コラム・特集
令和7年度 《インフラDX大賞》の受賞者決定!~ インフラDXに関する優れた取組を行った33団体を発表!~【完全版】
- はじめに 〜 今年の「DXベストプラクティス」が決定 〜
- 工事・業務部門〈直轄・地方公共団体等〉 【国土交通大臣賞】
-
【優秀賞】現場の課題を解決した13の革新的取組
- 2. 【北海道】道央圏連絡道路 長沼町 南長沼ランプ改良工事 / 受賞者: 砂子組
- 3. 【東北】内川流域山下堰(右岸)工事 / 受賞者: 橋本店
- 4. 【東北】主要地方道大更八幡平線ほか柏台地区ほか道路・河川等維持修繕業務委託 / 受賞者: 藤根建設・高福組・吉忠組・高橋重機・高建重機・佐藤建設(資)地域維持型共同企業体
- 5. 【関東】R5久慈川・那珂川河床材料調査業務 / 受賞者: 応用地質 茨城営業所
- 6. 【関東】総選除)4嵐山-17号 本体整備その2工事 / 受賞者: 小川・初雁特定建設工事共同企業体
- 7. 【北陸】R6 有峰地区渓岸対策(二の谷)工事 受賞者: 岡部
- 8. 【中部】令和2年度 新丸山ダム本体建設第1期工事 / 受賞者:大林・大本・市川特定建設工事共同企業体
- 9. 【近畿】神戸港臨港道路載荷試験工事(第1工区)/ 受賞者:五洋・若築・大本特定建設工事共同企業体
- 10. 【中国】令和5年度三篠川丁地区築堤護岸他工事 / 受賞者: 鴻治組
- 11. 【中国】美咲町多世代交流拠点整備事業 美咲町消防団消防機庫新設工事 / 受賞者:月の輪建設工業
- 12.【四国】国道493号(北川道路・柏木2号橋下部工)道路改築工事 / 受賞者:礒部組
- 13. 【九州】令和6年度佐伯港(女島地区)岸壁(-10m)(改良)地盤改良工事 / 受賞者:五洋・不動テトラ特定建設工事共同企業体
- 14. 【沖縄】那覇第2合同3号館(R3)建築工事 / 受賞者: 錢高組
- 地方公共団体等の取組部門
- 【国土交通大臣賞】
- 【優秀賞】現場の知恵が光る、5つの先進事例
- i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取組部門
- 国土交通大臣賞
-
【優秀賞】現場を変革する9の「尖った」技術
- 23.【北海道】 受賞取組:3DMCバックホウ遠隔操縦導入と普及促進 / 受賞者:植村建設
- 24. 受賞取組:鉄筋工事の生産性向上を実現する配筋DX / 受賞者:鹿島建設
- 25. 受賞取組:日常管理と舗装点検の一体化の取組み / 受賞者:ニチレキ・スマートシティ技術研究所
- 26.受賞取組:デジタルツインによるトンネル施工の省人化 / 受賞者: 西松建設
- 27.受賞取組:ICT仮設防災システムによる見える化 / 受賞者:国土開発工業
- 28.【岐阜県】受賞取組:D-AI-Chatによる技術伝承の加速 / 受賞者:大日コンサルタント株式会社
- 29. 受賞取組:スマホ3D計測とデータ連携で管工事DX / 受賞者:東邦ガスネットワーク・アンドパッド
- 30. 【京都府】受賞取組: ICT技術とチルトローテータの統合的活用 / 受賞者:梅田土建
- 31. 受賞取組:施工影響XRウォッチャー / 受賞者:奥村組
- 【スタートアップ奨励賞】
- まとめ 〜 DXは「実証」から「社会実装」のフェーズへ 〜
はじめに 〜 今年の「DXベストプラクティス」が決定 〜
2025年12月、国土交通省は「令和7年度 インフラDX大賞」の受賞者を発表した。
本賞は、インフラ分野においてデータとデジタル技術を活用し、建設生産プロセスの高度化・効率化、国民サービスの向上等につながる優れた実績を表彰するものだ。
今回は、国土交通大臣賞4団体を含む計33団体が選出された。本記事では、受賞した全取り組みを紹介する。
今年度は、過酷な現場環境を克服した事例がトップの栄冠に輝いた。
工事・業務部門〈直轄・地方公共団体等〉
【国土交通大臣賞】
1. 栗平川2号砂防堰堤垂直壁他工事 / 受賞者: 中和コンストラクション(近畿)
- 施工場所: 奈良県吉野郡十津川村
- 請負金額: 3億4,996万5,000円
【取組のポイント】衛星通信×遠隔操作で「電波不感地帯」を克服
紀伊半島大水害の被災地における砂防堰堤工事での事例だ。現場は携帯電波が届かない山間部であり、安全性確保のため無人化施工が求められた。

