建設現場の生産性向上策「i-Construction 2.0」が推進される中、建機の「手首」として機能する「チルトローテータ」が、令和7年(2025年)1月より国土交通省の新たな認定制度対象となり、公共工事での活用に向けた環境が急速に整いつつある。
本記事では、チルトローテータの基礎知識から、最新の国交省認定制度の詳細、試行工事における積算の考え方、そして主要メーカーの動向まで、実務視点で徹底解説していく。
チルトローテータは、ショベルカー(バックホウ)のアーム先端とバケット(または他のアタッチメント)の間に装着する装置だ。
人間の体に例えるなら、ショベルカーのアームが「腕」であるのに対し、チルトローテータは「手首」の役割を果たす。
従来のショベルカーは、バケットを「掘る・捨てる」という縦方向の動きしかできなかった。しかし、チルトローテータを装着することで、以下の2つの動きが可能になるのだ。

この「傾き」と「回転」の組み合わせにより、これまでの建設機械では不可能だった複雑な動きを、操縦席に座ったまま実現できるように。
チルトローテータの最大のメリットは「マシンの移動を最小限に抑えられる」ことと「手元作業の機械化」にある。
従来、法面(斜面)の整形や溝掘りを行う際、バケットの角度を地形に合わせるために、ショベルカー本体を何度も移動させて正対させる必要があった。
しかし、チルトローテータがあれば、本体を動かさずにバケットの向きや角度を変えるだけで作業が完了する。
これにより、移動時間が短縮されるだけでなく、狭い現場や地盤の悪い現場でも効率的な施工が可能になるのだ。
バケットを自在に操れるため、これまで作業員がスコップで行っていたような細かい仕上げ作業を建機で行えるようになる。
建機の近くで作業する人員(手元作業員)を減らすことができるため、接触事故のリスクが下がり、安全性が飛躍的に向上する。
チルトローテータを使用することで、掘削だけでなく、オプションのグラップル(つかみ機)を使った「掴む・運ぶ」作業や、フォークを使ったリフト作業など、1台で多様な作業に対応可能になる。
これにより、現場内の機械台数を減らし、省スペース化にも貢献する。
ここが今回の最重要ポイントだ。
国土交通省は令和7年(2025年)1月9日、ICT建設機械等認定制度を拡充しチルトローテータを「省人化建設機械」として新たに認定対象に追加している。
(画像元:国交省「ICT 建設機械等認定制度を拡充します」資料より引用)
この施策は、「i-Construction 2.0」が目指す「建設現場のオートメーション化」に向けたもの。
今回新設された「省人化建設機械」の認定区分では、以下の基準が設けられている。
つまり、国交省はチルトローテータを単なる便利ツールではなく、「3割以上の省人化を実現するデバイス」として公式に定義したことになる。
普及を見据え、国交省は令和7年6月17日に「省人化建設機械(チルトローテータ)試行工事実施要領」を公表している。
(画像:対象工種一覧(「令和7年度版土木工事標準積算基準書(もしくは施工パッケージ型積算基準)」掲載工種/国交省資料より)
この試行工事は、「施工者希望型」として位置づけられています。
これは、施工業者が積極的にチルトローテータ活用を提案し、発注者がそれを承諾すれば、しかるべき経費(設計変更)として認められる道筋が明確化されたことを意味する。
なお、適用対象は令和7年7月1日以降に省人化建設機械(チルトローテータ)を活用して施工する場合だ。
チルトローテータを公共工事で使用する場合、どのように費用が積算されるのか。
令和7年6月に公開された「積算要領」に基づき解説していく。
基本的な考え方は、標準的な積算基準(または施工パッケージ型積算基準)における「代表機労材規格(機械)」を、「省人化建設機械(チルトローテータ)相当の機械規格」に入れ替えるという方式。
この「入れ替え」に伴い、機械損料(機械のレンタル料や償却費に相当する費用)も、チルトローテータ仕様の単価が適用される。
試行工事用の資料では、以下のように具体的な損料(供用1日当たり)が設定されている。

※これらは試行工事のための暫定的な数値であり、地域や時期により補正が入る場合がある。しかし、明確な単価設定がなされたことは、積算根拠を提示する施工事業者にとって大きな後押しとなるだろう。
チルトローテータの導入には、大きく分けて「アタッチメント専業メーカーから導入する」パターンと「建機メーカーの純正・推奨オプションとして導入する(またはレンタルする)」パターンの2つがある。
チルトローテータは、北欧発祥の技術であるため、世界的なシェアを持つ海外ブランドが日本市場を牽引している。
建機メーカーやレンタル会社も、この「省人化」の流れを受けて、チルトローテータ対応を強化している。
チルトローテータは、技術的な利便性が評価されるフェーズを超え、国の「省人化施策」の中核技術として制度的に組み込まれた。
「施工者希望型」による設計変更の対象となった今、この技術をどう現場に組み込み、省人化効果をアピールできるかが、今後の工事成績や受注競争力を左右する重要なファクターになると言えるだろう。
本記事では、チルトローテータの基礎知識から、最新の国交省認定制度の詳細、試行工事における積算の考え方、そして主要メーカーの動向まで、実務視点で徹底解説していく。
1. チルトローテータとは? 〜 建機が「手首」を手に入れた 〜
チルトローテータは、ショベルカー(バックホウ)のアーム先端とバケット(または他のアタッチメント)の間に装着する装置だ。
人間の体に例えるなら、ショベルカーのアームが「腕」であるのに対し、チルトローテータは「手首」の役割を果たす。
2つの軸がもたらす革命
従来のショベルカーは、バケットを「掘る・捨てる」という縦方向の動きしかできなかった。しかし、チルトローテータを装着することで、以下の2つの動きが可能になるのだ。

