コラム・特集
平田 佳子 2025.3.11

コンクリートを構成する4大材料とは?〜 セメント・水・骨材・混和材料の特性と選び方を紹介 〜

コンクリートは現代の建設における最も重要な建築材料の一つである。その強度、耐久性、経済性の高さから、世界中のあらゆる構造物に使用されている。

道路、橋、ビル、ダムなど私たちの身の回りのインフラの多くはコンクリートで作られている。しかし、優れたコンクリートを作るためには、その構成材料について深く理解する必要がある。

本記事では、コンクリートを構成する主要な材料であるセメント、水、骨材、混和材料について詳しく解説する。それぞれの特徴や役割を理解することで、目的に合った品質のコンクリートを作るための知識を得ることができるだろう。

1. コンクリートとは


コンクリートとは、セメント、水、骨材(砂や石)および必要に応じて加える混和材料を構成材料とし、これらを練り混ぜて固めた人工の石のようなものである。

セメントと水が化学反応(水和反応)を起こして硬化することで強度を発現し、様々な構造物の材料として使用される。

コンクリートは、家で例えるなら、セメントが接着剤骨材が骨組み水が接着剤を活性化させる触媒のような役割を果たしている。


【ポイント】
  • コンクリートは「セメント」「水」「骨材」「混和材料(必要に応じて)」から構成される
  • セメントと水の化学反応により硬化して強度を得る
  • 現代建設において最も広く使われている建設材料の一つ

2. セメント


セメントは、JISの規定によりポルトランドセメントと混合セメントとに分けられる。セメントはコンクリートの「のり」の役割を果たす重要な材料である。

2.1 ポルトランドセメント


ポルトランドセメントには以下の種類がある。

  • 普通ポルトランドセメント:特殊な目的で製造されたものでなく、土木、建築工事やセメント製品に最も多く使用されている。一般的な用途に適した標準的なセメントといえる。
  • 早強ポルトランドセメント:普通ポルトランドセメントより初期(打設後の早い段階)の強度が大きく、冬季工事や寒冷地の工事、養生期間(コンクリートを適切な環境で固める期間)が短い工事に適している。ただし、硬化に伴う発熱量は大きくなる。
  • 中庸熱ポルトランドセメント:普通ポルトランドセメントより水和熱(セメントと水が反応する際に発生する熱)を低くしたセメントで、ダムなどの大きな塊のコンクリート(マスコンクリート)に使用される。

2.2 混合セメント


混合セメントには以下の種類がある。

  • 高炉セメント:製鉄所の溶鉱炉から副産物として生じる高炉スラグをポルトランドセメントに混合したセメントである。普通ポルトランドセメントに比べ、早期の強度発現が緩慢(ゆっくり)で、初期強度は小さいものの、長期強度が期待できる。化学抵抗性が大きく、アルカリ骨材反応(後述)を抑制する効果もある。
  • フライアッシュセメント:火力発電所で微粉炭(石炭の粉)を燃やした際に集じん機で集められた灰(フライアッシュ)を混和材としたセメント。コンクリートの扱いやすさ(ワーカビリティー)が向上し、必要な水の量(単位水量)を低減できる。ダムなどの大規模コンクリート構造物に使用される。

2.3 セメントの取扱い


セメントは、長期間貯蔵すると湿気を吸って固まり始めたり(凝結)、水と化学反応(水和反応)を起こし、また空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)とも反応する。この現象をセメントの風化という。

家庭で例えると、開封したお菓子の粉が湿気を吸って固まってしまうようなものである。

風化したセメントは、強熱減量(加熱した際の重量減少率)が増し、比重(密度)が小さくなって固まる速度(凝結)が遅くなり、強度も低下する。

したがって、セメントは、湿気を防ぎ通風を避けて貯蔵する必要がある。

セメントに水を加えると、水和作用により水が流動性を失い硬化する。これを凝結と呼び、一般に使用時の温度が高いほど凝結は早くなり、初期における強度発現は大きくなる。夏場のコンクリート工事が冬場より早く固まるのはこのためである。

セメントの粉末度は、表面積の大きさを示す比表面積で表し、値が大きいほどセメントの粒子が細かくなる。

一般的には、比表面積が大きいほど水との反応(水和作用)が早くなり、強度の発現は早く、反応熱(水和熱)は高く、乾燥による収縮(乾燥収縮)は大きくなる。これは、粒子が細かいほど水と反応する表面積が増えるためである。

