コラム・特集
最新のICT技術・工法がまとめて学べる「建設技術展示館」を見学してきました
建設・土木の関連企業が一堂に会し、新技術を披露する場というのは、年に数回開催される展示会やイベントが一般的。
しかしこうした期間限定のイベントではなく、通年・常設で様々な建設・土木の新技術の展示を行っている施設があることをご存知だろうか?
それが、千葉県・松戸市にある「建設技術展示館」だ。建設技術に関する情報提供および新技術の活用を促進するため、技術者はもちろんのこと一般の方から学生、専門家まで幅広い方々に、公共事業等で活用される技術や新技術を一覧出来るとともに、必要な時に『見て』『触れて』『体験して学べる』場として平成11年(1999年)より運営している。
日々進化する建設技術に対応するため、約2年ごとにリニューアルを重ねており、2020年度は第15期として「Society5.0を実現する技術」「防災・減災・国土強靱化、インフラ長寿命化技術」「X-Techを実現する技術」に主眼を置いた展示を行うという。
今回、関東地方整備局・関東技術事務所 、技術情報管理官 増尾健氏(※2020年3月現在の所属)に館内を案内して頂き、館の存在意義や2年前のリニューアルの狙い、そして、今後の取り組みなどについて伺った。
――予想以上に大きな施設で驚いているのですが、まずお聞きしたいのは、建設術館展示館は、どのような施設なのでしょうか?
現在展示中の第14期の展示コンセプトについて説明させていただきます。「担い手確保に関する展示コーナー」「生産性向上に関する展示コーナー」「防災・パネル展示」「建設技術年表」「ふれあいコーナー」「各種セミナー等実施コーナー」。この6つのコーナーで構成されています。建設・土木業界はご存知の通り、労働者不足や高齢化、さらには3K(きつい、汚い、危険)など問題が山積しています。
こうした課題を解決するために、国土交通省では2016年よりICT化により業界の生産性向上を狙う「アイ・コンストラクション」を推進しているのですが、当館でも2年前から、「生産性向上」と「担い手確保」に力を入れた展示に大幅に変更しました。とくに、アイ・コンストラクションに関する生産性向上を実現する企業・団体の技術・工法を紹介するブースは約50を数え、当館で一番割合が多くなっています。
―― 一度に様々な企業・団体のICTの技術・工法を知ることができるのは確かになかなかないですよね。どのような方が来館されることが多いですか?
やはり、建設・土木の関係者や建設コンサルタントの方が多いですね。あとは、大学生や専門学生、工業高校の生徒さんなども授業の一環として学習しに来られています。普段は基本的には展示物を自由に観覧していただくだけですが、団体見学の方ですと事前に当ホームページからお申し込みいただき「この企業のこの技術を詳しく説明してほしい」とリクエストを頂ければ、出展企業さんと調整して、担当者から直接、説明をしてもらうこともできますよ。
2年前にリニューアルをしてからは、ICT関連の説明を聞きたいとお問い合わせを頂く企業さんが増えていますね。どうしても業界の大型イベントや展示会ですと、商談ベースでの話になってしまったり、他のお客さんがいてゆっくり話を聞けなかったということも多いかと思うんです。
でも当館であれば、団体見学で企業の説明を受ける場合も、営業的な話でなく、説明する企業側もニュートラルな立ち位置でレクチャーしてくれます。もちろん、説明会後に具体的な導入に向けた話に進んで頂くことも可能です。
―― 企業のICT技術への関心というのは、着実に高まっているのですね。
そうですね。それは感じております。最近では中国や韓国、東南アジアなどの建設・土木業に従事されている方や企業の方が、日本のICT技術・工法を学ぶために来館して頂くことも増えました。また展示や説明会だけでなく、講習会も開催しています。
とくに、アイ・コンストラクションに関する技術講習会はとても好評です。当館の「各種セミナー等実施コーナー」での座学だけでなく、実際にICT建機や最新の測量機器を操作(別会場で実施)したり、BIM/CIMで3次元データを作成していただいたりするのですが、ICT機器を使ったことのない方からは、「こんなに便利なんだ」「楽ですね」といった感想をいただいています。