- チルト(傾斜): 左右に最大45度傾けることができる
- ローテート(回転): 360度無限に回転させることができる
この「傾き」と「回転」の組み合わせにより、これまでの建設機械では不可能だった複雑な動きを、操縦席に座ったまま実現できるように。
〈動画:GWTS Japan / チルトローテータTRS4、TRS6、TRS8(ミニバックホウ用)〉
2. 導入のメリット 〜なぜ「省人化」につながるの?〜
チルトローテータの最大のメリットは「マシンの移動を最小限に抑えられる」ことと「手元作業の機械化」にある。
① ポジショニング(移動)の手間を激減
従来、法面(斜面)の整形や溝掘りを行う際、バケットの角度を地形に合わせるために、ショベルカー本体を何度も移動させて正対させる必要があった。
しかし、チルトローテータがあれば、本体を動かさずにバケットの向きや角度を変えるだけで作業が完了する。
これにより、移動時間が短縮されるだけでなく、狭い現場や地盤の悪い現場でも効率的な施工が可能になるのだ。
② 安全性の向上と手元作業員の削減
バケットを自在に操れるため、これまで作業員がスコップで行っていたような細かい仕上げ作業を建機で行えるようになる。
建機の近くで作業する人員(手元作業員)を減らすことができるため、接触事故のリスクが下がり、安全性が飛躍的に向上する。
③ 複合的な作業への対応(多能工化)
チルトローテータを使用することで、掘削だけでなく、オプションのグラップル(つかみ機)を使った「掴む・運ぶ」作業や、フォークを使ったリフト作業など、1台で多様な作業に対応可能になる。
これにより、現場内の機械台数を減らし、省スペース化にも貢献する。
3. 国交省「ICT建設機械等認定制度拡充」について
ここが今回の最重要ポイントだ。
国土交通省は令和7年(2025年)1月9日、ICT建設機械等認定制度を拡充しチルトローテータを「省人化建設機械」として新たに認定対象に追加している。
(画像元:国交省「ICT 建設機械等認定制度を拡充します」資料より引用)① 認定の背景と「省人化基準」
この施策は、「i-Construction 2.0」が目指す「建設現場のオートメーション化」に向けたもの。
今回新設された「省人化建設機械」の認定区分では、以下の基準が設けられている。
- 対象機械: ICT機能、チルトローテータ機能のいずれか(または両方)を有するバックホウ等。
- 省人化基準: 従来機械による作業と比較して、3割を超える人工(にんく)削減効果が認められること。
つまり、国交省はチルトローテータを単なる便利ツールではなく、「3割以上の省人化を実現するデバイス」として公式に定義したことになる。
② 「試行工事」の枠組みと発注方式
普及を見据え、国交省は令和7年6月17日に「省人化建設機械(チルトローテータ)試行工事実施要領」を公表している。
(画像:対象工種一覧(「令和7年度版土木工事標準積算基準書(もしくは施工パッケージ型積算基準)」掲載工種/国交省資料より) この試行工事は、「施工者希望型」として位置づけられています。
- 当初発注時: 通常の計上を行わない(当初発注時はチルトローテータを前提としない)。
- 契約後: 受注者からの協議(提案)により実施が決まった場合、設計変更の対象として扱われる。
これは、施工業者が積極的にチルトローテータ活用を提案し、発注者がそれを承諾すれば、しかるべき経費(設計変更)として認められる道筋が明確化されたことを意味する。
なお、適用対象は令和7年7月1日以降に省人化建設機械(チルトローテータ)を活用して施工する場合だ。
4. 担当者必見!「積算・機械損料」のメカニズム
チルトローテータを公共工事で使用する場合、どのように費用が積算されるのか。
令和7年6月に公開された「積算要領」に基づき解説していく。
① 「機械規格の入れ替え」による積算
基本的な考え方は、標準的な積算基準(または施工パッケージ型積算基準)における「代表機労材規格(機械)」を、「省人化建設機械(チルトローテータ)相当の機械規格」に入れ替えるという方式。
《 例:小規模土工における0.13m3級バックホウの場合 》
- 変更前: 小型バックホウ(クローラ型)山積0.13 ㎥
- 変更後: 小型バックホウ(クローラ型)山積0.13 ㎥ + 「チルトローテータ直付け」
② 専用の「機械損料」の設定
この「入れ替え」に伴い、機械損料(機械のレンタル料や償却費に相当する費用)も、チルトローテータ仕様の単価が適用される。
試行工事用の資料では、以下のように具体的な損料(供用1日当たり)が設定されている。