同社は、現場事務所に設置した遠隔操作室から、衛星通信「StarLink」を用いてバックホウを遠隔操作するシステムを構築。
複数の建機を1人のオペレーターが切り替えて操作可能にし、職員を除く作業員の工数を約28.3%削減した。
通信インフラが整わない過酷な現場におけるDXの可能性を示し、見事、国土交通大臣賞を受賞した。
【優秀賞】現場の課題を解決した13の革新的取組
2. 【北海道】道央圏連絡道路 長沼町 南長沼ランプ改良工事 / 受賞者: 砂子組
- 施工場所: 長沼町
- 請負金額: 4億5,448万7,000円
【取組のポイント】複数現場を「面」で管理、リソース最適化を実現
近隣で稼働する4つの工事現場を統合的に管理するため、「ICT施工 Stage II」の概念を導入 。
各現場の建機やダンプトラックの稼働データを集約し、ボトルネック(滞留箇所)を可視化した。

現場間で重機や人員を融通することで、全体の稼働率を10%向上させ、単一現場の枠を超えた「全体最適」を実現した 。
3. 【東北】内川流域山下堰(右岸)工事 / 受賞者: 橋本店
- 施工場所:宮城県伊具郡丸森町
- 請負金額:4億8,986万3,000円
【取組のポイント】国内初、3Dプリンタによる「魚道隔壁」の現場実装
複雑な形状が求められる「バーチカルスロット型魚道」の施工において、建設用3Dプリンタを活用した残存型枠工法を採用 。

実働日数を40日(52%)、施工人工を40人(31%)削減した 。
また、3Dプリンタ特有の積層痕(凹凸)が、遊泳力の弱い魚類や甲殻類の遡上を助ける効果も確認され、環境保全の面でも成果を上げた 。
4. 【東北】主要地方道大更八幡平線ほか柏台地区ほか道路・河川等維持修繕業務委託 / 受賞者: 藤根建設・高福組・吉忠組・高橋重機・高建重機・佐藤建設(資)地域維持型共同企業体
- 施工場所:八幡平市柏台地区ほか
- 請負金額:4億7,548万9,700円
【取組のポイント】経験の浅い若手でも「熟練の除雪」が可能に
雪に埋もれた道路境界を見極める熟練技が必要な「春先除雪」に、高精度3次元地図データとGNSSを組み合わせた「除雪支援システム」を県内で初導入。

タブレット表示によるガイドで、経験の浅い若手でも安全かつ高精度な作業が可能となり、指標木設置数を年間300本から100本へ削減するなどコスト縮減にも寄与した 。
5. 【関東】R5久慈川・那珂川河床材料調査業務 / 受賞者: 応用地質 茨城営業所
- 施工場所:久慈川水系及び那珂川水系
- 請負金額:8,615万2,000円
【取組のポイント】河床材料調査にAI革命、動画撮影だけで粒度分析
河川の「河床材料(石や砂利)」の粒度調査において、AI画像解析技術を導入 。

