コラム・特集
デジコン編集部 2025.6.11

施工時の《建設機械の選定方法》を解説! 〜効率性と経済性を両立する建機の選び方とは?〜

CONTENTS
  1. 建設機械選定の基本原則
  2. コーン指数による建設機械の適用範囲
  3. 運搬可能距離による建設機械の選定について
    1. 土工機械と運搬距離の関係
  4. 建設機械選定に影響する要因は?
    1. 環境・現場条件
    2. 工事条件
    3. 管理条件
  5. 建設機械の性能表示と計算方法
    1. 性能表示の標準的手法
    2. ダンプトラックの作業量計算
  6. 機械選定における実践的考慮事項は?
    1. トラフィカビリティの実践的判断
    2. バックホウの作業時間当たり掘削量計算
  7. 経済性を考慮した機械選定
    1. コスト要素の検討項目
  8. まとめ
建設現場における機械選定は、工事の品質・工期・コストを左右する極めて重要な判断である。

適切な機械選定により工事効率が大幅に向上する一方で、誤った選択は工期遅延やコスト増大を招く可能性がある。

本記事では、建設機械の性能指標から具体的な選定方法まで、現場で実践できる機械選定の全体像を詳しく解説する。

建設機械選定の基本原則


建設機械の選定は、単純に機械の規模や能力だけで判断するものではない。むしろ、現場条件・作業内容・経済性を総合的に評価し、最適なバランスを見つけることが重要である。

現場における機械選定では、トラフィカビリティ(走行性能)という概念が重要な役割を果たす。

これは、建設機械が軟弱な土の上を走行する際の機械の重量による強度不足で起こる走行不能を避けるための指標である。

さらに、施工箇所のトラフィカビリティを基に、効率性と経済性を検討して最適な建設機械を選定する必要がある。

コーン指数による建設機械の適用範囲

建設機械の種類 コーン指数 qc (kN/m²) 接地圧 (kPa) 超湿地ブルドーザ 200以上 15~23 湿地ブルドーザ 300以上 22~43 普通ブルドーザ(15t級) 500以上 50~60 普通ブルドーザ(21t級) 700以上 60~100 スクレープドーザ 600以上(超湿地形は400以上) 41~56(27) 被けん引式スクレーパ(小型) 700以上 130~140 自走式スクレーパ(小型) 1,000以上 400~450 ダンプトラック 1,200以上 350~550

上記の表からも分かるように、地盤の状況に応じて使用可能な機械が明確に区分されている。

したがって、軟弱地盤での作業では超湿地ブルドーザを選択し、堅固な地盤では大型機械の使用が可能となる。

運搬可能距離による建設機械の選定について


建設機械の種類によって、効率的に作業できる運搬距離が大きく異なるため、作業内容に応じた適切な選択が求められる。

土工機械と運搬距離の関係

建設機械の種類 運搬距離 ブルドーザ 60m以下 スクレープドーザ 40~250m 被けん引式スクレーパ 60~400m 自走式スクレーパ 200~1,200m ショベル系掘削機械、ダンプトラック 100m以上

この運搬距離の特性を理解することで、現場の条件に最も適した機械を選定できる。

例えば、短距離の土砂移動にはブルドーザが最適である一方、中長距離の運搬にはスクレーパやダンプトラックの組み合わせが効率的である。

建設機械選定に影響する要因は?


建設機械の作業に影響を与える要因は多岐にわたるため、これらを体系的に把握することが適切な選定につながる。

環境・現場条件


  • 気温や降雨等の気象条件:機械の性能や作業効率に直接影響
  • 地形や作業場の広さ:機械の大きさや旋回性能の制約
  • 土質の種類や状態:地盤支持力と機械の適用可能性

工事条件


  • 工事の緊急や作業の連続性:機械の稼働率や予備機の必要性
  • 工事の段取り:作業手順と機械の組み合わせ効率
  • 交通条件:機械の搬入・搬出ルートの制約

管理条件


  • 建設機械の管理技能:オペレーターの技能レベル
  • オペレーターの技量:機械性能を最大限活用できる技術力

これらの要因を総合的に評価することで、現場に最適な機械選定が可能となる。

建設機械の性能表示と計算方法


建設機械の能力を客観的に評価するためには、標準化された性能表示方法を理解する必要がある。特に、土工機械においては作業量の計算が重要な判断材料となる。

性能表示の標準的手法

機械名称 性能表示方法 パワーショベル(ローダ) バケット容量(m³) バックホウ バケット容量(m³) クラムシェル 負荷(t) ブルドーザ ブレードの長さ(m) モーターグレーダ 幅員(t) 振動ローラ 転圧起振力・作業巾(t・m) クレーン 鋼索長(m) フィニッシャ -

