constructionが推進されるなかで、導入が進んでいるのが、UAV(Unmanned Aerial Vehicle=無人航空機、通称:ドローン)だ。

どういった現場において使われ、役立っているのだろうか。

これだけある! ドローン導入によるメリット


建設現場でドローンが最も活用される場面は、現場の撮影および測量だ。着工前に、ドローンに積んだカメラで撮影、地形を把握するために現場の距離・角度・高度を測る。

さらには、当初設計したとおりにできあがっているか確かめる、出来形管理のための撮影・測量もある。竣工後ということでいえば、構造物の点検作業に使われることも増えてきた。

ドローン導入によるメリットは、なんといっても作業の効率化だ。

大がかりな作業を経ずに検査することができるうえ、専門職による人力か、航空機を活用するなどしか方法がなかった測量・検査での人材不足・高コストも解消できる。

さらには、なかなか人が立ち入れない場所へも入ることができるため、きめ細かで確実な測量・検査ができるようになったのだ。

現在ではドローン技術の進歩によって、新たな試みも持ち上がっている。代表的な導入・開発例を紹介していこう。

測量時間をさらに短縮! フジタ「デイリードローン®」



株式会社フジタが開発している「デイリードローン®」は、それまでの人力・飛行機測量に比べて大幅に時間が短縮されているドローンでの測量を、さらに短縮するための技術だ。

ドローンでの測量の流れを簡単に説明すると、
  1. 飛行ルートの設定
  2. 評定点・基準点を設置し、座標データ入力
  3. ドローンで空撮
  4. 写真から点群データを収集し、解析
  5. データから3Dモデル化
ということになる。

「デイリードローン®」では、エアロセンス株式会社が開発したGPS測位機能付き対空標識「エアロボマーカー」によって、2の評定点の設置、座標データ入力の手間を減らし、4の点群データの解析作業を短縮。毎日の作業終了後にドローンを飛ばし、土量算出を当日中に完了できるようになった。

フジタによれば、それまでのドローンによる測量・解析時間の3分の1になったという。すでに「デイリードローン®」は、山梨県のトンネル工事などで導入されている。

さらにフジタではこの技術を進めて、評定点が不要となるRTK(リアルタイム・キネマティック)搭載の「デイリードローンRTK」の開発を進めており、さらなる作業の効率化を目指している。

フジタ「デイリードローン®」
https://www.fujita.co.jp/solution-and-technology/detail/post_102.html

3Dレーザスキャナ搭載のドローン測量



鹿島建設株式会社が株式会社ニコン・トリンブル、ルーチェサーチ株式会社との共同で開発したのが、3Dレーザスキャナを搭載したドローンでの測量だ。

ドローンの写真による測量の場合には高低差のある複雑な地形や、大きな樹木がある場合に精度を欠くケースが見受けられたが、レーザスキャナによってそのデメリットを克服。基準点の設置もいらないため、大幅な時間短縮にもつながる。

2019年に、大分川ダム建設工事で計測し、それまでより短時間の飛行で、高精度なデータを取ることに成功。これからの広まりに期待が高まっている。

鹿島建設「ドローンによるレーザ測量」
https://www.kajima.co.jp/tech/c_ict/surveying/index.html#!body_01

施工管理もドローンにおまかせ「ドローン施工管理くん」



ドローンは、それまでなかなか難しかった現場の俯瞰写真を撮影し、現場状況の確認も可能にした。しかし、ドローンの操縦には慣れが必要で、なかなか導入に踏み切れない、という声も少なくないと聞く。

そこで、株式会社CLUEが開発したのが、「ドローン施工管理くん」というアプリ。iPadのワンタップで自動操縦して巡回でき、クラウド上で進捗状況を共有、仮設設備の安全確認や施工ミスの早期発見など、ドローンひとつで施工管理ができるというものだ。

ドローン本体・アプリから、飛行許可申請や保険も含めて導入できるサービスとなっている。

CLUE「ドローン施工管理くん」
https://www.drone-sekoukanri.com/


デンソーによるドローンでの橋梁点検サービス



先に挙げたとおり、ドローンは人間が立ち入り困難な場所でも活用できる。そのメリットを活かして、近年はさまざまな構造物の点検にも活躍の場を広げている。

そんななか、自動車部品開発で有名な株式会社デンソーが、2019年からドローンを使った橋梁点検サービスを開始した。

デンソーでは、プロペラの角度を可変させることで、安定した状態で撮影対象に近づけるという独自技術を駆使したドローンを生み出している。そのドローンを使って橋梁を撮影することで、一部目視点検のかわりにすることを可能にした。さらに、独自のAIによって写真を解析、クラックなどの損傷部分を自動的に解析し、調書を作成してくれるのだ。

作業員の安全が確保されるだけでなく、「橋梁点検車による道路交通規制に伴う渋滞の軽減」(※1)という自動車部品メーカーならではの気遣いが見られるのも独自性だろう。

※1「デンソー、UAVを活用した橋梁点検サービス開始 | ニュース | DENSO - 株式会社デンソー / Crafting the Core /」
https://www.denso.com/jp/ja/news/news-releases/2019/20191029-01/
デンソー「橋梁点検サービス」
https://www.denso.com/jp/ja/about-us/business-fields/newbusiness/surveying/

ついに資材も運べるように!? 大林組+スカイドライブ「カーゴドローン」



建設・土木の現場につきものなのが、重い資材の運搬作業。無人搬送車=AGV(Automated Guided Vehicle)など、さまざまな技術が開発されているが、山間部や急な傾斜地などへの運搬は、いまだ困難を極めている。

そこで、株式会社大林組と株式会社SkyDriveが共同で研究をはじめているのが、「カーゴドローン」。まだ実用化に向けた検証を行っている最中ではあるが、2019年12月の実験では、30kg程度の建設資材を安定飛行で運べるようになった。最大荷重が少ないと思われてきたドローンだが、作業員が減少し、その高齢化が危惧される時代の救世主となる日は近いかもしれない。

大林組「重量物運搬ドローンの建設現場での実用化に向けた検証をスカイドライブ社と実施」
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20200213_2.html
SkyDrive「大林組と重量物運搬ドローン『カーゴドローン』の建設現場における実証検証を開始」
https://skydrive2020.com/archives/1243

まだドローンは開発途上!


ひとくちにドローンといっても、さまざまな運用をされていることがおわかりいただけただろうか。

とはいえ、ドローンは建築・土木の現場に導入されて日が浅い。ドローン本体自体も開発途上にあり、これから先、もっと現場とマッチング技術をともなって、さらなる活用法が生み出されることに期待したい。
印刷ページを表示
WRITTEN by

デジコン編集部

建設土木のICT化の情報を日々キャッチして、わかりやすく伝えていきます。

建設土木の未来を
ICTで変えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を案内するメールマガジンが購読できるほか、会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。