※これらは試行工事のための暫定的な数値であり、地域や時期により補正が入る場合がある。しかし、明確な単価設定がなされたことは、積算根拠を提示する施工事業者にとって大きな後押しとなるだろう。
5. チルトローテータを提供する主要企業・メーカーを紹介!
チルトローテータの導入には、大きく分けて「アタッチメント専業メーカーから導入する」パターンと「建機メーカーの純正・推奨オプションとして導入する(またはレンタルする)」パターンの2つがある。
① アタッチメント専業メーカー(海外ブランド)
チルトローテータは、北欧発祥の技術であるため、世界的なシェアを持つ海外ブランドが日本市場を牽引している。
《 STEELWRIST(スチールリスト) / アースマシン株式会社 》
スウェーデンの大手メーカー。低重心かつ堅牢な設計が特徴で、鋳造部品を多用することで高い耐久性を実現している。

(画像元: STEELWRIST WEBサイトより)
国内ではアースマシン株式会社が正規販売を行っており、導入から取り付け、メンテナンスまでをサポートしている。
同社は国交省認定型式への対応も進めており、日立建機や住友建機などの各種油圧ショベルへの取り付け実績も豊富だ。
スウェーデンの大手メーカー。低重心かつ堅牢な設計が特徴で、鋳造部品を多用することで高い耐久性を実現している。

(画像元: STEELWRIST WEBサイトより)国内ではアースマシン株式会社が正規販売を行っており、導入から取り付け、メンテナンスまでをサポートしている。
同社は国交省認定型式への対応も進めており、日立建機や住友建機などの各種油圧ショベルへの取り付け実績も豊富だ。
《 engcon(エンコン)》
世界トップシェアを誇るチルトローテータのパイオニア。豊富なアタッチメントラインナップを持ち、国内でも高い知名度を誇ります。国内ではコベルコ建機が代理店となっている。
(動画:engcon Pipe excavationより)
世界トップシェアを誇るチルトローテータのパイオニア。豊富なアタッチメントラインナップを持ち、国内でも高い知名度を誇ります。国内ではコベルコ建機が代理店となっている。
(動画:engcon Pipe excavationより)
② 国内建機メーカー(OEM)・レンタルの取り組み
建機メーカーやレンタル会社も、この「省人化」の流れを受けて、チルトローテータ対応を強化している。
《 アクティオ(レンタル) 》
建機レンタル大手のアクティオでは、コベルコ建機製のバックホウにengcon社製のチルトローテータを搭載し、ICT施工(マシンコントロール)と組み合わせた「3Dチルトマシンコントロール」としてレンタル展開。
(画像元:アクティオ レンサルティングマガジンより)
「足場の整地が不要になる」「設計通りの掘削が容易になる」といったメリットを、高額な初期投資なしで試行工事に導入できる点が強み。
建機レンタル大手のアクティオでは、コベルコ建機製のバックホウにengcon社製のチルトローテータを搭載し、ICT施工(マシンコントロール)と組み合わせた「3Dチルトマシンコントロール」としてレンタル展開。
(画像元:アクティオ レンサルティングマガジンより)「足場の整地が不要になる」「設計通りの掘削が容易になる」といったメリットを、高額な初期投資なしで試行工事に導入できる点が強み。
《 建機メーカー各社(日立建機・コベルコ建機・住友建機など)》
- 日立建機: アースマシン社などの実績に見られるように、最新のZAXISシリーズ(ZX225USLC-7など)において、チルトローテータやマシンガイダンスとの連携が進んでいる。
- コベルコ建機: 上記アクティオでの採用事例のように、チルトローテータを搭載したICT建機の普及に積極的だ。
- 住友建機: SH135シリーズなどで、自動配管システム(SQ)を含むチルトローテータの取り付け事例が増えており、メーカーの枠を超えた普及が進んでいる。
6. まとめ
チルトローテータは、技術的な利便性が評価されるフェーズを超え、国の「省人化施策」の中核技術として制度的に組み込まれた。
「施工者希望型」による設計変更の対象となった今、この技術をどう現場に組み込み、省人化効果をアピールできるかが、今後の工事成績や受注競争力を左右する重要なファクターになると言えるだろう。
参考文献・資料:国土交通省 プレスリリース「ICT建設機械等認定制度を拡充します」(令和7年1月9日)/ 省人化建設機械(チルトローテータ)試行工事実施要領(令和7年6月17日公表)/ 省人化建設機械(チルトローテータ)試行工事(ICT活用工事対象工種以外)積算要領(令和7年6月17日公表)/省人化建設機械(チルトローテータ)試行工事 機械損料(令和7年6月17日公表)/ アクティオ レンサルティングマガジン / アースマシン株式会社 ブログ記事・製品情報
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