コラム・特集
デジコン編集部 2026.5.18

建設コスト30%上昇の衝撃。日建連データから読み解く全資材・職種の高騰リスト。中東情勢による資材調達網の分断も大きく影響

CONTENTS
  1. 限界を超えるコスト上昇。全職種・全資材の異常な高騰リスト
    1. 労務単価の上昇率(全国単純平均)
    2. 主要建設資材の上昇率
  2. 設備工事の深刻な実態と、3カ月後予測が示す「さらなる悪化」
  3. 中東情勢が追い討ちをかける資材調達網の分断
  4. 改正建設業法が定める「適正な価格転嫁」の新ルール
  5. まとめ

限界を超えるコスト上昇。全職種・全資材の異常な高騰リスト


建設業界を襲うコスト高騰は、もはや一部の資材にとどまらず、あらゆる工種を飲み込む構造的な問題として定着している。

日本建設業連合会(日建連)が2026年5月に公表した資料によると、仮設費や経費を含めた全建設コスト(平均)は、直近の約5年間で28〜32%も跳ね上がっている。
 
その内訳となる「公共工事設計労務単価」および「主要建設資材」の、2021年1月比での上昇率(2026年3月〜5月時点)は以下の通りだ。

労務単価の上昇率(全国単純平均)

     

主要建設資材の上昇率

 

設備工事の深刻な実態と、3カ月後予測が示す「さらなる悪化」


建築本体にも増して深刻なのが「設備工事」の領域である。

国内製造業の回帰による大型工場建設やデータセンター開発が相次ぎ、設備工事の需給は全国的に極めてタイトになっている。 


特注品が多く使われる大規模案件では、物価調査会の数値をはるかに凌駕し、変電設備が126%アップ、自動制御設備が111%アップ、盤類が104%アップという高騰を見せている。


また、空調・衛生設備の長納期化に加え、昇降機(エレベーター)工事に至っては、超高層建物用が「2029年度以降着工」となるなど、プロジェクトの根幹を揺るがす事態となっている。

さらに驚きなのが、経済調査会による「施工費変動状況調査(2026年2月)」が示す先行き3カ月後の予測データである。

現状すでにコストが上昇していると回答した割合に対し、3カ月後の予測ではその割合がさらに拡大しているのだ。

 
「今の高騰はピークであり、いずれ落ち着く」という楽観視は打ち砕かれた。

競合増減や労務費・材料費を理由に、コスト上昇圧力は今後さらに加速していくことがデータによって明確に裏付けられている。

中東情勢が追い討ちをかける資材調達網の分断


世界情勢の悪化は、資材の「価格」だけでなく「供給」そのものを断ち切ろうとしている。

中東情勢の影響により、現在、幅広い工種でメーカーや協力会社から納入遅延や受注停止の連絡が相次いでいる。
  アスファルト防水やシーリング材などの「石油系資材」、樹脂製パーツ(塩ビ管、樹脂バルブ)、塗料、断熱材(スタイロフォーム等)に至るまで、多岐にわたる品目で納期遅延が常態化している。

代替品の調達による追加コストの発生や、仮引き渡し後の再工事といった二度手間が生じており、工期・工事費用への影響は日々深刻さを増している。

改正建設業法が定める「適正な価格転嫁」の新ルール


こうした危機に対し、業界の持続可能性を保つための制度的な防波堤となるのが、2024年に成立した改正建設業法である。

2024年12月の施行に伴い、資材高騰等に伴う請負代金の「変更方法」を契約書に明記することが法定化された。

実務上、特に重要なのが以下のポイントである。

  • 「おそれ情報」の共有:
    受注予定者は、見積書交付時等のタイミングで、資材高騰や入手困難等のリスク(おそれ情報)を発注者に通知し、双方で共有しなければならない。
  • 誠実な協議の義務:
    契約後、実際に「おそれ情報」が顕在化し、資材高騰等が発生した場合は、受注者は請負代金や工期の変更協議を申し入れることができ、注文者は誠実に協議に応じる努力義務を負う。
  • 「契約変更を認めない」特約の禁止:
    原価割れ契約の禁止は変更契約にも適用される。協議の開始を不当に拒絶したり、一方的に打ち切ることは「誠実に協議に応じていない」とみなされる。

まとめ


日建連の最新データが浮き彫りにしたのは、全資材・全職種の網羅的なコスト高騰と、3カ月後も止まることのない上昇圧力、そして地政学リスクによるサプライチェーンの脆弱性である。

建設現場においては、設計段階から設備協力会社と時間的余裕を持った協議を行い、適正な工期を前提とした発注計画を立てることが不可欠だ。



WRITTEN by

デジコン編集部

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