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デジコン編集部 2025.5.20

日本製鉄が鉄骨梁の新工法「梁ウェブ薄肉化工法」を開発。従来設計では不可能だった薄肉ウェブでの耐震性能を実現

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  1. 上下フランジによる拘束効果を考慮した精緻な座屈設計で部材ランクを向上し、補強部材なしで梁の軽量化を実現
日本製鉄は、建設ソリューションブランド「ProStruct®」の新パッケージとして、鉄骨梁(H形断面梁)のウェブを薄肉化することで鋼材使用量と建設コストの低減を可能にする「梁ウェブ薄肉化工法」を開発した。

一般財団法人ベターリビングの一般評定を取得しており、実用化に向けた準備が整っている。

上下フランジによる拘束効果を考慮した精緻な座屈設計で部材ランクを向上し、補強部材なしで梁の軽量化を実現


本工法は、鉄骨梁のウェブに生じる座屈に対する設計法を高度化することにより、H形断面梁が本来有する地震時の変形能力を最大限評価し、ウェブの薄肉化を図ることができる技術である。

日本製鉄ではこれまで、薄肉ウェブ断面や超大形断面(メガハイパービーム®)を有するハイパービーム®(外法一定H形鋼)のサイズメニューの拡充や、高強度規格(NSYP®345B、NSYP®385B)の商品化を進めてきた。

H形断面の鉄骨梁を耐震部材として使用する場合、地震時の変形性能を確保するため、梁端部に生じるウェブの局部座屈を防止する必要がある。

従来の設計では、ウェブの板厚を厚くして梁の耐力や変形性能を確保するため、薄ウェブの断面に対しては耐震部材としての使用に制限が設けられていた。

今回新たに実用化した「梁ウェブ薄肉化工法」では、ウェブの局部座屈に対し、上下フランジによる拘束効果を考慮した精緻な座屈設計技術を開発したことで、従来の設計方法と比べ、H形断面梁が本来有する変形性能を最大限評価することが可能となった。

これにより、ハイパービームの強みのひとつである薄肉ウェブ断面も耐震部材として活用できるようになり、梁の軽量化を図ることができる。

設計上の扱いとしては、局部座屈の生じやすさの指標である部材ランクに関して、従来設計ではウェブの板厚が薄いことで変形性能が低いとみなされてきたFCやFDランクの梁に対しても、本工法の設計条件を満たすことで、変形性能が高いとされるFAやFBランクの梁として扱うことが可能となる。

日本製鉄ではこれまでも、鉄骨梁の軽量化を図るための「ProStruct」パッケージとして、H形断面梁のウェブ端部をスチフナにより補剛することで、FCやFDランクに分類される梁をFAやFBランクと見なして設計ができる「梁端ウェブ補剛工法」を実用化してきた。

今回、「梁ウェブ薄肉化工法」を開発したことで、本工法が適用可能な梁については、スチフナ補剛なしで部材ランクを向上し、鋼重削減と鉄骨製作効率の一層の向上を図ることができる。

また、本工法の適用範囲外となる梁部材に対しては、「梁端ウェブ補剛工法」を使用することで、建物全体の梁部材に対して経済的な設計を行うことができる。

日本製鉄は、超高層ビルや物流倉庫、工場、データセンターなどを中心とした大型プロジェクトにて、今回開発の「梁ウェブ薄肉化工法」を含む「ProStruct」パッケージを広く展開し、構造物全体としての設計・施工の合理化を提案していく方針である。



参考・画像元:日本製鉄プレスリリースより
WRITTEN by

デジコン編集部

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