鉄道総研がトンネル点検を効率化。AI変状抽出と投影装置の組み合わせで作業時間を大幅削減

鉄道総合技術研究所（鉄道総研）は、AI（人工知能）を活用してトンネル壁面の変状を抽出する「変状抽出・健全度アプリ」と、点検箇所をトンネル壁面に直接投影する「要注意箇所投影装置」を開発した。

プロジェクションマッピング技術の応用で暗所での作業効率が向上、判定時間50分の1、打音調査時間も半減

日本の鉄道トンネルは総延長が約4000kmに及び、他のインフラと同様に点検作業の効率化が課題となっている。

鉄道総研が開発した「変状抽出・健全度アプリ」は、トンネル壁面を撮影した画像から「鉄筋の露出」や「漏水」などの変状箇所をAIが自動的に抽出するシステムである。

このアプリは様々な変状を90%以上という高い精度で抽出できるだけでなく、変状発生の位置に応じて健全度を4段階で自動判定する機能も備えている。

これにより、変状抽出と健全度判定作業に要する時間は、従来の検査員による判定に比べて50分の1以下に短縮することが可能となった。


しかし、AIの判定結果をもとに現場で打音検査などの詳細調査を行う際、トンネル内の暗い環境で検査すべき位置を特定するのが難しいという新たな課題が生じていた。

この課題を解決するために開発された「要注意箇所投影装置」は、レール上を移動しながらトンネル壁面に調査すべき箇所を直接投影するシステムである。

この装置は走行距離に連動してスクロール移動するメッシュの中に、AIが検出した要注意箇所を赤く塗りつぶして投影することで、現場での位置特定を容易にしている。

トンネルの断面形状は馬蹄形や矩形、円形など様々だが、この投影装置はそれぞれの形状に応じて適切に投影できるよう設計されている。


このプロジェクションマッピング技術を応用した投影装置の導入により、暗所での要注意箇所の特定が効率化され、打音調査に要する時間を半分以上削減することに成功した。

二つの技術を組み合わせることで、トンネル点検全体の作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、点検精度の向上も期待できる。

鉄道インフラの高経年化が進む中、このような点検技術の進化は、安全性の確保とメンテナンスコストの削減の両立に貢献するものとして注目されている。