行政・政策
平田 佳子 2021.2.5

ICTで除雪作業を省力化。 北海道が進める「i-snow」とは

CONTENTS
  1. 機械化を自動化。除雪のワンマン体制を目指す
  2. 機械操作を自動化し、除雪のワンマン体制を目指す
  3. 3Dデータと「みちびき」で、運転支援&自動制御システムを構築
  4. 実証実験を経て、新しい除雪車を実用化する日も近い
2020年12月、北海道、東北、関東甲信越、北陸などを中心に、記録的な大雪に見舞われた。大雪の影響で車やトラックが高速道路で長時間に渡って立往生し、混乱や危険を招いたことも記憶に新しいだろう。


雪を掻き出す除雪作業は、安全のためにも、人と物の流れを維持するためにも不可欠だ。各地の除雪作業は地域の建設業者が主に行っているが、除雪作業員の人材不足が今や深刻な問題になっている。そんな中、ICTを活用して除雪の省力化に力を注ぐ北海道の取り組みを紹介しよう。

機械化を自動化。除雪のワンマン体制を目指す


豪雪地帯である北海道では、近年暴風雪が頻発し、長時間に渡る道路の通行止めが増加。さらに、除雪車オペレータの大幅な減少や高齢化によって人材不足が深刻に。そのため、早期の交通解放や除雪作業の効率化が大きな課題になっていた。  


 

そこで、2016年度に国土交通省北海道開発局のよって、ICTを活用して除雪現場の省力化を図り、生産性・安全性を上げるためのプラットフォーム「i-snow」が発足。国土交通省による建設業界のICT化プロジェクト「i-Construction」の一環として、産学官民が連携しながら、除雪車の技術開発・活用や現場の改善、情報の共有など、様々な活動を行っている。


機械操作を自動化し、除雪のワンマン体制を目指す


「i-snow」では、具体的にどのような取り組みをしているのだろうか。

現在の除雪作業は、投雪などの機械操作と車両の運転、周囲の安全確認や走行位置の確認など、様々な作業を同時に手がけるため、熟練技術者と助手の2人体制で行っている。

こうした人力に頼った除雪から、機械操作の自動化や確認作業の省力化によって「熟練の技術がなくてもワンマン体制で除雪作業ができること」を目指し、2017年度から技術開発や実証実験を進めてきた。



3Dデータと「みちびき」で、運転支援&自動制御システムを構築


まずは、冬季通行止め区間で障害物も少ない国道334号知床峠を試験フィールドに選定し、新しいロータリ除雪車を開発。MMS測量(移動計測車両による測量システム)を行って3D点群データからマップを作成し、道路が雪で覆われている状況でも道路の幅や橋の位置などを立体的に把握できるようにした。


そして、準天頂衛星「みちびき」の電波を使って、センチメートル単位の高精度な位置情報を取得。除雪車内のモニターで3Dマップと共に位置情報を表示して運転を支援するガイダンスと、地形などによって投雪方向を自動制御するシステムを構築した。操作するレバーの数も従来の11本から3本に集約し、シンプルな操作が可能だ。


さらに、ミリ波レーダー(ミリ波帯の電波を使い、距離や位置情報などを高精度に検知できるセンサー)による車両検知や、3DカメラとAI物体認証機能を備えた接触防止システムを搭載し、車両が道路から出そうな時や障害物や人が近づいた時にアラームや回転灯で警告する仕組みも。   また、吹雪の中などの視界不良時でも、モニターで100メートル先まで視認できるように画像鮮明化装置も取り付けるなど、安全対策もしっかり考慮し、開発を行っている。



実証実験を経て、新しい除雪車を実用化する日も近い


今後は知床峠での実証実験の成果を生かし、一般道での実証実験を経て改善しながら実用化へと進めていく。

一般道では、雪堤の高さが日々変化する中で、一般車両や歩行者、障害物を避けながら投雪する高度な技術が必要だ。そのため、「3D-LiDAR」(3Dレーザーレーダー)による雪堤の計測制御や、3Dマップに熟練オペレータの操作を登録して倣い制御するといった、より高度な機械の自動化を進めている。


北海道の除雪はICTによって、安全で効率的な除雪へと大きく変わりつつある。全国でもこうした新しい除雪の形がこの先どんどんスタンダードになっていくだろう。
 


 
・記事内掲載資料・写真:国土交通省 北海道開発局 webサイトより





WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。

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