【ポイント】
  • セメントには大きく分けて「ポルトランドセメント」と「混合セメント」がある
  • 用途に応じて適切なセメントを選ぶことが重要
  • セメントは湿気を避けて保管する必要がある
  • セメントの粒子が細かいほど、水との反応が早く進む

3. 練混ぜ水


練混ぜ水とは、コンクリートを作る際に使用する水のことである。

この水は、上水道水(飲料水として使用できる水道水)、またはJISで規定されるレディーミクストコンクリート(生コン)の練混ぜに用いる水に適合したものでなければならない。

水質が不適切だと、例えば塩分や有機物が多く含まれていると、コンクリートの品質(強度や耐久性)に悪影響を及ぼす可能性がある。

例えるなら、料理で使う水が汚れていると料理の味も悪くなるようなものである。


【ポイント】
  • コンクリート用の水は清潔で、不純物を含まないものを使用する
  • 一般的には水道水が適している

4. 骨材


骨材とは、モルタルまたはコンクリートをつくる際に、セメントおよび水と練り混ぜる砂、砂利、砕石などの材料をいう。骨材はコンクリートの「骨格」となり、全体の約70%を占める重要な材料である。

骨材は粒の大きさによって以下のように分類される。

  • 細骨材:10mmのふるいを全部通り、5mmのふるいを質量で85%以上通るもの(主に砂)
  • 粗骨材:5mmのふるいに質量で85%以上とどまるもの(主に砂利や砕石)

これは家庭で例えると、小麦粉(細骨材)と豆(粗骨材)のような違いである。

4.1 骨材の含水状態


骨材は水を吸収する性質があり、その含水状態はコンクリートの品質に影響する。主な状態として:

  • 表面乾燥飽水状態(表乾状態):骨材の内部が水で満たされているが、表面は乾いている状態。砂場の砂が表面は乾いているが、少し掘ると中が湿っているような状態と似ている。
  • 絶乾状態:骨材が完全に乾燥した状態。

これらの状態における骨材の密度をそれぞれ「表乾密度」「絶乾密度」という。

コンクリートの配合設計(材料の割合を決めること)では表面乾燥飽水状態の表乾密度を用いる。

4.2 アルカリ骨材反応


骨材の化学的安定に関する重要な事項として、アルカリ骨材反応がある。

これは、ある種の骨材(反応性骨材)とコンクリート中のアルカリ分との間で起こる化学反応のことで、それに伴う膨張によりコンクリートにひび割れを生じさせる。

身近な例えでは、アルカリ骨材反応は「コンクリートのアレルギー反応」のようなものである。特定の骨材がアルカリ分に反応して膨張し、構造物にダメージを与える。

アルカリ骨材反応を抑制するため、次の3つの対策のうちいずれか1つについて確認をとらなければならない。

  • コンクリートに含まれるアルカリ総量を3.0 kg/m³以下にする。
  • 高炉セメント(B種またはC種)あるいはフライアッシュセメント(B種またはC種)を使用する。
  • 骨材のアルカリシリカ反応性試験(化学法またはモルタルバー法)の結果で無害とされた骨材を使用する。

4.3 粒度


骨材の大小粒の混合の程度を、骨材の粒度という。良い粒度とは、様々な大きさの骨材がバランスよく混ざっている状態である。

料理で例えると、ドライカレーを作る際に具材の大きさが均一だと隙間ができるが、様々な大きさの具材を混ぜると隙間なく詰まるようなものである。

粒度のよい骨材を用いることで、以下の利点がある。

  • コンクリートの必要水量・セメント量が減り、経済的になる
  • 扱いやすさ(ワーカビリティー)が改善され、施工が容易になる
  • より耐久性の高いコンクリートができる

4.4 コンクリート骨材として要求される性質


コンクリート骨材として要求される性質には以下がある。

  • ごみ、どろ、有機不純物、塩化物等を有害量含んでいてはならない。
  • 水分の吸収や温度変化によって破損、体積変化を起こさないこと。
  • コンクリートが破損しないために化学的に安定であること。
  • セメントペースト(セメントと水が固まったもの)の強度より大きな強度をもつこと。
  • セメントペーストと結合する材料であること。
  • 薄い石片や細長い石片が含まれていないこと。
  • 適当なコンクリートを造るために密度が大きいこと。
  • 適切な粒度をもち、粒度の変化が少ないこと。

【ポイント】
  • 骨材はコンクリートの「骨格」となる重要な材料
  • 粒度(大小粒のバランス)が良い骨材を使用することで品質が向上する
  • アルカリ骨材反応はコンクリートの劣化原因となるため注意が必要
  • 清潔で安定した骨材を使用することが重要

