コラム・特集
光波とトータルステーションの違いを図解!呼び名が混同される理由、現場での使い分けは?
現場では「光波」とも「トータルステーション」とも呼ばれるが、この2つは同じものを指す言葉ではない。
光波測距儀は距離だけを測る装置で、トータルステーションは、そこに角度と座標が加わったものだ。
この記事では、2つの関係を1枚の図で整理したうえで、混同される理由と現場での使い分けを見ていこう。
この記事で分かること
・「光波」と「トータルステーション」の関係が、1枚の図でわかる
・「光波」という言葉が、もともと何を指していたのか
・2つの機能の差 —— 距離・角度・座標
・現場での一番の違い —— 座標まで扱うかどうか
・土工・トンネルなど、工種ごとの使い分け
現場で使われる測量機器は、「どれだけの精度が出るか」と「どれだけ手軽に扱えるか」の2つの軸で整理できる。
横軸に精度(cm ⇔ mm)、縦軸に操作性(計画や視準が必要 ⇔ 計画不要で簡単)をとった測量機器の全体マップ。
トータルステーションは、このマップの中で精度の高さを担う側に位置する。そのぶん、据え付けや視準(しじゅん:望遠鏡を目標に正確に向けること)といった手順を丁寧に踏む必要がある機器でもある。
一方で、手軽さと精度を両立する領域も生まれてきている。手軽に使えてmm精度が出るのは、スマホ測量(OPTiM Geo Scan)も存在する。
それぞれの機器に向き不向きがあり、優劣があるわけではない。
この図は、機器の全体を見渡すための地図にあたる。
3つの言葉の関係を、先に図で見ていこう。

トータルステーションの構成。測角部(セオドライト)・測距部(光波測距儀)・データ記憶装置の3つを一体化し、角度と距離から座標を計算して記録・出力する。入れ子ではなく、部品と完成品の関係。
こちらは言葉どうしの関係を示した図だ。3つの言葉の役割は、次のように分かれている。
・光波測距儀(こうはそっきょぎ) ・・・ 距離だけを測る装置。角度は測れない
・セオドライト ・・・ 角度だけ(水平角・鉛直角)を測る機器。距離は測れない
・トータルステーション(TS) ・・・ この2つを一体化し、座標の計算と記録まで行うもの
公共測量のやり方は、測量法にもとづいて国土交通省が「作業規程の準則」として定めている。この準則は、トータルステーションが何でできているかを次のように決めている。
トータルステーションの構成は、測角部、測距部の本体及びデータ記憶装置をいう。
(国土交通省「作業規程の準則」別表1)
測角部がセオドライト、測距部が光波測距儀にあたる(準則の表記は「測距儀」で、光を使う方式に限定した言い方はしていない)。そこにデータ記憶装置が加わったものが、トータルステーションだ。
ここで気をつけたいのが、この関係は「入れ子」ではないということだ。
「光波測距儀の大きいものがトータルステーション」でも、「トータルステーションの一種が光波測距儀」でもない。部品と完成品の関係であり、光波測距儀はトータルステーションの測距部にあたる。
簡単に言えば、「トータルステーションは、光波測距儀とセオドライトを部品として組み込んだ完成品」ということだ。光波測距儀が大きくなったものでも、小さくなったものでもない。
なお、セオドライトは「トランシット」とも呼ばれることがある。

では、その「光波」という呼び方は、どこから来ているのか。言葉の由来から見ていく。
光波測距儀は、光を使って距離を測る装置だ。なぜ「光波」なのか。国土地理院の解説に、その答えがある。
長さを求めたい2点の片方に光波測距儀と呼ばれる測量器械を、もう片方に“ミラー”とよばれる鏡を置き、光波測距儀から発射された光の波が鏡で反射され、光波測距儀にもどってくる時間を計ることで、長さを測ることができます。
(国土地理院「長さを測るしくみ(光波測距儀)」)
「光の波」を使って測るから、光波測距儀。名前はここから来ている。
JISの規格名でも、光波測距儀の英文名は「Electro-optical distance meters」(電気光学式の距離計)とされている。頭文字をとって「EDM」と略されることも多い。
「光波」は、もともと機器の分類を指す言葉ではない。
作業規程の準則の本文と別表1には、「光波」という語が出てこない。準則が機器名として使っているのは「測距儀」で、別表1も「測距儀の級別性能分類」として、光を使う方式に限定していない。
準則の付録には、JISの規格名を引くかたちで「光波測距儀」が出てくる。ただしそこでも「測量機器の区分は別表1による」とされていて、等級を分ける単位はあくまで「測距儀」だ。
一方で、「光波」が公的な文書に出てくる場面はある。農林水産省が定めている土木工事施工管理基準の参考資料は、山岳トンネルの内空変位(ないくうへんい:掘削後にトンネル断面がどれだけ変形するか)の測定について、測定方法をこう規定している。
スチールテープ等、又は光波による方法で、測定は掘削後速やかに実施する。
(農林水産省「土木工事施工管理基準」参考資料「トンネル(NATM)観察・計測(案)」)
注目したいのは、「スチールテープ等」と「光波」が並べられていることだ。
これは「巻尺で測るか、光で測るか」という手段の対比であって、機器の分類ではない。ここでの「光波」は、光波測距による方法という測り方の名前として使われている。
現場でトータルステーションを指して「光波」と呼ぶことがあるのは事実だが、機器の分類としては別の言葉だ。この2つが同じ土俵の言葉に見えてしまうところに、混同の入り口がある。
光波測距儀が登場したのは1960年代だ。それまで、長い距離は三角法で求めるのが基本だったが、光を使って直接距離を測れるようになった。
そして1980年、光波測距儀と経緯儀(けいいぎ:角度を測る機器。セオドライトのこと)を一体化した測量機器が登場する。これが後に「トータルステーション」と呼ばれるようになった。
つまり、角度を測る機器と距離を測る装置は、もともと別々のものだった。一体化されてから、まだ50年ほどしか経っていない。
2つの機能差を、表にして並べてみる。
距離が測れる点は共通している。差が出るのは、角度から先だ。
光波測距儀が返すのは距離の数値だけで、角度は測れない。トータルステーションは角度も測り、その2つから座標を計算して画面に表示し、記録して外部に出力するところまでを1台で行う。
この違いは、規格の上でもはっきり分かれている。