ダンプトラックの作業量計算


ダンプトラックを用いて土砂を運搬する場合、時間当たりの作業量は以下の計算式で求められる。

時間当たりの作業量 Q = (q × f × E × 60) / Cm (m³/h)

ここで:

  • q:1回の積載量(m³)
  • f:土量換算係数(ほぐし土量を地山土量に換算するための係数 1/L)
  • E:作業効率
  • Cm:サイクルタイム(分)

以下の計算例でより深く理解しよう!

《 例1:粘性土での土量変化率を考慮した計算 》

  • 土質:粘性土(土量変化率 L=1.20, C=0.9)
  • よって f = 1/L = 1/1.2
  • 1回の積載量 q = 5.0 m³
  • 作業効率 E = 0.9
  • サイクルタイム Cm = 25.0分

時間当たりの作業量 :  Q  = (5.0 × (1/1.2) × 0.9 × 60) /25  =  9 m³/h


《 例2:バックホウでの掘削作業 》

  • 平積み容量 q = 0.4m³のバックホウを使用
  • 土質:粘性土(土量変化率 L=1.20, C=0.9)
  • よって f = 1/L = 1/1.2
  • バケット係数 K = 0.6
  • 作業効率 E = 0.5
  • サイクルタイム Cm = 30秒

時間当たりの作業量 : Q   =   (0.4 × 0.6 × (1/1.2) × 0.5 × 3600)  / 30 =  12 m³/h


機械選定における実践的考慮事項は?


理論的な計算値だけでなく、実際の現場では様々な実践的要素を考慮する必要がある。

トラフィカビリティの実践的判断


建設機械の作業に関する記述のうち、適当でないものを判断する際の重要なポイントは以下の通りである。

  • ダンプトラックの作業効率:道路の治水条件や路面条件、昼夜の別により変化する
  • ブルドーザの作業効率:砂よりも岩塊・玉石の順で小さくなる
  • トラフィカビリティ:建設機械が土の上を走行する際の走行性を示す程度
  • リッパビリティ:軟岩をかいた土をリップにより削則できる程度

バックホウの作業時間当たり掘削量計算


バックホウを用いて地山を掘削する場合の時間当たり作業量は、以下の要素を組み合わせて算出される。

時間当たりの作業量 Q   =   (q × K × f × E × 3600)   /   Cm (m³/h)

この計算式では、機械の基本性能に加えて現場条件や作業条件を反映した各種係数を適用することで、より実践的な作業量予測が可能となる。

経済性を考慮した機械選定


建設機械の選定では、初期費用だけでなく運用コストも含めた総合的な経済的な評価が重要になる「。

コスト要素の検討項目


  • 機械損料:機械の減価償却費と金利
  • 燃料費:作業量と燃費効率の関係
  • メンテナンス費用:定期点検と故障修理
  • オペレーター人件費:技能レベルに応じた労務費
  • 運搬費:現場への機械搬入・搬出費用

これらの要素を総合して、単位作業量あたりのコストを算出し、複数の機械候補を比較検討することが求められる。

まとめ


建設機械の適切な選定は、現場条件の正確な把握、機械性能の客観的評価、経済性の総合判断という3つの要素を統合した判断プロセスである。

コーン指数による地盤評価、運搬距離による機械分類、作業量計算による能力評価を体系的に活用することで、現場に最適な機械選定が実現できる。

さらに、トラフィカビリティやリッパビリティといった実践的指標を考慮することで、理論と現実のギャップを埋めた選定が可能となる。

建設業界においては、機械選定の精度向上が直接的に工事の成功につながるため、これらの知識を実務に活かし、より効率的で経済的な施工を実現していくことが重要である。

現場の条件は常に変化するものであるが、基本的な選定原則を理解していれば、どのような状況でも適切な判断を下すことができるはずである。




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デジコン編集部

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