- なぜアンダーパスの冠水対策が必要なのか?
- アンダーパスを冠水リスクに応じて4区分
- 特にリスクが高いアンダーパスでは「予防的な通行規制」
- 「警戒レベル4相当」や雨量・水位を判断材料に
- 冠水を確認したら、すべてのアンダーパスで速やかに通行規制
- 停電や設備故障時にも「安全側」に移行
- 遠隔遮断機や水位センサーなどを組み合わせて車両の進入を防ぐ
- 特に高いリスク箇所では「遠隔遮断機」を基本に
- 水位センサーや監視カメラも活用
- 設備が故障した場合の「代替措置」も準備
- 排水設備だけに頼らない冠水対策へ
- 道路利用者への情報提供も強化
- 国は今後「アンダーパス冠水事故防止対策推進計画」を策定
- 地方自治体にも広がるアンダーパスの冠水対策
国土交通省は2026年10月6日、「アンダーパスにおける冠水事故防止に向けたガイドライン」を策定した。
近年、大雨の頻発化・激甚化により、道路の冠水リスクが高まっている。特にアンダーパスは周辺の道路より低い位置に設けられているため、周辺から雨水が集中しやすく、短時間で水位が急激に上昇するおそれがある。
2026年8月の千葉豪雨では、アンダーパスの冠水によって人的・物的被害が発生。その後も各地で大雨によるアンダーパスの冠水被害が発生している。
こうした状況を受け、国土交通省は8月27日に「アンダーパスにおける冠水事故防止に向けた当面の対応について」を通知。
今回のガイドラインでは、これまでの対応をさらに体系化し、冠水リスクに応じた通行規制や車両進入防止対策などの基本的な考え方を、整理・解説していく。
構造上、周辺から雨水が集まりやすいため、短時間の大雨によって急激に水位が上昇する可能性がある。
国土交通省は、アンダーパスの冠水事故を防止するためには、単に排水設備を整備するだけでは十分ではないとしている。
重要なのは、
である。
今回のガイドラインでは、この考え方を「多重防御」として整理している。
今回のガイドラインの大きなポイントが、アンダーパスを冠水リスクに応じて4つに区分することだ。
区分は以下の4段階となる。
リスク区分は、人的・物的被害の発生履歴、冠水履歴、道路の種類、その他の冠水リスクなどを踏まえて、各道路管理者が判断する。
なお、被害・冠水履歴については、基本的に過去5年間を対象とする考え方が示されている。
区分①の「特に高い冠水リスク箇所」では、原則として予防的な事前通行規制を物理的に実施する。
具体的には、過去5年間を基本として、人的被害や車両の水没など重大な物的被害が発生した箇所について、一定の条件を満たした場合に、冠水が発生する前から通行を規制する。
ここで重要なのが、従来のように「冠水を確認してから通行止めにする」のではなく、冠水する可能性が高まった段階で先回りして通行を止めるという考え方だ。
予防的な事前通行規制の判断には、防災気象情報や降雨予測、実測雨量、水位などを活用する。
特に区分①のうち重大な被害が過去に発生した箇所では、警戒レベル4相当の防災気象情報が発表された場合、または設定した時間雨量の基準に達した場合・達すると予測される場合に、原則として予防的な事前通行規制を実施する。
ガイドラインで対象としている警戒レベル4相当の防災気象情報には、
がある。
また、時間雨量の基準は全国一律ではなく、アンダーパスごとに設定する。
雨水の流入量や集水面積、排水ポンプの能力、排水先となる下水道・河川・水路の状況、過去の降雨・冠水実績などを踏まえて判断する。
予防的な事前通行規制とは別に、実際に冠水が確認・検知された場合には、すべての区分のアンダーパスで速やかに通行規制を実施することもガイドラインで示されている。
さらに、道路管理者や警察が「車両の安全な通行を確保することが困難」と判断した場合には、冠水の確認・検知を待たずに通行規制を実施する。
つまり、
ことが重要になる。
今回のガイドラインでは、設備が正常に動作することを前提にした対策だけではなく、フェールセーフの考え方も重視している。
大雨時に停電や排水設備、監視設備などの異常によって必要な機能が低下した場合には、冠水を待つことなく、状況に応じて早期に通行規制を実施する。
また、予防的な通行規制に備え、警戒レベル3相当の段階から、
などを行い、規制基準に達した際に速やかに対応できる体制を整えるとしている。
ガイドラインでは、通行規制を実施したにもかかわらず、車両が冠水のおそれのあるアンダーパスへ進入してしまうことも想定している。
そこで、
を組み合わせた多重防御を基本的な考え方としている。
