みなさんは、PLATEAU(以下、プラトー)をご存知だろうか?
さまざまな分野の専門家が協業し、産学官が一体となり3D都市モデルを作成していく国土交通省主導による一大プロジェクトだ。しかも、モデルに集約されたあらゆるデータはオープンデータとして一般公開され、誰もが自由にアクセスすることができるという。本記事では、プラトーの開発背景やサービスの概要、そして幅広い分野で期待されている活用方法についてご紹介していく。
国土交通省主導のもと2020年からスタートしたProject PLATEAU。2021年4月にPLATEAU Viewが一般公開され、大きな話題を呼んだ。
プラトーには現時点※で、56都市の情報がオープンデータとして公開されており、地図情報とともに誰でも自由に閲覧することができる。(※2021年7月現在)
ビューワーのUIや直感的な操作性から、新しいプラットフォームという印象すら覚えるプラトーだが、当プロジェクトの目的は、情報のオープンデータ化により、まちづくりのデジタルトランスフォーメーション(UDX)を推進することにあるという。
プラトーがめざすのは、国や行政主導によるトップダウン型の都市開発ではなく、民間の知見を生かしたボトムアップ型の都市開発だ。
自然災害やパンデミック対策など、次々と表出してくるあらゆる社会問題。都市機能を維持するために、スピーディーな判断・対応が迫られることも珍しくはない。合理的な判断を下すために必要なのは、信頼できるデータベースである。しかし、これまで各都市が保有してきた情報は、行政や民間、業種ごとに分断されていたため、分野を越えたデータの利活用が不可能だったのだ。
Project PLATEAUは、これらの分断を排除し、分野横断的に情報を統合・可視化するためにスタートした。試しに下記URLから、プラトーを体験していただきたい。
一見するとGoogle Earthのようだが、プラトーにはデータが紐付けられており、3Dモデル上であらゆるデータを照会することができる。自宅周辺情報を閲覧すると、Web上でMapを閲覧したり、街を歩いていたときには得られなかった疑問や発見が、きっとあるはずだ。
プラトーをオープンデータ化している狙いは、誰もが自由に都市のデータにアクセスし、活用してもらうためだという。確かに、一市民として閲覧するだけでも、街の捉え方が変化していく感覚がある。
プラトーは、都市空間とそれに付随する情報群を視覚的に伝え、起こりうる可能性を再現し、現実の都市空間とプラトーとの間に相乗効果を生むことで、「全体最適化・持続可能なまちづくり」「人間中心・市民参加型のまちづくり」「アジャイルなまちづくり」を目指しているのだ。すでに実証実験が行われており、民間企業や研究機関による新サービスの構想が、次々と生まれているようだ。
◎ 都市活動モニタリング
プラトー上に人やモノの移動を可視化することで、都市活動を細部までモニタリングが可能になる。都市活動モニタリングといっても、アプローチはさまざまだ。既設カメラの映像を画像認識AIで解析する技術、レーザーセンサーによる計測、スマートフォン等が発する電波を活用したモニタリング等、まだ他にも多様な解析方法があるだろう。
自然光の影響を受けやすいもの、障害物があり計測が困難な場所など、解析時に苦手とする場所があったとしても、すべての人流情報がプラトーに集約されれば、すべての混雑情報をプラトー上で閲覧することも不可能ではないはずだ。
◎ 防災
3D都市モデル上で、災害発生の可能性を具体的にシミュレートすることができる。これまで防災・減災にはハザードマップが役立てられてきたが、2DのMap上で色分けして表現されていた危険度を、3D都市モデル上で閲覧することで、浸水予想などを直感的に確認することができる。防災対策情報と人流データを組み合わせ、最適な避難経路や災害発生時の交通整備など、幅広い活用方法がありそうだ。
また、災害発生時にはG空間情報センターのWebサイト上で公開されている、地理空間情報が役立つ。
2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害においても、行政による各種データ、国土地位院、民間企業の撮影した航空写真や災害関連データが随時集約・公開され、ダウンロードすることで3D都市モデルに反映することが可能だ。
