四方を海に囲まれている島国である日本は、地震、豪雨、台風に加え、つねに津波、高潮のリスクを抱えている。また富士山をはじめとした約111の活火山を有しており、ひとたび噴火が起こればその被害は計り知れないだろう。世界有数の災害大国と言われている日本において、自然災害への対策は講じて講じ過ぎるということはない。
2013年(平成25年)、東日本大震災の教訓を踏まえ『強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法(以下、基本法)』が施行。そして、その『基本法』にもとづき『国土強靭化基本計画(以下、基本計画)』が策定された。
大規模な自然災害に見舞われた際にも、致命的な被害を負わない強さと、速やかに回復するしなやかさを併せ持つ、強靱な国土・経済・社会システムを目指し、様々な取り組みが実施されている。
上記が「国土強靭化」の基本計画であり、またその推進事例についても触れていく。
【ソフトとハードの組み合わせ】
堤防や避難施設の整備などによる『防護』と合わせて、ハザードマップ(自然災害を予測しその範囲を地図化したもの)の作成、活用や避難訓練の実施など、これまで以上にソフト対策を重視。
【平時にも有効に活用できる工夫】
景観への配慮や地域での利用など、災害時だけではなく平時においても活用できるような工夫。
【官民連携、役割分担した施策】
自助、共助、公助を適切に組み合わせる。AIアナウンサーによる災害報道やロボットスーツの活用など、民間の企業との連携など。
【おおむね5年ごとに計画内容の見直し】
PDCAサイクル(Plan-Do-Chek-Action 計画ー実行ー評価ー改善)
基本法が施行されたのちも、気象による災害は頻度を増し、その度に甚大な被害を各地に与えている。2018年(平成30年)の台風21号では関西国際空港が浸水し、2019年(令和元年)の台風19号では河川の氾濫が相次いだことも記憶に新しい。
そして、いつ起こるとも知れない南海トラフ地震や首都直下型地震など大規模地震の懸念もある。もし南海トラフ地震が起きてしまえば、その人的被害(死者)は最大で32万人以上、資産等の直接被害は約170兆円と推計されている。
そういったことを踏まえ、2018年には、災害に対する脆弱性を改めて評価され基本計画の見直しと『3か年緊急対策』を実施した。
そして昨年(2020年)12月11日、国土強靭化に向けた取り組みの、更なる加速化・深化を図るため、2021年度(令和3年度)から2025年度(令和7年度)までの5年間に追加的に必要となる事業を定め、重点的・集中的に対策を講じる『防災・減災、国土強靭のための5か年加速化対策(以下、5か年加速化対策) 』が閣議決定された。
政府全体で123の対策、おおむね15兆円程度の事業規模を目処に実施される予定だ。国土交通省では、そのうち9.4兆円程度を目処として所轄分野を対象に53対策を講じる、としており、建設土木産業が国土強靭化の中心的な役割を担っている。
『5か年計画』で、重点的に取組む対策の1つに『国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進』がある。
データの収集、災害予測、脆弱性の分析・特定、対策の検討、対策の実施、そして災害時、災害後、復旧復興まで、ほぼ全ての場面でデジタル技術は効果を発揮すると言われており、AIを使用した画像解析による河川の監視や、交通状況の把握、危険地帯でのドローンの使用など、その例は枚挙に暇がない。
また対策項目の1つには「防災・減災、国土強靱化を担う建設業の担い手確保等に関する対策(国土交通省) 」と明記されている。つまりICT技術の活用で、生産性向上、担い手確保を目指す『i-Construction』の推進は、ある意味、国土強靭化への近道とも言えるのだ。人命を守り、国や社会を維持する、強くしなやかなニッポンを目指した歩みの中で、建設土木業界に寄せられた期待は大きい。
国土強靭化基本計画の概要
2013年(平成25年)、東日本大震災の教訓を踏まえ『強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法(以下、基本法)』が施行。そして、その『基本法』にもとづき『国土強靭化基本計画(以下、基本計画)』が策定された。