5. 混和材料


混和材料とは、セメント、水、骨材以外の材料で、練混ぜの際に必要量をコンクリートの成分として加え、コンクリートの性質を改善する材料である。料理で例えると、調味料や添加物のような役割を果たす。

使用量の多少によって、以下のように分類される。

  • 混和材:使用量が比較的多く、それ自体の容積がコンクリートの練り上がり容積に算入されるもの
  • 混和剤:使用量が少なく、それ自体の容積がコンクリートの練り上がり容積に算入されないもの

5.1 混和材


  • ポゾラン: 二酸化ケイ素を含んだ微粉末のセメント混和材の総称で、火山灰、フライアッシュ、スラグ、シリカフュームなどがある。セメントと水和するときに生成する水酸化カルシウムと反応して不溶性の水和物を生成し、水密性(水が通りにくい性質)や化学抵抗性を高め、長期強度を増進する効果がある。

  • フライアッシュ: フライアッシュを適切に用いることによって、コンクリートの扱いやすさ(ワーカビリティー)を改善し、必要な水の量(単位水量)を減らすことができる。必要水量が減れば、必要なセメント量も減らすことができ、経済的になる。

5.2 混和剤


  • AE剤: AE剤は、コンクリート中に微細な独立した気泡を一様に分布させる混和剤である。AEとは「Air Entraining(空気連行)」の略で、意図的に小さな気泡を導入することを意味する。

これにより以下の効果がある。

  • 扱いやすさ(ワーカビリティー)が向上する
  • 材料の分離が起こりにくくなる
  • 表面への水や細かい粒子の浮き上がり(ブリーディング、レイタンス)が減少する
  • 凍結融解(凍ったり溶けたりを繰り返すこと)に対する抵抗性が増す
  • 風船入りのクッションがショックを吸収するように、AE剤によって導入された気泡は凍結時の膨張圧を緩和する役割を果たす。

  • 減水剤: 減水剤を用いると、コンクリートが軟らかくなるため、扱いやすさ(ワーカビリティー)が改善する。同じ扱いやすさで必要な硬さ(コンシステンシー)および強度を得るために必要な水量およびセメント量を減少させることができる。

料理で例えると、少量の乳化剤で水と油をよく混ぜられるようになるイメージである。


  • 流動化剤: 流動化剤は、コンクリートの水量を増やさずに流動性(サラサラと流れる性質)を高める添加剤である。コンクリートの品質を低下させることなく、打込みや締固め(コンクリートを型に詰める作業)を容易にする。流動化剤を配合したものを流動化コンクリートという。

5.3 膨張剤


コンクリートに膨張剤を添加することで、コンクリートの乾燥収縮(乾燥によって縮むこと)や硬化収縮(硬化過程で縮むこと)などによるひび割れの発生を低減できる。

膨張剤はコンクリートに「逆方向の力」を加えることで、収縮の影響を打ち消す働きをする。例えるなら、ゴムバンドが縮もうとするのを内側から押し広げるようなイメージである。

【ポイント】
  • 混和材料はコンクリートの性質を改善するための「添加物」
  • 混和材(ポゾラン、フライアッシュなど)と混和剤(AE剤、減水剤など)がある
  • 目的に合わせて適切な混和材料を選択することで、コンクリートの品質向上や施工性改善が可能
  • 膨張剤はコンクリートのひび割れを防止するのに役立つ

まとめ


コンクリートは、セメント、水、骨材、および必要に応じて混和材料から構成される複合材料である。それぞれの材料には特性があり、使用目的や環境条件に応じて適切な材料を選択することが重要である。

セメントには普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントなど様々な種類があり、用途に合わせて選定する。

骨材は粒度や含水状態、アルカリ骨材反応など様々な観点から品質を確認する必要がある。また、混和材料を適切に使用することで、コンクリートの扱いやすさの向上、強度発現の調整、耐久性の向上など、様々な品質改善が可能となる。

身近な例えで言うと、コンクリート作りは料理に似ている。セメントは「のり」の役割、骨材は「具材」、水は反応を促す「触媒」、そして混和材料は「調味料」のような役割を果たす。それぞれの材料の特性を理解し、適切な「レシピ」で混ぜ合わせることで、目的に合った「一品」が完成する。

これらの材料について深く理解し、適切に組み合わせることで、目的に合った高品質なコンクリートを製造することができる。

コンクリートは今後も建設分野において中心的な役割を果たし続けるため、その材料に関する知識は建設技術者だけでなく、建設に関わるすべての人々にとって有用な知識といえるだろう。



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WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。

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