国土交通省が、建設業界の生産性向上のために、ICT(情報通信技術)を取り入れたプロジェクト「アイ・コンストラクション(i-Construction)」を始動させたのは、2016年のこと。
アイ・コンストラクションは、建設現場の生産性向上を目指し、働き方改革とも連動し、推進されてきた。
なぜ、アイ・コンストラクションを進める必要があったのか。まずは、背景を押さえておきたい。
社会インフラを支える建設・土木事業。市場規模は60兆円を超え、近年は東京オリンピックや大阪万博、さらには、インフラの老朽化による建設投資の拡大で、ますますニーズが高まっている。
しかしその一方で、現場で作業をする技能者の高齢化や、3K(きつい・危険・きたない)ともいわれるハードな労働環境のイメージから若手離れが進み、人手不足が深刻化している現状がある。
こうした問題を解消するために始まったのが、建設現場の生産性向上プロジェクト「アイ・コンストラクション」である。
生産性の向上とは、品質や安全をしっかり守りながら、なるべく多くの人材や時間をかけずに効率よく各建設プロセスを遂行することだ。
そして従来の3Kのイメージを払拭して、新3K(「給与が高い」「休暇が取れる」「希望が持てる」)という魅力的な職場・業界にし、若者離れを食い止める狙いがある。
アイ・コンストラクションでは、以下の3つを柱に施策を進めている。
<アイ・コンストラクションの柱>
なかでも、プロジェクトの大きな鍵になるのが、「1. ICTの全面的な活用」だ。
まずはとくに効率化が遅れている土工(土を削ったり盛ったりする工事)に力を入れ、測量から設計・施工・検査・維持管理といったすべてのプロセスでICTの導入を促進するというものである。
それでは、具体的にICTを活用した取り組みを見てみよう。
<建設現場でのICT活用例>
上記をすべて活用した例として、2018年に始まった三井住友建設株式会社による国道45号気仙沼道路工事がある。
同社が開発したシステム「SMC-GeoCIM」で、3Dモデルを用いて施工・品質情報を一元管理。また、UAV(ドローン、無人機)による測量を行い、3Dモデルを作成して、データをマシンガイダンス(MG)バックホウ・ブルドーザーに搭載した上で施工を行った。
注目すべきポイントは、視覚的にわかりやすい立体的な3Dモデルに仕様やコスト・時間などの情報を付加し、全プロセスでデータを共有・管理する「CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)」の導入である。
従来の平面図では伝わりにくかったイメージが明確になり、早い段階で設計や施工の不具合も見える化されるため、認識のズレやミスを防げるのがメリットだ。
また、遠隔から精密な3Dデータを取得できるUAVを使った測量や、操作のサポートや自動制御ができるICT建機を用いた施工を行い、省人化や安全性の向上をめざしている。
2016年に始まったアイ・コンストラクションは、「前進」「深化」の年を経て、2019年は「貫徹」の年に。
ICTを活用した直轄工事は全体の約6割まで増え、実際の作業時間(起工測量から電子納品まで)を約3割削減できたという効果も出ている(2018年度実績)。
そして土工を皮切りに、舗装、浚渫(河川などの土砂を除去する工事)、地盤改良、官庁の営繕などの建築分野まで、どんどん工種が広がっているところだ。
また、産学官民の連携を強めるため、国土交通省は「i-Construction推進コンソーシアム」という組織を設立。先進的なIT技術をもつ大学などの研究機関やベンチャー企業と、建設会社や国・自治体が一体となって、新技術の開発に力を注ぎ、社会的なムーブメントを起こしている。
以下は、実際に現場で導入されている新技術の一例だ。
<新技術の導入例>
●ウェアラブル端末での遠隔管理
IT系ベンチャーのオプティムは、スマートグラスで映像などを共有し、遠隔から現場をサポート・管理できるサービス「Smart Field」を開発。
● AI(人工知能)を活用したインフラ点検
光学機器メーカーのキヤノンは、壁や道路などを高画質で撮影し、AIで解析して、ひび割れなどを自動で検知するサービス「インスペクション EYE for インフラ」を展開。
●ロボットを活用した施工
清水建設は、外部メーカーや研究機関と協働で、自動搬送ロボット「ロボ・キャリア」、多能工ロボット「ロボ・バディ」、溶接ロボット「ロボ・ウエルダー」などを開発。
コスト面や制度面などの課題はあるが、これからもアイ・コンストラクションに参入する民間企業が増え、続々と新しい技術が生まれていくだろう。ITと融合した建設産業の飛躍的な進化が、私たちの豊かな生活につながることを期待したい。
アイ・コンストラクションは、建設現場の生産性向上を目指し、働き方改革とも連動し、推進されてきた。
なぜ、アイ・コンストラクションを進める必要があったのか。まずは、背景を押さえておきたい。
建設ニーズが高まる中、人手不足が深刻化
社会インフラを支える建設・土木事業。市場規模は60兆円を超え、近年は東京オリンピックや大阪万博、さらには、インフラの老朽化による建設投資の拡大で、ますますニーズが高まっている。
しかしその一方で、現場で作業をする技能者の高齢化や、3K(きつい・危険・きたない)ともいわれるハードな労働環境のイメージから若手離れが進み、人手不足が深刻化している現状がある。
こうした問題を解消するために始まったのが、建設現場の生産性向上プロジェクト「アイ・コンストラクション」である。
生産性の向上とは、品質や安全をしっかり守りながら、なるべく多くの人材や時間をかけずに効率よく各建設プロセスを遂行することだ。
そして従来の3Kのイメージを払拭して、新3K(「給与が高い」「休暇が取れる」「希望が持てる」)という魅力的な職場・業界にし、若者離れを食い止める狙いがある。
アイ・コンストラクションのコンセプトとは?
