日立がGoogle CloudのAI技術で建設現場の業務変革を加速。画像比較による点検作業の精度向上を実現

日立製作所は、Google Cloudとの戦略的アライアンスに基づき、AIを活用した生産性向上をめざし、OT(制御・運用技術)領域への活動を拡大すると発表した。

電力や鉄道、製造ラインなど社会インフラ分野におけるフロントラインワーカーの業務変革の加速に向け、AIエージェントの開発・活用に取り組む。

建設業界においても深刻な人手不足と技術継承の課題を抱えるなか、このAI技術の活用が現場作業の効率化と品質向上に大きく貢献することが期待される。

受変電設備の点検作業でAIエージェントの検証を開始

日立パワーソリューションズでは、電力や産業分野の保守事業において、Gemini Enterpriseを活用したAIエージェントの技術検証を開始している。

受変電設備の配電盤内の主機器である真空遮断器では、複数の保守員で点検作業を行っているため、ボルトの取付け方向の誤りやコンデンサの電極配線接続ミス、放電クリップの取外し漏れといった人的ミスの発生が懸念されていた。


従来は紙のチェックリストで対応していた原状復帰の確認作業について、AIエージェントの適用可能性を検証したところ、保守作業の前後で撮影した画像を比較し、原状復帰の合否判定が可能であることが確認できた。

保守員はAIエージェントに画像を読み込ませるだけで、設備・機器に問題がないかを簡単にアラート情報として受け取れる仕組みである。

これにより、年間数千台の設備に対して複数の保守員で点検を実施し、最終確認に熟練の検査員を要している業務に、AIエージェントを適用することで、見落としなどを防ぐためのダブルチェックの精度を高め、点検作業のさらなる品質向上と効率化をめざす。

今回の検証用AIエージェントは、必ずチェックしないといけない箇所やポイント、過去の確認作業で故障原因になった事象や注意点などを自然言語で打ち込み、正しい確認作業後の画像、誤りのある画像を何点か読み込ませることで設計されている。

スタート時点ではAIの専門家の支援が必要でも、そこからの調整や試行は現場担当者でも挑戦できるレベルの容易な仕様になっており、このハードルの低さがAIエージェントの民主化には必要と同社は考えている。

今後は画像だけでなく動画データも活用し、作業手順が正しく守られているかをリアルタイムにチェックし、手順から逸脱した場合にはタイムリーに危険性を指摘するAIエージェントなども検討していく予定だ。

また、映像から報告書を自動生成することにも挑戦し、現場の技術やナレッジの継承、さらに作業負荷の軽減をめざしていく。