――「建設展示技術館」の今後の取り組みをお聞かせください。
当館は2年に1度リニューアルをしておりまして、今年度(2020年度)がその年になります。アイ・コンストラクションを推進するための展示というのは引き続き強化していきたいと考えております。
やはり、まだまだICT技術や工法に馴染みのない業界の方や企業さまも多いので、そんな方に、ぜひ一度、当館に足を運んでいただき、見て、触れて、学んで、ICTの良さを体感していただきたいです。
あとは、これからの建設・土木業界、ひいては社会を担う、小中学生、高校生、大学生などに来ていただけるような、建設イベントや展示も考えていきたいですね。若い方に業界の魅力を知ってもらうことが、まわりまわって、この業界の発展につながると思いますので。
増尾氏に館内をゆっくり案内していただき、「担い手確保に関する展示コーナー」と「生産性向上に関する展示コーナー」だけでも約60以上の企業・団体のブースがあり、その数の多さに驚いた。
とくに「生産性向上に関する展示コーナー」は「ICT施工システム」「測量技術」「設計システム」「計測技術」「施工機械」「管理システム」「施工技術」「維持管理技術」「災害対応」と工種によってカテゴライズされており、見やすい工夫がされている印象。
館のホームページで予約をすれば各企業・団体のブースの説明を受けられることは、本文でも記載したが、日程の都合さえつけば複数のブースの説明を1日で受けることが可能なのだそう。またふだんは中々見ることのできない災害対策車両や実際に被災した橋梁などの説明も受けられるとのことであった。
また民間企業の最新テクノロジーだけでなく、自治体・大学などが7機関が出展しており、あまり知る機会がない自治体や大学などのICT化推進のための取組みも興味深かった。
取材・文:デジコン編集部
撮影:宇佐美亮
しかしこうした期間限定のイベントではなく、通年・常設で様々な建設・土木の新技術の展示を行っている施設があることをご存知だろうか?
それが、千葉県・松戸市にある「建設技術展示館」だ。建設技術に関する情報提供および新技術の活用を促進するため、技術者はもちろんのこと一般の方から学生、専門家まで幅広い方々に、公共事業等で活用される技術や新技術を一覧出来るとともに、必要な時に『見て』『触れて』『体験して学べる』場として平成11年(1999年)より運営している。
日々進化する建設技術に対応するため、約2年ごとにリニューアルを重ねており、2020年度は第15期として「Society5.0を実現する技術」「防災・減災・国土強靱化、インフラ長寿命化技術」「X-Techを実現する技術」に主眼を置いた展示を行うという。
今回、関東地方整備局・関東技術事務所 、技術情報管理官 増尾健氏(※2020年3月現在の所属)に館内を案内して頂き、館の存在意義や2年前のリニューアルの狙い、そして、今後の取り組みなどについて伺った。
平成30年度(2018年度)よりICT技術・工法を扱う企業・団体のブースを拡充
――予想以上に大きな施設で驚いているのですが、まずお聞きしたいのは、建設術館展示館は、どのような施設なのでしょうか?
現在展示中の第14期の展示コンセプトについて説明させていただきます。「担い手確保に関する展示コーナー」「生産性向上に関する展示コーナー」「防災・パネル展示」「建設技術年表」「ふれあいコーナー」「各種セミナー等実施コーナー」。この6つのコーナーで構成されています。建設・土木業界はご存知の通り、労働者不足や高齢化、さらには3K(きつい、汚い、危険)など問題が山積しています。
こうした課題を解決するために、国土交通省では2016年よりICT化により業界の生産性向上を狙う「アイ・コンストラクション」を推進しているのですが、当館でも2年前から、「生産性向上」と「担い手確保」に力を入れた展示に大幅に変更しました。とくに、アイ・コンストラクションに関する生産性向上を実現する企業・団体の技術・工法を紹介するブースは約50を数え、当館で一番割合が多くなっています。
団体見学であれば、各出展企業の説明を直接受けられる。
―― 一度に様々な企業・団体のICTの技術・工法を知ることができるのは確かになかなかないですよね。どのような方が来館されることが多いですか?
