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デジコン編集部 2025.10.9

八千代エンジニヤリングが能登半島でオフグリッド型ドローンポート実証実験を実施。斜面監視を遠隔自動で実現

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  1. 毎朝定時の自動飛行でAIが地形変化を解析し作業計画に反映
八千代エンジニヤリングは、SORABOT協力のもと、能登半島輪島地区地すべり災害区域内における地すべり調査業務にて、2025年8月21日から10月3日までの期間、オフグリッド型ドローンポートを活用した遠隔自動操作による斜面監視の実証実験を実施した。

毎朝定時の自動飛行でAIが地形変化を解析し作業計画に反映


建設業界では、労働人口の減少や働き方改革への対応が急務となる中、ICT技術を活用した生産性の向上が求められている。

特に、落石や崩落のリスクが伴う山間部や海上などの施工現場では、地域住民や作業員の安全確保と日々の施工管理の効率化をいかに両立させるかが大きな課題となっていた。

従来、現場の地形変化の確認は、人による巡視やドローンで撮影した平面的な写真の目視比較に依存していた。

これらの方法は多大な労力と時間を要するだけでなく、落石の移動距離や土砂の移動量といった定量的な変化を把握することが困難だった。


そこで、商用電源や通信網が整備されていない山間部や海上などでも運用可能なオフグリッド型ドローンポートを活用し、遠隔自動操作による斜面安全監視を行うことで生産性を確保し、災害現場や砂防分野において目視外の地形変化の確認や定量的な変化を把握する技術の検証を行った。

本実証実験は、現場に常設したドローンポートから毎日定時にドローンを自動飛行させ、取得したデータをクラウド上でAIが自動的に比較・解析することで、遠隔地から斜面の状態を正確に把握するものだ。

現場にドローンポートを常設し、衛星通信によって通信環境を確保した。ソーラーパネルとポータブルバッテリーを組み合わせることで、電源がない環境でもドローンの自動運用を可能に。

また、精密機器であるドローンが安定稼働できるよう、ポート内の温度を最適化するシステムや、盗難対策用の監視カメラも備えている。

本実証実験における最大の特長は、従来のドローンがとらえる平面的な写真比較に加え、地形を立体的に捉える点群データの差分解析を行う点だ。

点群差分解析では斜面に特化したプログラムを使用することで、目視では見逃しがちな微細な変化や、崩落した土砂の体積までを定量的に把握できる。

(地形変化をとらえたオルソ画像。下図(上図は前日)に落石が発生している)


遠隔自動操作による飛行は毎朝6時30分に行われ、ドローンがポートに戻ると即座にオルソ画像、点群、3Dメッシュモデルが自動で生成される。

その後、オルソ画像については前日との差分をAIが自動で比較・解析し、その結果は毎朝8時の施工者の朝礼で確認され、その日の作業計画の策定やリスク評価に活用される。

本実証実験を通じて、データに基づいた客観的なリスク評価と、それに基づく具体的なアクションプランの策定・実行が可能になるなど、現場の安全管理レベルの飛躍的な向上につながった。

毎朝の自動解析により、前日との地形差分を関係者が迅速に共有でき、その日の作業計画に潜むリスクを未然に洗い出し、安全性を高めることができた。

今後は、本実証実験で確立したワークフローの完全自動化を目指す。ドローンが取得した点群データにおいても自動で差分解析を即座に行う仕組みを検討していく。






WRITTEN by

デジコン編集部

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