測量機器の現場試験手順を定めたJIS B 7912シリーズは、機器ごとに部が分かれている。
・第3部 ・・・ セオドライト
・第4部 ・・・ 光波測距儀
・第5部 ・・・ トータルステーション
さらに踏み込むと、試験の対象になる量そのものが違う。表に挙げたとおり、第4部が対象にしているのは距離で、第5部は座標値だ。
測るものが距離なのか、座標なのか。規格の上でも、この2つは別の機器として扱われている。
一方で、距離を測る部分そのものは変わらない。トータルステーションの測距部がやっていることは、光波測距儀と同じだ。
光を出し、対象で反射して戻ってきた光を捉えて距離に換算する。光が戻ってくるまでを捉えるという原理は共通していて、現行機の主流は、その時間を直接計るのではなく、戻ってきた光の位相のずれから距離を求める方式だ。
つまり、光波測距儀が担っている機能は、トータルステーションの中にそのまま入っている。測距の仕組みは同じで、その先に角度と座標が乗るかどうかが違う、という関係だ。

機能で見れば別の機器なのに、現場では同じもののように語られることがある。理由は3つに整理できる。
1980年に一体化されるまでは、「角度はセオドライト、距離は光波測距儀」と、道具を持ち替えて測っていた。
別々だった時代の呼び方が、一体化した後も残った。現場で「光波」という言葉が生き続けているのは、そのためだ。
「トータルステーション」は機器の分類を指す言葉だが、「光波」は測り方を指す言葉として使われてきた。分類の言葉と手段の言葉なので、そもそも同じ土俵に乗らない。
それでも並べて語られると、同じ階層の2択に見えてしまう。
同じ機器や測定方法を指していても、文書によって使われる言葉が違う。
・作業規程の準則 ・・・ 「測距儀」。「光波」という語は使っていない
・農林水産省の施工管理基準(参考資料) ・・・ 内空変位測定の方法として「光波による方法」
・国土交通省の出来形管理要領(正式名称は「TS(ノンプリズム方式)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」)・・・ 「トータルステーション(TS)」
それぞれが違うものを規定しているので、食い違っているわけではない。準則は機器の等級を、施工管理基準は測定の方法を、出来形管理要領は使う機器を定めている。
ただ、読み手の側から見れば、同じ現場の話に3通りの言葉が出てくることになる。ここも混同の一因になっている。
なお、「トランシット」と「セオドライト」のあいだにも、同じような呼び名の重なりがある。
ここまでは言葉の話だった。では、現場の作業としては何が違うのか。
答えは座標だ。

測ったあとに何が残るか。光波測距儀は距離の数値だけが残る。トータルステーションは距離・角度に器械点と後視点の情報が加わり、目標点の座標(X・Y・Z)が求まる。
国土交通省の出来形管理要領は、トータルステーションを次のように定義している。
1台の機械で角度(鉛直角・水平角)と距離を同時に測定することができる電子式測距測角儀のことである。計測した角度と距離から未知点の座標計算を瞬時に行うことができ、計測データの記録及び外部機器への出力ができる。
(国土交通省「TS(ノンプリズム方式)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」)
要件はここで終わっていない。定義の後半に、未知点の座標計算と計測データの記録・外部出力が並んでいる。
制度としても、座標まで扱うことが機器の要件に入っているということだ。
なぜ座標が要るのか。距離だけでは、点の位置が決まらないからである。
器械から目標まで50mという数値が得られても、それだけでは目標がどこにあるのかは決まらない。方向が分からなければ、平面で考えても、器械を中心とした半径50mの円のどこかにある、というところまでしか言えない。
点の位置を決めるには、次の3つが揃う必要がある。
3つ目は人が入力する情報だ。座標が分かっている点に器械を据え、その座標と器械高を入れ、後視点を視準して方向の基準を決める。ここまでやって、はじめて目標点の座標が計算できる。
この一連の流れを1台でこなせることが、現場での実質的な差になる。
座標で取れると、測った後の扱いも変わってくる。
距離の数値は、それだけでは他の情報とつながらない。座標であれば、3次元の設計データとそのまま突き合わせられる。
ICT活用工事(建設機械の施工や測量を3次元データで進める国土交通省の取り組み)の出来形管理では、この点が制度に組み込まれている。国土交通省の出来形管理要領は、計測したデータを電子成果品(発注者に提出する電子データ一式)として整理し、提出するところまでを定めている。
測って終わりではなく、データとして残して使う。座標を扱えるかどうかは、その入り口にあたる。
光で距離を測る以上、光をどこで返してもらうかは避けて通れない論点になる。ここは光波測距儀とトータルステーションで共通する話だ。
光を返す相手は、大きく3つに分かれる。どれを使うかで、測れる距離も測り方も変わってくる。
・反射プリズム ・・・ 目標側に専用の反射鏡を立てる。もっとも遠くまで、もっとも正確に測れる
・反射シート ・・・ 反射材のシートを目標に貼る。プリズムより近い距離で使う
・ノンプリズム ・・・ 何も置かず、対象物の面からの反射をそのまま使う
この選択は、光波測距儀でもトータルステーションでも同じように効いてくる。プリズムを立てれば数千m級まで届く。何も置かなければ機種による幅が大きく、測地用の上位機でも、条件がよいときで1,000m前後がおおよその上限だ。
国土交通省の出来形管理要領は、ノンプリズム方式を「トータルステーションを用いた計測手法のうち、ターゲットとなるプリズムを利用せず被計測対象からの反射波を利用して測距する方法」と定義している。構造物の面を直接測れるのが特徴だ。
ここで見落とせないのが、JISの規格が対象にしているのはプリズムを使う測距だということである。
第4部(光波測距儀)は、適用範囲を次のように定めている。
この規格は,反射プリズムを使用した光波測距儀による作業を実施する前に,当該作業への適応性を確認するための試験手順について規定する。
(JIS B 7912-4:2016「測量機器の現場試験手順-第4部:光波測距儀」1 適用範囲)
