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デジコン編集部 2025.7.28

セレンディクス、世界初の3Dプリンター駅舎をJR初島駅で実現。約2時間で躯体組み上げ完了、工期・コスト大幅削減

セレンディクスは資本業務提携を行っているJR西日本グループと共同で、JR紀勢本線「初島駅(和歌山県有田市)」において世界初となる3Dプリンター技術を用いた駅舎の建設を3月26日に完了した。

7月22日より新駅舎の利用が開始され、約2時間での躯体組み上げという画期的な建設手法が注目を集めている。

終電から始発まで6時間で完了、従来1-2ヶ月の工期を大幅短縮して夜間制約を克服


新駅舎は面積9.9平方メートル、鉄筋コンクリート造の平屋建てである。

駅舎内には2人掛けのベンチのほか、券売機と簡易ICカード改札機を備えている。

また壁面には3Dプリンターの特徴である積層痕をいかし、有田市の名産である「みかん」と「たちうお」をモチーフにした装飾を施している。

セレンディクスは2022年3月にファーストモデルである「serendix10(セレンディクス・テン)」を作業延べ23時間で完成させて以来、3Dプリンターによる建設技術の開発と実用化に取り組んできた。

2024年5月にはJR西日本グループと資本業務提携を締結し、鉄道施設への技術応用を進めてきた。

初島駅は1948年に竣工した木造駅舎で運用してきたが、現在は無人駅となっており、駅舎の老朽化に伴う保守コストや維持管理の効率化が課題となっていた。

一般的に駅舎など線路に隣接する建物の建設工事は、安全面から列車の走っていない夜間に行う必要がある。

そのため通常の建設工事より工期が長期化する傾向があり、鉄筋コンクリート造駅舎の場合、屋根や壁など躯体の設置に1〜2ヶ月を要する。


今回のプロジェクトでは、セレンディクスが3Dプリンター住宅で培った技術を応用し、基礎部分を含め、最終列車から始発までの6時間で躯体工事を完了することを目標に設定した。

駅舎の部材は熊本県水俣市の協力工場(立尾電設)にて製造された。

建設用3Dプリンターを使い、専用の特殊モルタルをロボットアームの先のノズルから吐出して、パーツを出力する。

プリンターで出力したパーツは、その後内部に鉄筋とコンクリートを流し込み一体化させ、強度を向上させている。



製造にかかった日数は7日間で、完成した合計4つのパーツはトラックで現地に輸送された。

2025年3月25日午後11時57分の最終列車出発後にJR側で線路に列車が進入しないようにする手続きを実施した後、作業を開始した。

駅前ロータリーにパーツを積んだ合計4台のトラックを順番に入れ、荷台からパーツをクレーン車で吊り上げ、直接建築場所に設置した。


作業はスムーズに進行し、約2時間で組み上げ工程を完了した。

2時間のうち約45分はトラックの入れ替え時間であったため、正味1時間15分程度の作業時間であった。

その後は運搬用金具の取り外しや固定作業などを経て、26日午前5時には作業を終了し、終電から始発までに予定していた全ての工程を終えることができた。




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デジコン編集部

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