大規模な自然災害に見舞われた際にも、致命的な被害を負わない強さと、速やかに回復するしなやかさを併せ持つ、強靱な国土・経済・社会システムを目指し、様々な取り組みが実施されている。
国土強靭化の基本目標
- 人命の保護が最大限に図られること
- 国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること
- 国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化
- 迅速な復旧・復興
上記が「国土強靭化」の基本計画であり、またその推進事例についても触れていく。
【ソフトとハードの組み合わせ】
堤防や避難施設の整備などによる『防護』と合わせて、ハザードマップ(自然災害を予測しその範囲を地図化したもの)の作成、活用や避難訓練の実施など、これまで以上にソフト対策を重視。
【平時にも有効に活用できる工夫】
景観への配慮や地域での利用など、災害時だけではなく平時においても活用できるような工夫。
【官民連携、役割分担した施策】
自助、共助、公助を適切に組み合わせる。AIアナウンサーによる災害報道やロボットスーツの活用など、民間の企業との連携など。
【おおむね5年ごとに計画内容の見直し】
PDCAサイクル(Plan-Do-Chek-Action 計画ー実行ー評価ー改善)
- リスクを特定、分析
- 脆弱性を特定
- 脆弱性の評価、対応方策の検討
- 重点化、優先順位を付けて計画的に実施
- 結果の評価
- 「1.」に戻る
災害は、待ってはくれない
基本法が施行されたのちも、気象による災害は頻度を増し、その度に甚大な被害を各地に与えている。2018年(平成30年)の台風21号では関西国際空港が浸水し、2019年(令和元年)の台風19号では河川の氾濫が相次いだことも記憶に新しい。
そして、いつ起こるとも知れない南海トラフ地震や首都直下型地震など大規模地震の懸念もある。もし南海トラフ地震が起きてしまえば、その人的被害(死者)は最大で32万人以上、資産等の直接被害は約170兆円と推計されている。
そういったことを踏まえ、2018年には、災害に対する脆弱性を改めて評価され基本計画の見直しと『3か年緊急対策』を実施した。
そして昨年(2020年)12月11日、国土強靭化に向けた取り組みの、更なる加速化・深化を図るため、2021年度(令和3年度)から2025年度(令和7年度)までの5年間に追加的に必要となる事業を定め、重点的・集中的に対策を講じる『防災・減災、国土強靭のための5か年加速化対策(以下、5か年加速化対策) 』が閣議決定された。
政府全体で123の対策、おおむね15兆円程度の事業規模を目処に実施される予定だ。国土交通省では、そのうち9.4兆円程度を目処として所轄分野を対象に53対策を講じる、としており、建設土木産業が国土強靭化の中心的な役割を担っている。
建設・土木業界への期待
『5か年計画』で、重点的に取組む対策の1つに『国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進』がある。
データの収集、災害予測、脆弱性の分析・特定、対策の検討、対策の実施、そして災害時、災害後、復旧復興まで、ほぼ全ての場面でデジタル技術は効果を発揮すると言われており、AIを使用した画像解析による河川の監視や、交通状況の把握、危険地帯でのドローンの使用など、その例は枚挙に暇がない。
また対策項目の1つには「防災・減災、国土強靱化を担う建設業の担い手確保等に関する対策(国土交通省) 」と明記されている。つまりICT技術の活用で、生産性向上、担い手確保を目指す『i-Construction』の推進は、ある意味、国土強靭化への近道とも言えるのだ。人命を守り、国や社会を維持する、強くしなやかなニッポンを目指した歩みの中で、建設土木業界に寄せられた期待は大きい。
WRITTEN by
角田 憲
有限会社さくらぐみにライターとして所属。宅地建物取引士。祖父が宮大工だったことから建築、不動産に興味を持ち、戸建て、マンション等の販売・管理・メンテナンス業務に従事。食、音楽、格闘技・スポーツ全般、健康、トラベルまで幅広く執筆。読書量は年間約300冊。