英文名の *Electro-optical distance meters (EDM measurements to reflectors)* という括弧書きも、反射鏡に向けた測距であることを示している。ノンプリズム測距は、この規格の対象外だ。
発注者も、ノンプリズム方式の特徴を整理している。国土交通省 関東地方整備局「3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)」は、この方式を「計測箇所にターゲットとなるプリズムを利用せず、1点ごとにレーザー光を計測面へ照射して反射波を用いて測距する手法」と説明したうえで、特徴と留意事項を6点挙げている。ここでは、メリットとデメリットに分けて示す。
《 メリット 》
・プリズムが不要のため人の立ち入りができない場所も計測可能
・多点を自動で計測できるため面的に計測が可能
・プリズムが不要のため1人で計測が可能
《 デメリット 》
・1回の計測範囲が狭いため広範囲な計測を行う場合は器械の移設が必要
・計測面が濡れているとレーザーが反射されないため計測できない
・機器の設置位置について測量が必要
この手引きは、レーザー光を十分に反射しない物質として濡れた地表面等を挙げている。対象物の状態が、そのまま測れるかどうかを左右するということだ。
もうひとつ、ノンプリズムで気をつけたいのが精度の読み方だ。
カタログには、ノンプリズム測距の精度が2mm+2ppm程度と示されている。2ppmは距離に比例して増える分で、100m先でも0.2mmにすぎない。つまり、ほぼ2mmという数字だ。
ただしこの値には条件が付いている。反射率90%の白い面を、照度5,000ルクス未満という明るさで測ったときの値であり、測定できる範囲と精度は対象物の反射率や天候、場所の条件によって変わる、と注記されている。
一方、国土交通省の出来形管理要領が現場での精度確認に求めているのは、次の水準だ。
計測範囲内で平面精度±20mm、鉛直精度±20mm以内
(国土交通省「TS(ノンプリズム方式)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」)
確認の方法も決まっている。機器本体から、被計測対象までの最大計測距離以上となる位置に、計測点を2点以上設ける。そこをTS(プリズム方式)で測った値との差が、平面・鉛直とも±20mm以内かを確かめる。
2mmと±20mm。同じmm単位でも、意味している範囲がまったく違う。
カタログの数値は、理想的な条件下での測距そのものの性能だ。±20mmのほうは、据え付け・視準・対象物の状態まですべて込みで、現場の作業として求められる水準になる。どちらも正しい数字であり、混ぜて読むと話が合わなくなる。

工種によって、何をどう測るかは変わる。土工・位置出し・トンネルの順に見ていく。
まず押さえておきたいのが、公共測量の分野における位置づけだ。
作業規程の準則は、1級から4級までの基準点測量ごとに、使用する機器の等級と観測の方法を定めている。機器は製品名ではなく、性能で指定される。
たとえば1級トータルステーションは、測角部が1級セオドライトに、測距部が2級中距離型測距儀に準ずる性能を持つもの、と定義されている。ここでも「セオドライトの性能」と「測距儀の性能」を組み合わせる形で規定されているわけだ。
用語の関係が、そのまま制度の書き方に反映されている。
土工では、TS(ノンプリズム方式)がICT活用工事の中に位置づけられている。
ただし、これが主役として想定されているわけではない。国土交通省の出来形管理要領は、レーザースキャナーや空中写真測量で欠測があった場合の補足、およびそれに準じる小規模土工の測量を想定した技術としている。
要領は、選択の余地も明記している。
TSを用いた出来形管理要領等の従来方法の方が効率的な場合もあるため、現場状況に応じて適切に選択されたい
(国土交通省「TS(ノンプリズム方式)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」)
新しい方式が従来の方法を置き換える、という書き方にはなっていない。現場の条件で選ぶもの、という前提が制度にある。
測量には、「現地のものを測る」方向と、「設計上の点を現地に出す」方向がある。丁張り(ちょうはり)や墨出し(すみだし:設計上の基準線や位置を現地に印すこと)は後者にあたる。
ここで効いてくるのが、やはり座標だ。設計データ上の座標が分かっていて、器械点と後視点で基準が決まっていれば、その点が現地のどこに来るかを計算できる。
距離しか測れない装置では、この作業自体が成立しない。「何mの位置に」までは分かっても、「どの方向に何mか」が決まらないからだ。
「どこを測ったか」ではなく「どこに出すか」。座標を扱えることが、この作業を成り立たせている。
なお、この作業は土木に限らない。建築の墨出しでも、トータルステーションが使われる場面がある。
トンネル工事では、同じ坑内でも測る対象ごとに使う道具が違う。「トンネルでは何を使う」ではなく、対象ごとに分かれていると捉えたほうが実態に近い。
天端(てんば)はトンネル断面の最上部を指す。内空変位の「光波による方法」は、農林水産省の施工管理基準が定めているものだ。同じトンネルの中でも、測る対象が変われば道具が変わる。
覆工コンクリートの出来形計測については、国土交通省「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」が、トンネル(NATM)の覆工コンクリート工を対象工種として扱っている。この工種で利用できる3次元計測技術として挙げられているのは、TS(ノンプリズム方式)だけだ。電子成果品のフォルダ構成まで、この方式で計測する前提で決められている。
レーザースキャナーによる計測は、これとは別に、国土交通省「レーザースキャナーを用いた出来形管理の試行要領(案)(トンネル編)」が試行段階の技術として扱っている。
この試行要領で目を引くのが、新しい機器の精度を確かめる物差しがTSになっていることだ。レーザースキャナーの計測精度は、TS(ノンプリズム方式)の測定結果と比較する形で検証されている。凹凸のない覆工コンクリートであれば、レーザースキャナーから10m以内でTSと±5mm以内の精度が確認できた、という結果が示されている。