当サービスは、現地で活動する災害ボランティアや研究機関などの現場関係者に、いち早く情報を提供し、活動に役立てることを目的として公開されている。
災害状況の集約することは現場関係者への情報提供の迅速化だけでなく、今後起こりうる災害への備えに活用することで、長期的な視点に立った減災や災害に強い街づくりに役立てることができるだろう。
◎ まちづくり
全国各地で進んでいる再開発事業。竣工後の都市空間をVR上に落とし込むことで、設計段階で建物内の回遊性を検証したり、事前に人流シミュレーションを行うことが可能になる。段差やエレベータの配置を事前に細かく確認できるため、利用者の視点に立ったバリアフリー化の推進にも活用できそうだ。
◎まちあるき
商用利用を目的とした民間企業の活用法も、さまざまなケースが考えられるだろう。たとえば、コロナ禍における百貨店や繁華街での購買体験やコミュニケーションのための仮想空間を3D都市モデル上で提供するサービスや、AR機能を活用した観光ガイドなど、仮想空間をエンターテインメントとして捉えたアイデアなどがある。
また、B to Cサービス以外にも、物流ドローンのフライトシミュレーションや工事車両の交通シミュレーションなど、B to Bサービスでの活用を視野に入れた実証実験も行われている。
プラトーが提供する3D都市モデルと、すでに自社で保有している各種GISデータを連携し、カスタマイズ表示することができるプラットフォームサービス「ToMAP」がすでにリリースされ、今後も幅広い活用法の開発が期待されている。
本記事で取り上げた活用例は、ほんの一部に過ぎない。3D都市モデルがこれから生み出していく新しいソリューションの可能性を、ぜひ自身の目で体験していただきたい。
さまざまな分野の専門家が協業し、産学官が一体となり3D都市モデルを作成していく国土交通省主導による一大プロジェクトだ。しかも、モデルに集約されたあらゆるデータはオープンデータとして一般公開され、誰もが自由にアクセスすることができるという。本記事では、プラトーの開発背景やサービスの概要、そして幅広い分野で期待されている活用方法についてご紹介していく。
都市経営のDX化を推進する、超大規模3Dモデル
国土交通省主導のもと2020年からスタートしたProject PLATEAU。2021年4月にPLATEAU Viewが一般公開され、大きな話題を呼んだ。
プラトーには現時点※で、56都市の情報がオープンデータとして公開されており、地図情報とともに誰でも自由に閲覧することができる。(※2021年7月現在)
ビューワーのUIや直感的な操作性から、新しいプラットフォームという印象すら覚えるプラトーだが、当プロジェクトの目的は、情報のオープンデータ化により、まちづくりのデジタルトランスフォーメーション(UDX)を推進することにあるという。
プラトーがめざすのは、国や行政主導によるトップダウン型の都市開発ではなく、民間の知見を生かしたボトムアップ型の都市開発だ。
自然災害やパンデミック対策など、次々と表出してくるあらゆる社会問題。都市機能を維持するために、スピーディーな判断・対応が迫られることも珍しくはない。合理的な判断を下すために必要なのは、信頼できるデータベースである。しかし、これまで各都市が保有してきた情報は、行政や民間、業種ごとに分断されていたため、分野を越えたデータの利活用が不可能だったのだ。
Project PLATEAUは、これらの分断を排除し、分野横断的に情報を統合・可視化するためにスタートした。試しに下記URLから、プラトーを体験していただきたい。
PLATEAU VIEW:https://plateauview.jp/
一見するとGoogle Earthのようだが、プラトーにはデータが紐付けられており、3Dモデル上であらゆるデータを照会することができる。自宅周辺情報を閲覧すると、Web上でMapを閲覧したり、街を歩いていたときには得られなかった疑問や発見が、きっとあるはずだ。
プラトーを活用した新しい都市開発
プラトーをオープンデータ化している狙いは、誰もが自由に都市のデータにアクセスし、活用してもらうためだという。確かに、一市民として閲覧するだけでも、街の捉え方が変化していく感覚がある。
