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デジコン編集部 2025.12.2

富士通、海洋デジタルツインで「ブルーカーボン」を効率的に定量化。高精度の海藻認識で脱炭素と環境保全を支援

富士通は、海洋の状態をデジタル空間上に再現する「海洋デジタルツイン」技術を活用し、海藻や海草によるCO2吸収量(ブルーカーボン)を効率的かつ高精度に定量化するシステムを開発したと発表した。

このシステムは、従来の調査と比較して約100倍の速度で計測を行い、85%以上の精度で海藻の種類や被度(海底を覆う割合)を認識することが可能である。

水中ドローンとAIで専門家不要の調査を実現


ブルーカーボン生態系の保全においては、藻場の現状把握や効果測定が不可欠だが、従来は潜水士による調査が必要であり、時間とコストがかかる上に、海中の濁りなどで精度確保が難しいという課題があった。

富士通が開発した新システムは、「水中ドローン自動航行制御」「藻場定量化」「藻場創出シミュレーション」の3つの技術から構成されている。

水中ドローンは、海流や波の影響を受けやすい環境下でも、位置精度プラスマイナス50cm以内で安定して自動航行し、岩礁近くなどの調査が難しいエリアも漏れなく撮影する。

(左:施策無。ウニの食害の広がりで藻場が減少し、藻の無い黒いエリアが増加、右:施策有。漁礁の設置とウニ駆除の施策を実施。全体的に藻場が増加)

取得した映像データは、独自の鮮明化技術とAIによって解析され、濁った海中でも海藻の種類や分布状況を高精度に識別する。

さらに、これらのデータを基に藻場の成長や減少をシミュレーションする機能も搭載しており、環境変化や保全施策による効果を事前に検証することが可能だ。

このシステムの実証実験として、愛媛県宇和島市において調査を行い、「Jブルークレジット®」の認証取得を支援した結果、95%という高い認定率で認証を獲得した。

これにより、専門家の知見に頼っていた調査・申請業務をワンストップで効率化し、自治体や企業の脱炭素経営を強力に後押しする。


富士通は今後、この技術を洋上風力発電設備の点検や海洋工事の環境調査など、幅広い分野に応用し、2027年までに環境保全と経済成長を両立するビジネスモデルの確立を目指す方針だ。



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