360度カメラで撮影した動画から、AIが礫の形状と奥行きを推定して粒度を分析することで、現地作業時間を約1/10に、作業人員を約半分に短縮した 。
6. 【関東】総選除)4嵐山-17号 本体整備その2工事 / 受賞者: 小川・初雁特定建設工事共同企業体
- 施工場所:埼玉県比企郡嵐山町
- 請負金額:5億2,812万9,800円
【取組のポイント】ICT完全内製化で「丁張ゼロ」の造成工事
産業団地の造成において、3次元設計データの作成から施工、出来形計測までのICTプロセスを完全内製化。

設計変更への迅速な対応と土工の丁張完全ゼロを実現し、測量作業を80日削減した 。また、CIM活用による現場の「見える化」で工程管理を高度化している。
7. 【北陸】R6 有峰地区渓岸対策(二の谷)工事 受賞者: 岡部
- 施工場所:富山県中新川郡立山町
- 請負金額:1億7,094万円
【取組のポイント】人が立ち入れない危険地帯でのBIM/CIM×無人化施工
土砂流出が激しい危険な現場において、BIM/CIMを活用して無人化施工を「見える化」。
マシンコントロール(MC)とマシンガイダンス(MG)を使い分け、掘削の過掘り防止やブロック据付の精密誘導を実現した。

従来は「つきっきり」だった出来形確認作業が不要となり、施工能力が19.8倍に向上した 。
8. 【中部】令和2年度 新丸山ダム本体建設第1期工事 / 受賞者:大林・大本・市川特定建設工事共同企業体
- 施工場所:(右岸)岐阜県加茂郡八百津町、(左岸)岐阜県可児郡御嵩町
- 請負金額:282億8,408万円
【取組のポイント】ダム建設の「自律化」へ、コンクリート打設の自動制御
極めて難易度の高いダム再開発工事において、骨材製造からコンクリート打設までの全工程を集中監視室で制御する「自律型コンクリート打設システム」の実証を行った。

ケーブルクレーンの揺れ抑制制御や、複数重機の自律連携稼働を確認するなど、建設現場の完全自動化に向けた国内初の取り組みである 。
9. 【近畿】神戸港臨港道路載荷試験工事(第1工区)/ 受賞者:五洋・若築・大本特定建設工事共同企業体
- 施工場所:兵庫県神戸市
- 請負金額:15億4,880万円
【取組のポイント】海上工事の精度を極める、ICT杭打ち支援
海中での大口径鋼管杭打設に複数のICT技術を導入。

「バームステーションクラウド」や「建て方エース」を駆使し、杭の鉛直精度を調整前の1/72から1/153へと約2倍に向上させた。
また、水中カメラによる可視化で潜水士のリスク低減も達成している。
10. 【中国】令和5年度三篠川丁地区築堤護岸他工事 / 受賞者: 鴻治組
- 施工場所:広島県広島市安佐北区上深川町地内
- 請負金額:1億9,167万5,000円
【取組のポイント】階段も集水桝も「印刷」する時代へ
河川管理用階段および集水桝の施工に建設用3Dプリンタを活用し、現場での型枠工を省略。

施工日数を階段工で76%(17日→4日)、集水桝工で89%(9日→1日)削減した 。地覆部と階段部の一体造形は全国初の事例である 。
11. 【中国】美咲町多世代交流拠点整備事業 美咲町消防団消防機庫新設工事 / 受賞者:月の輪建設工業
- 施工場所:岡山県久米郡美咲町原田
- 請負金額:1億2,766万3,800円
【取組のポイント】建築土工の内製化とIoTダンプ管理
建築現場の土工事において、ICT建機やデータ作成を内製化し、作業日数を40%削減 。