プラトーは、都市空間とそれに付随する情報群を視覚的に伝え、起こりうる可能性を再現し、現実の都市空間とプラトーとの間に相乗効果を生むことで、「全体最適化・持続可能なまちづくり」「人間中心・市民参加型のまちづくり」「アジャイルなまちづくり」を目指しているのだ。すでに実証実験が行われており、民間企業や研究機関による新サービスの構想が、次々と生まれているようだ。
◎ 都市活動モニタリング
プラトー上に人やモノの移動を可視化することで、都市活動を細部までモニタリングが可能になる。都市活動モニタリングといっても、アプローチはさまざまだ。既設カメラの映像を画像認識AIで解析する技術、レーザーセンサーによる計測、スマートフォン等が発する電波を活用したモニタリング等、まだ他にも多様な解析方法があるだろう。
自然光の影響を受けやすいもの、障害物があり計測が困難な場所など、解析時に苦手とする場所があったとしても、すべての人流情報がプラトーに集約されれば、すべての混雑情報をプラトー上で閲覧することも不可能ではないはずだ。
◎ 防災
3D都市モデル上で、災害発生の可能性を具体的にシミュレートすることができる。これまで防災・減災にはハザードマップが役立てられてきたが、2DのMap上で色分けして表現されていた危険度を、3D都市モデル上で閲覧することで、浸水予想などを直感的に確認することができる。防災対策情報と人流データを組み合わせ、最適な避難経路や災害発生時の交通整備など、幅広い活用方法がありそうだ。
また、災害発生時にはG空間情報センターのWebサイト上で公開されている、地理空間情報が役立つ。
2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害においても、行政による各種データ、国土地位院、民間企業の撮影した航空写真や災害関連データが随時集約・公開され、ダウンロードすることで3D都市モデルに反映することが可能だ。
当サービスは、現地で活動する災害ボランティアや研究機関などの現場関係者に、いち早く情報を提供し、活動に役立てることを目的として公開されている。
災害状況の集約することは現場関係者への情報提供の迅速化だけでなく、今後起こりうる災害への備えに活用することで、長期的な視点に立った減災や災害に強い街づくりに役立てることができるだろう。
◎ まちづくり
全国各地で進んでいる再開発事業。竣工後の都市空間をVR上に落とし込むことで、設計段階で建物内の回遊性を検証したり、事前に人流シミュレーションを行うことが可能になる。段差やエレベータの配置を事前に細かく確認できるため、利用者の視点に立ったバリアフリー化の推進にも活用できそうだ。
◎まちあるき
商用利用を目的とした民間企業の活用法も、さまざまなケースが考えられるだろう。たとえば、コロナ禍における百貨店や繁華街での購買体験やコミュニケーションのための仮想空間を3D都市モデル上で提供するサービスや、AR機能を活用した観光ガイドなど、仮想空間をエンターテインメントとして捉えたアイデアなどがある。
また、B to Cサービス以外にも、物流ドローンのフライトシミュレーションや工事車両の交通シミュレーションなど、B to Bサービスでの活用を視野に入れた実証実験も行われている。
オープンデータが切り拓く、土木・建設ビジネスの可能性
プラトーが提供する3D都市モデルと、すでに自社で保有している各種GISデータを連携し、カスタマイズ表示することができるプラットフォームサービス「ToMAP」がすでにリリースされ、今後も幅広い活用法の開発が期待されている。
本記事で取り上げた活用例は、ほんの一部に過ぎない。3D都市モデルがこれから生み出していく新しいソリューションの可能性を、ぜひ自身の目で体験していただきたい。
WRITTEN by
高橋 奈那
神奈川県生まれのコピーライター。コピーライター事務所アシスタント、広告制作会社を経て、2020年より独立。企画・構成からコピーライティング・取材執筆など、ライティング業務全般を手がける。学校法人や企業の発行する広報誌やオウンドメディアといった、広告主のメッセージをじっくり伝える媒体を得意とする。
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