アイ・コンストラクションでは、以下の3つを柱に施策を進めている。
<アイ・コンストラクションの柱>
- ICTの全面的な活用(ICT土工)
- 規格の標準化(コンクリート工)
- 施工時期の標準化
なかでも、プロジェクトの大きな鍵になるのが、「1. ICTの全面的な活用」だ。
まずはとくに効率化が遅れている土工(土を削ったり盛ったりする工事)に力を入れ、測量から設計・施工・検査・維持管理といったすべてのプロセスでICTの導入を促進するというものである。
それでは、具体的にICTを活用した取り組みを見てみよう。
<建設現場でのICT活用例>
- CIMで3Dモデルと属性情報を管理
- UAV /ドローンによる測量
- ICT建機を用いた施工
上記をすべて活用した例として、2018年に始まった三井住友建設株式会社による国道45号気仙沼道路工事がある。
同社が開発したシステム「SMC-GeoCIM」で、3Dモデルを用いて施工・品質情報を一元管理。また、UAV(ドローン、無人機)による測量を行い、3Dモデルを作成して、データをマシンガイダンス(MG)バックホウ・ブルドーザーに搭載した上で施工を行った。
注目すべきポイントは、視覚的にわかりやすい立体的な3Dモデルに仕様やコスト・時間などの情報を付加し、全プロセスでデータを共有・管理する「CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)」の導入である。
従来の平面図では伝わりにくかったイメージが明確になり、早い段階で設計や施工の不具合も見える化されるため、認識のズレやミスを防げるのがメリットだ。
また、遠隔から精密な3Dデータを取得できるUAVを使った測量や、操作のサポートや自動制御ができるICT建機を用いた施工を行い、省人化や安全性の向上をめざしている。
「建設×ICT」の今とこれから
ICT施工が格段に増え、新技術も続々開発
2016年に始まったアイ・コンストラクションは、「前進」「深化」の年を経て、2019年は「貫徹」の年に。
ICTを活用した直轄工事は全体の約6割まで増え、実際の作業時間(起工測量から電子納品まで)を約3割削減できたという効果も出ている(2018年度実績)。
そして土工を皮切りに、舗装、浚渫(河川などの土砂を除去する工事)、地盤改良、官庁の営繕などの建築分野まで、どんどん工種が広がっているところだ。
また、産学官民の連携を強めるため、国土交通省は「i-Construction推進コンソーシアム」という組織を設立。先進的なIT技術をもつ大学などの研究機関やベンチャー企業と、建設会社や国・自治体が一体となって、新技術の開発に力を注ぎ、社会的なムーブメントを起こしている。
以下は、実際に現場で導入されている新技術の一例だ。
<新技術の導入例>
●ウェアラブル端末での遠隔管理
IT系ベンチャーのオプティムは、スマートグラスで映像などを共有し、遠隔から現場をサポート・管理できるサービス「Smart Field」を開発。
● AI(人工知能)を活用したインフラ点検
光学機器メーカーのキヤノンは、壁や道路などを高画質で撮影し、AIで解析して、ひび割れなどを自動で検知するサービス「インスペクション EYE for インフラ」を展開。
●ロボットを活用した施工
清水建設は、外部メーカーや研究機関と協働で、自動搬送ロボット「ロボ・キャリア」、多能工ロボット「ロボ・バディ」、溶接ロボット「ロボ・ウエルダー」などを開発。
コスト面や制度面などの課題はあるが、これからもアイ・コンストラクションに参入する民間企業が増え、続々と新しい技術が生まれていくだろう。ITと融合した建設産業の飛躍的な進化が、私たちの豊かな生活につながることを期待したい。
WRITTEN by