なお、トンネル坑内の測量については、作業規程の準則は個別に規定していない。公共測量の準則ではなく、工事の施工管理として各要領や仕様書で扱われる領域だ。
坑内でノンプリズム方式を使う場合は、計測面が濡れていると測れないという制約が効いてくる。湧水のある区間では、特に気をつけておきたい。
もうひとつの軸が、求める精度と測る範囲の広さだ。
メーカーのカタログには、使い分けを前提にした記述がある。精度が必要な観測には自動追尾トータルステーション、広い現場で多数の点を速く測るにはGNSS受信機、という整理だ。
どちらか一方に寄せる話ではない。測る対象と現場の条件で、機材を選び分けるという考え方が土台にある。
最後に、実務でつまずきやすい点を4つ挙げておく。いずれも光で距離を測る機器に共通する注意点だ。
気象補正は、光波測距儀にもトータルステーションにも同じようにかかる。空気の状態で光の進み方が変わる以上、測距の仕組みを持つ機器すべてに共通する前提だ。
カタログの2mmという数字も、この補正が効いている状態での値になる。気温・気圧を入れずに測れば、そのぶん距離にずれが乗る。
準則も、気象測定はトータルステーションや測距儀を整置(せいち:測点に据え付けること)した観測点で行い、距離測定の開始直前または終了直後に測ると定めている。
なお、3級・4級基準点測量では気圧の測定を省略し、標準大気圧を用いてよいとされている。省略できる場面が決まっているのであって、補正そのものが不要になるわけではない。
プリズムには定数があり、これを機器側で設定する。ノンプリズムで測るときは0mm固定になる。
見落としやすいのが、定数の違うプリズムを混ぜて使ったときだ。
このとき、測った距離のすべてに一定量のずれが乗る。距離に比例して大きくなるわけではないので、どの地点を測っても同じだけずれる。遠近で差が出ないぶん、気づきにくい種類の誤差だ。
機器そのものが持っている定数も、時間とともにずれることがある。メーカーの取扱説明書には、器械定数の点検手順が載っている。
手順はおおむね次の流れだ。
PR+QRとPQの差が3mm以上あれば、販売店や営業所に連絡するよう求められている。器械定数は、現場で自分で調整する項目ではない。取扱説明書は、精度を保つために年に数回はこの点検を行うことをすすめている。
準則は、高さの測定についてこう定めている。
器械高、反射鏡高及び目標高は、ミリメートル位まで測定するものとする。
(国土交通省「作業規程の準則」第37条)
高さは器械が測ってくれない。測点から、三脚に据えた器械の望遠鏡の水平軸中心までの高さを、人が測って入力する。ここを読み違えると、そのまま座標の高さがずれる。
同じことが後視点にも言える。方向の基準を取り違えれば、距離と角度がどれだけ正確でも、出てくる座標はまとめて別の場所を指す。
据え付けの段階では、気泡管を見ながら整準(せいじゅん:器械の鉛直軸を鉛直にすること)し、器械を測点の真上に合わせる。この工程の詳しい手順と、誤差の考え方は別の記事にまとめてある。
【TS(トータルステーション)で注意すべき〈誤差〉とは?】
現場では、測る対象ごとに使う道具が分かれている。これはトンネルに限った話ではない。

横軸に精度(cm ⇔ mm)、縦軸に操作性(計画や視準が必要 ⇔ 計画不要で簡単)をとった測量機器の全体マップ。
・トータルステーション ・・・ 角度・距離・座標を高い精度で取れる。据え付けと視準の手間はかかる
・トランシット/セオドライト ・・・ 角度だけを測る機器。距離は測れない
・レベル ・・・ 高さ(Z)に特化した機器。水準測量で使う
・自動追尾TS ・・・ プリズムを追い続けるため、ひとりでの位置出しがしやすい
・GNSSローバー ・・・ 衛星測位で広い範囲を速く測れる。上空が開けている必要がある
・高精度スマホ測量 ・・・ 据え付けや後方交会(既知点を観測して器械の位置を逆算する方法)が要らず、mm精度で単点を測れる
現場で使える機材はほかにもあり、測る対象と現場の条件によって向き不向きが分かれる。それぞれについて知りたい方は、以下の記事も参考にしてほしい。
【自動追尾TSの解説記事】
【GNSS測量の解説記事】
手軽さと精度を両立する領域にあるスマホ測量については、提供元のOPTiMが精度や使い方をまとめた資料を無料で公開している。機器ごとの向き不向きをまとめて把握したい段階であれば、目を通しておくと判断しやすい。 サービスサイトで詳しく知る(リンク)
「光波」とトータルステーションの関係を整理しておく。
・光波測距儀は距離だけを測る装置、セオドライトは角度だけを測る機器。トータルステーションはこの2つを部品として組み込み、座標の計算と記録まで行う。入れ子ではなく、部品と完成品の関係にあたる
・「光波」はもともと測り方の名前。「スチールテープか、光波か」という手段の対比として使われてきた。現場でTSを「光波」と呼ぶことはあるが、機器の分類としては別の言葉である
・混同の理由は3つ。もともと別々の機器だった/「光波」が測り方の名前/公的な文書でも使われる言葉が違う
・現場での一番の違いは座標まで扱うかどうか。距離が分かっても、方向の基準がなければ点の位置は決まらない。JISでも第4部は距離、第5部は座標値と、試験する対象量そのものが分かれている
・ノンプリズムのカタログの2mmは条件つきの値。現場で求められる±20mmとは、意味している範囲が違う
・光で測る以上、気象補正・プリズム定数・器械高は人が管理する前提。ここは光波測距儀もトータルステーションも変わらない
・トンネルのように、測る対象ごとに道具が分かれている現場もある。機器に優劣があるわけではない
言葉を整理することは、そのまま「何が測れて、何が測れないか」を整理することになる。現場で使う機器を選ぶときは、測りたいものが距離なのか、座標なのかから考えたい。
光波測距儀は距離だけを測る装置で、トータルステーションは、そこに角度と座標が加わったものだ。
この記事では、2つの関係を1枚の図で整理したうえで、混同される理由と現場での使い分けを見ていこう。
この記事で分かること
・「光波」と「トータルステーション」の関係が、1枚の図でわかる
・「光波」という言葉が、もともと何を指していたのか
・2つの機能の差 —— 距離・角度・座標
・現場での一番の違い —— 座標まで扱うかどうか
・土工・トンネルなど、工種ごとの使い分け
測量機器はどんな軸で分かれているのか?