さらにスマートフォンを活用した安価なIoTシステムでダンプトラックの運行管理を行い、小規模現場でも実践可能なDXの形を示した。
12.【四国】国道493号(北川道路・柏木2号橋下部工)道路改築工事 / 受賞者:礒部組
- 施工場所:高知県安芸郡北川村柏木
- 請負金額:8,266万5,000円
【取組のポイント】VRと4Dシミュレーションで「手戻りゼロ」
橋梁下部工において、ゲームエンジンを用いたVR体験と4Dシミュレーションを実施し、施工手順を可視化 。

CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)による工程管理との組み合わせで、従来工法と比べ約9割の省人化を実現した 。
13. 【九州】令和6年度佐伯港(女島地区)岸壁(-10m)(改良)地盤改良工事 / 受賞者:五洋・不動テトラ特定建設工事共同企業体
- 施工場所:大分県佐伯市東浜地先
- 請負金額:15億6,350万3,167円
【取組のポイント】見えない地中を「音」と「3D」で可視化
地盤改良工事において、薬液の浸透状況を「音波」で計測し、3次元で可視化する技術(Gi-CIM)を導入 。

地中の不可視部分を「見える化」することで、注入時間を32%削減しつつ、事後調査合格率100%という高品質な施工を実現した 。
14. 【沖縄】那覇第2合同3号館(R3)建築工事 / 受賞者: 錢高組
- 施工場所:沖縄県那覇市
- 請負金額:47億7,854万3,000円
【取組のポイント】建築現場のフルDX、AI検査からロボットまで
建築工事において、施工BIMに加え、AIを活用した「ガス圧接継手検査」や「配筋検査」を導入し検査時間を大幅短縮(圧接部90%減)。

さらに資材運搬ロボットや清掃ロボット、アシストスーツを複合的に活用し、作業員の負担軽減と省人化を推進した 。
地方公共団体等の取組部門
【国土交通大臣賞】
15. 受賞取組: 田辺市デジタルツインプロジェクト(DTP) / 受賞者:和歌山県 田辺市
【取組のポイント】山林も街も丸ごと3D化、データで挑む森林保全
近畿最大の面積(約1,026㎢)を誇り、その9割を森林が占める田辺市。広大な市域の現状把握や管理が課題となる中、航空レーザ測量等を用いて市全域の「3D点群データ」を取得・整備し、デジタルツインを構築した。

特筆すべきは、ドローン操縦や3Dデータ作成を「完全内製化」している点だ。
- 森林管理・防災: 「現場を事務所に持ってくる」ことで、複数人が遠方へ出向く手間を削減。災害時の状況確認やシミュレーションに活用。
- 多様なユースケース: 消防(火災原因調査)、空家対策、文化財アーカイブ、教育など、縦割りの庁内業務を横断してデータを活用している。
16.受賞取組:玉名発!全国へ波及するDX実装モデル / 受賞者:熊本県 玉名市
【取組のポイント】小規模自治体の「勝ち筋」を示す、PLATEAU活用モデル
国の3D都市モデルプロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」を基盤に、防災・インフラ管理・都市政策を統合した「小規模自治体発DXモデル」を構築した。

- 防災: VR避難訓練や浸水シミュレーションにより、住民の直感的な理解と行動変容を促進。
- インフラ: 点群データを活用して道路台帳をデジタル化・公開し、利便性を大幅に向上。
- 都市政策: 空間解析を用いたEBPM(証拠に基づく政策立案)を推進。
専門人材や予算が限られる小規模自治体でも、既存のプラットフォーム(PLATEAU)を活用することで持続可能なDXが可能であることを証明した点が、高く評価された。
【優秀賞】現場の知恵が光る、5つの先進事例
大臣賞に次ぐ「優秀賞」には、都市型土木や衛星データ活用など、地域の特性に合わせた課題解決に取り組む5団体が選出された。
17. 【北海道】受賞取組:都市型土木工事におけるICT普及の取組~First Step SAPPORO型~ / 受賞者: 札幌市
【取組のポイント】中小企業でもできる「First Step SAPPORO型」
市街地の小規模工事(都市型土木)においてICT活用が遅れている現状を打破するため、独自の導入モデル「First Step SAPPORO型(FSS)」を策定。

