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清水建設とLeapMind。トンネル工事監視AI開発へ
人工知能(AI)開発のLeapMind(リープマインド/東京・渋谷)は、清水建設と共同でトンネル掘削工事中の崩落事故を防ぐAIを開発する。実証実験で精度を高め、清水建設の工事現場での活用をめざす。トンネル掘削面の監視担当者の負担を減らし、安全性を高める。
トンネル掘削工事では、切羽(掘削最先端)付近での肌落ち災害防止のためにコンクリート吹付けを行い掘削面の安定化を図っているが、コンクリート吹付けが行われていた場合においてもクラックと呼ばれるひび割れを発端に落盤・落石等の肌落ちが発生する危険がある。
作業員の安全確保のため、現在は事故防止を目的に、肌落ちの前兆として発生すると考えられるクラックの出現を目視で監視するために切羽監視員を常駐させている現状がある。切羽監視員による監視業務は、作業員の安全確保のために非常に重要だが、目視で監視しているため、発見の遅れや見落としが一定の割合で発生していた。
実際に、山岳トンネル工事における切羽での落石等(肌落ち)事故では、被災者の6%が死亡し、42%が休業一ヶ月以上となる事例が報告されており、事故が発生した場合の重篤度が高くなる(※1)傾向にあった。
この課題に対し、更なる安全性の向上のためには、切羽監視員による常時目視監視に加えて、ICT技術を活用した肌落ち発生の予兆を検知するためのサポートシステムの構築が急務となっていた。
清水建設では、建設現場での安全性の確保という建築業界における課題に対し、ICT技術やAI等を活用した建設機械と作業員が協調しながら安全に作業する「協調安全」の技術的方策「Safety2.0(※2)」のコンセプトを取り入れた、次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル(※3)」の開発に着手。
今回のクラック検出サポートシステムの実証検証は、この「シミズ・スマート・トンネル」の取組みの1つだ。そしてこの度、エッジAI(※4)のスタートアップ企業「LeapMind」と共同で実証実験をスタート。
切羽付近に取り付けられたカメラで撮影した切羽面の画像をクラック検出のための解析PCでリアルタイムに解析し、肌落ち等の前兆の可能性を検出した場合、切羽監視員のタブレット端末へ当該情報を伝達。
その後、切羽監視員はその情報を元に現場状況を確認し、必要に応じて警報機を発報させることを想定しているという。クラックの検出にはディープラーニング技術を活用したセマンティックセグメンテーション(画像内の全画素に検出対象ラベルやカテゴリを関連付ける技術)を採用し検証を実施。
検証を実施するにあたり切羽面のクラック画像が必要となるが、当該クラックの発生頻度は低く十分なデータ収集が難しかった。これを解決するために、擬似的にクラックを付与した模擬データを利用しディープラーイニングでのクラック検出の検証を実施。その結果、実環境と同等の状況においてもクラック検出が可能であることを確認。
今後は、実用上必要な精度を担保可能なディープラーニングモデルの構築を目指すとともに、切羽監視員のサポートに貢献可能なシステム構築およびそれを活用した運用フローの実現を目指していくという。
トンネル掘削工事の現状
トンネル掘削工事では、切羽(掘削最先端)付近での肌落ち災害防止のためにコンクリート吹付けを行い掘削面の安定化を図っているが、コンクリート吹付けが行われていた場合においてもクラックと呼ばれるひび割れを発端に落盤・落石等の肌落ちが発生する危険がある。
作業員の安全確保のため、現在は事故防止を目的に、肌落ちの前兆として発生すると考えられるクラックの出現を目視で監視するために切羽監視員を常駐させている現状がある。切羽監視員による監視業務は、作業員の安全確保のために非常に重要だが、目視で監視しているため、発見の遅れや見落としが一定の割合で発生していた。
実際に、山岳トンネル工事における切羽での落石等(肌落ち)事故では、被災者の6%が死亡し、42%が休業一ヶ月以上となる事例が報告されており、事故が発生した場合の重篤度が高くなる(※1)傾向にあった。
この課題に対し、更なる安全性の向上のためには、切羽監視員による常時目視監視に加えて、ICT技術を活用した肌落ち発生の予兆を検知するためのサポートシステムの構築が急務となっていた。
実証実験の背景
清水建設では、建設現場での安全性の確保という建築業界における課題に対し、ICT技術やAI等を活用した建設機械と作業員が協調しながら安全に作業する「協調安全」の技術的方策「Safety2.0(※2)」のコンセプトを取り入れた、次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル(※3)」の開発に着手。
今回のクラック検出サポートシステムの実証検証は、この「シミズ・スマート・トンネル」の取組みの1つだ。そしてこの度、エッジAI(※4)のスタートアップ企業「LeapMind」と共同で実証実験をスタート。
クラック検出サポートシステムについて
切羽付近に取り付けられたカメラで撮影した切羽面の画像をクラック検出のための解析PCでリアルタイムに解析し、肌落ち等の前兆の可能性を検出した場合、切羽監視員のタブレット端末へ当該情報を伝達。
その後、切羽監視員はその情報を元に現場状況を確認し、必要に応じて警報機を発報させることを想定しているという。クラックの検出にはディープラーニング技術を活用したセマンティックセグメンテーション(画像内の全画素に検出対象ラベルやカテゴリを関連付ける技術)を採用し検証を実施。
実証実験の成果
検証を実施するにあたり切羽面のクラック画像が必要となるが、当該クラックの発生頻度は低く十分なデータ収集が難しかった。これを解決するために、擬似的にクラックを付与した模擬データを利用しディープラーイニングでのクラック検出の検証を実施。その結果、実環境と同等の状況においてもクラック検出が可能であることを確認。
今後は、実用上必要な精度を担保可能なディープラーニングモデルの構築を目指すとともに、切羽監視員のサポートに貢献可能なシステム構築およびそれを活用した運用フローの実現を目指していくという。
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