2025年11月6日・7日の両日、京都市西京区の「3・3・5中山石見線道路改築工事」現場にて、建設用3Dプリンターの活用現場見学会が開催された。
施工を担当する吉村建設工業株式会社と、国内建設用3Dプリンターを開発・提供する株式会社Polyuseが連携し、実際の公共工事現場で「型枠レス」による構造物構築を実践。


多くの建設関係者が集まった当日の様子と、公開された驚異的な「生産性向上データ」についてレポートする。
今回の現場は、京都市西京区大原野石見町地内の道路改築工事(延長167.3m)だ。

現場は曲線部や勾配を含んでおり、従来の「現場打ち」では熟練の型枠大工による複雑な加工が必要不可欠であった。
また、「プレキャスト(工場製品)」を用いる場合も、重量物の運搬や揚重機の配置に制約が生じる。


そこで採用されたのが、現場打ちとプレキャストの間を埋める「第3の選択肢」としての建設用3Dプリンタ技術である。


本工事では、現場近隣のヤードで部材を製造し、短距離輸送して組み立てる「ニアサイト工法」を中心に採用した。


これにより、運搬コストの削減と、天候に左右されにくい安定した造形環境の両立を実現している。
見学会の目玉となったのは、実際に本工事で適用された「重力式擁壁」や「笠コンクリート」における、従来工法との比較データである。

明らかになった数値は、建設業の課題である「人手不足」への明確な回答を示していた。
3Dプリンタで中空の殻(シェル)を造形し、内部にコンクリートを充填する手法を採用。

板状の埋設型枠をプリントし、安全な盛土の内側から施工する手法を採用。
いずれの工種においても、型枠工や足場工が「0人」となっており、熟練技能者に依存しない施工体制が構築できている点が特筆される。

また、型枠廃材が発生しないため、環境負荷の低減にも大きく寄与している。
本現場では「ニアサイト」での施工に加え、さらなる未来の形として「オンサイト・プリンティング(現場での直接印刷)」の実演も行われた。

これは、プリンタ本体を施工箇所に設置し、直接構造物を印刷する手法だ。
運搬と据付の工程すら最小化するこの手法で、「重力式擁壁」を現地で直接印刷するのは日本初の試みである。

Polyuseと吉村建設工業は、2022年にも国道24号において歩車道境界ブロックのオンサイト施工(公共工事では日本初)を成功させている。
今回の挑戦は、より大型で複雑な構造物への適用拡大を意図したものであり、将来的な「完全自動化された施工現場」への布石となる取り組みである。
3Dプリンター以外のICT活用も進んでいる。山間部などで課題となる通信環境については、衛星通信サービス「Starlink」を導入。

従来のポケットWi-Fi等と比較し、月額費用を約8万円から1万5600円へと大幅にコストダウンしつつ、通信速度を下り125Mbps(従来14.2Mbps)へと高速化させた。


また、現場事務所の設置が困難な小規模現場向けに、Starlinkやポータブル電源、専用デスクを搭載した軽バン「Sat-Office Lite」も公開された。

移動・休憩・事務作業を1台で完結させることで、現場と本社の移動ロスを削減し、残業時間の短縮を図る狙いがある。
今回の見学会で示されたのは、3Dプリンタがもはや「実験的な新技術」ではなく、「実用的な施工手段」として確立されつつある事実である。
特に、今回の中山石見線工事で実証された「工期7割減・人工5割減」というデータは、労働力不足にあえぐ建設業界にとって希望の光となるだろう。

土木学会による技術指針の策定(2025年8月)や、国土交通省による新技術導入促進計画への追加など、制度面での後押しも加速している。
「型枠はいらない、足場もいらない」。そんな常識が、京都の現場から全国へと広がろうとしている。

施工を担当する吉村建設工業株式会社と、国内建設用3Dプリンターを開発・提供する株式会社Polyuseが連携し、実際の公共工事現場で「型枠レス」による構造物構築を実践。


多くの建設関係者が集まった当日の様子と、公開された驚異的な「生産性向上データ」についてレポートする。
3Dプリンターが「第3の選択肢」となる理由
今回の現場は、京都市西京区大原野石見町地内の道路改築工事(延長167.3m)だ。

