行政・政策
デジコン編集部 2025.11.11

今治市が南海トラフ地震を想定しドローンで医療物資輸送を実証。来島海峡4キロメートルを10分で結び災害時の孤立に備える

愛媛県今治市が国家戦略特区の一環で設置している近未来技術実証ワンストップセンターによる支援のもと、斎藤クリニックとイームズロボティクスと連携し、南海トラフ地震を想定したドローンによる医療品輸送の実証実験を実施した。

来島海峡上空の片道約4キロメートルを約10分で結び、災害時における島しょ部への医療支援の即応性を検証した。

来島海峡大橋の通行不能を想定し空の医療輸送ルートを確立


今回の実証実験は、南海トラフ地震の発生により、しまなみ海道沿線の島しょ部と今治市内を結ぶ来島海峡大橋が通行できなくなる事態を想定し、医薬品や手術器具などの緊急物資を島しょ部へ迅速かつ安全に届ける新たな手段の確立を目的として行われた。

主催は斎藤クリニック、技術実施はイームズロボティクス。10月28日14時30分に、今治市・砂場スポーツ公園から離陸し、大島・海宿千年松キャンプ場まで、来島海峡上空を片道約4キロメートル、高度100メートル・速度10メートル毎秒で飛行した。


輸送重量は約1キログラム、輸送時間は約10分だった。災害時の孤立を最小化し、医療を空のルートでつなぐための実践的な検証である。

実証実験では、飛行中の機体の安定性、気象・風況に応じた運用判断、通信品質、離着陸の安全管理、医療品パッケージの固定と受け渡し手順などを総合的に検証した。

(来島海峡を越え、大島の着陸地点上空に到達したドローン)

当日は、発進地点、海上の船上、着陸地点にオペレーターを一人ずつ配置した。ドローンは自動飛行したが、オペレーターによる目視での安全監視のもと、来島海峡上空を縦断した。

着陸地点でオペレーターを務めたのは、今回の実験の主催者であり、斎藤クリニックの医師でもある齋藤早智子院長である。船上のオペレーターからドローンの操縦権を譲り受けると、着陸地点にドローンを誘導し、安全に着地させた。

(今回の実証実験の飛行ルート(イメージ) ※国土地理院地図をもとに今治市が作成)

ドローンが運んできた配送用パッケージから注射器や輸血セットなどの医療品を取り出し、無事に輸送が完了したことを確認した。

飛行時間は約10分で、陸上輸送よりも短時間で島しょ部へ物資が到達した。大島以外にも多くの有人島がある今治市特有の地勢において、空の輸送ルートが有効であることがあらためて証明された。

(自身もドローン操縦のライセンスを保有する齋藤院長)

齋藤院長は、今回の実験について、しまなみ海道で陸地部とつながっている島しょ部は、大規模災害が発生した際に孤立してしまう危険性が高いと述べた。緊急度の高い傷病者へ迅速に医療を提供するためには、陸上輸送の代わりとなる輸送手段が必要であり、自身がドローンの操縦ライセンスを取得しており、空の輸送ルートが利用可能なことを実証できたとした。

今後も今治市と連携して、災害時の輸送手段や医療体制の確保に向けて検討を進め、有事に備えたいと語った。



今治市は2015年に指定を受けた国家戦略特区の枠組みを活用し、2021年に近未来技術実証ワンストップセンターを設置。

自動運転・ドローン・AI/IoT分野の実証実験に際して、実験フィールドの手配、関係機関との調整、地域への周知、事務手続きなどをワンストップで支援している。

さらに、実証実験に係る費用の補助制度として上限50万円、補助率2分の1以内を用意し、実証実験を積極的に誘致している。これまでにも、複数回のドローンの飛行実験のほか、IoTを活用した実証実験などサポートしてきた実績があり、実証フィールドとしての知見を蓄積している。






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