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デジコン編集部 2025.5.23

NTTコムウェアが生成AI活用の橋梁診断支援システム実証。長崎県内13橋梁で診断業務時間57%削減を確認

CONTENTS
  1. 診断業務効率化と技術継承を同時実現。熟練技術者不足の課題に対応
NTTコムウェアは長崎大学、溝田設計事務所、長崎県建設技術研究センターとの産官学連携により、生成AIを活用した橋梁診断支援システムの実証実験を4月から5月にかけて実施した。

長崎県内13橋梁を対象とした実証で診断業務時間の大幅短縮効果を確認している。

診断業務効率化と技術継承を同時実現。熟練技術者不足の課題に対応


本実証実験では、NTTドコモが開発したAIエージェントを活用し、橋梁の点検データから診断結果案を自動作成するシステムを検証した。

実証の結果、1橋あたりの診断にかかる作業時間を57%削減することが確認された。

システムは橋梁の点検調書に記載された損傷の種類、箇所、進行度等のデータを入力情報とし、橋梁メンテナンスの知見や診断ノウハウ、点検要領を参照して診断案を生成する仕組みだ。

この技術により、熟練技術者でなくても一定水準での診断実施が可能となり、深刻化する技術継承の課題解決にもつながることが期待される。

(AIエージェントの適用イメージ)

また、診断結果の均質化を通じた修繕コストの最適化効果も確認されている。

背景には全国的な橋梁の急速な老朽化進行がある。

全国約73万橋のうち約59%が2032年度には建設後50年以上を経過する見込みで、5年ごとの定期点検が義務化されている年間約15万橋の診断には多数の技術者が必要となっている。

さらに2024年の道路橋定期点検要領改訂により、診断品質の均質化や診断根拠の詳細記録、損傷進行状況や第三者被害リスクを踏まえた技術的見解の記述が求められるようになった。

これにより橋梁診断に必要な時間が増加し、熟練技術者のスキルがより一層重要視される状況となっている。

長崎大学総合生産科学研究科の山口浩平准教授が橋梁メンテナンスの知見と診断ノウハウをもとに実証を監修している。

今後は診断業務に加え、修繕計画策定支援や劣化予測AIによる予防保全など、点検・診断・措置・記録の橋梁メンテナンスサイクル全体でのデータ活用を進める方針だ。

ライフサイクルコストのさらなる最適化を目指し、全国の自治体への展開も計画されている。


WRITTEN by

デジコン編集部

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