建設・土木業界における人手不足などを背景に、国土交通省が進めるICT化の取り組み「i-Construction(アイ・コンストラクション)」。2025年までに建設現場の生産性を2割向上させることを目標に掲げ、省人化や作業効率化、安全性アップに力を注いできた。
i-Constructionの本格スタートから約5年が経つ今、状況はどうなっているのだろうか。
まずは、ICT活用工事の実施状況を見てみよう。
ICT活用工事の件数は、毎年、増加し続けている。2019年度は直轄工事の約8割にも上り、今もさらに増えているところだ。適用される工種も、i-Constructionスタート時は土工のみだったが、舗装工、浚渫工、地盤改良工と徐々に拡大。さらに、2021年度は構造物工、路盤工、海上地盤改良工まで広がる予定だ。
建設・土木業界のICT化が進む一方で、課題も見えてきた。ゼネコンなどの全国規模の大企業ではICT施工が積極的に行われているものの、中小企業や地方ではそこまで普及されていないという課題だ。
実際に、企業を経営規模や実績などでランクを分けると、ABランクにあたる全国規模の大企業は約9割がICT施工を経験しているが、中小規模の地域企業ではCランクが5割、Dランクが2割程度。コスト負担やICTに関するスキル・理解不足などが要因と考えられる。
そこで、国土交通省は「中小企業・地方公共団体への裾野拡大に向けた取り組み」として、以下の3つを挙げる。
ICT施工における小規模施工の積算基準の対応
トップランナーの取組に関する情報共有
地域企業への普及拡大に向けた簡易型ICT活用工事の導入
小規模施工への対応や簡易化などでICT化へのハードルを下げつつ、ノウハウを共有することで理解を深め、普及を広げていくのが狙いだ。さらに、中小企業の経営者層向け講習会や、官民が連携した最新技術の研修、ICT施工未経験企業へのアドバイザー制度の実施などの取り組みも強化。
これからのフェーズでは、中小企業や地方公共団体までいかに拡大できるかが、i-Construction普及拡大の鍵になると言えるだろう。
また、コロナ禍をきっかけに、リモート型の働き方が広がる中、建設・土木業界でもDX(デジタル・トランスフォーメーション)が加速。DX促進のためにも、計画・設計から施工、維持管理までの全プロセスで情報を3Dデータ化して活用する「BIM/CIM」の早期実現が重要視されている。
そこで国土交通省は、「2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事にBIM/CIMを適用すること」を目標に掲げたところだ。当初は2025年までにBIM/CIMの適用を目指していたが、2年早まった形になる。
これまでBIM/CIMの活用工事は、設計プロセスから施工プロセスへと段階的に適用範囲を広げ、工事数も増加。橋やトンネルなどの大型プロジェクトでは、21年度からは全ての詳細設計で、2022年度からは全ての詳細設計・工事でBIM/CIMが原則適用になる見込みだ。
さらに、BIM/CIMをスタンダードにするためには、3Dデータを活用できる人材の育成も急務。そこで、全国の地方整備局やウェビナーなどで、工事の発注者・受注者に向けて研修を行うためのプログラム策定を進める。関東地方整備局では、i-Constructionモデル事務所である甲府河川国道事務所と連携し、「関東i-Construction人材育成センター(仮称)」を立ち上げるという。
そして国土交通省は、建設現場での新しい技術の活用にも力を入れる。
2019年度までは新技術の活用率は40%台に留まっていたが、2020年度からは直轄の土木工事において、ICT・BIM /CIM活用工事での新技術や、「NETIS(国土交通省が運営する新技術データベースシステム)」に登録された新技術などの活用を原則義務化。現場での生産性向上や災害対策、最新技術の開発に活かしていく。
新技術を義務化することで、マーケットが活性化するというメリットもある。従来は業界外の企業が新規参入しにくい側面があったが、他業界やIT系スタートアップなどの最先端の技術を積極的に取り入れやすい環境に。新参企業にとっては事業拡大のチャンスとなり、建設業界自体のイメージアップにもつながるだろう。
またゼネコンや建機メーカーなどの建設系企業はもちろん、業界を越えたコラボレーションやスタートアップの進出も広がる。「i-Construction」のさらなる進化に、これからも期待が高まる。
i-Constructionの本格スタートから約5年が経つ今、状況はどうなっているのだろうか。
i-Constructionはどれぐらい進んだのか?
