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デジコン編集部 2025.3.10

日本初のハイブリッド建築が静岡に完成。3Dプリンター技術とPC工法を融合し工期を4分の1に短縮

百年住宅株式会社は、建築用3Dプリンターの技術とプレハブ建築のWPC工法を融合させた日本初となるハイブリッド建築物を静岡市に完成させた。

自由な曲線デザインと高耐震性を両立、工場生産と現場組立の効率化で建設職人不足の課題にも対応


静岡市駿河区桃園町のSBSマイホームセンター静岡展示場に完成したトイレ建屋は、延べ面積54.97m²の鉄筋コンクリート造で、従来の工法と比較して工期を大幅に短縮している。

この新工法が開発された背景には、近年頻発する地震や台風、豪雨、土砂災害への対応として堅牢なコンクリート建築のニーズが高まる一方で、職人不足、建築資材高騰、長い工期といった課題があった。


百年住宅は、50年以上に渡るプレキャストコンクリート(PC)パネルの工場製造技術を活かし、3Dプリンター建築のベンチャー企業であるセレンディクス株式会社とのオープンイノベーションを通じて、これらの課題を解決するハイブリッド建築を開発した。

今回完成した建物の構造は、PCパネル部材を現場で組み立てるWPC工法で構造躯体を形成し、その後構造躯体を囲むように意匠の壁として建築用3Dプリンターで制作した部材を設置するという手法を採用している。


これにより、従来の鉄筋コンクリート造では困難だった円形や曲線、表面の凹凸といった自由度の高いデザインが実現した。

使用された3Dプリンター部材は13種類に分かれており、中空構造により軽量化も図られているため、大型トラックでの運搬が容易である。

現地での組立後は、中空部分へコンクリートと鉄筋を差し込んで連結させる工法が採用されている。

この工法により、構造躯体の組立工期は通常の鉄筋コンクリート構造と比較して4分の1程度に短縮され、建設業界の大きな課題である職人不足による人件費高騰の解消にも貢献している。

建築用3Dプリンターには、オランダのTAM社製のものが採用され、移動が比較的簡単なアーム式を特徴としている。

モルタルと添加剤をオリジナルの配合で調整した材料を使用し、3Dデータを作成してプリンターに読み込ませることで、部材を自動的に出力する仕組みとなっている。

通常時はオペレーターと作業員の2名だけで部材製造が可能なため、人手不足に対応できる点も大きな特徴だ。

このハイブリッド工法の最大の利点は、既存のプレハブ工法による構造躯体の安全性・耐久性を担保しながら、3Dプリンター技術の自由度を取り入れたことにある。

高耐震・高耐久の性能を維持しつつ、確認申請も比較的簡単に許可され、全ての部材がコンクリート(モルタル)で製造されているため火災にも強いという利点もある。




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デジコン編集部

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