- 機器指定: 操作が簡単な「自動追尾型TS」に限定。
- 工程限定: 効果が出やすい「測量作業」に重点を置く。
- パッケージ化: 複数の工種を組み合わせて発注。
これにより、測量作業時間を約70%削減する効果を上げ、中小企業のICT導入ハードルを劇的に下げた。
18. 【福島県】受賞取組:人工衛星画像を用いた漏水リスク評価 / 受賞者:福島市
【取組のポイント】宇宙から漏水を発見、AI×衛星データの挑戦
水道管の老朽化対策として、人工衛星画像(光学・SARデータ)とAI解析を活用した「漏水リスク評価」を導入。

市内全域の水道管路(導水~給水)のリスクを100mメッシュで5段階評価し、可視化。これにより、漏水調査(戸別音聴調査)の発見率が従来の0.1%から0.5%へと5倍に向上し、有収率の改善(88.9%→89.7%)にも繋がった。
19. 【長野県】受賞取組:システム構築による砂防業務の支援 / 受賞者:長野県
【取組のポイント】砂防情報をデジタル一元化、更新時間を大幅短縮
膨大な紙資料で管理されていた砂防指定地や施設情報をシステム化し、一元管理を実現。
情報の更新からWeb公開(信州 砂防情報マップ)までの期間を「1年」から「数日」へと劇的に短縮した。

また、地形図の基礎調査にかかる作業時間を5年間で8,000時間削減するなど、業務効率化と住民サービス向上を両立させている。
20.【山口県】受賞取組:小さな現場でこそ光る建設維新ICT3.0 / 受賞者: 山口県
【取組のポイント】「私たちはできる」内製化で中小を支援
地方の中小建設会社向けに「建設維新ICT3.0」プロジェクトを展開。

- 内製化支援: 3次元設計データの外注を不可とし、発注者負担で伴走支援を行う「私たちはできる型」工事を実施。
- 体験・啓発: 「建設維新ICT勉強会」や「生産性爆上げイベント」など、ユニークな名称のイベントやSNS発信で関心を喚起。
高額な建機に頼らず、身の丈に合ったICT活用を広めている点が評価された。
21. 【徳島県】受賞取組: CIMによる排水機場維持管理の効率化 / 受賞者: 徳島県
【取組のポイント】排水機場を3Dモデル&360度カメラで管理
ベテランの暗黙知に頼りがちな排水機場の維持管理において、施設を3次元モデル化し、属性情報(図面や点検結果)を一元管理。

さらに360度カメラを活用して現地の状況をパノラマ画像で記録・共有することで、若手職員でも直感的に状況を把握できるようにし、現場確認の移動時間を削減した。
i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取組部門
国土交通大臣賞
22. 受賞取組:ボクセル型インフラデジタルツインの構築 / 受賞者:前田建設工業株式会社・法政大学
【取組のポイント】「マイクラ」感覚でインフラ管理、誰でも使えるデジタルツイン
「デジタルツイン」と聞くと、高精細だがデータが重く、専門家しか扱えないものをイメージしがちだ。 その常識を覆し、世界的な人気ゲーム『マインクラフト』のように、空間を立方体のブロック(ボクセル)で表現するシステムを開発した。