まずは、ICT活用工事の実施状況を見てみよう。
ICT活用工事の件数は、毎年、増加し続けている。2019年度は直轄工事の約8割にも上り、今もさらに増えているところだ。適用される工種も、i-Constructionスタート時は土工のみだったが、舗装工、浚渫工、地盤改良工と徐々に拡大。さらに、2021年度は構造物工、路盤工、海上地盤改良工まで広がる予定だ。
中小企業・地方公共団体への普及が課題に
建設・土木業界のICT化が進む一方で、課題も見えてきた。ゼネコンなどの全国規模の大企業ではICT施工が積極的に行われているものの、中小企業や地方ではそこまで普及されていないという課題だ。
実際に、企業を経営規模や実績などでランクを分けると、ABランクにあたる全国規模の大企業は約9割がICT施工を経験しているが、中小規模の地域企業ではCランクが5割、Dランクが2割程度。コスト負担やICTに関するスキル・理解不足などが要因と考えられる。
そこで、国土交通省は「中小企業・地方公共団体への裾野拡大に向けた取り組み」として、以下の3つを挙げる。
ICT施工における小規模施工の積算基準の対応
- 5,000m3の積算基準を設定(平成31年4月)など、小規模工事へ対応
- 現場条件により、標準のICT施工機械よりも規格の小さい施工機械を用いる場合は、標準積算によらず見積りを活用
トップランナーの取組に関する情報共有
- 先進的にICTを活用しているトップランナー企業のノウハウを共有する機会を設置
地域企業への普及拡大に向けた簡易型ICT活用工事の導入
- 工事の全てのプロセスで3次元データ活用が必須であったところを、一部段階で選択可能とした「簡易型ICT活用工事」を2020年度より導入
小規模施工への対応や簡易化などでICT化へのハードルを下げつつ、ノウハウを共有することで理解を深め、普及を広げていくのが狙いだ。さらに、中小企業の経営者層向け講習会や、官民が連携した最新技術の研修、ICT施工未経験企業へのアドバイザー制度の実施などの取り組みも強化。
これからのフェーズでは、中小企業や地方公共団体までいかに拡大できるかが、i-Construction普及拡大の鍵になると言えるだろう。
2023年度までにBIM/CIMを原則適用し、DX促進へ
また、コロナ禍をきっかけに、リモート型の働き方が広がる中、建設・土木業界でもDX(デジタル・トランスフォーメーション)が加速。DX促進のためにも、計画・設計から施工、維持管理までの全プロセスで情報を3Dデータ化して活用する「BIM/CIM」の早期実現が重要視されている。
そこで国土交通省は、「2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事にBIM/CIMを適用すること」を目標に掲げたところだ。当初は2025年までにBIM/CIMの適用を目指していたが、2年早まった形になる。
これまでBIM/CIMの活用工事は、設計プロセスから施工プロセスへと段階的に適用範囲を広げ、工事数も増加。橋やトンネルなどの大型プロジェクトでは、21年度からは全ての詳細設計で、2022年度からは全ての詳細設計・工事でBIM/CIMが原則適用になる見込みだ。
さらに、BIM/CIMをスタンダードにするためには、3Dデータを活用できる人材の育成も急務。そこで、全国の地方整備局やウェビナーなどで、工事の発注者・受注者に向けて研修を行うためのプログラム策定を進める。関東地方整備局では、i-Constructionモデル事務所である甲府河川国道事務所と連携し、「関東i-Construction人材育成センター(仮称)」を立ち上げるという。
新しい技術の活用も原則義務化。マーケットの活性化も
そして国土交通省は、建設現場での新しい技術の活用にも力を入れる。
2019年度までは新技術の活用率は40%台に留まっていたが、2020年度からは直轄の土木工事において、ICT・BIM /CIM活用工事での新技術や、「NETIS(国土交通省が運営する新技術データベースシステム)」に登録された新技術などの活用を原則義務化。現場での生産性向上や災害対策、最新技術の開発に活かしていく。
新技術を義務化することで、マーケットが活性化するというメリットもある。従来は業界外の企業が新規参入しにくい側面があったが、他業界やIT系スタートアップなどの最先端の技術を積極的に取り入れやすい環境に。新参企業にとっては事業拡大のチャンスとなり、建設業界自体のイメージアップにもつながるだろう。
またゼネコンや建機メーカーなどの建設系企業はもちろん、業界を越えたコラボレーションやスタートアップの進出も広がる。「i-Construction」のさらなる進化に、これからも期待が高まる。
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