ニュース
デジコン編集部 2025.2.28

道路橋の床版更新における設計業務時間を10分の1に短縮。鹿島が3Dモデル自動生成システムを開発

鹿島は、道路橋の床版取替工事におけるプレキャストPC床版の3Dモデル自動生成システムを開発し、実際の設計業務に適用した結果、従来比で設計業務時間を約10分の1に短縮することに成功した。

数値入力だけで床版と鋼桁の3Dモデルを自動生成、現況との差分も解析可能な設計効率化技術


高度経済成長期に整備された国内の道路橋は供用開始から半世紀以上が経過し、各地で床版取替工事が進められている。

床版取替工事で使用されるプレキャストPC床版は、運搬および架設時の制約から橋軸方向に約2mごとに分割されるため、道路線形と鋼上部工の形状の関係から1つ1つの形状が異なる特徴がある。

例えば、長さ500mの道路橋では約250枚の床版が必要となり、これらを1枚ずつ全て手作業で作図するには膨大な時間を要していた。

さらに、供用中の床版の現況と図面にずれが生じていることも少なくないため、図面修正を容易に行える技術が求められていた。

鹿島が開発した3Dモデル自動生成システムは、道路線形や鉄筋などの数値情報を入力するだけで、プレキャストPC床版の3Dモデルを生成し、部材同士が干渉しない配置を自動生成できる。

また、鋼桁の数値情報を入力することで、生成した3Dモデルに反映させることも可能であり、床版取替前の3D測量点群データを取り込むことで、現況と設計値のずれを容易に把握することができる。



これにより、従来は膨大な時間を要していた設計的なシミュレーションを、数値の再入力だけで何度でも、短時間で行うことが可能となった。

システムの中核技術としては、パラメトリックモデリングが可能な3D-CADソフト(ダッソー・システムズ 3DEXPERIENCE CATIA on the cloud)を活用し、設計条件や数値情報といったパラメータを入力することで、システム化された設計仕様やノウハウ通りに床版の3Dモデル化を行う仕組みが採用されている。

具体的な機能としては、道路線形情報を数値入力するだけで3次元情報を有した橋梁の橋面を再現し、床版を自動割り付けして3Dモデルを生成する機能や、鉄筋径やピッチ、かぶり等を数値入力することで干渉しない配筋の3Dモデルを自動生成する機能が実装されている。

さらに、床版1枚ごとに2Dの図面データも出力可能で、数量算出のための構造寸法表も自動で生成できる。

このシステムを「阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋他16橋橋梁更新工事(設計業務その1)」に適用した結果、これまで熟練のCADオペレータが手作業で実施していた繰り返し検討の時間が約10分の1になったことが確認された。

また、本システムはBIM/CIMモデルが同時に完成するため、施工方法の検討や発注者等との協議にも活用できる点も大きな利点となっている。

建設当初の鋼桁手書き図面から読み取った部材厚・幅等の数値を入力することで様々な鋼桁の3Dモデルも生成でき、床版と鋼桁の干渉チェックが容易になることで設計業務の生産性が大幅に向上する。

3Dモデル上に測量データ(点群情報)を取り込んで差分解析を行うことで、橋梁全体の現況と図面のずれを瞬時に数値で把握し、現況に合わせた微調整を設計に反映することが可能となっている。



参考・画像元:鹿島プレスリリースより
印刷ページを表示
WRITTEN by

デジコン編集部

建設土木のICT化の情報を日々キャッチして、わかりやすく伝えていきます。

建設土木の未来を
ICTで変えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を案内するメールマガジンが購読できるほか、会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。