コラム・特集
平田 佳子 2020.12.11

国交省が推進!自然を生かして社会課題を解決する「グリーンインフラ」とは

CONTENTS
  1. 世界で注目されるグリーンインフラとは?
  2. 国交省が「グリーンインフラ官民プラットフォーム」を設立
  3. 日本でのグリーンインフラとこれから

世界で注目されるグリーンインフラとは?


「グリーンインフラ(Green Infrastructure:グリーンインフラストラクチャーの略)」は、自然環境の持つ多様な機能をインフラの整備や土地利用に積極的に活用する概念で、欧米を中心に実践されてきた。

shutterstockより

道路や堤防などの人工的なコンクリート構造物だけに頼らず、緑や水のあふれる自然豊かな環境を整備することが、温暖化対策や防災・減災、生物の生息・生育空間の提供、健康促進、地域活性化など様々な効果をもたらすと考えられている。

日本では2015年の国土形成計画において、「国土の適切な管理」「安全・安心で持続可能な国土」「人口減少・高齢化等に対応した持続可能な地域社会の形成」といった社会課題に対応するために、グリーンインフラを推進することが盛り込まれた。

国交省資料より

国交省が「グリーンインフラ官民プラットフォーム」を設立


2020年3月には国土交通省が、グリーンインフラの推進に向けて「グリーンインフラ官民プラットフォーム」を設立した。

誰もが参加できるオープンなプラットフォームで、国から地方公共団体、民間企業、大学、研究機関、個人まで幅広く会員を募っており、グリーンインフラに関する「仲間づくりの場」「情報を発信・収集する場」「オープンに議論する場」「普及啓発を進める場」としての活用が期待される。

現に会員数も順調に伸び、個人から団体まで700を超える会員が集まっているようだ(2020年9月30日時点)。多様な組織や個人が連携することで、様々な知見やノウハウを共有し、グリーンインフラの社会実装を進めていくことが目的である。

では同プラットフォームでは、具体的に何をするのか。

例えば、グリーンインフラについての情報共有、課題と解決に向けた議論、シンポジウムやセミナーの開催、グリーンインフラ専門のアドバイザーの派遣、資金調達事例の紹介などを行っている。

また、「グリーンインフラ大賞」としてグリーンインフラに関する優れた取り組みや技術・手法を表彰するコンテストも創設。今年は防災・減災部門から、生活空間部門、都市空間部門、生態系保全部門まで117件もの応募があり現在選定中だが、研究への活用や事例集の公開などに役立てていくという。

国交省資料より

日本でのグリーンインフラとこれから


近年は、都心のオフィス街や郊外の都市開発などでも、緑や水を生かした街づくりが見かけられるようになった。実際に、日本におけるグリーンインフラの事例はどんなものがあるのか。これまでにあった取り組みをいくつかを見てみよう。

《グリーンインフラの事例》

● 二子玉川ライズ・二子玉川公園の都市開発

東京・世田谷の二子玉川ライズでは屋上緑化、みどりの広場、遊歩道などを整備し、隣接する二子玉川公園でも大規模なオープンスペースを確保して地下に雨水貯留施設を設置。生態系ネットワークにも配慮し、水害に強い街づくりを行う。民間再開発事業と都市公園整備の連携で、新たな投資や人材を呼び込む魅力ある都市空間を形成した。

● 廃道に伴った広場の形成(熊本市)
熊本市では、”人中心の歩いて楽しい街づくり”を具現化するため、4車線道路廃道に伴い、隣接した公園と一体化する広場を創出。熊本城との景観調和や植栽等のデザインガイドラインを策定し、新しい利活用・運営管理に関する条例を制定予定。

六甲山グリーンベルト事業
六甲山では、土砂災害対策や隣接する市街地の安全対策として、砂防堰堤等の整備に加え、樹林を生かしたグリーンベルト(緑地帯)整備事業を実施。市・県・国と地域の住民が連携して植樹や間伐・支障木の除去等を行い、崩壊防止・樹林保全・景観や生態系の保全、レクリエーションの場の提供につながっている。

ホタル護岸の整備と地域振興(山口県・一の坂川)
山口県・一の坂川では水質汚染によりホタル数が減少したが、台風被害後の河川改修の際に、治水対策とともに生物や景観に配慮した護岸を整備。地域の小・中学校によるホタルの飼育と放流も始まって地域活動として定着し、現在はゲンジボタル発生地として観光スポットになっている。



今や清水建設や鹿島建設などの大手ゼネコンも積極的に技術を導入し、グリーンインフラを進めている。

従来のコンクリート一辺倒のインフラ整備から、コンクリートと自然の良さを組み合わせたハイブリッドなインフラ整備へ。地球や人間、生物に様々なメリットをもたらし、持続可能な社会と経済の発展を叶えるグリーンインフラに、大きな期待が高まる。


WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。

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