やはり、建設・土木の関係者や建設コンサルタントの方が多いですね。あとは、大学生や専門学生、工業高校の生徒さんなども授業の一環として学習しに来られています。普段は基本的には展示物を自由に観覧していただくだけですが、団体見学の方ですと事前に当ホームページからお申し込みいただき「この企業のこの技術を詳しく説明してほしい」とリクエストを頂ければ、出展企業さんと調整して、担当者から直接、説明をしてもらうこともできますよ。
2年前にリニューアルをしてからは、ICT関連の説明を聞きたいとお問い合わせを頂く企業さんが増えていますね。どうしても業界の大型イベントや展示会ですと、商談ベースでの話になってしまったり、他のお客さんがいてゆっくり話を聞けなかったということも多いかと思うんです。
でも当館であれば、団体見学で企業の説明を受ける場合も、営業的な話でなく、説明する企業側もニュートラルな立ち位置でレクチャーしてくれます。もちろん、説明会後に具体的な導入に向けた話に進んで頂くことも可能です。
アイ・コンストラクション技術講習会は好評を得ている
―― 企業のICT技術への関心というのは、着実に高まっているのですね。
そうですね。それは感じております。最近では中国や韓国、東南アジアなどの建設・土木業に従事されている方や企業の方が、日本のICT技術・工法を学ぶために来館して頂くことも増えました。また展示や説明会だけでなく、講習会も開催しています。
とくに、アイ・コンストラクションに関する技術講習会はとても好評です。当館の「各種セミナー等実施コーナー」での座学だけでなく、実際にICT建機や最新の測量機器を操作(別会場で実施)したり、BIM/CIMで3次元データを作成していただいたりするのですが、ICT機器を使ったことのない方からは、「こんなに便利なんだ」「楽ですね」といった感想をいただいています。
ICT技術の素晴らしさを発信し続けていく
――「建設展示技術館」の今後の取り組みをお聞かせください。
当館は2年に1度リニューアルをしておりまして、今年度(2020年度)がその年になります。アイ・コンストラクションを推進するための展示というのは引き続き強化していきたいと考えております。
やはり、まだまだICT技術や工法に馴染みのない業界の方や企業さまも多いので、そんな方に、ぜひ一度、当館に足を運んでいただき、見て、触れて、学んで、ICTの良さを体感していただきたいです。
あとは、これからの建設・土木業界、ひいては社会を担う、小中学生、高校生、大学生などに来ていただけるような、建設イベントや展示も考えていきたいですね。若い方に業界の魅力を知ってもらうことが、まわりまわって、この業界の発展につながると思いますので。
「建設技術展示館」の見学を終えて
増尾氏に館内をゆっくり案内していただき、「担い手確保に関する展示コーナー」と「生産性向上に関する展示コーナー」だけでも約60以上の企業・団体のブースがあり、その数の多さに驚いた。
とくに「生産性向上に関する展示コーナー」は「ICT施工システム」「測量技術」「設計システム」「計測技術」「施工機械」「管理システム」「施工技術」「維持管理技術」「災害対応」と工種によってカテゴライズされており、見やすい工夫がされている印象。
館のホームページで予約をすれば各企業・団体のブースの説明を受けられることは、本文でも記載したが、日程の都合さえつけば複数のブースの説明を1日で受けることが可能なのだそう。またふだんは中々見ることのできない災害対策車両や実際に被災した橋梁などの説明も受けられるとのことであった。
また民間企業の最新テクノロジーだけでなく、自治体・大学などが7機関が出展しており、あまり知る機会がない自治体や大学などのICT化推進のための取組みも興味深かった。
取材・文:デジコン編集部
撮影:宇佐美亮
WRITTEN by
建設土木の未来を
ICTで変えるメディア