具体的な設備として示されているのが、
などだ。

リスク区分によって必要となる設備の組み合わせが異なる。
区分①の「特に高い冠水リスク箇所」では、予防的な事前通行規制を導入するアンダーパスについて、道路構造や交通状況などを踏まえ、遠隔遮断機(自動含む)を設置することを基本的な考え方として考慮するとしている。
遠隔遮断機は、道路管理者が遠隔操作できる交通遮断装置で、自動で作動するものも含まれる。

ただし、作動させる際には通行車両などの安全を確保する必要があるため、監視カメラなどで現地の交通状況を確認したうえで慎重に操作することとしている。
また、遠隔遮断機などを設置するまでの間は、交通誘導員によるバリケード設置などで車両の進入を防止する。
冠水を早期に把握するため、水位検出器や監視カメラなどの監視設備も重要になる。
ガイドラインでは、道路構造や交通状況、冠水リスクなどを踏まえて、雨量計、水位検出器、監視カメラなどを必要に応じて設置するとしている。
水位検出器については、
などが例として挙げられている。

また、2026年3月に示された「浸水センサの利用に関するガイドライン(案)」に記載され、全国の実証実験で用いられている浸水センサも対象としている。
設備を設置するだけではなく、設備が作動しない場合にどうするかまで想定しておくこともポイントだ。
遮断機や雨量計、水位センサー、監視カメラなどについて、平常時の点検・維持管理に加えて、大雨時や停電時を想定した作動確認を行う。
さらに、設備が作動しない場合には、
などによる代替措置をあらかじめ整理しておくとしている。
これは、今回のガイドラインが掲げるフェールセーフの考え方を具体化したものといえる。
もちろん、排水機能そのものの確保も重要だ。
ガイドラインでは、排水設備、非常用電源などについて必要な機能を確保し、適切に維持管理することとしている。
排水ポンプや排水管、集水ますなどについて、雨水の流入状況、集水面積、排水先となる下水道・河川・水路などの状況を踏まえ、必要な排水能力を確保する。
また、側溝や集水ますについては、土砂の堆積などによる通水阻害を防ぐため、必要な清掃を実施する。
一方で、国交省が今回のガイドラインで明確に示しているのは、排水設備が正常に機能することだけに依存しないという考え方だ。
停電や設備故障などが発生しても、通行規制や車両進入防止によって道路利用者の安全を確保することを求めている。
アンダーパスの冠水事故を防ぐには、道路管理者側の設備だけでなく、道路利用者への情報提供も欠かせない。
平時からアンダーパスの冠水リスクや、予防的な事前通行規制を行う箇所についてホームページなどで周知することが求められている。
大雨時には、
といった情報提供を行う。
さらに、道路利用者からの冠水情報も活用し、道路緊急ダイヤル「#9910」などを通じた情報収集についても周知するとしている。
今回のガイドラインは、これで対策が完了するわけではない。
国は今後、このガイドラインに基づいて「アンダーパス冠水事故防止対策推進計画」を策定する。
推進計画では、各道路管理者による対策区分を踏まえ、
などを定める予定だ。
さらに国は、対策の実施状況を把握し、その進捗状況などを踏まえて必要に応じて推進計画を見直すとしている。
今回のガイドラインは、国が管理する道路については、各地方整備局や北海道開発局、沖縄総合事務局が必要な対策を講じるものとされている。
一方、地方公共団体、高速道路会社、地方道路公社については、それぞれの道路構造、交通状況、冠水リスクなどを踏まえ、ガイドラインを参考に必要な対策を講じるものとされている。
各道路管理者が、それぞれのアンダーパスのリスクや交通状況などを踏まえて必要な対策を判断することになる。
近年、大雨の頻発化・激甚化により、道路の冠水リスクが高まっている。特にアンダーパスは周辺の道路より低い位置に設けられているため、周辺から雨水が集中しやすく、短時間で水位が急激に上昇するおそれがある。
2026年8月の千葉豪雨では、アンダーパスの冠水によって人的・物的被害が発生。その後も各地で大雨によるアンダーパスの冠水被害が発生している。
こうした状況を受け、国土交通省は8月27日に「アンダーパスにおける冠水事故防止に向けた当面の対応について」を通知。
今回のガイドラインでは、これまでの対応をさらに体系化し、冠水リスクに応じた通行規制や車両進入防止対策などの基本的な考え方を、整理・解説していく。
なぜアンダーパスの冠水対策が必要なのか?