現場で使われる測量機器は、「どれだけの精度が出るか」と「どれだけ手軽に扱えるか」の2つの軸で整理できる。
横軸に精度(cm ⇔ mm)、縦軸に操作性(計画や視準が必要 ⇔ 計画不要で簡単)をとった測量機器の全体マップ。トータルステーションは、このマップの中で精度の高さを担う側に位置する。そのぶん、据え付けや視準(しじゅん:望遠鏡を目標に正確に向けること)といった手順を丁寧に踏む必要がある機器でもある。
一方で、手軽さと精度を両立する領域も生まれてきている。手軽に使えてmm精度が出るのは、スマホ測量(OPTiM Geo Scan)も存在する。
それぞれの機器に向き不向きがあり、優劣があるわけではない。
この図は、機器の全体を見渡すための地図にあたる。
【図解】光波とトータルステーションの関係を1枚で整理
3つの言葉の関係を、先に図で見ていこう。

トータルステーションの構成。測角部(セオドライト)・測距部(光波測距儀)・データ記憶装置の3つを一体化し、角度と距離から座標を計算して記録・出力する。入れ子ではなく、部品と完成品の関係。
こちらは言葉どうしの関係を示した図だ。3つの言葉の役割は、次のように分かれている。
・光波測距儀(こうはそっきょぎ) ・・・ 距離だけを測る装置。角度は測れない
・セオドライト ・・・ 角度だけ(水平角・鉛直角)を測る機器。距離は測れない
・トータルステーション(TS) ・・・ この2つを一体化し、座標の計算と記録まで行うもの
公共測量のやり方は、測量法にもとづいて国土交通省が「作業規程の準則」として定めている。この準則は、トータルステーションが何でできているかを次のように決めている。
トータルステーションの構成は、測角部、測距部の本体及びデータ記憶装置をいう。
(国土交通省「作業規程の準則」別表1)
測角部がセオドライト、測距部が光波測距儀にあたる(準則の表記は「測距儀」で、光を使う方式に限定した言い方はしていない)。そこにデータ記憶装置が加わったものが、トータルステーションだ。
ここで気をつけたいのが、この関係は「入れ子」ではないということだ。
「光波測距儀の大きいものがトータルステーション」でも、「トータルステーションの一種が光波測距儀」でもない。部品と完成品の関係であり、光波測距儀はトータルステーションの測距部にあたる。
簡単に言えば、「トータルステーションは、光波測距儀とセオドライトを部品として組み込んだ完成品」ということだ。光波測距儀が大きくなったものでも、小さくなったものでもない。
なお、セオドライトは「トランシット」とも呼ばれることがある。
「光波」とは何を指す言葉なのか? もともとは測り方の名前だった

では、その「光波」という呼び方は、どこから来ているのか。言葉の由来から見ていく。
もともとは「光で距離を測る装置」の名前
光波測距儀は、光を使って距離を測る装置だ。なぜ「光波」なのか。国土地理院の解説に、その答えがある。
長さを求めたい2点の片方に光波測距儀と呼ばれる測量器械を、もう片方に“ミラー”とよばれる鏡を置き、光波測距儀から発射された光の波が鏡で反射され、光波測距儀にもどってくる時間を計ることで、長さを測ることができます。
(国土地理院「長さを測るしくみ(光波測距儀)」)
「光の波」を使って測るから、光波測距儀。名前はここから来ている。
JISの規格名でも、光波測距儀の英文名は「Electro-optical distance meters」(電気光学式の距離計)とされている。頭文字をとって「EDM」と略されることも多い。
「光波」は機器名ではなく、測り方の名前だった
「光波」は、もともと機器の分類を指す言葉ではない。
作業規程の準則の本文と別表1には、「光波」という語が出てこない。準則が機器名として使っているのは「測距儀」で、別表1も「測距儀の級別性能分類」として、光を使う方式に限定していない。
準則の付録には、JISの規格名を引くかたちで「光波測距儀」が出てくる。ただしそこでも「測量機器の区分は別表1による」とされていて、等級を分ける単位はあくまで「測距儀」だ。
一方で、「光波」が公的な文書に出てくる場面はある。農林水産省が定めている土木工事施工管理基準の参考資料は、山岳トンネルの内空変位(ないくうへんい:掘削後にトンネル断面がどれだけ変形するか)の測定について、測定方法をこう規定している。
スチールテープ等、又は光波による方法で、測定は掘削後速やかに実施する。
(農林水産省「土木工事施工管理基準」参考資料「トンネル(NATM)観察・計測(案)」)
注目したいのは、「スチールテープ等」と「光波」が並べられていることだ。
これは「巻尺で測るか、光で測るか」という手段の対比であって、機器の分類ではない。ここでの「光波」は、光波測距による方法という測り方の名前として使われている。
現場でトータルステーションを指して「光波」と呼ぶことがあるのは事実だが、機器の分類としては別の言葉だ。この2つが同じ土俵の言葉に見えてしまうところに、混同の入り口がある。
光波測距儀が登場したのは1960年代
光波測距儀が登場したのは1960年代だ。それまで、長い距離は三角法で求めるのが基本だったが、光を使って直接距離を測れるようになった。
そして1980年、光波測距儀と経緯儀(けいいぎ:角度を測る機器。セオドライトのこと)を一体化した測量機器が登場する。これが後に「トータルステーション」と呼ばれるようになった。
つまり、角度を測る機器と距離を測る装置は、もともと別々のものだった。一体化されてから、まだ50年ほどしか経っていない。
光波測距儀とトータルステーションの機能差 —— 何が測れて、何が測れないか
2つの機能差を、表にして並べてみる。
| 項目 | 光波測距儀 | トータルステーション |
|---|---|---|
| 距離 | 測れる | 測れる |
| 水平角・鉛直角 | 測れない | 測れる |
| 座標 | 出せない | 出せる |
| データの記録・出力 | — | できる |
| JIS B 7912(測量機器の現場試験手順) | 第4部 | 第5部 |
| 現場試験で対象になる量 | 距離 | 座標値(x, y, z) |
距離が測れる点は共通している。差が出るのは、角度から先だ。
光波測距儀が返すのは距離の数値だけで、角度は測れない。トータルステーションは角度も測り、その2つから座標を計算して画面に表示し、記録して外部に出力するところまでを1台で行う。
JISでも別々の規格になっている
この違いは、規格の上でもはっきり分かれている。
測量機器の現場試験手順を定めたJIS B 7912シリーズは、機器ごとに部が分かれている。
・第3部 ・・・ セオドライト
・第4部 ・・・ 光波測距儀
・第5部 ・・・ トータルステーション
さらに踏み込むと、試験の対象になる量そのものが違う。表に挙げたとおり、第4部が対象にしているのは距離で、第5部は座標値だ。
測るものが距離なのか、座標なのか。規格の上でも、この2つは別の機器として扱われている。
距離を測る部分の中身は共通している
一方で、距離を測る部分そのものは変わらない。トータルステーションの測距部がやっていることは、光波測距儀と同じだ。
光を出し、対象で反射して戻ってきた光を捉えて距離に換算する。光が戻ってくるまでを捉えるという原理は共通していて、現行機の主流は、その時間を直接計るのではなく、戻ってきた光の位相のずれから距離を求める方式だ。
つまり、光波測距儀が担っている機能は、トータルステーションの中にそのまま入っている。測距の仕組みは同じで、その先に角度と座標が乗るかどうかが違う、という関係だ。
なぜ2つは混同されやすいのか?

