大成建設。マルチリンク通信を用いた建設機械の超遠隔操縦に成功

大成建設は、SIP第3期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の一環として、直線距離で約90km離れた神奈川県横浜市戸塚区の技術センターから群馬県藤岡市の下久保ダム上流域で複数台の建設機械を遠隔操縦することに成功した。

この取り組みは建設現場の省人化と効率化を目指す研究成果で、就業者が長時間通勤や転勤せずに作業できる新たな環境整備を実現している。

複数LTE回線と衛星通信のマルチリンク技術で安定通信を実現

従来のWi-Fiや特定小電力型無線では通信距離が最大で数百m程度に限られていたが、本システムでは複数のLTE回線と衛星通信を同時に活用する「マルチリンク」技術を採用した。

超遠隔でも安定した通信を実現する「Zaoシリーズ」（ソリトンシステムズ社製）を導入し、電波環境が脆弱なダム上流域の河床部においても安定した通信を確保している。

約90km離れた場所から超遠隔操縦により油圧ショベルとクローラ型ダンプトラックを確実に操作し、堆砂処理作業を実施することができた。


大成建設開発の現場管理システム「T-iDigital Field」のデジタルツイン技術を活用して、現地の建設機械の配置・稼働状況を可視化してリアルタイムに把握している。

メンテナンス作業員と建設機械との距離を常時監視することで、安全性を確保しつつ効率的な作業を実現した。

今回のSIP事業とは別に、大成建設は土木工事現場でも独自に建設機械の超遠隔操縦を今年度実施し、いずれも成功を収めている。

2025年5月には呑川合流改善貯留施設立坑設置工事において、約230km離れた愛知県豊川市からケーソンショベルを遠隔操縦した。

2025年8月には令和5年度玉島笠岡道路浜中地区東工区改良工事において、約300km離れた福岡県福岡市南区から油圧ショベルとクローラ型ダンプトラックの遠隔操縦を実施している。

同社は今後、SIP事業を通じて関係各署と連携し、マルチリンク通信を用いた建設機械の超遠隔操縦による省人化システムの試行を継続する。