アンダーパスとは、周辺の地盤より低い位置に道路を設け、交差する道路や鉄道の下を通過する構造の道路である。
構造上、周辺から雨水が集まりやすいため、短時間の大雨によって急激に水位が上昇する可能性がある。
国土交通省は、アンダーパスの冠水事故を防止するためには、単に排水設備を整備するだけでは十分ではないとしている。
重要なのは、
「冠水させない」対策だけでなく、「冠水する前に通行を止める」「冠水した場合に車両を進入させない」対策を組み合わせること
である。
今回のガイドラインでは、この考え方を「多重防御」として整理している。
アンダーパスを冠水リスクに応じて4区分
今回のガイドラインの大きなポイントが、アンダーパスを冠水リスクに応じて4つに区分することだ。
区分は以下の4段階となる。
| 区分 | 冠水リスク | 基本的な対応 |
| ① | 特に高い冠水リスク箇所 | 予防的な事前通行規制(物理的) |
| ② | 高い冠水リスク箇所 | 冠水発生時に警告表示+速やかな物理的通行規制 |
| ③ | 一定の冠水リスク箇所 | 冠水発生時に警告表示+速やかな物理的通行規制 |
| ④ | 注意喚起・監視等リスク箇所 | 警告表示などによる注意喚起・監視 |
リスク区分は、人的・物的被害の発生履歴、冠水履歴、道路の種類、その他の冠水リスクなどを踏まえて、各道路管理者が判断する。
なお、被害・冠水履歴については、基本的に過去5年間を対象とする考え方が示されている。
特にリスクが高いアンダーパスでは「予防的な通行規制」
区分①の「特に高い冠水リスク箇所」では、原則として予防的な事前通行規制を物理的に実施する。
具体的には、過去5年間を基本として、人的被害や車両の水没など重大な物的被害が発生した箇所について、一定の条件を満たした場合に、冠水が発生する前から通行を規制する。
ここで重要なのが、従来のように「冠水を確認してから通行止めにする」のではなく、冠水する可能性が高まった段階で先回りして通行を止めるという考え方だ。「警戒レベル4相当」や雨量・水位を判断材料に
予防的な事前通行規制の判断には、防災気象情報や降雨予測、実測雨量、水位などを活用する。
特に区分①のうち重大な被害が過去に発生した箇所では、警戒レベル4相当の防災気象情報が発表された場合、または設定した時間雨量の基準に達した場合・達すると予測される場合に、原則として予防的な事前通行規制を実施する。
ガイドラインで対象としている警戒レベル4相当の防災気象情報には、
- レベル4大雨危険警報
- レベル4氾濫危険警報
- レベル4高潮危険警報
がある。
また、時間雨量の基準は全国一律ではなく、アンダーパスごとに設定する。
雨水の流入量や集水面積、排水ポンプの能力、排水先となる下水道・河川・水路の状況、過去の降雨・冠水実績などを踏まえて判断する。
冠水を確認したら、すべてのアンダーパスで速やかに通行規制
予防的な事前通行規制とは別に、実際に冠水が確認・検知された場合には、すべての区分のアンダーパスで速やかに通行規制を実施することもガイドラインで示されている。
さらに、道路管理者や警察が「車両の安全な通行を確保することが困難」と判断した場合には、冠水の確認・検知を待たずに通行規制を実施する。
つまり、
「水がたまったら止める」のではなく、「危険と判断した時点で止める」
ことが重要になる。
停電や設備故障時にも「安全側」に移行
今回のガイドラインでは、設備が正常に動作することを前提にした対策だけではなく、フェールセーフの考え方も重視している。
大雨時に停電や排水設備、監視設備などの異常によって必要な機能が低下した場合には、冠水を待つことなく、状況に応じて早期に通行規制を実施する。
また、予防的な通行規制に備え、警戒レベル3相当の段階から、
- 防災気象情報の確認
- 雨量・水位の把握
- 下水道・河川などの関連情報の確認
- 排水設備の動作確認
- 水位センサーなどの確認
- 監視設備の確認
- 遮断機などの稼働準備
- 関係者間の連絡体制の確認
などを行い、規制基準に達した際に速やかに対応できる体制を整えるとしている。
遠隔遮断機や水位センサーなどを組み合わせて車両の進入を防ぐ
ガイドラインでは、通行規制を実施したにもかかわらず、車両が冠水のおそれのあるアンダーパスへ進入してしまうことも想定している。
そこで、
「進入防止」「注意喚起」「監視」
を組み合わせた多重防御を基本的な考え方としている。
具体的な設備として示されているのが、
- 遠隔遮断機(自動含む)
- 遮断機(手動等)
- 道路情報板
- 赤色灯
- 注意喚起看板
- 路面・側壁標示
- 水位検出器(水位センサー)
- 監視カメラ(CCTV)
などだ。

リスク区分によって必要となる設備の組み合わせが異なる。
特に高いリスク箇所では「遠隔遮断機」を基本に