機能で見れば別の機器なのに、現場では同じもののように語られることがある。理由は3つに整理できる。
理由1 もともと別々の機器だった
1980年に一体化されるまでは、「角度はセオドライト、距離は光波測距儀」と、道具を持ち替えて測っていた。
別々だった時代の呼び方が、一体化した後も残った。現場で「光波」という言葉が生き続けているのは、そのためだ。
理由2 「光波」が測り方の名前だから
「トータルステーション」は機器の分類を指す言葉だが、「光波」は測り方を指す言葉として使われてきた。分類の言葉と手段の言葉なので、そもそも同じ土俵に乗らない。
それでも並べて語られると、同じ階層の2択に見えてしまう。
理由3 公的な文書でも、使われる言葉が違う
同じ機器や測定方法を指していても、文書によって使われる言葉が違う。
・作業規程の準則 ・・・ 「測距儀」。「光波」という語は使っていない
・農林水産省の施工管理基準(参考資料) ・・・ 内空変位測定の方法として「光波による方法」
・国土交通省の出来形管理要領(正式名称は「TS(ノンプリズム方式)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」)・・・ 「トータルステーション(TS)」
それぞれが違うものを規定しているので、食い違っているわけではない。準則は機器の等級を、施工管理基準は測定の方法を、出来形管理要領は使う機器を定めている。
ただ、読み手の側から見れば、同じ現場の話に3通りの言葉が出てくることになる。ここも混同の一因になっている。
なお、「トランシット」と「セオドライト」のあいだにも、同じような呼び名の重なりがある。
現場での一番の違いは、座標まで扱うかどうか
ここまでは言葉の話だった。では、現場の作業としては何が違うのか。
答えは座標だ。

測ったあとに何が残るか。光波測距儀は距離の数値だけが残る。トータルステーションは距離・角度に器械点と後視点の情報が加わり、目標点の座標(X・Y・Z)が求まる。
国が定めた定義にも「座標」が入っている
国土交通省の出来形管理要領は、トータルステーションを次のように定義している。
1台の機械で角度(鉛直角・水平角)と距離を同時に測定することができる電子式測距測角儀のことである。計測した角度と距離から未知点の座標計算を瞬時に行うことができ、計測データの記録及び外部機器への出力ができる。
(国土交通省「TS(ノンプリズム方式)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」)
要件はここで終わっていない。定義の後半に、未知点の座標計算と計測データの記録・外部出力が並んでいる。
制度としても、座標まで扱うことが機器の要件に入っているということだ。
距離が分かっても、位置は決まらない
なぜ座標が要るのか。距離だけでは、点の位置が決まらないからである。
器械から目標まで50mという数値が得られても、それだけでは目標がどこにあるのかは決まらない。方向が分からなければ、平面で考えても、器械を中心とした半径50mの円のどこかにある、というところまでしか言えない。
点の位置を決めるには、次の3つが揃う必要がある。
- 距離:器械から目標までの斜距離
- 角度:水平角と鉛直角。水平角は基準にした方向からのずれ、鉛直角は水平面からの傾き
- 基準:器械点の座標と器械高、そして後視点(方向の基準にする、別の既知点)
3つ目は人が入力する情報だ。座標が分かっている点に器械を据え、その座標と器械高を入れ、後視点を視準して方向の基準を決める。ここまでやって、はじめて目標点の座標が計算できる。
この一連の流れを1台でこなせることが、現場での実質的な差になる。
「測ったあと」が変わる
座標で取れると、測った後の扱いも変わってくる。
距離の数値は、それだけでは他の情報とつながらない。座標であれば、3次元の設計データとそのまま突き合わせられる。
ICT活用工事(建設機械の施工や測量を3次元データで進める国土交通省の取り組み)の出来形管理では、この点が制度に組み込まれている。国土交通省の出来形管理要領は、計測したデータを電子成果品(発注者に提出する電子データ一式)として整理し、提出するところまでを定めている。
測って終わりではなく、データとして残して使う。座標を扱えるかどうかは、その入り口にあたる。
プリズムとノンプリズムの考え方
光で距離を測る以上、光をどこで返してもらうかは避けて通れない論点になる。ここは光波測距儀とトータルステーションで共通する話だ。
3つのターゲット
光を返す相手は、大きく3つに分かれる。どれを使うかで、測れる距離も測り方も変わってくる。
・反射プリズム ・・・ 目標側に専用の反射鏡を立てる。もっとも遠くまで、もっとも正確に測れる
・反射シート ・・・ 反射材のシートを目標に貼る。プリズムより近い距離で使う
・ノンプリズム ・・・ 何も置かず、対象物の面からの反射をそのまま使う
この選択は、光波測距儀でもトータルステーションでも同じように効いてくる。プリズムを立てれば数千m級まで届く。何も置かなければ機種による幅が大きく、測地用の上位機でも、条件がよいときで1,000m前後がおおよその上限だ。
国土交通省の出来形管理要領は、ノンプリズム方式を「トータルステーションを用いた計測手法のうち、ターゲットとなるプリズムを利用せず被計測対象からの反射波を利用して測距する方法」と定義している。構造物の面を直接測れるのが特徴だ。
ここで見落とせないのが、JISの規格が対象にしているのはプリズムを使う測距だということである。
第4部(光波測距儀)は、適用範囲を次のように定めている。
この規格は,反射プリズムを使用した光波測距儀による作業を実施する前に,当該作業への適応性を確認するための試験手順について規定する。
(JIS B 7912-4:2016「測量機器の現場試験手順-第4部:光波測距儀」1 適用範囲)
英文名の *Electro-optical distance meters (EDM measurements to reflectors)* という括弧書きも、反射鏡に向けた測距であることを示している。ノンプリズム測距は、この規格の対象外だ。
ノンプリズムのメリットとデメリット
発注者も、ノンプリズム方式の特徴を整理している。国土交通省 関東地方整備局「3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)」は、この方式を「計測箇所にターゲットとなるプリズムを利用せず、1点ごとにレーザー光を計測面へ照射して反射波を用いて測距する手法」と説明したうえで、特徴と留意事項を6点挙げている。ここでは、メリットとデメリットに分けて示す。
