コラム・特集
平田 佳子 2020.11.26

メガソーラー建設地のWi-Fi構築プロジェクトを成功。 最先端Wi-Fiソリューションを提供する「PicoCELA」に迫る【前編】

CONTENTS
  1. LANケーブル配線レスで、安定したWi-Fi環境を構築
  2. 環境が刻一刻と変わる場所でも耐えうる安定感が強み
  3. ここまで来られたのは、パートナー企業の支えがあったから
独自の無線通信技術で建設現場のWi-Fi環境を整え、建設業界のICT化を支えてきたPicoCELA株式会社 (以下 ピコセラ) 。今年の9月には、ゼネコン西松建設株式会社と共同し、67ヘクタールもの広大なメガソーラー建設地でWi-Fi環境の構築に成功した。大きく成長を続けるピコセラにて建設業界を担当する営業本部の加藤智成氏に、まずは同社の事業や製品・技術の特長について話をうかがった。

LANケーブル配線レスで、安定したWi-Fi環境を構築


ーー 最初に、御社の事業について教えていただけますか。

加藤氏 当社のビジネスの基本となるのは、Wi-Fi環境の構築です。最近は単にWi-Fi機器を販売して導入するだけでなく、機器に蓄積されたデータをクラウドで活用するなどのデータビジネスにも力を入れているところです。

PicoCELA株式会社 営業本部 加藤智成氏

ーー ピコセラのWi-Fi製品・通信技術の特長はどこでしょうか。

加藤氏 
一般的な業務用Wi-Fiは設置する機器分のLANケーブルが必要で、設置工事のコストもかなりかかります。一方でピコセラは1台の機器だけLANケーブルにつなげば、配線レスで自由に機器を置いてWi-Fiエリアを広げられ、コストも抑えられるんです。

PicoCELA株式会社提供

また、よくあるメッシュネットワーク(Wi-Fiルーターと中継機が相互につながって作られる、網目状のネットワーク)では、電波干渉が多発して中継回数が増えると通信性能が劣化する欠点がありますが、当社の製品はそんなことはありません。ピコセラ独自の「無線バックホール技術」によって電波干渉を抑制し、10ホップ以上の多段無線中継を行っても劣化が少なく、安定した通信環境を実現できます。

PicoCELA株式会社提供

環境が刻一刻と変わる場所でも耐えうる安定感が強み


ーー ピコセラ製品は様々な業界で使われていますが、建設業界に参入されたきっかけは何だったのでしょう。

加藤氏 ピコセラが建設現場に導入されるきっかけになった事例が二つあります。一つ目が「ガーラ湯沢」というスキー場でWi-Fi空間をつくったことでした。屋外のスキー場でLANケーブルを引ける場所はロッジだけで、ほかにもLANケーブルをつなぐ場合は増築などで莫大な費用がかかってしまいます。

PicoCELA株式会社提供

そこで私たちは親機をロッジに設置しLNAケーブル配線し、その他の子機は15台 照明灯から電源をとって設置し、頂上まで約26ヘクタールのWi-Fi空間をつくりました。実はこのスキー場が大規模な土木工事と同じぐらいの面積だったこともあり、電源さえあれば一つの回線でWi-Fi環境が構築できる当社の技術が評価されたんです。

ーーそういった成功事例が次につながったのですね。

加藤氏
そして、二つ目が音楽フェスのイベントです。イベント会社さんから「フードエリア全体をフリーWi-Fiにしてください」と依頼され、14台のピコセラ機器を設置しました。

PicoCELA株式会社提供

一般的にイベントのWi-Fi環境は丸1日かけてつくって丸1日かけて撤収しますが、当社の製品は電源にさして設置するだけなので、設営3時間・撤収2時間と大幅に時間を削減したんです。それで建設業者の方にも「仮設が多い建築や土木の現場でも、Wi-Fi環境の移設が早そう」と気付いていただけましたね。

ーー 建設業界からはどのような依頼がありましたか。

加藤氏  
最初に西松建設様から、「電波が入らない高層マンションの建築現場でWi-Fi空間をつくってほしい」という依頼をいただきました。というのも、マンション15階以上の高さになると、小型基地局や電波ケーブルを設置しない限りは電波が入りにくく、高所にいる作業員さんのスマートフォンがつながらないんです。

PicoCELA株式会社提供

ピコセラ製品は地上から約100メートルの30階建てのビルの高さでも、真っ直ぐに電波が飛びます。まずはビルの仮囲いの部分に回線があったので親機を置き、ビルの頂上からタワークレーンまでWi-Fi通信を可能にしました。さらにビルの吹き抜けを利用して子機を設置し、必要なところにWi-FiスポットをつくってWi-Fi空間を広げていきました。

ーー なるほど。電波が入らない場所でもスマートフォンを使えるようにと。

加藤氏 はい。同じように電波が入らないトンネル工事でも、Wi-Fiのニーズはとても高いですね。湾曲して高低差のある250メートルのトンネルの中に約100メートル間隔で計3台の機器を設置し、Wi-Fi空間をつくったこともありました。

PicoCELA株式会社提供

ーーピコセラはなぜ多くの建設現場で使われるのでしょうか。

加藤氏 建設現場は会社のオフィスの環境とは大きく異なります。仮設の電源で通信が不安定なことも多く、施工中に壁ができたり盛り土が積まれたりと、電波干渉・電波環境が毎日変わり続けるんですね。


そんな中でも、ピコセラの機器は経路の自己修復機能があるので、たとえ一台が止まってもすべてのネットワークが途切れることなく、中継ルートを変えながら安定した通信ができます。こうした環境が刻一刻と変わる場所でも耐えうる安定性と環境追従性が、ピコセラの最大の強みだと思っています。

ここまで来られたのは、パートナー企業の支えがあったから


ーー 販売代理店とも手を組まれていますが、コネクションはどうつくられたんですか。

加藤氏 私も詳しくなかったので、建設業界のお客さまにどの企業と組めば良いかを教えていただきました。実は最初に製品のデモンストレーションをした際に、お客さまから「製品はいいけどピコセラは設置に来られないよね」と言われまして……。

設置やアフターフォローなどをサポートしていただける企業を、スーパーゼネコンも含めて建設会社にヒアリングしたんです。そこで名が挙がった企業に直接お願いに回ったところ、大手も含めて多くの企業様が引き受けてくださいました。

ーー 現場の設置やフォローをお任せできる会社があるのは心強いですね。


加藤氏 そうですね。当社のパートナーである販売代理店さんはネットワーク技術についても熟知していて、「こういう治具があればいい」「IoT機器を使うのに電源供給のためのソリューションが必要」など、現場目線の要望もいただくこともあります。


その声を生かして、当社で最適化することも多いですね。自社だけですべて対応していたら1つの市場で限界だと思いますし、パートナー企業に恵まれているからこそ、ここまで事業を広げてこられたと実感しています。


【編集部 後記】
建設業界に次々と安定したWi-Fi環境を提供し、多くの建設現場から引き合いが増えているピコセラ。後編では、西松建設と共同したメガソーラー建設地でのWi-Fi環境構築プロジェクトや今後のビジョンに迫る。

取材・編集:デジコン編集部
文:平田佳子
撮影:宇佐美亮
WRITTEN by

平田 佳子

ライター歴15年。幅広い業界の広告・Webのライティングのほか、建設会社の人材採用関連の取材・ライティングも多く手がける。祖父が土木・建設の仕事をしていたため、小さな頃から憧れあり。

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を案内するメールマガジンが購読できるほか、会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。