区分①の「特に高い冠水リスク箇所」では、予防的な事前通行規制を導入するアンダーパスについて、道路構造や交通状況などを踏まえ、遠隔遮断機(自動含む)を設置することを基本的な考え方として考慮するとしている。
遠隔遮断機は、道路管理者が遠隔操作できる交通遮断装置で、自動で作動するものも含まれる。

ただし、作動させる際には通行車両などの安全を確保する必要があるため、監視カメラなどで現地の交通状況を確認したうえで慎重に操作することとしている。
また、遠隔遮断機などを設置するまでの間は、交通誘導員によるバリケード設置などで車両の進入を防止する。
水位センサーや監視カメラも活用
冠水を早期に把握するため、水位検出器や監視カメラなどの監視設備も重要になる。
ガイドラインでは、道路構造や交通状況、冠水リスクなどを踏まえて、雨量計、水位検出器、監視カメラなどを必要に応じて設置するとしている。
水位検出器については、
- フロート式水位計
- リードスイッチ式(デジタル式)水位計
- 水圧式水位計
- 非接触型水位計(超音波式)
などが例として挙げられている。

また、2026年3月に示された「浸水センサの利用に関するガイドライン(案)」に記載され、全国の実証実験で用いられている浸水センサも対象としている。
設備が故障した場合の「代替措置」も準備
設備を設置するだけではなく、設備が作動しない場合にどうするかまで想定しておくこともポイントだ。
遮断機や雨量計、水位センサー、監視カメラなどについて、平常時の点検・維持管理に加えて、大雨時や停電時を想定した作動確認を行う。
さらに、設備が作動しない場合には、
- 手動操作
- バリケード
- カラーコーン
などによる代替措置をあらかじめ整理しておくとしている。
これは、今回のガイドラインが掲げるフェールセーフの考え方を具体化したものといえる。
排水設備だけに頼らない冠水対策へ
もちろん、排水機能そのものの確保も重要だ。
ガイドラインでは、排水設備、非常用電源などについて必要な機能を確保し、適切に維持管理することとしている。
排水ポンプや排水管、集水ますなどについて、雨水の流入状況、集水面積、排水先となる下水道・河川・水路などの状況を踏まえ、必要な排水能力を確保する。
また、側溝や集水ますについては、土砂の堆積などによる通水阻害を防ぐため、必要な清掃を実施する。
一方で、国交省が今回のガイドラインで明確に示しているのは、排水設備が正常に機能することだけに依存しないという考え方だ。
停電や設備故障などが発生しても、通行規制や車両進入防止によって道路利用者の安全を確保することを求めている。
道路利用者への情報提供も強化
アンダーパスの冠水事故を防ぐには、道路管理者側の設備だけでなく、道路利用者への情報提供も欠かせない。
平時からアンダーパスの冠水リスクや、予防的な事前通行規制を行う箇所についてホームページなどで周知することが求められている。
大雨時には、
- 車での不要不急の外出を控える
- 冠水した道路へ進入しない
- アンダーパスは短時間で浸水する可能性があることを周知する
- 道路情報板やホームページなどで規制情報を発信する
- カーナビなどを活用して危険箇所への進入を避ける
といった情報提供を行う。
さらに、道路利用者からの冠水情報も活用し、道路緊急ダイヤル「#9910」などを通じた情報収集についても周知するとしている。
国は今後「アンダーパス冠水事故防止対策推進計画」を策定
今回のガイドラインは、これで対策が完了するわけではない。
国は今後、このガイドラインに基づいて「アンダーパス冠水事故防止対策推進計画」を策定する。
推進計画では、各道路管理者による対策区分を踏まえ、
- 予防的な事前通行規制
- 車両進入防止対策
- 全国的な対策方針
- 実施目標
などを定める予定だ。
さらに国は、対策の実施状況を把握し、その進捗状況などを踏まえて必要に応じて推進計画を見直すとしている。
地方自治体にも広がるアンダーパスの冠水対策
今回のガイドラインは、国が管理する道路については、各地方整備局や北海道開発局、沖縄総合事務局が必要な対策を講じるものとされている。
一方、地方公共団体、高速道路会社、地方道路公社については、それぞれの道路構造、交通状況、冠水リスクなどを踏まえ、ガイドラインを参考に必要な対策を講じるものとされている。
特に地方公共団体が管理する道路については、今回の内容は地方自治法第245条の4第1項に基づく「技術的助言」という位置付けだ。
そのため、「全国すべての自治体に同じ設備の設置が義務付けられた」という意味ではない。
そのため、「全国すべての自治体に同じ設備の設置が義務付けられた」という意味ではない。
各道路管理者が、それぞれのアンダーパスのリスクや交通状況などを踏まえて必要な対策を判断することになる。
WRITTEN by
建設土木のICT活用など、
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