遅延時間を50分の1に短縮。マグナ・ワイヤレスが世界初のポスト5G対応半導体チップを開発

マグナ・ワイヤレス、大阪大学、情報通信研究機構(NICT)は、NEDOの委託事業において、5G無線通信の処理時間を従来の約10ミリ秒から0.2ミリ秒以下へ短縮した世界初のポスト5G対応半導体チップの開発に成功した。

専用ロジック回路と多様な通信設定機能を搭載、産業用ロボットのリアルタイム制御など産業DXを加速

このポスト5G対応半導体チップは、5G無線通信における処理遅延を大幅に短縮することで、これまで有線でしか実現できなかった超低遅延が要求される制御信号にも無線通信の適用を可能にした。

開発されたチップは、チップ内の無線信号処理を専用ロジック回路とすることで、従来10ミリ秒以上かかっていた遅延時間を0.2ミリ秒以下にまで短縮している。

この超低遅延通信の実現により、AIサーバーからローカル5G無線通信を介したロボットのリアルタイム制御など、産業分野における新たな応用が可能となる。

チップの特長として、ソフトウェア無線(SDR)機能を搭載し、遅延または帯域優先、上り/下り通信の比率、無線変調方式といった多彩な通信設定に対応できる点が挙げられる。

具体的には、周波数273通り×時間280通り×変調29通り×上り・下り2通りの設定が可能で、用途に応じて最適な無線設定を選択できる柔軟性を備えている。

また、信号処理部とプロトコル処理部を分離し、SDR機能を活用することでネットワークスライシングの機能を拡張し、一つのチップで複数かつ多種のスライシングに対応している。

実証実験では、超低遅延通信と高速大容量通信が混在したスライシング数3以上での動作が確認されており、異なる要件を持つ複数の通信を同時に処理できることが実証された。

さらに、複数ベンダーの基地局との相互接続性も確認済みであり、このチップは汎用的に各種無線システムに適用可能である。

現在の5Gシステムでは、高速大容量(eMBB)、超多数接続(mMTC)、超低遅延(URLLC)の三つの特徴がトレードオフの関係にあり、特に産業用途に必要な数ミリ秒以下の超低遅延通信に対応した半導体チップが提供されていなかったことが、ローカル5Gの産業活用の普及が進まない一因となっていた。

マグナ・ワイヤレスは、このポスト5Gチップを2025年度中に製品化する計画を発表しており、スマート工場、物流、医療、建設など様々な産業分野におけるローカル5Gの普及拡大と産業DXの加速が期待される。

この成果は、産業界におけるローカル5Gの利用範囲を大きく広げるだけでなく、AIの高度活用が可能な次世代ネットワークの実現にも貢献するものと評価されている。