- 直感的な操作: ブロックを積み上げる感覚で、子供から熟練技術者まで誰でも直感的に扱える。
- データ統合: 工事成果品や、国土交通データプラットフォーム(DPF)等のオープンデータをシームレスに統合可能。
- 多様な用途: 施工管理や維持管理の効率化はもちろん、楽しみながら学べる「教育教材」としても活用できる。
専門知識の壁を取り払い、若手とベテランの円滑なコミュニケーションを促すこのシステムは、建設業の「担い手不足解消」と「DXの民主化」を両立させる画期的なアプローチとして、見事、国土交通大臣賞に輝いた。
【優秀賞】現場を変革する9の「尖った」技術
23.【北海道】 受賞取組:3DMCバックホウ遠隔操縦導入と普及促進 / 受賞者:植村建設
【取組のポイント】PS5コントローラーで900km離れた重機を操作
市販の「PS5コントローラー」とキャンピングカー(移動オフィス)を使い、衛星通信(Starlink)でどこからでもバックホウを遠隔操作できるシステムを構築した。
特筆すべきは、高価な専用コックピットではなく、ゲームコントローラーで操作できる手軽さと、既存の重機に「後付け」できる点だ。実証実験では、千葉県の操作室から北海道の現場(約900km)の遠隔操作に成功しており、災害対応や労働環境改善への貢献が期待される。
24. 受賞取組:鉄筋工事の生産性向上を実現する配筋DX / 受賞者:鹿島建設
【取組のポイント】鉄筋情報をデータで繋ぎ、完全自動化へ
配筋3次元モデルから帳票を自動作成し、世界標準フォーマット「BVBS」を用いて鉄筋加工機と連携させた。

設計から加工、組立までをシームレスなデータでつなぐことで、従来の手入力によるミスやアナログなやり取りを一掃。
加工機へのデータ転送による自動曲げ加工など、鉄筋工事のフルデジタル化を実現している。
25. 受賞取組:日常管理と舗装点検の一体化の取組み / 受賞者:ニチレキ・スマートシティ技術研究所
【取組のポイント】スマホ動画で道路の「健康診断」
一般車両に設置したスマートフォンのカメラで走行動画を撮影するだけで、AIがひび割れやわだち掘れを自動解析する「GLOCAL-EYEZ」を活用。

特別な計測車両を使わず、日常のパトロールと同時に専門的な舗装点検が行えるため、低コストかつ高頻度な路面管理が可能となり、予防保全型の管理を実現した。
26.受賞取組:デジタルツインによるトンネル施工の省人化 / 受賞者: 西松建設
【取組のポイント】トンネル現場を「1秒」でデジタルツイン化
山岳トンネル工事において、重機の位置や姿勢、坑内のガス濃度などのセンサー情報を集約し、ゲームエンジンを使って仮想空間上に「約1秒」でリアルタイム再現するシステムを構築した。

さらに、生成AIによる異常検知機能も搭載し、遠隔地からの高度な施工管理や、トラブル時の迅速な対応を実現している。
27.受賞取組:ICT仮設防災システムによる見える化 / 受賞者:国土開発工業
【取組のポイント】3D地形で「水みち」を予測し災害を防ぐ
ドローン測量で得た現場の3Dデータをもとに、雨水がどう流れるか(水みち)をシミュレーションするシステム。

経験の浅い若手技術者でも、地形データに基づいた最適な仮設調整池や排水路の配置計画をわずか数日で立案できるようになった。現場の防災力を高める実用的なDXである。
28.【岐阜県】受賞取組:D-AI-Chatによる技術伝承の加速 / 受賞者:大日コンサルタント株式会社
【取組のポイント】生成AIチャットで「匠の技」を継承
ベテラン技術者の暗黙知を形式知化した社内データベース(Dナレッジ)と、生成AI(RAG技術)を連携させた対話型AI「D-AI-Chat」を開発。

若手社員がチャットで質問すると、社内の専門知識に基づいた正確な回答が即座に返ってくる。深刻な技術者不足と技術伝承の課題に対し、AIを活用して解決策を提示した先進的な事例だ。
29. 受賞取組:スマホ3D計測とデータ連携で管工事DX / 受賞者:東邦ガスネットワーク・アンドパッド
【取組のポイント】スマホ×LiDARで配管工事の作図を半減
ガス工事等の小規模な掘削現場において、スマートフォンのLiDARスキャナを活用。