《 メリット 》
・プリズムが不要のため人の立ち入りができない場所も計測可能
・多点を自動で計測できるため面的に計測が可能
・プリズムが不要のため1人で計測が可能
《 デメリット 》
・1回の計測範囲が狭いため広範囲な計測を行う場合は器械の移設が必要
・計測面が濡れているとレーザーが反射されないため計測できない
・機器の設置位置について測量が必要
この手引きは、レーザー光を十分に反射しない物質として濡れた地表面等を挙げている。対象物の状態が、そのまま測れるかどうかを左右するということだ。
カタログの2mmと、現場の±20mm —— 同じ単位でも別のもの
もうひとつ、ノンプリズムで気をつけたいのが精度の読み方だ。
カタログには、ノンプリズム測距の精度が2mm+2ppm程度と示されている。2ppmは距離に比例して増える分で、100m先でも0.2mmにすぎない。つまり、ほぼ2mmという数字だ。
ただしこの値には条件が付いている。反射率90%の白い面を、照度5,000ルクス未満という明るさで測ったときの値であり、測定できる範囲と精度は対象物の反射率や天候、場所の条件によって変わる、と注記されている。
一方、国土交通省の出来形管理要領が現場での精度確認に求めているのは、次の水準だ。
計測範囲内で平面精度±20mm、鉛直精度±20mm以内
(国土交通省「TS(ノンプリズム方式)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」)
確認の方法も決まっている。機器本体から、被計測対象までの最大計測距離以上となる位置に、計測点を2点以上設ける。そこをTS(プリズム方式)で測った値との差が、平面・鉛直とも±20mm以内かを確かめる。
2mmと±20mm。同じmm単位でも、意味している範囲がまったく違う。
カタログの数値は、理想的な条件下での測距そのものの性能だ。±20mmのほうは、据え付け・視準・対象物の状態まですべて込みで、現場の作業として求められる水準になる。どちらも正しい数字であり、混ぜて読むと話が合わなくなる。
工種別の使い分け —— 土工・位置出し・トンネル

工種によって、何をどう測るかは変わる。土工・位置出し・トンネルの順に見ていく。
基準点測量 —— 制度が定めている本来の用途
まず押さえておきたいのが、公共測量の分野における位置づけだ。
作業規程の準則は、1級から4級までの基準点測量ごとに、使用する機器の等級と観測の方法を定めている。機器は製品名ではなく、性能で指定される。
たとえば1級トータルステーションは、測角部が1級セオドライトに、測距部が2級中距離型測距儀に準ずる性能を持つもの、と定義されている。ここでも「セオドライトの性能」と「測距儀の性能」を組み合わせる形で規定されているわけだ。
用語の関係が、そのまま制度の書き方に反映されている。
土工の出来形管理 —— 従来の方法と選べるようになっている
土工では、TS(ノンプリズム方式)がICT活用工事の中に位置づけられている。
ただし、これが主役として想定されているわけではない。国土交通省の出来形管理要領は、レーザースキャナーや空中写真測量で欠測があった場合の補足、およびそれに準じる小規模土工の測量を想定した技術としている。
要領は、選択の余地も明記している。
TSを用いた出来形管理要領等の従来方法の方が効率的な場合もあるため、現場状況に応じて適切に選択されたい
(国土交通省「TS(ノンプリズム方式)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」)
新しい方式が従来の方法を置き換える、という書き方にはなっていない。現場の条件で選ぶもの、という前提が制度にある。
位置出し・墨出し —— 座標を現地に戻す作業
測量には、「現地のものを測る」方向と、「設計上の点を現地に出す」方向がある。丁張り(ちょうはり)や墨出し(すみだし:設計上の基準線や位置を現地に印すこと)は後者にあたる。
ここで効いてくるのが、やはり座標だ。設計データ上の座標が分かっていて、器械点と後視点で基準が決まっていれば、その点が現地のどこに来るかを計算できる。
距離しか測れない装置では、この作業自体が成立しない。「何mの位置に」までは分かっても、「どの方向に何mか」が決まらないからだ。
「どこを測ったか」ではなく「どこに出すか」。座標を扱えることが、この作業を成り立たせている。
なお、この作業は土木に限らない。建築の墨出しでも、トータルステーションが使われる場面がある。
トンネル工事 —— 測る対象ごとに道具が分かれている
トンネル工事では、同じ坑内でも測る対象ごとに使う道具が違う。「トンネルでは何を使う」ではなく、対象ごとに分かれていると捉えたほうが実態に近い。
| 測るもの | 使う方法 |
|---|---|
| 天端沈下 | 計測用ピンを埋め込み、水準測量(レベル) |
| 内空変位 | スチールテープ等、又は光波による方法 |
| 覆工コンクリートの出来形 | TS(ノンプリズム方式) |
天端(てんば)はトンネル断面の最上部を指す。内空変位の「光波による方法」は、農林水産省の施工管理基準が定めているものだ。同じトンネルの中でも、測る対象が変われば道具が変わる。
覆工コンクリートの出来形計測については、国土交通省「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」が、トンネル(NATM)の覆工コンクリート工を対象工種として扱っている。この工種で利用できる3次元計測技術として挙げられているのは、TS(ノンプリズム方式)だけだ。電子成果品のフォルダ構成まで、この方式で計測する前提で決められている。
レーザースキャナーによる計測は、これとは別に、国土交通省「レーザースキャナーを用いた出来形管理の試行要領(案)(トンネル編)」が試行段階の技術として扱っている。
この試行要領で目を引くのが、新しい機器の精度を確かめる物差しがTSになっていることだ。レーザースキャナーの計測精度は、TS(ノンプリズム方式)の測定結果と比較する形で検証されている。凹凸のない覆工コンクリートであれば、レーザースキャナーから10m以内でTSと±5mm以内の精度が確認できた、という結果が示されている。
なお、トンネル坑内の測量については、作業規程の準則は個別に規定していない。公共測量の準則ではなく、工事の施工管理として各要領や仕様書で扱われる領域だ。