現場は曲線部や勾配を含んでおり、従来の「現場打ち」では熟練の型枠大工による複雑な加工が必要不可欠であった。
また、「プレキャスト(工場製品)」を用いる場合も、重量物の運搬や揚重機の配置に制約が生じる。


そこで採用されたのが、現場打ちとプレキャストの間を埋める「第3の選択肢」としての建設用3Dプリンタ技術である。


本工事では、現場近隣のヤードで部材を製造し、短距離輸送して組み立てる「ニアサイト工法」を中心に採用した。


これにより、運搬コストの削減と、天候に左右されにくい安定した造形環境の両立を実現している。
【実証結果】工期は最大85%減、人員は6割減を達成
見学会の目玉となったのは、実際に本工事で適用された「重力式擁壁」や「笠コンクリート」における、従来工法との比較データである。

明らかになった数値は、建設業の課題である「人手不足」への明確な回答を示していた。
1. 重力式擁壁(総延長106.7m)
3Dプリンタで中空の殻(シェル)を造形し、内部にコンクリートを充填する手法を採用。

- 人工数(作業員計): 従来工法の161人に対し、3DP工法では75人。約53%の削減(47%に圧縮)を達成した8888。
- 施工日数: 従来工法の68.25日に対し、3DP工法では18.75日。約73%の削減(27%に短縮)を実現している9999。
2. 笠コンクリート(総延長157.3m)
板状の埋設型枠をプリントし、安全な盛土の内側から施工する手法を採用。
- 人工数: 従来工法の204人に対し、71人。約65%の削減(35%に圧縮)。
- 施工日数: 従来工法の58日に対し、17.75日。約69%の削減(31%に短縮)。
3. ボックスカルバート上部の重力式擁壁(総延長9.2m)
- 施工日数: 従来工法の11.8日に対し、わずか1.75日で完了。約85%の工期短縮(15%に圧縮)という劇的な成果を上げた1313131313。
いずれの工種においても、型枠工や足場工が「0人」となっており、熟練技能者に依存しない施工体制が構築できている点が特筆される。

また、型枠廃材が発生しないため、環境負荷の低減にも大きく寄与している。
日本初「オンサイト・プリンティング」への挑戦
本現場では「ニアサイト」での施工に加え、さらなる未来の形として「オンサイト・プリンティング(現場での直接印刷)」の実演も行われた。

これは、プリンタ本体を施工箇所に設置し、直接構造物を印刷する手法だ。
運搬と据付の工程すら最小化するこの手法で、「重力式擁壁」を現地で直接印刷するのは日本初の試みである。

Polyuseと吉村建設工業は、2022年にも国道24号において歩車道境界ブロックのオンサイト施工(公共工事では日本初)を成功させている。
今回の挑戦は、より大型で複雑な構造物への適用拡大を意図したものであり、将来的な「完全自動化された施工現場」への布石となる取り組みである。
通信環境と「移動式オフィス」による現場DX
3Dプリンター以外のICT活用も進んでいる。山間部などで課題となる通信環境については、衛星通信サービス「Starlink」を導入。

従来のポケットWi-Fi等と比較し、月額費用を約8万円から1万5600円へと大幅にコストダウンしつつ、通信速度を下り125Mbps(従来14.2Mbps)へと高速化させた。


また、現場事務所の設置が困難な小規模現場向けに、Starlinkやポータブル電源、専用デスクを搭載した軽バン「Sat-Office Lite」も公開された。

移動・休憩・事務作業を1台で完結させることで、現場と本社の移動ロスを削減し、残業時間の短縮を図る狙いがある。
まとめ
今回の見学会で示されたのは、3Dプリンタがもはや「実験的な新技術」ではなく、「実用的な施工手段」として確立されつつある事実である。
特に、今回の中山石見線工事で実証された「工期7割減・人工5割減」というデータは、労働力不足にあえぐ建設業界にとって希望の光となるだろう。

土木学会による技術指針の策定(2025年8月)や、国土交通省による新技術導入促進計画への追加など、制度面での後押しも加速している。
「型枠はいらない、足場もいらない」。そんな常識が、京都の現場から全国へと広がろうとしている。

参考情報・画像元:株式会社Polyus提供資料及び写真より
WRITTEN by