掘削状況や配管をスマホで撮影し、その場で3D点群データ化する。 従来の手書きスケッチやメジャー計測を廃止し、取得データから竣工図を容易に作成できるようにしたことで、作図工数を約50%削減した。
誰でも持っているスマホを活用するため、全国への普及もしやすいモデルだ。
30. 【京都府】受賞取組: ICT技術とチルトローテータの統合的活用 / 受賞者:梅田土建
【取組のポイント】チルトローテータ×ARで「手元作業員ゼロ」へ
バケットを自在に回転・傾斜できる「チルトローテータ」と、重機キャビン内に設計データを重ねて表示する「AR(Trimble SiteVision)」を統合した。

複雑な動きが可能なチルトローテータと、視覚的なARガイドを組み合わせることで、敷鉄板の設置や法面整形において、危険なエリアへの立入が必要な「手元作業員」を不要にした。
中小企業が自らICT活用を推進し、安全性と生産性を劇的に向上させた好事例である。
31. 受賞取組:施工影響XRウォッチャー / 受賞者:奥村組
【取組のポイント】見えない地中をMRゴーグルで「透視」
地盤改良工事などの「地中」で行われる作業は、目視確認ができないことが課題だった。

本取組では、施工機械の位置や地中の変位データをクラウド経由で取得し、MRゴーグル(複合現実)を通して現地の風景に重ね合わせて表示する。
地中のリスクや改良状況を直感的に「見える化」することで、経験の浅い技術者でも的確な判断が可能となった。
【スタートアップ奨励賞】
32. 受賞取組:インフラメンテナンス対応の効率化 / 受賞者: nat
【取組のポイント】スマホ30秒撮影で現場を3D保存・計測
iPhone/iPad用3Dスキャンアプリ「Scanat(スキャナット)」をインフラ維持管理に応用。

現場を30秒程度撮影するだけで高精度な3Dデータ(mm単位)が作成でき、その場で面積計測や図面作成が可能に。
従来の写真撮影や手書き作業からの変革により、計測にかかる時間を58%削減した実績を持つ。
33.受賞取組: リストバンド型機器で個別熱中症リスク管理 / 受賞者:GRIFFY
【取組のポイント】リストバンドで熱中症を「予知」
作業員のリストバンドから取得した「心拍数」と、現場の「WBGT値」、個人の「年齢」を掛け合わせ、独自のアルゴリズムで熱中症リスクをリアルタイム判定する。

危険な予兆を検知すると管理者と本人に即座に通知が届くため、重大事故を未然に防ぐことができる。
位置情報の管理機能も備え、安全管理の省力化にも貢献している。
まとめ 〜 DXは「実証」から「社会実装」のフェーズへ 〜
部門ごとの傾向を振り返ると、日本のインフラDXが新たなステージに突入したことが鮮明に見えてくる。
- 工事・業務部門: 衛星通信による「完全無人化」や3Dプリンタによる「構造物の印刷」など、技術が過酷な現場の課題を直接解決する「実戦力」として定着した。
- 地方公共団体部門: 田辺市や玉名市に見られるように、データを囲い込まずに社会へ開放する「オープンデータ戦略」や、民生品を活用した「低コスト・高頻度管理」が主流となった。
- コンソーシアム会員部門: マインクラフト風のUIやPS5コントローラー、生成AIチャットなど、若手や非専門家でも直感的に扱える「技術の民主化」と「ゲーミフィケーション」が加速している。
今年の受賞事例に共通するのは、DXがもはや一部の先進企業だけの特別な取り組みではなく、中小企業や小規模自治体、そして現場の作業員一人ひとりが当たり前に使う「標準装備」になりつつあるという事実だ。
「2024年問題」をはじめとする建設業の危機的状況に対し、産官学がそれぞれの強みを活かして挑む「総力戦」の体制が整ったと言えるだろう。
来年度、これらの技術がどのように現場へ浸透し、更なる進化を遂げるのか。デジコンでは引き続き、建設DXの最前線を追い続けていく。
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