大林組。MIRAI技術応用の70MPa高圧容器で水素運搬効率大幅向上。人件費・燃料費を4～5割削減

大林組は、トヨタ自動車の燃料電池自動車MIRAIで採用されている高圧水素貯蔵技術を応用した最高充填圧力70MPaの高圧容器を用いて、国内初となる市街地水素ステーションでの充填実証を実現した。

従来の19.6MPa容器と比較して水素運搬効率を大幅に向上させ、搬送コストの削減を図っている。

カスケード利用でFCフォークリフト導入コスト大幅削減と搬送回転率向上を実現

同社は、環境省委託事業「既存のインフラを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業」において、「水素搬送管理エネルギーマネジメントシステム（EMS）」を構築している。

2022年4月から、福島県双葉郡浪江町にある「福島水素エネルギー研究フィールド（FH2R）」で製造された水素を町内複数の拠点に効率的に搬送する実証運用を行ってきた経緯がある。

2024年11月からは、一度に搬送できる水素量を増やすため、最高充填圧力70MPaの高圧容器を利用した搬送実験を開始している。

(最高充填圧力70MPaの高圧容器)

従来は最高充填圧力19.6MPaの一般的な高圧ガス容器を利用していたが、新容器を併用することにより、搬送量の増加だけでなく、圧力差を利用したカスケード利用が実現可能となった。

この新容器は、MIRAIと同様に充填装置と通信する機能があり、容器の異常を検知した場合は充填を停止するなど、水素ステーションで安全に水素を充填できる充填口を備えている点が特徴である。

(水素供給ネットワークにおけるカスケード利用のシステム構成図)

新容器の使用により一度に運べる水素量が増え、水素ステーションから水素利用先までの搬送の回転率を向上させることができる結果となっている。

その結果、トラック搬送に係る人件費や燃料費をそれぞれ4～5割程度削減できる効果が得られている。

また、FC（燃料電池式）フォークリフト向けの差圧充填や、他の水素貯槽（水素吸蔵合金も併用）に水素を短時間で移充填ができるなど、圧力差を利用したカスケード利用が可能となっている。

一般的な高圧ガス容器を利用する場合、最高充填圧力35MPaのFCフォークリフトは加圧充填装置が必要だったが、カスケード利用の場合は不要となることから、FCフォークリフトの導入時コストを大幅に削減することができる。

今後、水素需要が拡大・多様化すると、水素を効率よく多く運ぶための高圧性と、それぞれの搬送先の需要量に応じる柔軟性が求められ、それらを最適化できるEMSの意義がより高まることが予想される。

同社は、EMSと最高充填圧力70MPaの高圧容器などを用いた水素搬送の実証に引き続き取り組むことで、水素サプライチェーンの拡大、水素利用の普及を推進し、脱炭素社会の実現に貢献していく方針である。