坑内でノンプリズム方式を使う場合は、計測面が濡れていると測れないという制約が効いてくる。湧水のある区間では、特に気をつけておきたい。
精度が要る観測と、広い範囲を速く測る作業
もうひとつの軸が、求める精度と測る範囲の広さだ。
メーカーのカタログには、使い分けを前提にした記述がある。精度が必要な観測には自動追尾トータルステーション、広い現場で多数の点を速く測るにはGNSS受信機、という整理だ。
どちらか一方に寄せる話ではない。測る対象と現場の条件で、機材を選び分けるという考え方が土台にある。
現場で起きやすい勘違いと確認ポイント
最後に、実務でつまずきやすい点を4つ挙げておく。いずれも光で距離を測る機器に共通する注意点だ。
気温・気圧の入力は、光で測る機器に共通する前提
気象補正は、光波測距儀にもトータルステーションにも同じようにかかる。空気の状態で光の進み方が変わる以上、測距の仕組みを持つ機器すべてに共通する前提だ。
カタログの2mmという数字も、この補正が効いている状態での値になる。気温・気圧を入れずに測れば、そのぶん距離にずれが乗る。
準則も、気象測定はトータルステーションや測距儀を整置(せいち:測点に据え付けること)した観測点で行い、距離測定の開始直前または終了直後に測ると定めている。
なお、3級・4級基準点測量では気圧の測定を省略し、標準大気圧を用いてよいとされている。省略できる場面が決まっているのであって、補正そのものが不要になるわけではない。
プリズム定数の設定違いは、距離全体にずれが乗る
プリズムには定数があり、これを機器側で設定する。ノンプリズムで測るときは0mm固定になる。
見落としやすいのが、定数の違うプリズムを混ぜて使ったときだ。
このとき、測った距離のすべてに一定量のずれが乗る。距離に比例して大きくなるわけではないので、どの地点を測っても同じだけずれる。遠近で差が出ないぶん、気づきにくい種類の誤差だ。
器械定数の点検は、年に数回
機器そのものが持っている定数も、時間とともにずれることがある。メーカーの取扱説明書には、器械定数の点検手順が載っている。
手順はおおむね次の流れだ。
- 平坦な場所を選び、点Pに器械を設置し、約100m離れた点Qに反射プリズムを置く
- PQ間を測距する
- PQ上の点Rに三脚を立てて器械を移し、Pにも反射プリズムを設置する
- 前視・後視で測り、PR+QRがPQと許容誤差内で一致するかを確認する
- 器械の位置を数回変えて4を繰り返し、平均値を求める
PR+QRとPQの差が3mm以上あれば、販売店や営業所に連絡するよう求められている。器械定数は、現場で自分で調整する項目ではない。取扱説明書は、精度を保つために年に数回はこの点検を行うことをすすめている。
器械高・目標高は、人が測って入れる値
準則は、高さの測定についてこう定めている。
器械高、反射鏡高及び目標高は、ミリメートル位まで測定するものとする。
(国土交通省「作業規程の準則」第37条)
高さは器械が測ってくれない。測点から、三脚に据えた器械の望遠鏡の水平軸中心までの高さを、人が測って入力する。ここを読み違えると、そのまま座標の高さがずれる。
同じことが後視点にも言える。方向の基準を取り違えれば、距離と角度がどれだけ正確でも、出てくる座標はまとめて別の場所を指す。
据え付けの段階では、気泡管を見ながら整準(せいじゅん:器械の鉛直軸を鉛直にすること)し、器械を測点の真上に合わせる。この工程の詳しい手順と、誤差の考え方は別の記事にまとめてある。
【TS(トータルステーション)で注意すべき〈誤差〉とは?】
測る対象ごとに、道具は分かれている —— 測量機器の全体マップ
現場では、測る対象ごとに使う道具が分かれている。これはトンネルに限った話ではない。

横軸に精度(cm ⇔ mm)、縦軸に操作性(計画や視準が必要 ⇔ 計画不要で簡単)をとった測量機器の全体マップ。
・トータルステーション ・・・ 角度・距離・座標を高い精度で取れる。据え付けと視準の手間はかかる
・トランシット/セオドライト ・・・ 角度だけを測る機器。距離は測れない
・レベル ・・・ 高さ(Z)に特化した機器。水準測量で使う
・自動追尾TS ・・・ プリズムを追い続けるため、ひとりでの位置出しがしやすい
・GNSSローバー ・・・ 衛星測位で広い範囲を速く測れる。上空が開けている必要がある
・高精度スマホ測量 ・・・ 据え付けや後方交会(既知点を観測して器械の位置を逆算する方法)が要らず、mm精度で単点を測れる
現場で使える機材はほかにもあり、測る対象と現場の条件によって向き不向きが分かれる。それぞれについて知りたい方は、以下の記事も参考にしてほしい。
【自動追尾TSの解説記事】
【GNSS測量の解説記事】
手軽さと精度を両立する領域にあるスマホ測量については、提供元のOPTiMが精度や使い方をまとめた資料を無料で公開している。機器ごとの向き不向きをまとめて把握したい段階であれば、目を通しておくと判断しやすい。
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まとめ
「光波」とトータルステーションの関係を整理しておく。
・光波測距儀は距離だけを測る装置、セオドライトは角度だけを測る機器。トータルステーションはこの2つを部品として組み込み、座標の計算と記録まで行う。入れ子ではなく、部品と完成品の関係にあたる
・「光波」はもともと測り方の名前。「スチールテープか、光波か」という手段の対比として使われてきた。現場でTSを「光波」と呼ぶことはあるが、機器の分類としては別の言葉である
・混同の理由は3つ。もともと別々の機器だった/「光波」が測り方の名前/公的な文書でも使われる言葉が違う
・現場での一番の違いは座標まで扱うかどうか。距離が分かっても、方向の基準がなければ点の位置は決まらない。JISでも第4部は距離、第5部は座標値と、試験する対象量そのものが分かれている
・ノンプリズムのカタログの2mmは条件つきの値。現場で求められる±20mmとは、意味している範囲が違う
・光で測る以上、気象補正・プリズム定数・器械高は人が管理する前提。ここは光波測距儀もトータルステーションも変わらない
・トンネルのように、測る対象ごとに道具が分かれている現場もある。機器に優劣があるわけではない
言葉を整理することは、そのまま「何が測れて、何が測れないか」を整理することになる。現場で使う機器を選ぶときは、測りたいものが距離なのか、座標なのかから考えたい。
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